真の暗闇が支配する道。
「そうか」
少年は初めて声をあげた。
「私が生きた意味は、これだったんだ」
狭い空間に響いた自分の声を聞きながら、彼は這う速度を上げた。
少年は道を這って進んでいる。
そうするしかないほどに狭いのだ。四方に壁が迫り、一切の光が遮断されている道である。勿論音もない。
何も見えない。
何も聴こえない。
目的地までの距離も分からないまま、ただ狭く真っ暗な道を這っている。
こんな状況下で平静を保つにはどうすればよいか。
考えあぐねた少年は遂に結論に達した。
ひたすら独り言を言い続けること。
何でも良いから静寂を作らないこと。
一度方法を思いついてしまえば案外簡単なもので、後は自然と言葉が口をついて出てきてしまう。
「イザークだったら、もっとましな方法を思い付くのだろうね」
少年は友人の名を挙げ、自嘲気味に笑った。
そして出来る限り詳細にその姿を思い浮かべる。
幼い頃からずっと一緒に過ごした友人だ。すぐに思い描くことが出来た。想像上の友人は笑顔で立っている。
すると少年の気持ちも少し落ち着いてきた。
「私はね、教皇になんかなれなくたってもう構わないんだよ」
大きく息を吸い込み、「だって」と続ける。
「私は真実を求めてこの道を進んでいる、これだけでもう十分じゃないか」
友人を頭に思い浮かべたまま、まるで彼に同意を求めるかのように少年は言った。
のんびり再開させます!
31:のん◆Qg age:2019/04/14(日) 23:51 そのイザークが、じっと少年の答えを待っている。
いつものように、感情の読み取りにくい固まった表情で。
少年はとうとう堪え切れず、その強い眼差しから逃れるように瞳を伏せてしまった。
すぐさまそれを取り繕おうと、少し困ったような笑顔を作る。
彼はそのまま相手の反応も見ずに、「これは何回も皆んなに言っていることだけど」と前置きしてからこう言った。
「私は罰が怖いんだよ。もしも司祭様達に見つかってしまった時の。ほら、だってあそこは一応立ち入り禁止だろう?」
そして相手の同意を求めるように、ね?と付け加える。
しかし、イザークの受け答えは少年が期待していたようなものではなかった。
「そうだな。けれどお前以外の皆んなが、大人に見つからないようにやっていることだ」
重たくて動かせない、冷たい大理石のような声。
一体どうやったらこんな声が出せるのだろう。
少年は不思議に思うと同時に、不意に目の前の友人にそこはかとない畏れを感じた。
「で、でも見つからないようにだなんて私なんかには」
「『なんか』なんて言うなよ!」
突然イザークが大声をあげた。
その続きを遮るように。
先程とは打って変わった、激しい怒気を含む声だった。
当たり障りのない受け答えに徹しようと思っていたのに、咄嗟に出てきた言葉が友人を刺激してしまったらしい。
少年は驚きと焦りで何も言えずにいた。
何しろこの友人は、普段全く感情を表に出さないのだ。
イザークが声を荒げるなんて一年に一度あるかどうか。
一体今の何がいけなかったのだろう。
ちらりとイザークの顔に目をやる。
あの刺すような眼差しがまたこちらに向けられていた。
威圧を感じて少年は肩をすくめる。
彼と目が合うと、イザークは手を伸ばしてその両肩を掴んだ。
「お前はどうしていつもそうなんだ?」
鬼気迫った2度目の問いかけ。
その声音からまだ怒りが抜けていない。
「いつもだ。力は私達と同じくらい持っているくせに。お前はどうしてそう...」
「分かっているよ。弱虫だ」
立て続けに言葉をぶつける友人の声に重ねて、少年は独り言のように言った。
同時にイザークが目を細めて黙る。
「私はいつだって臆病で、誰よりも弱虫なんだ...ふふっ」
今度は自分に言い聞かせるように繰り返すと、自然に少年の口から自嘲気味な笑いが漏れた。
畏れる、皆んななどの漢字は平仮名で書くことがオススメです。テンポが良くなります。
34:のん◆Qg age:2019/08/03(土) 23:50 「弱虫」というのは少年が仲間達からもらい受けた、不名誉極まりない呼び名である。
いつから誰が呼び出したのか、彼自身も忘れてしまうほど昔からそう呼ばれていた。
それは決して、少年の能力が他の仲間達と比べて劣っていたからだとか、彼が修練を疎かにしてきたからだといった理由から付けられたものではない。
彼自体に何か原因があるわけではなく__少なくとも少年自身はそう思っている__彼だけが聞いているらしい「声」こそが全ての真因なのだ。
少年は昔から不思議な気配を感じていた。
途方もない力で彼を包み込んでしまうような得体の知れない気配。
今日に至るまで、少年は何かとその気配に付きまとわれてきた。
例えば修練の途中に度々挟まれる、「力」を測るための実践試験。
ああ今回は調子が良い、どこまでもやれそうだ。
彼がそう思って胸を踊らせる度に、必ずと言ってよいほど毎回突然足に力が入らなくなる。
抗いようもないほど強力な何かに押さえ込まれているようで、少年自身の力ではどうしようもなかった。
そして大抵その後は地面にぺたんと座り込んでしまい、自力では立ち上がれなくなるのだ。
事あるごとにそんな醜態を晒す少年の姿は、他の仲間達の目にはどう映ったか。
本番ではてんで駄目な「弱虫」だという烙印を押されてしまうのも仕方がないと、彼自身も思う。
>>33
今更ながら見落としておりました!
返信が遅れて本当に申し訳ありませんありません🙏
分かりました、次からはいくつか漢字を持つ読み方はなるべく平仮名表記に、「皆んな」は正しくは「みんな」ですね、ご指摘ありがとうございます!
>>36
どうも。お久しぶりです。
勝手なことを言うようで悪いのですが、貴方の文章は今のままの方が良いと僕は思います。下手に文体を変えると苦しいですから。
のんさん、こんにちは。猫又です。
天空七百年、ここまで読ませていただきました。
読んだ感想としては、はっきり言ってしまいますと「設定に文才がコロされている」と言った感じでした。
よほど混乱というか、迷走しているんだなというのがひしひし伝わりました。
分かりやすい例としては、あっちに書いていただいたあらすじ。
「太古、全ての人間はどこまでも続く広大な大地で暮らしていた。だが…」という設定は最初に読者に知らせるべき舞台設定だと思うのですが、今の所、本文では示されていないというのが、まず大きな問題だと思います。
洞窟で少年が這っている図から始まるのは読者の興味を引いていいのですが、本編でずっと少年は這っていて、舞台設定やキャラ設定を伝えるエピソードが、這ってる最中の回想というのは……ちょっと場面と時間が飛び飛びになって読みにくいと感じました。
せっかくの設定がかなり分かりにくい状態になりますし、
本編が今の所少年が洞窟を這っているだけという停滞感を与えるだけでなく、
なによりこの無理やり回想で設定を盛り込む方法では、書けなくなるのも仕方ありません。
何度も場面転換したり回想に持っていくのはかなり大変だからです。
一度、話を整理したほうがいいと思います。
まず設計図となるプロットを打ちましょう。
プロットとはあらすじ。というより、
誰が(何が)何をして(どうして)どうなったか。という感じで作品をザッ、と【最後まで】書く方法です。
本編を最後まで書くことで迷うことも少なくなります。
話の大筋、絶対に伝えなければいけないことが分かれば、それに沿って話を盛り付けていけばいいからです。
信じられない話かもしれませんが、どんな作品でも200文字で最後まで書けます。その次に大切な要素を盛り込んで400文字、さらに盛り込んで800文字。ここまで行けば、立派な設計図になります。
もし200文字が書けない場合は、さらに小さく1行で表してみましょう。
【一体、『天空七百年』とは誰が、何をして、どうなるお話なのでしょうか。】
それを一行で書けば、あとはそこに足していって200文字にすれば完成します。
そうして800文字のプロットを打った後、それをそのまま膨らますと、たしかに説明文のような文章になってしまう可能性があります。
ではどうすればいいかというと、感情描写を入れ込むことなのですが伊藤整一様の言う通り、下手に文体を変えると混乱してしまいます。
(のんさんは情景描写の才能が素晴らしい方なので、それが潰れてしまうのは惜しいです)
なので、変えるとすれば【キャラ設定】です。ある本によればキャラクターは【目的】【行動】【心理】【変化】【容姿】の5つの要素があるとされています。それを固めてみましょう。
【目的】
プロットを書いたり、広げたりする上で一番大切なのは【目的】です。
キャラクタ一人一人の目的をはっきり定めましょう。
モブでなければ目的のないキャラクターを出すのはNGです。
(目的がないと、背景化してしまうからです)
【行動】
そして行動。これは目的から来る行動です。
何を目的に行動しているのかを考えつつ。
その積極度(どのくらいそのために行動するのか)も考えてみましょう。
【心理】
ネガティブかポジティブか中間か、試練が立ちふさがった時などの反応に関わる部分です。
【容姿】
いわゆるチャームポイント。特徴があるとキャラの個性が出るので、決めておくと書きやすくなります。
【変化】
ストーリーが進むにつれ、上4つに変化が現れることがあります。
ここは目的の次に大切な部分で、特に目的の変化はかなり重要です。
例:復讐のため→仲間のため などなど。
これら5つを決めると、自然とキャラ達に感情と行動が生まれ、無理ない文体でそれを書くことができるようになります。
長くなったので、自分の考えた手順を簡単にまとめると、
1 キャラクターの【目的】【行動】【心理】【変化】【容姿】の5つを決める。
2 物語を1行でまとめる(誰が、何をして、どうなるお話なのか)
3 物語を200文字でまとめる。
4 次に400文字、さらに800文字でまとめる。
5 それを見ながら本編を書く。
といった感じです。
なかなか手間のかかる作業ですが、地の文が堅苦しい、書き進みにくい、といった問題を解消できる一つの方法だと思います。
あくまで私の意見ですが何か参考にしていただければ幸いです。
長文失礼しました。それでは〜。
>>37
その言葉で少し気が楽になりましたm(__)m
ありがとうございます、無理のない範囲でゆっくり改善していきたいです
>>38
>>39
猫又様はいつもすっと腑に落ちる助言を下さるので本当に有難いです。
上のレスを参考に、まずは「プロット」というものを自分なりに作ってみます
とても丁寧に説明して下さりありがとうございますm(_ _)m!!