Fラン学生、王になる

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1:錦はがね:2018/06/14(木) 15:07

Fラン大学の経営学部に在籍する青年、野庭新星はある装置を誤って起動させてしまい、見知らぬ地へ飛ばされる。
その国は、国王の贅沢による浪費で財政が傾いていた。

傲慢で自己中心的で残虐な王。
そんな国王と瓜二つの顔を持つ久月は国王と間違えられ宮廷に連行されてしまう。
そこで目にした国家の予算案に唖然として──

「見てらんねぇわ!俺が……俺がこの国を建て直す!」

腐っても経営学部、財政復興目指します。



>>02 登場人物
(色々と設定を変更したのでやり直しです)

2:錦はがね:2018/06/14(木) 15:07

【野庭 新星(のば しんせい)】♀
Fラン大学経営学部に在籍している20歳の青年。
冷静沈着で、感情をあまり表に出さず口数も少ない。
物理学者の父が幼い頃行方不明になり、母子家庭。

【シュペルノヴァ8世(サン・シュペルノヴァ)】♂
プラネッタ王国の君主。傲慢で自己中心的。
大量虐殺や贅沢をして税金を浪費をしてきたため、国民に忌み嫌われている。
新星と瓜二つの顔をしている。

【アレス・マーズナー】♀
百戦錬磨で連戦連勝、18歳の大将軍。
男勝りで荒っぽい口調が目立つが、れっきとした女性。
シュペルノヴァ8世の幼馴染で、彼に好意を寄せていた。

【ジョーヴェ・ユーピター】♂
シュペルノヴァをサポートする補佐官で、政策について助言をする。
女好きで私生活はだらしないが洞察力があり頭が切れ、頼りになる。

【宵原 久月(よいはら くづき)】♂
Fラン大学理工学部に在籍する20歳の青年で、新星の幼馴染兼親友。
天才的な頭脳を持つが、家が近いという理由でFラン大学に。

随時更新

3:錦はがね:2018/06/15(金) 00:09

意識をしばらく手放していたらしい。
重い瞼を開くと、テレビの音量を上げていくように次第に喧騒が耳に入ってきた。

とある街のとある路地裏。
アスファルトのゴツゴツした感触を背中に受けながら、おもむろに起き上がる。

「ここ、は──?」

フラフラ覚束無い足取りで立ち上がり、路地裏から大通りを眺めた。

イタリアだかフランスだろうか、写真でしか見たことのないようなヨーロッパらしい町並み。
レンガ造りの建物、カラカラ音を立てながら走る馬車、どこまでも広がる灰色の石畳。
そして数々の露店や屋台が並び、見たことのない野菜やフルーツが山積みになって売られていた。

行き交う人々の服装は古く、貴婦人は幾重にも布が重なったドレスを身に纏って日傘を差し、男はコートに白タイツ、そしてブーツといった、ルネサンスを思わせるような身なりをしている。


そして恐ろしいことに俺は、なぜか懐かしい雰囲気を微かに感じ取ってしまったのだ。
こんな異国みたいな場所は知らないし、初めて目にする光景のはずなのに。
遠い昔に一度来たような──そんな不思議な錯覚に陥った。

とはいえ、俺は生まれてから一度も日本を出たことはないのでそれはありえない。

それに俺はつい先ほどまで、日本という国のとある県のとある市のとある地区のとある大学の研究室にいたはずだった。

誘拐?拉致?
ここはどこだ?イギリスフランスイタリアドイツ?
そもそもここまでどうやって?
飛行機?ヘリコプター?船か徒歩か?
さすがに徒歩はありえないにしても、俺の意識がない内に何かが起こったということは自明だ。

短絡した思考回路はさらに混沌を極め、ついにショートした。



やっとのことで思い出せたのはそう、幻想的な光を放つあの装置だった──。

4:錦はがね:2018/06/15(金) 00:25

まず、文系の俺が理系の聖域である研究室に足を踏み入れたのがいけなかった。


──私立大葉霞大学理工学部第七研究室。

机上にはCGを映し出す数台のコンピューター、床には絡まり縺れた配線と、散乱した設計図やグラフ。
壁に立てかけてあるホワイトボードには、擦れて消えかかっているが、数式が長々と綴られている。
理系による理系のための理系の部屋。

数式や図面やグラフに目眩がして、これ以上ここにいてはいけないと直感した。
まるで数式やグラフが頭痛を引き起こして、遠回しに文系の俺を追い出そうとしてるような気さえした。
落ち着きなく歩き回ってみたり装置を眺めて時間を潰したりして、その度に時計を見るが数分しか経過しないという悲劇。

一部の人にとっては桃源郷かもしれないが、理系アレルギーの俺にとって居心地悪い他ないので一刻も早く出たかった。

しかし、ここを離れるわけにもいかなかった。
幼馴染である宵原久月が、待ち合わせにこの第七研究室を指定してきたためだ。

5:錦はがね:2018/06/15(金) 07:51

宵原久月は幼少期からの付き合いで、今でも度々遊びに行く約束をしている。

手の加えられていない原生林みたいにボサッとした髪に、皺だらけで薬品の染みが落ちない白衣、そしてメタルフレームの丸眼鏡が特徴的なやつだ。
天真爛漫だが優柔不断で気が弱く、そしてよく天然ボケをかます。
だが才能だけはピカイチだ。それは俺が保証しよう。

物理学者だった俺の親父に憧れて理科に興味を持ち、小学校3年生の頃にはロボット作りやらプログラミングやらをマスターし、コンテストでの入賞も何度か果たした。
全国模試1位は当たり前、推定IQは400超え……そんな天才少年を世間は放っておくはずがない。
イギリス、アメリカをはじめとする海外の有名大学からも当然誘いはあった。
しかしあろうことか彼は、『外国行ったらリアルタイムで特撮観れなくなる』とだけ言って全て蹴ったのだ。

6:錦はがね:2018/06/15(金) 08:39

そして家が近いから、という理由で、俺と同じFランク大学の理工学部を受験した。
当然多くの大人はその決断を非難し、憤り、悲しんだ。
なんて愚かな選択だ、と。
俺も悔しいし勿体無いしで良い思いはしなかったが、本人の意志なので俺がとやかく言うのは筋違いだろう。

俺はというと、世界史、政治経済、地理の三科目は偏差値70超えだったものの、理系科目や古典、英語などはどう足掻いても一桁だったので久月と同じ近くのFランク大学に入学した。
仲良く揃ってFラン、腐れ縁はまだまだ続く。
俺と久月を足して2で割れば丁度良い天才になれたかもしれないだろう、なんてどうにもならない事を思った。

7:錦はがね:2018/06/15(金) 08:47

俺が在籍している大学は、私立大葉霞大学……おおばかすみ大学。
大バカ大学だとかカス大学だとか、とにかく言われたい放題である。
そんな大葉霞大学の理工学部の第七研究室が、久月の指定した待ち合わせ場所だった。

「遅い……」
今日の講義の後、第七研究室に来てくれとの連絡があった。
『13時に第七研究室集合で!』とLINEが入っていたので時間通りに来たものの、一向に来る気配はない。
腕時計の長針は既に6を指していて、これだけ待たされるとさすがに苛立ちが募る。

スマートフォンを取り出し、久月の番号にかけてみるものの──。
『おかけになりました番号は、お出になりせん。ピーッという発信音の後に……』
何コールかして無機質な女性の声が流れるだけだった。

8:にしき:2018/06/15(金) 23:48

 講義が長引いたのか厄介な教授の長話に捕まったのかは定かではないが、これ以上この部屋にいるのは耐えられない。
 あと五分でも数式を目に入れれば、理系アレルギー特有の吐き気を催してしまうだろう。
 ふつふつと湧き上がる苛立ちを抱えながら通話終了ボタンを強く押し、もう帰ってやろうかと踵を返そうとした。
 ──その時だった。


「……なんだ?」
 誰もいない空間なのに、思わず無意識に疑問の声を漏らしてしまった。
 それほどまでに、目に入ったものは"異質"だったからだ。

 奥の机に鎮座された、バスケットボールくらいの球体。
 それは青い光をぼんやり放っていた。
 否、青色というには語弊があるというか、二文字では言い尽くせない光だった。
 数秒ごとに藍色、水浅葱、縹色、紺碧、瓶覗……という具合に目まぐるしく変化し、この世の青色を全てを詰め込んだみたいだ。
 青色が青色に移り変わっていく瞬間できるグラデーションはまさに絢爛華麗。
 蛍光灯やLEDのような陳腐で無機質な輝きではなく、研究室に似つかわしくないほど神秘的な輝きであった。
 夜空から恒星をそのまま地上に持ってきた、と言われれば俺はきっと信じてしまう──。
 
 時が経つのも忘れて、暫くそれに魅入っていた。
 

9:錦はがね:2018/06/16(土) 22:07

美しいものに感化され、その次に湧き上がる心理はただ一つ。
触りたい、手に入れたい──という欲望だ。

とはいえ、勝手に触るのを憚るくらいの理性はある。
なにかの研究で使うものかもしれないし、もし触って壊れたりしたら取り返しがつかない。
それに、触ったらとんでもない高熱で大火傷した……なんてごめんだ。
見るだけにしよう、見るだけに。

……まぁ手をかざすくらいなら──。


恐る恐る自身の手を伸ばし、小さな恒星に手をかざす。
熱は感じられなかった。
むしろ、僅かながらひんやりと冷気を帯びているよつにも思えた。
手は薄青いセロファンを貼ったように染められ、さながら揺らめく水面のようだった。

10:鶏ささみ:2018/06/20(水) 22:46

https://estar.jp/_novel_view?w=25101466

こちらの作品をエブリスタに掲載しました。
設定の変更や加筆修正がございます。

11:鶏ささみ:2018/06/23(土) 23:04

https://estar.jp/_novel_view?w=25106692
プロットverを公開しました。
1話を先行して把握できますが、その先に関わるネタバレも多々あります。
自分用に書いたため雑な部分もございますが、こちらがあれば話がスムーズになると思います。


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