中二病の先輩と現実主義者の後輩がいちゃつくだけのたいして面白くもない小説っぽいなにか
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『エデンの園』
早朝の日差しは醒めたばかりの目に痛く、私は手のひらで朝焼けを遮った。
自室の窓から一瞥すれば、青く輝く海に面した私達の街が見える。薄い金色の朝日が街を覆う朝靄を透過して、眼前の風景は神秘的な雰囲気を帯びていた。
小さな窓に切り取られたその情景は、まるで額縁に飾られた一枚の絵画のようだ。
「おはよう後輩! 」
「あ、おはようございます....先輩 」
ふと投げかけられた声に驚き、声の方に視線を送る。声の先には、自宅の屋上庭園から手を振る先輩がいた。どうやら先輩もこの幻想的な朝焼けを拝みに来ていたようだ。
ーーーーこれは外面上私にも言えることであるが、先輩は、あの吸血鬼発言以降も一応にして変わったような素振りを見せることはなかった。
否、先輩は基本的に変人じみた素振りしかしないので、この表現は適切でないかもしれないが。
先輩は相変わらず滑らかな頬に気障な微笑みを浮かべている。先輩の黒髪が金色の暁光を反射して美しい。
いつもの先輩の笑顔に安心させられる一方で、それが同時に私の中に蓄積された不安を一層駆り立てていることは、自分でも目に見えて自覚できた。
「後輩、今日は暇かい?」
「....ええまあ、お勉強会ですか?」
私の返答に先輩が弾んだ声で言う。
「ううん、違うよ」
「はい? 」
私は首をかしげた。
「僕とエデンの園に行かないかい?」
「......はい? 」
唐突に襲い来る先輩の中二病発言に面食らって間の抜けた声を漏らす私に、先輩はケラケラと笑っていた。どうやら今日の先輩の妄想に据えられた主題は、エデンの園であるらしい。
「ふふん、なんだかデートみたいだねえ」
「先輩、片想いの方がいるのにそんなことを軽々しく仰るのは不適切であると思います」
「え〜片想いの人がいるのに僕と二人っきりで買い物....ああ、エデンの園に来ちゃう君も君だろ」
いちいち言い直す先輩の訳の分からないこだわりには敢えて触れず、人で賑わう店内を見渡す。この街唯一の大型ショッピングモールは確かにエデンの園と表現できなくもないが、些かこじつけ感を感じざるを得ない。先輩の中二病発言に慣れている私でなければ、その理解のし難さはそれこそ世界で最も難解な暗号の一つと名高いドイツ軍のエニグマレベルである。
隣を歩く先輩は目を輝かせて、やたらと楽しそうだ。何気に歩幅を合わせてくれる先輩の謎の紳士的側面におなかのあたりがもやもやする。
「あっゲームセンターあるよ! 遊んで行こうよ!」
「わ、引っ張らないで下さい先輩!それなんだか本末転倒な気がします!そもそもこれはお互いの恋愛の手助けを目的に」
「いいじゃない、その片想いの人とのデートの練習だと思ってさ」
....練習というならば、実践練習もいいところである。好きな人ってあなたのことなんです、と言えたらなんて楽だろう。
謎の入れ違いが起きているこの談笑をするに至った顛末について、私は説明をせねばならない。
ことは先輩の発言から始まった。
「ねえ、前のヴォイニッチ写本のことだけどさ」
「ヴォ....だからあ、私の日記に妙なあだ名つけるのやめていただけません?」
あれから数日後に、半ば二人間でタブーと化しだしていた私の日記の話を持ちかけたのは、先輩であった。
「君、片想いしてる人がいるでしょ」
「えっ」
話を振られた時点で想定内であったはずの言葉にもかかわらず、豆鉄砲を食らった鳩よろしくその場に静止してしまった私を傍目に、先輩はやたらと格好付けたような表情で、そう言って見せた。
−−−−在ろう事か先輩は、日記の人物が自らであることに気づいていなかったのだ。普段は色々と鋭い先輩がまさか自分だと分かっていなかった事実に、安心と僅かな落胆の入り混じった感情が心を支配する。
ここで私は考えた。
以前のストリなんたらかんたら発言と照合すると、先輩には片想いの相手がいる。
そして、わざわざこの話を持ち出した理由は、一般的な女の子の好みを調べ、その子との距離を近づけるべく同じく片想い中で交流のある異性たる私の協力を得ようとしているから。
それが最適解だ。
この解を導き出すに当たって胸のうちに苦い感覚がよぎったが、それは出来る限り金輪際無視していきたい。
「....もしかして、先輩にも片想いの方がいらっしゃるのでしょうか」
「ん、よくわかったね。両想いだと思っていたんだけどなあ、この前僕の片想いだった事が判明してしまったところだよ」
先輩の内に恋愛感情なんてものが存在していた事自体が仰天ものだ。先輩がやたら嬉々として「誰か教えてほしい? ねえねえ? 」と聴いてきたが、お相手は誰なのか考えるだけで胸が酷く痛むので、詮索は自己保身も兼ねて遠慮した。先輩は変人だが、なんだかんだ器用で飄々として、他人を惹きつける雰囲気を持っている。先輩が告白すればお相手もイチコロ間違い無しだろう。
....ちょっと涙出てきた。
「ねえ、他に回りたいところはないかい? 」
私が太鼓の◯人で遊んでいる先輩の横顔を眺めてしんみりしていると、先輩が私の視線に気付いたらしい。先輩はこちらに視線を落とし、にこりと微笑んで見せた。後々先輩の彼女になる人はこんな体験を当たり前に享受するのかと思うと、心の奥に暗雲が立ち込めた様な心地がする。
「服、買いにいきたいです
浴衣買いたいので」
元来近々催される夏祭りのために買いに行く予定であったものの、夏祭りで見知らぬ女性と楽しそうにする先輩が脳裏によぎり、僅かに声が震えた。
心中をさとられぬよう凛然に努め言うが、先輩には私の動揺が丸わかりであるらしく、束の間不思議そうな表情を浮かべた先輩は私の頭を撫でた。
「ふふ、わかるよ。意中の人に気に入ってもらえるのか心配なんだろう? 僕が責任持って選んであげるからさ」
「....ありがとうございます」
先輩が大仰に格好つける。
先輩こそ意中の人その人であるので、先輩に選んでもらえるのは願ったり叶ったりであり、論自体もあながち的外れではないが、どうも釈然としない。先輩に片想いの人がいると判明してからの私は、なんだか変だ。
「うわぁ、随分と人が増えたなあ....」
「仕方ないです、休日のこの時間帯は、一番来客数が増えますから」
ゲームセンターの一角を出てみれば、モール内は尋常でない人だかりができていた。今日は特別なイベントでも開催されるのか、連日より混み合いは酷く、黒々としたおびただしい群衆の波が満員電車よろしく店内にごった返し、前方すらもまともに見渡せない。
二人して溜息をつく。
「あ、」
ふとこちらを覗き込んだ先輩が、なにを思いついたか表情を明るくさせた。
「仕方ないね、手繋ごうか」
「な、なな、なんでです! 」
「迷子になったら困るでしょ?」
そう言って先輩は、動揺する私の手を優しく握った。
−−−−旧約聖書の創世記に記された失楽園の物語は有名であるが、アダムの最初の妻はイブではない。彼の最初の妻であったリリスという女性は、アダムの元を離れてしまって悪魔と成れ果てた。
先輩が幸せになる事は良いことであるはずなのに、私の頭は先輩とこうして遊べなくなる事ばかりを反芻している。今の私は自らの幸せを優先してばかりで、人間だか悪魔だか検討がつかない。
今はただこの先輩の温度を感じていたいと、私は先輩の手を握り返した。
わんく
推敲の甘さが目立つ
ここぞという時以外は平易な文章を心がけた方がいいですよ。
17:羊◆.o:2019/01/06(日) 11:21 >>16
ん〜、やっぱり冗長になっちゃって読みにくいですよね....
ご指摘ありがとうございます、がんばります!
『ヴァルプルギスの夜』
少女は金糸雀色の帯を締め、二つに結わえていた髪を解いた。微かに香る芳香を纏う彼女の髪は、小花の髪飾りで彩りを増している。
「はぁ、なんで断っちゃったんでしょうか....」
私は重苦しい溜息を吐き出した。
私達の街で夏祭りが催されるこの日は、隣町からも多くの人が押し寄せる。雑踏に紛れ、私達三人も屋台を見回っては買い食いをした。
“私達三人”の内訳は、私と同級生の女友達二人だ。
−−そう。この場に先輩は、いない。
こうも人混みの中ぎゅうぎゅうに詰め込まれていると、脳裏に先輩と手を繋いだ日のことがよぎる。私は手元のイカ焼きを噛り、強引にあの思い出をかき消した。
「あれ〜委員長顔が赤いねえ?」
「あ、もしかしてあの彼氏先輩のこと思い出してたんじゃね?」
「彼氏じゃないです!誤解!」
隣を歩く友人二人に図星を突かれた上でからかわれ、頬がさらに紅潮する。正直自分に備わっているとは言い難い“女の勘”というものの的中率は、毎度ながら畏怖と尊敬の念を持たずにはいられない。
「....てかさ委員長、なんで今日はあたしらとなん?
いやもちろん委員長が遊んでくれんのは嬉しいけどさ、いつもあの先輩と二人で行ってたじゃん、夏祭り」
「ま、まさか委員長、失恋しちゃったの...?」
「ちが、そ、そもそも、先輩のことなんて別に好きじゃないですし!あの人ならきっと今頃好きな子を誘って楽しくしてますよ」
後半の言葉に、友人二人の顔が曇る。
今の発言で二人に先輩のあらぬ悪評を広めてしまったことに気がつき、私は慌てて二人にことの成り行きを説明した。
そもそも、私にはこの日の先輩の動向について頓着する資格はないのだ。
何せ、私を夏祭りに誘ってくれた先輩に、自分ではなく片想いの相手を誘うように促したのは私自身なのだから−−−−
突然失礼します…、凄く物語が好きです。
表現が丁寧でとても綺麗な文章だと感じました。
これからも読ませていただくので頑張ってください!
ウワァア〜〜コメント嬉しいです(´;ω;`)
正直自信なかったので励まされました....!更新頑張ります!
「先輩、お誘いは嬉しいですけど、今日の夏祭りは私ではなく片想いの人を誘ってください。先輩ならきっとうまくいきます」
「えっ、僕の好きな人って....」
私がそう言った時、先輩は当惑したように苦笑いを浮かべていた。先輩のことだから、意中の相手を誘うのは造作もなく、むしろ嬉々としてやるだろうと考えていた私は、少し寂しそうな先輩の反応に若干動揺してしまった。
先輩をあそこまで手こずらせるとは、お相手は相当の魔性の美女に違いない。
あまりにも勝ち筋の見えない恋路を疎ましく思いながら、先程出会った友人の姉が、私達三人に差し入れてくれたいくつかの飲み物のうちの、缶ジュースと思しきものをあおった。
....と思えば、口の中に炭酸、苦味と酒の匂いが広がる。
予想外の味に、思わずむせ返った。
「げほっ!これお酒じゃないですか」
「ええ、大丈夫か委員長!姉さんまさか間違えやがったか....って委員長?」
「あちゃー....なんだか定番なカンジだね」
呆れたように笑う友人二人を横目に、なにがおかしいのかよく理解できぬまま、私は突如訪れた熱の籠もってふわふわと浮くような感覚に酔いしれた。なんだか、頭が回らない。
お酒のせいだろうか。
「....なんかおかしいれす」
「あっまって委員長!どこ行くの!」
「あーあーあーちっちゃい委員長が人混みに紛れたら見つかんなくなっちゃうって」
私がふらふらとした足取りで歩き出したのは、先輩に会いたくなったからだと思う。
そもそも、あの友人二人が私と先輩の関係について変な誤解を起こしているのは、私のクラスで横行している先輩と私の恋愛的噂のせいに他ならない。
最も、毎日一緒に登下校している上に偶然会うとめちゃくちゃ絡まれるので、色恋沙汰の大好きな高校生間で噂が立つのも仕方がないかもしれないが、大抵誘ってくるのは先輩だし、いつも少女漫画に出てくるようなセクハラまがいのことをしてくるのも先輩だ。私をこんなにもその気にさせておいて、片想いの人がいるなんてあんまりだ。
そんなことを考えながら歩いていると、紺色の浴衣を着た男性に真正面からぶつかってしまった。
謝ろうとして、何故だか先輩のにおいがしたので思わず見上げる。
「わ、お酒の匂いがするし....後輩、一体どうしたの」
そこには、心配そうに私を覗き込む先輩が立っていた。