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16:まつり^^結珠◆klVAly.:2018/09/22(土) 12:13

『私に勇気があったなら』


「ねえ、あの子ダサいよね」

「関わりにくいし、てか、関わりたくないしー」

「なんなんだろうね、あのウジウジした態度」



「 みさきもそう思うでしょ? 」



 私には、笑うことしか出来なかった。
 ただ曖昧に、否定も肯定もせず。

 なんとなく笑っていれば、否定したことにも、肯定したことにもならないから。

 ――そうやって正当化して。

 放課後、私はその子と話していた。

 クラスでは、みんなに合わせて、助けることもせず……へらへら笑っているだけなのに。

 そんな私を、怒ることもせず。
 笑顔を見せてくれた。
 普通に、“友達”として。

 本当に当たり障りのない、趣味のこととか、部活のこととか。

 ――クラスは、辛くないの?学校、嫌じゃないの?

 気になる。でも、訊かなかった。

 ――大丈夫?

 なんて、思うだけで言わなかった。
 ……違う。言えなかったんだ。怖くて。

 でも……こんな日がいつまでも続くだろうと思っていて。


「ありがとう」

 いつも通りの放課後、いつもの空き教室。
 ひととおり話し終えた私たちが、帰ろうとしているとき。

 なんだろう、なんでありがとう…?

 多少の違和感は覚えたものの、

「うん……じゃあね」

 と返しておいた。



 「紫村楓さんは、昨日、転校しました」

 その一言を聴いたときの、私の顔。
 本当に真っ青だったと思う。
 
 血の気が引くって、こんな感じなんだ……。
 
 自分が情けなかった。

 あの、ありがとうは……そういうこと?
 なんで、ありがとう……?

 表ではみんなと同じように笑って、裏では仲良く話して。
 そんな偽善者が感謝された。

 ……なんで?なんで?なんで?

 辛さに気付いていた。
 それなのに無視した私。

 本当に誰にも言わずに転校した、楓ちゃん。

 私が、一言発していたら…?
『やめよう』『一緒に組もう』『大丈夫?』言えていたら…?

 本当の友達なら、そんな酷いことしない。


 私 に 勇 気 が あ っ た な ら ――


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