「言葉届ど只卑下たる己」
私の綴る
言葉は魚である
逃げる魚を
針と云う
筆で釣り
たもと云う
紙にて捕らえる
さしずめ私は
太公望
私の綴る
言葉は虫でも或
逃げる虫を
蜜と云う
墨で誘い
籠と云う
本にて捕らえる
さしずめ私は
麦藁帽の
夏山駆ける
虫採り少年哉
否 私は只の
年を喰つた
人間の女
美しさも
可愛気すらも
存在しない
居ても居なくても
変わらない
其れが私である