雨は降る。雪は降る。でも、大根は降ってこない。
もしも大根が降ってきたら、明日は白菜が降ることになるだろう。
明日も、明後日も、明明後日も。一億年後だって。
ずっと、あの日と変わらない日常であってほしいって、そう願う。
そう願える日が、いつまでも続けばいい。
「同じ日がずっと続けばいいなんて、馬鹿じゃないの」
誰かはそう嗤う。
でも、それでいい。同じ日がずっと、飽きるくらいにずっと、続いていればいい。
「ゲームみたいだし。でも、あなたはゲーム、嫌いなんじゃなかったっけ」
誰かがそう尋ねる。
ゲームは嫌いだけれど、こんなことなら、ゲームの方が良かった。
「死ぬつもりなの」
「死.ねないよ」
「あいつらに復讐したいから、死.ねないの」
「僕は、そんなことのために、生きているわけじゃない」
君が居た世界を、ずっと味わっていたいだけなんだよ、なんて並べてみる。
君の面影を探してみては、重ねてみる。
まだ、君がいるはず。
「あの人と一緒にいたいんでしょ。頼めばいいじゃない。あなたのお父様とやらに、ね」
「頼んでみたさ」
「それで、どうだったの」
随分と軽い口調で言う君は、事の重大さを分かっていないのだろう。
図書室に読みたい本がなかったから、図書司書さんに頼んで、その本を入れてもらおう、のような、規模の小さい話ではない。かなりリスキーな話なのだから。
でも、君はまだ、人間なのだから。
実際はまだ、信じていないのだろう。信じてもメリットとデメリットはないし、信じなくともメリットとデメリットはない。そんなものだ。
「そんなの、『それを商売としたら、どれくらい儲かるだろうか』っていう話で終わったよ」
「流石としか言いようがないね。流石、不倫の神。考えることがゲスを極めてる」
「それ本人の目の前で言ってみたら。確実に消されるよ」
「この家族はつくづく酷いと思うんだけど」
「仕方ないよ、それが、世間一般でいうところの」
「神様。なんだよね」
そして、彼は神様の血を引いていた。