銀河系の果てで(近世ハイファンタジー)

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1:伊168:2019/01/04(金) 21:14

(※一応近世ですが途中で近代風になるかもしれません)

第1話:宇宙の山師

時は25世紀。人類は大規模な宇宙進出を開始し、太陽系を出て付近の星系に散らばっていた。
中には銀河系の方々に行って、そこで山を当てるものもいた。一つの星を丸ごと使うわけだから、成功すれば大富豪入りは確実だ。兆単位で儲けたものだって沢山いる。
100年前に星当てとして開催されたものが元になっている。
その反面、太陽系近辺ではなく遠くまで行くので事故率が高く、100周年を迎えた今日でも生還率は60%と低い。また、星というものは低密度で存在しているので、発見することも難しい。
一応、高性能AIが分析や案内をしてくれているので、必ず1人は発見してくるが、最も難易度の高い博打である。

ドイツ出身で今は日本に住んでいるヘルマン・シュミットはこの星当てに応募した。小さい頃から冒険が好きであり、単純でもあった彼にとって死亡率などはどうでもよかった。
彼は会社を辞めて、応募した。登山などで体を鍛えていた他、冒険のための勉強はしていたこともあって、全ての試験をクリアした。
その後、開催国の指示に従って遺書をしたため、生命保険に入った。保険金は全部遺族に入るらしい。
そして、船内での活動や万が一の際の行動などを2年間の研修で学んだ後、火星基地を出発した。
彼は方向の関係から日本人の上村昌三、イタリア人のアメデオ・フェラーリと共に搭乗している。
彼らは、超光速航法を行うため、仮死状態で船内に安置される。船自体も外から見えないようにされている(船体を黒く塗ることで宇宙に出れば知覚できない)。こうして目標の星系まで飛び立つのだ。
ところが、目標の星系に着いた時に宇宙ゴミが船体後部に命中した。AIが惑星の分析をしていたので避けきれなかったのだ。
3人は仮死状態を解かれる。被害拡大を防ぐための機能なのだが、いきなり起こされたので、3人は今の状況を全く理解できない。
上村が慌てて修理を始めたが、航行状況はどんどん悪くなっていく。アメデオは顔を真っ青に染めて、

「危険度4……緊急着陸せねば死んでしまいます!」

と叫んだ。すると後方から上村が、

「降りよう、降りればいつか助かるから」

と観念したように言った。シュミットとしては、死ぬよりも生きる方がマシだ。流石に死ぬしかない冒険はしたくない。
だから、彼のこれに賛同し、3人は宇宙船を地上へと着陸させた。

11:伊168:2019/01/06(日) 19:05

>>10 ミス
「ホーディドゥ カイザーフランツ アレクト ア タイル」 →「ホーディドゥ カイザーフランツ アレクト ア タイル?」

12:伊168:2019/01/07(月) 21:14



案内された部屋はそこそこ広く、机や椅子、振り子時計、ベッドなどが置いてあった。3人もの男が勉強を教えてくれと言ったので、広い部屋が必要だと思ったのだろう。
設備は古いが、綺麗にしてあったので3人も満足であった。

3人が椅子に座ると、店主の男は右手を3人に近づけて親指と人差し指を擦り合わせた。

−−−−金を求めているのだな

だが、この都市に来たばかりであるので通貨など持っていないどころか知らない。とりあえず価値のありそうなものを出すしか無さそうだ。
一番無難だろうということで、3人はそれぞれ金の延べ棒を取り出した。すると店主の男は顎に手を当てて笑みを浮かべるとそれを受け取った。

それから、毎日閉店後に単語や文法、スペルを教えてもらうこととなった。
スペルは使っている文字がアルファベットに似ていたので簡単に覚えることができた。文法も、英語とはかなり違ったがなんとか覚えることができた。
あとは単語だけだった。しかし、あと一つとは言えど数が多い。それだけでなく店主の男が、「おはよう」だとか「あなた」などの日常的に使う言葉だけでなく「自由」、「友愛」、「革命」などの単語も変に先取りしてくるので日常会話ができるようになる頃には(あくまで自由主義など一部のみだが)専門的な話も少しだけできるようになっていた。
だがその一方で、日常会話にかける時間が削がれたせいか日常会話ができるようになる頃には教えを請うてから5ヶ月が経っていた。

3人が基本的な現地語を習得した5日後のことである。本来なら営業中であるのに、店主が部屋に入ってきた。いや、入ってきたのは店主だけでない。青色を基調とした軍服のようなものを着た男が3人も入ってきた。それぞれが銃を構えており、シュミットら3人は脅されているような気持ちになった。

「突然で悪いが、貴方々には我ら革命軍に入って欲しい」

店主は今まで聞いたことのない低い声を出して言った。入って欲しいとは言っているが、この口調や後ろの武装した男らを考えると強制されているようにしか思えない。
3人は、なるべく危険な行動は避けようと誓っていた。そして、軍に入ると死亡確率がぐんと上がる。本来なら断るべきなのだが、正直言ってこの状況だと断れば殺されるような気しかしない。そのため、3人は嫌々了承した。
すると店主は微笑って、

「ありがとう。君達のようないい体をした男が少なかったのだ。誰の指揮下の入るかは知らんがよく頑張ってくれ。そうだ、ついでに私の名前を教えておこう。革命軍中将、エストーベン(都市の一つ)司令官のアンドレ・ベルトランだ。あっ、言い忘れていたがまだ準備中だから下手な行動はよしてくれよ」

と言うと部屋から出て行った。
3人はいきなり革命だの何だの言われてただ呆然としていた。そして、底なし沼に引き込まれるような気分になった。

13:伊168:2019/01/07(月) 21:14

上は第6話:正体

14:伊168:2019/01/11(金) 22:35

第7話:国民の反感

3人は一週間のうちに大尉へ昇格となった。どうも、革命軍は農民だらけであるので、まともに武器を扱え、指揮を取れる人間が少ないから一気に大尉まで昇格となったらしい。
ベルトラン中将曰く、

「君たちは十分に会話できる上、そこらのゴロツキより紳士的で頭がいいから大尉がちょうどいい。働き次第ではすぐに佐官になれるだろうな」

正直、3人からしてベルトラン中将は「変なオッサン」それか「親切なオッサン」程度でしかない。人望がないわけではないのだろうが革命軍の中将閣下と一緒に暮らしているとは思えないのだ。
だから、そんな中将から太鼓判を押されても余り喜べない。

夜、3人がベッドに腰かけた頃、店主のベルトランが慌てて入室してきた。どうやら軍のことらしい。
さて、この中将が何を言いにきたかというと、

「海軍の数が少ないから誰か船乗りに自信のあるものはいないか」

ということであった。シュミットとアメデオはチラチラと目を合わせた後、同時に上村を指差した。
上村は宇宙警備隊所属で、この2人の安全のために配備されていたのだから、指さされるのも仕方ない。
上村もそれはわかっていたのか、肩を落としはしたが海軍に行かねばならないという現実をなんとか受け入れた。

それから1ヶ月後、このエストーベンの地から西に200キロ行ったところにある農村で農民が立ち上がった。
それは、このエストーベンや農村を統治しているロンス王国の国王エリック12世が、

『実戦的軍事演習を行うため指定の農村は兵糧を納めるように』

と布告をしたことにより、この村の男たちが怒ったからである。これだけなら良かったのだが、付近の町の知識層もこれに賛同して、1000人程度の大人数で王都まで抗議の行進を行ったのだ。
これにエリック12世は縮みあがった。今までまともな民衆反乱など経験したことがなかったので、免疫がなかった。だから、精神的ダメージが大きかった。
ありえないほど過剰な対応をしたのだ。それは、

「フェルナンド・デル・クレメント近衛大将に討伐を命じよ」

というものだった。
この命令にクレメント大将は頭を抱えた。彼は昔、近衛兵だった頃にベルトランと同期であった。彼が退役するまでの間、彼から色々な本を紹介されていたし、よく議論もしていた。
兵棋演習では100戦100勝でも政治に関する議論になるとそうはいかなかった。多分、政治に通じている人間なら常識レベルのことだろうが、ベルトランに教えてもらったことは全て画期的かつ魅力的であった。最初は、抵抗があったが、聞いているうちに感化されたのだ。
それでも彼はベルトランと違って君命は鉄よりも重いものと考えていたので、絶望して退役したりはせず近衛大将まで上り詰めたし、今こうして悩んでいるのだ。
彼ら民衆はまだ暴れていない。今まで納税を怠っていたわけでもない。国民として当然の抵抗権を行使したまでだ。今の憲法では認められていないが。
とにかく彼らは悪ではないのだ。だからこれを殺めることは理不尽であるので、やりたくなかった。しかし、君命に背くことは忠義に反する。それは騎士道精神に反する。
騎士こそ廃れてしまったがその精神は歩兵や砲兵に脈々と受け継がれているのだから違反することは家名を剣で傷付けることになる。
どちらも大切なことだ。悩んでいるうちにいっそのこと、民衆たちは暴動でもすればいいのにと思ってしまう。すぐにかぶりを振ってその非道な願いを打ち消すが、悩みだけは消えなかった。
悩んでいるうちに次々と催促が入る。これが彼の心を更に締め付けた。

15:伊168:2019/01/19(土) 09:44

第8話:大将の決断

「将軍、5ベクタル(5分)ごとに催促が来ています。ご英断を下す時かと思います」

悩むクレメント大将の後ろからフレデリック・パストゥール少将が、飽くまで意見のみを発し続ける国民らを申し訳なさそうに見ながら言った。少将は参謀長である。

少将は若くして将官に上り詰めたので、天才といわれている。しかも、彼の家は貴族ですらない。一応、金持ちではあるが平民が尉官以上になることすら稀にも関わらず、尉官どころか将官にまで上り詰めた上、他の貴族将官よりも若い(無論、少将より若いものや同年齢のものもいる)のだから紛れもなく大才である。
しかし、多少の悪口を言われたぐらいで怯んでしまったり(これは幼少の頃の話であるが)、今まで喧嘩をしたことがなかったりするので、精神的耐性があるかどうか不安であった。
別に軍人になるには喧嘩や悪口に耐性がないと絶対に駄目であるというわけではない。しかし、この国では昇進に比例して国王から受ける我儘も多くなるので、人並み外れた精神力が必要だった。
我儘にも程度があるが、それまでの功臣の多くが一斉に退役したらしいので、相当なものだったろう。
今回も、国王がビビり腐って、早くしろと粋り立っているから、5分ごとに催促などという非常識甚だしいことが起こっているのである。そして、少将はついに折れてしまったのだ。

クレメント大将は振り向きもせず、ゆっくりと指揮刀を鞘に納めながら、

「いや、彼らが暴れない限り攻撃はしない」

と言った。そして、少将を一瞥した。
大将の言わんとしていることを感じ取った少将は、後ろにいる男に、

「もういいらしい。ゆっくり休め」

と優しく言った。さっきまで手を額に当て、汗を流しながら報告を上げていたこの男は魔導師である。テレパシーを使っていたのだが、脳が刺激されることや王宮魔導師の高圧的な言い方に不安を覚えて疲れ果てていた。
彼はため息すらつかずにどこかへフラフラと行ってしまう。

以後も数時間、近衛隊の兵士は、その紅顔を汗に染め、手を汗にふやけさせるまで警戒していたが、ついに農民や知識人らが暴動を起こすことはなかった。
近衛隊の者やクレメント大将はこの結果に満足し、安堵したが、納得しないものがいた。国王である。

国内の法律では暴動を起こさないものに武力を行使することは禁止されているが、この国王は無知と高慢から、
余は法である。
と嘯いていた。この男の驕誇自尊にどれほどの人間が失望させられてきたことか。
兎も角この国王は自分自身が絶対であると思っていた。確かにこの国は絶対王政であるが、だからといって国民を必要以上に苦しめる驕奢に耽ることは大間違いである。先人が血と肉で作り上げた国力を便壺に捨てる道理がどこにあろうか。
この暗愚さを今回も遺憾無く発揮したのである。首席大臣のアンリ=カトリーヌ・シャネル枢機卿の反対を押し切ってクレメント大将とパストゥール少将を更迭したのである。

16:伊168:2019/01/24(木) 22:52

第9話:バラスコ将軍

首都での抗議から2日後の事である。3人はベルトラン中将に是非来いと言われたので、酒場のカウンターに出た。
どうやら、革命軍の少将が来るかららしい。重要な話があるようだ。

いつもなら呑んだくれ供で一杯になっている店内も、今日ばかりは素面だけで埋まっていた。そして、異様に空気が張り詰めている。

中将はカウンターの中央にいる男の方へ一目散に向かっていった。おそらく、彼が革命軍の少将なのだろう。年は中将と同じくらいだろうか。中将に比べて鼻が低く、唇が青く、肌が青白い不気味な面をしている。こう比べて見ると中将はそこそこ美形だ。

「あ、紹介しよう。ハインリヒ・バラスコ少将だ」

3人はバラスコ少将の並々ならぬ不気味さに若干怯えつつも軽く挨拶をした。大尉如きが少将に会えるとはこの軍は大丈夫なのかと思ったが、突っ込んではいけない気がしたので、3人は黙って話を聞くことにした。
バラスコ将軍は呻くような口調で訳のわからないことを話し始めた。どうも将軍は普段からこのような話し方をしているらしい。
ベルトラン将軍は、今後のためになるだろうと言っていたが、日常会話と政治に関する単語くらいしか習っていない2人には所々わからない単語があるばかりか、ベルトラン将軍のようにわかりやすくゆっくり話してくれず、訛りらしいものも入っているのでさっぱり理解できなかった。
正直言って、聞く意味すら感じられないほどだ。だが、そんな中にもわかる内容があった。

「そういえば、近衛大将のクレメントが更迭されたようです」

というものだ。しかし、理解できたところで3人にとっては意味を感じられないことであったが。
だが、3人とは違う反応をしたものもいた。今までたまに酒を飲みながら薄い反応しかしていなかったベルトラン中将である。突然立ち上がって、

「そんな! フェルナンドが!?」

と言って天を仰いだのだ。3人はもちろんのことバラスコ少将にも何のことかわからないことであったが、クレメント将軍の名前がフェルナンドであることとベルトラン将軍とクレメント将軍には面識があることだけわかった。

結局、バラスコ少将が一人でトボトボ帰って行くまで、3人は特に有益な話しを聞けぬままであった。
ただわかったことは、革命軍が様々な面で危ない軍隊であるということだけである。
まず将官が明らかに少ない。これだけで軍隊としては相当まずい。相対的に見て海軍より大規模な陸軍ですらこの有様なのだから海軍はもっと酷いものだろう。
そんな予想は不幸にも的中した。海軍には将官が1人しかいなかったのだ。


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