万里一空!

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1:まつり@ゆず◆Go @は全角:2018/06/25(月) 18:23


  

     青春を全力で!  

       >>2

21:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:27

整理のために四年ほど前にここの友達向けに書いた短編を投下。その友達に寄せて書いた記憶がある。添削はしていないです


*

「そらー!部活行こう!」

 わたしの名前は山上 空良(やまがみそら)。
 秋の文化祭での演奏に向けて、吹奏楽部での活動を頑張っている。

「うん、行こう!」

 笑顔で返事をすると、結可(ゆか)ちゃんと二人で駆け出した。



「はい、ちょっと止めて……。山上さん、少し遅れてる。大変だろうけど、練習しておいてね。それとドラムの音をよく聴いて……」

「はい……」

 まただ。夏休みの自主練習を怠ったせいで、だんだんとその差が出てきている。

 どうしよう…せっかく、ソロを任せてもらえたのに。
 足を引っ張ることだけは、絶対にしたくないのに……!

 自業自得だ。


『ファイトーッ!』

『ファイトーッ!』

『多宮田 ファイトーッ』

『ファイトーッ!』


「あ…」

 大知の声だ。

 野球部の掛け声。 
 濁った音の合間に響く。

 沢山の、沢山の音の中。
 わたしは必ず聞き分けられる。

 大知の声を。


「好きだ……」

 ――わたしは、小さな頃からずっと……仁平 大知(にひらだいち)に恋してる。


 今日も聞こえてくる掛け声。
 ――頑張れるよ、大知。



「ねえねえ璃々ちゃーん、大知くんと付き合っているってホント?」

「えっ……」

 ……今は、2月。
 文化祭での演奏も大成功!……と喜んで、冬休みを満喫して。
 
 久しぶりの部活動、といったところだ。
 そんな……浮かれているときに、この一言。

 話題の中心にいるトランペットパートの美嶋 璃々(みしまりり)ちゃんは、凄く大人っぽくて可愛くて……わたしなんかとは比べ物にならないほど優秀な女の子。

「ん〜、まだ付き合ってないけど。バレンタインに告白しようと思ってるの!」

「うわー、頑張ってね!」

「璃々なら大丈夫だよ〜」

 女子みんなが励ましている中、わたしが言い出せたはずがない。

 “わたしも大知のことが好きなの”

 ……もう、嫌だよ。
 昔から大好きだったのに。
 ずっと、ずっと。

 璃々ちゃん、野球部の掛け声、いつも聴いてる?
 大知の声、わかる?


 ――璃々ちゃんより、わたしの方が、昔から……!!

 
 恋って、こんなにも儚く散っちゃうんだ。
 ……わたしって、こんな性格だったんだ。

♯♯

22:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:27

「はよーっす!」

 朝から声が大きいこと。なぁんて思いつつ。
 大知の心地良い声を聴いて、一日が始まる。

 ……失恋、したんだっけ、わたし。

 もう、なんで?
 諦められないの。大好きなの。
 
 トクトクと鳴っている心臓。
 それが、少し気持ち良くて……。


「そら?」

「えっ!?」


 大知……?
 なんで、どうしたの?

 大知は、璃々ちゃんのことが好きなんでしょ?
 こんな、なんとも思ってない女子に気安く話しかけない方がいいよ。

 ……違う。

 わたしが、嫌なの。期待しちゃうから。
 話しかけてもらえて、嬉しくて。
 もしかしたら……を考えちゃうから。

「お前、今日元気無くね?」

 ――なんで。

「どうして、分かるの……」

 あなたのせいよ

 もう、やだ……。


 諦められないじゃん。


 “大好き”
 
♯♯♯

「ムードメーカーのお前が静かじゃ調子狂うよ」

 そう言ってくれた彼の元へ、わたしは走る。

 ドキドキドキドキ。

 頭の中で、強く強く鳴っている。
 心臓が暴れてるや。

 だって……今日はバレンタインデー。
 璃々ちゃんが、告白した日。

 ……に、まさかわたしも告白するなんて…………。

 あなたは運動神経抜群で。
 いつもリレーのアンカーだよね。

 そのくせ、勉強もできちゃうの。
 悔しいけど、あなたが教えてくれると、数学のテストの点数が上がる。

 でも、少し幼くてやんちゃだよね。
 そこが、本当に昔から変わらない。


 ドクドクドクドクドク。

 全身が心臓になった。
 スー、ハー、スー、ハー。
 子供みたいに、思い切り深呼吸して。


「好きだよっ!!」


 ああ……言っちゃった、言っちゃった。

 もう、おしまいかな。
 “幼馴染み”でいれた、最後の瞬間。


「オレも好きだよ」


♯♯♯♯


 璃々ちゃんと付き合っているという噂は、全くの嘘だったこと。
 璃々ちゃんにチョコレートを差し出されたけど、断ったこと。

 そして……昔から、わたしのことが、その……す、すき、だったこと。

 ゆっくりと説明してくれて……。
 悩んだ日々の疲れからか、ヘナヘナと崩れ落ちてしまった。

 ……それを大知に支えられるものだから、もう心臓が持たなくて。
 
 ああ……

「良かった……」

 そう呟くと、

「もう一度言ってやろうか?」

 なんてキザなことを言うもんだから、言い返してやった。

「なっ…なによ、どうせ恥ずかしくて言えないくせに!」

 そしたら、なんて返されたと思う?


「大好き」 


 ……もう、心臓が持たないって。

「好き、とは言わなかったよな?」

 って……本当に、やられたよ。


 ……だから、わたしも仕返ししたの。


「わたしだって、大知に負けないくらい……」

 息を吸って、

「大知のことが……」

 思い切り、

「 好 き だ か ら …… ! 」

 

23:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:33

同時期に也か何かの世界観イメージで書いたもの。そこまで生々しくはないだろうけど流血表現があって人が死ぬ。

*

«ヒマワリの彼方»

「……お前、ヒマワリ……好きだろう。ほら」

 そう言ってわたしの胸にヒマワリの束を押しつけた彼は、力なく笑った。
 腹部から溢れる紅いものが、私の膝に触れる。
 それは生温いようで、冷たかった。
 
「オレ……お前を守れた、よな。本望、だ……」

 嫌だ。いかないで。逝かないで!!

「やっ、やだぁっ……いっちゃ、だめ、だよぉ……っ!」

 視界が一気に歪んだ。
 なんで、なんで…!

 お腹の中からせり上がってきたあつい物が、目からポロポロとこぼれ落ちる。

「いやっ、いやだ、ねぇ……」

 行かないで……!
 ぎゅっと握りしめた、手と手。
 わたしの手も、だんだんと紅く染まる。

 わたしに会えない世界なんて。
 あなたに会えない世界なんて。
 
 嫌だ、嫌だよ。

「そんなとこ、行ったってっ…!つまらない、から、お願い」

 一緒に生きよう……!

 あなたのいない世界なんて――

「……愛してる、アカリ。お願いだ――」

 生きろ。

 彼の口がそう動いた。
 声は……どうだろう、分からない。

 ねえ……なんで? 
 手、冷たいよ……。

「うっ、ううっ、う……」

 うわああああああああっ!

 嫌だ、いかないで、行かないで、逝かないで!!
 泣き叫んだ、なんて。

 泣いているのか、叫んでいるのか、どちらでもないのか。わたしには分からない。

「嫌だ、嫌だよ。あなたのいない世界なんて、いらない!」

 絶え間なくこぼれるしずく。
 あなたの静かな顔に落ちた。

「嫌だ、嫌だ!!わたしもいく!連れてって、お願い!!」

 彼の手から滑り落ちた白刃を、自分に向けた。
 それには、倒した相手のものであろう血液がべっとりと付いている。

 ――生きろよ。幸せになれ……

 あなたのいない世界で、幸せになるなんて。
 できない。できないよ。

 あなたがいない世界で、わたしが幸せになれるなんて……!

 
 強い風が吹く。

 ヒマワリの花弁が舞った。

 それは風にのって、遥か彼方へ姿を消す。

 
 ――このヒマワリは、あなただね。

 ―――生きようか―――



 生温い。けれど、だんだんと冷たくなって行く、わたしの膝元の紅。

 紅く咲いた華。
 彼は、儚く散ってしまった。

24:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:38

同時期の(以下略
この夢は実際に見ました。大分脚色しているけれども。今思うと夢日記みたいな感じでちょっと怖い

*

<愛された“人形”>

 夢を見た。

 隣のクラスで同じ部活、部活動では役職が同じという関係でそこそこ話す男子のKくんが、私の頭を撫でてくれる。

 そこには部活が同じみんながいた。
 それでも夢の中の私は、なんの恥じらいもなくて。

 柔らかな視線を満足に受け取って、口元の優しい微笑みをとらえて。
 時に優しくサラサラと、時に悪戯にクシャクシャと、撫でられていた。

 ――撫でられている私は、ずっと黙っていて。

 なんの恥じらいも見せず、抵抗もせず。
 ただ、おとなしく撫でられていた。

 夢の中の私は、きっとお人形のように可愛いのだろう。

 
 そこは、プールだった。
 入水する前、プールサイドに腰かけて。

 私の太くて毛深い脚は、夢の中ではどうなのか……それは、考えないことにした。

 ウエストもキュッと引き締まって、柔らかな身体なのかな……と、想像してみる。

 プールを挟んだ向こう側で、誰かが物を投げて寄越していた。
 それを受け取りに、皆が入水する。

 Kくんが先に受け取るため、水中に飛び込んだ。

 難なく、無難に受け取って出水しようとしている。
 
 私の番になった。
 スッと飛び込む。

 久しぶりの水中。
 今までは水泳を習っていて。
 水は友達、自由な空間。

 受け取ったなにかを、無理矢理沈めてみる。
 それを取りに潜水して、深いところを、人の間を縫って泳いだ。

 気持ちいい……どこまでも行けそうな、開放的な空間。
 縛られていたなにかをほどかれたような。


 しばらくして、プールの隅の方で休んでいると、Kくんがやって来た。
 優しく頭を撫でられる。

 ホッとして……黙って撫でられる、ワタシ。

 
 あ――
 
 
 私じゃ、無いな。
 
 見た目は私。意識も私。それでも、私じゃない。
 私はあんな子じゃない。

 Kくんに愛される度に別人となって行く。
 Kくんに愛される。そうして……私の個性は―――

 愛されているのは“人形”である。


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