“深淵唱詩”

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1:アビス◆wc:2017/10/12(木) 06:11

思いついたら取りあえず書く事に決めた(センスは皆無)。

電柱から覗く君は誰だろか?
私はコソリと確かめゆく
けれども何時もシュッパイする

今日も君はシャッテン延びる電柱から私を見ている
そんな所で見てないで早くお入りよ
けれども君は首を横に振る

レーゲン降る日も
シュタルカー・ヴィント吹く日も
君は只私を柱から覗くだけ

何故かと私は君に聞いた
君は口を開いた
“だって僕はゲシュペンストだから”

177:アビス◆wc:2018/01/12(金) 19:12

「憤怒の月下狼」

疾走る
疾走る
狼が

憤怒を
其の身に
たぎらせて

どうしてだ
どうして
他に疎ましいと

思われてるだけで
同胞があの様な目に
遭わねばならない

奴等め
許さぬぞ

喉笛を
喰い千切り
助けを乞えない様に

膓を
喰らい漁り
臓物其処等に

散らしてやる

瓦屋敷の
其の下で
狐と針鼠が

己等の
私腹を肥やして
笑っている

狼は
声を荒げ

狐の喉笛を
喰い千切り

針鼠の
腹を
喰い破り

狐と針鼠
どちらの臓物か
判らぬ程に

散らしに
散らした

憤怒に
呑まれた狼は

血光る
月下にて
又声を荒げた

178:アビス◆wc:2018/01/12(金) 22:48

「脳界橙黒空」

橙と黒の交じる
空の上にある
意味の成していない

階段を
歩いていたら
何かがいた

赤子のいない
乳母車を押す
鴉の羽が生えた

乳母がいた

おぎゃあ
おぎゃあと
泣き止んでくれないのよ

なんでかしらと

乳母は
空の乳母車を
指差し云う

確かに
泣き声はする
でも姿は何処に

橙黒空に
一匹の幼鳥が
飛んでいた

坊や坊や
私の児よと
乳母が云う

危ないから
降りて来て頂戴

乳母の警告も
素知らぬ顔で
橙黒空を飛ぶ

幼鳥よ
乳母鳥に抱かれた
其の世界を

全ての世界と
誤りて認した
気分はどうだろうか

嬉しいか
恐ろしいか
其のどちらで

幼鳥よ
お前は鳴いている

坊や坊や
もう戻って来ないのね

私の子
この腕の中に
もういないの

179:アビス◆wc:2018/01/13(土) 17:35

「脳界市場」

扉があった
其の先を潜ると
市場の様な

行き交う人々に
顔は無くとも
すれ違う度

此方を
見てくる
其の視線に

悪意は無く
又善意も無い

此処は何処かと
聞いてみた

市場だと
人は答えた

成程

商品を
見てみた

鴉の首が
突き刺さっている
棒があったり

片腕の無い
双子に

様々な色の
髪の束

割る口が
何処にあるのか
胡桃割り人形

お勧めは
何れと
聞いてみた

人は答えた
この南瓜だと
美味しいのだと

其れは
南瓜と呼ぶには
とても形容し難く

肌色の硬皮
割ったら赤い
種は白く

葉の色は黒くて
蔓の色は
中身と同じく

赤く滑りがある

金の鍵は
此処に無さそうだ

何も買わず
出て行く私を

商と人は
黙って
凝視していた

また直ぐ
賑やかになった

180:アビス◆wc:2018/01/14(日) 22:13

「脳界心晶森」

金の鍵は
何処に
当ても無く只歩く

ふと周りを
見てみる
木々は全て

水晶で
とても幻想的

地面はまるで
絵の具の
中身を撒いて

全て混ぜた
何の色と
判らない

此処は
心の中だろうか

だとしたら
水晶の森は
大人を表していて

彩色の地面は
子供の部分か

目の前を
何かが
横切った

金の鍵を
頸に下げた
猫だった

追いかけた
追い付け無い

猫は時々
此方を向いては
ニャアと一鳴き

歯を見せて
ニヤニヤ笑う

木の上で
余裕尺々眠る猫

木を蹴つたら
簡単に捕まえた

猫から
金の鍵を奪い
帰れると思つた

猫は云つた

蹴つたニャア
蹴つたニャア
心を蹴つたニャア

桃色の象が
赤になつて
お前を

踏み潰しに
来るニャア

笑い乍
猫は消えた

181:アビス◆wc:2018/01/16(火) 09:05

「脳界怒濁象」

金の鍵を
手に入れた

象がいない
今なら帰れる

白砂に現れた
無機質の扉の
鍵を回そうとしたら

汚濁の海より
現れた

怒りに因り
桃から赤へ
変わった象が

津波を
起こして
扉は白砂の

向こうの方へ
流された

コクリコの様な
赤い森から

杉の木茂る
森へと変わる

杉の木薙ぎ倒し
怒濁の象は

踏み潰さんと
追って来る

根につまづいた
もう駄目だ

怒濁の象
眠り転ける

余りの怒りに
身体が
追い付け無かったか

今度こそ
扉を回し
元へと帰ろう

帰って来たが
帰れない

私の身体
燃えている

めらめら
ぱちぱち

少女は現れ
こう云った

だから云ったのに

182:アビス◆wc:2018/01/16(火) 20:55

(作者ヨリ)

今皆の詩をチラリと
覗いてみたけど

清い恋愛系が多いなぁって思う
其して其れを上手に書ける皆が
正直云って羨ましい

私の詩は「歪」な「愛」なら何とか
書ける。
「清」な「愛」は不得手だ。

だから私の詩は皆より
「質」が「異」なるなのだよ。
「不思議」なのだよ。
只其れだけだ。

183:アビス◆wc:2018/01/17(水) 17:22

「一一七の詩」

又一つ
あの時を
迎える

かつて荒れた地に
恐れを抱き乍

災に呑まれし者達への
鎮魂の儀が

一九九五 一一七の
午前 五四六

災禍の襲来

地は盛り
天へは
黒炎吐かれ

人の造った
生命の線は
容易く切れた

其して代わりに
人が
積み重なった

天地に
刻まれた
其の傷は深く

人の心にも又
深い傷が

だが人は
立ち止まっては
いられない

手を取り合い
復興を

忘れまじと
碑を建て
館を建て

言の葉描きし
蝋燭に灯をともせ

祈りを捧げよ

災に呑まれた
御魂の為に

今此の瞬間を

生きる者達よ

其して語り継げ

災を知らぬ
者達へ

184:アビス◆wc:2018/01/17(水) 21:19

「星と共の」

人よ
御前達が
造りあげた

星々より
強き光放つ物を
消してはくれないか

星の歌が
聞こえないから

星は瞬きで
歌を紡ぐんだ

人の様に
口を持たないから

若し星々に
口が或るのなら

瞬き乍
歌うのだろうね

人が定め
名を付けた
星々は

古の人が
そう見えたから
そう付けたんだ

名を付けられた
星々は
如何思うのだろうか

人は何かを
疑問に思う時
馘をかしげるけど

星はかしげる馘を
持たない

若し星々に
馘が或るのなら

疑問に
思うのだろうね

我等は
人間には
そう見えるのかと

今日も空を
見上げるか

星の歌を
聞く為に

望遠鏡と
清涼珈琲水を

共にして

185:アビス◆wc:2018/01/19(金) 19:13

「思い想い重い」

思いが
想いになって

其の想いが
重いになった時

人は如何いった
行動を
起こすのだろうか

最初に
君を見て
思ったよ

嗚呼君は
其んな感じかと

其して私は
其んな君を
想う様に

なったんだ

でも君には
他の想い人がいた

私じゃ駄目かな
其の想い人は

君との思い出は
楽しかったよ

会えない時は
電話で
話したよね

私は照れて
何も話さなくて

君も照れて
直ぐに電話を
切ったんだよね

手紙も
送ったんだよ

でも君は
全く返事を
くれなかった

或れは流石に
傷ついた

今から
君の所へ
会いに行くよ

君への想いを
持ち乍

私の重いを
届けなきゃ

君への想い人は
此の私だけ

待っていてね

186:アビス◆wc:2018/01/20(土) 22:09

「薬黙録」

其れは

吸ったり
飲んだり
打ったりして

快楽を得る物

一度味わって
仕舞えば虜となり

もう二度と
人には戻れない

其れが魅せる
まやかしが
切れれば

現実と云う
地獄が待っている

夢と現の
境目で生まれた

幻覚と幻聴が
責めに
襲い掛かって来るから

幾ら幻に
叫ぼうが
喚こうが

消える事は
無い

だから又
其れに
手を伸ばす

逃れる為に

今の自分の姿を
見て御覧よ

顔色は如何だ
歯は何本有る
髪は

今の啓発広告に
其れの恐ろしさを
伝える力は無い

昔は有ったさ

だが
怖いと云うだけで
今から姿を消した

ほら又
欲しがってる

其れに
助けて貰えると
思って

だが違うんだ

其れは
助けてるんじゃ無い

187:アビス◆wc:2018/01/21(日) 21:16

「影陽」

目が覚めると
何時も誰かが
膝枕をしている様な

感触が有った

でも私以外
人なんて
居ないのに

判らない侭
私は又
眠りに尽く

夢の中で起きた
妙な言葉だが

黒い影が
膝枕を
していた

黒い影は
私の顔を
覗いていた

目は無く
鼻も無い
口は有ったが

影の手は
私の頭を

幼児みたく
慈しみて
撫でていた

目線を
上に遣る

顔面を
削がれた
二匹の金魚が

くるくる
くるくる

回り乍
泳いでる

其れを見て
私は又
眠くなる

夢の中で
妙な言葉だが

黒い影は
眠る私を見て

ニコリと笑って
子守歌を歌った

眠れ眠れ
可愛い児

今日の辛い事を
全て忘れて

此の安寧は
他でも無い

貴方だけの物だから

閉じて
開けよ

陽光が
御早うと
云っているから

188:アビス◆wc:2018/01/22(月) 00:34

「鬱屈と爪」

かじかじ
かじかじ

爪を噛む

父指
母指

順番に噛む

鬱屈が溜まると
かじりたくなる

口の中に貯まる
爪の破片

其れ等全て
鬱屈の破片

かじかじ
かじかじ

爪を噛む

兄指
姉指
赤子指

順番に噛む

ぽろぽろ
ぽろぽろ

口の中から
出て来る

爪の破片

床に落ちた
爪の破片は

抑え切れない
鬱屈の表れ

勿体無いから
何時もの
瓶の中へ

かじかじ
かじかじ

爪を噛む

けれども
噛む爪が
存在無い

だけど
噛ま無きゃ
落ち着か無い

じわじわ
じわじわ

血が滲む

爪と皮の
かじり過ぎ

ぽたぽた
ぽたぽた

血が落ちる

溜まった血は
落ち着きの表れ

勿体無いから

ぎゅうぎゅう詰めの
瓶の中へ

189:アビス◆wc:2018/01/22(月) 09:43

「愛目」

目隠しをされた
君が目の前にいた

カタカタと
震えている

寒いのかな

だから僕は
暖める為に
君を抱き締める

君は云った
何で私は
目隠しを

されているの

僕は云った
君の事が好きで

僕は
恥ずかしがり屋
だから

君に姿を
見られたく無くて

家に帰して
此処は何処なの

何を云ってるの
君の家だよ

違うよ
此処は私の
家じゃない

御免ね
間違えた

君と僕の
家だった

君は今は
視界が
判らない

だから僕が
手を引いて
あげよう

嫌がっている
様だけど
まぁ良いや

目隠しが
解けたら

本当に

無くして
仕舞えば

良いだけ

190:アビス◆wc:2018/01/22(月) 21:21

「崇」

貴女は今日も
素敵です

有り難うと
微笑む姿は

正に
僕にとっての
女神様だ

貴女の
云う事ならば

僕は
喜んで
聞きましょう

重い物とか
持ってあげる

持って苦しんでる
貴女を
見たく無いから

飲物とか
欲しいなら
直ぐに持って来よう

僕だけに
有り難うと
云って下さい

僕だけに
其の微笑みを
向けて下さい

若し貴女が
鬱屈の捌け口を
求めてるなら

僕を
捌け口に
して下さい

打って下さい
貴女の拳で

蹴って下さい
貴女の足で

貴女の手で
此の命が
果てようと

僕は何も
惜しく在りません

寧ろ
喜こばしい
事なのです

だって貴女は
僕の女神だ

其して僕は
貴女の

下僕
なのですから

191:アビス◆wc:2018/01/23(火) 18:05

「頭見」(ずみ)

ねぇ知ってる
人は歳をとったら

頭に雪が
積もるんだ

でも空から
降って
積もる訳じゃ無い

知ってる哉
人は歳をとったら

頭に蛍を
飼い出すんだよ

中には
富士山に
なるのも

有るのだけれど

若いみそらでも
頭に何かを
飼い出す人はいる

例えば
鶏とか

此の國の
四季みたく

人の頭も又
四季折々である

192:アビス◆wc:2018/01/23(火) 20:32

「七大罪の徒」

楽園より
云いつけを守らず
追放されし

アダムとイヴ

彼の者達が
侵した原初の罪

其れと共に
解き放たれた
七大罪の徒等

傲慢の徒たる
獅子と孔雀
地を切り刻み

嫉妬の徒たる
蛇と犬
水に毒を

憤怒の徒たる

燃える血を

怠惰の徒たる

育みを止め

強欲の徒たる
狐と針鼠
命を奪う

暴食の徒たる
豚と蝿
天を喰らい

色欲の徒たる
山羊と蠍
汚れを生む

七つの罪は
やがて

父と母たる
原初の罪へ
還る

後に生まれる
人間等の為に

193:アビス◆wc:2018/01/24(水) 17:16

「茶会の詩」

甘いケェキが
食べたいわ

ケェキは一体
誰が持ってるの

貴方が
ケェキかしら

いいえ いいえ
私はケェキじゃ無い

私は私は
苺よ

貴方が
ケェキかしら

いいえ いいえ
私はケェキじゃない

私は私は
スポンジよ

貴方が
ケェキかしら

いいえ いいえ
私はケェキじゃない

私は私は
クリィムよ

じゃあ一体
誰がケェキを
持ってるの

私よ私
苺が答え

私よ私
スポンジ答え

私よ私
クリィム答えた

私だけじゃ駄目
苺が云い

私だけじゃ駄目
スポンジが云い

私だけじゃ駄目と
クリィムが云った

貴方は誰なの
苺が問い

貴方は誰なの
スポンジが問い

貴方は誰なの
クリィムが問うた

私は私は
ケェキじゃないわ

其れでも私は
貴方達の仲間

私は私は
紅茶よ紅茶

194:アビス◆wc:2018/01/24(水) 21:39

「銃と鳥」

青い空に
鳥が飛ぶ

其処に
向けられた
鉄の銃口

ぱぁんと一つ
音鳴った

ばさばさ
翼のはためかせ

ぼとんと
墜ちた

血と息
途切れ途切れ

首を持って
途切れ途絶えた

195:アビス◆wc:2018/01/24(水) 21:42

「狩られ」

何時までも
狩りし者で
有れると思うな

最初に知り
最期となった

爪で皮と臓を
切り裂かれ

牙で骨を
ボリボリ砕かれた

地に伏し
眠る獅子の横で

血に伏したる私

196:アビス◆wc:2018/01/25(木) 21:22

「蛙の解剖」

蛙を捕まえた
昔から有る
あの実験を

私はずっと
やってみたかった

下呼鳴く蛙を
押さえつけ

臍に天を
仰がせた

手術用短刀を
蛙に中て

上から切って
縦一文字

赤くたらたら
流れる液は

鳴く蛙を
鳴か無い
蛙に変えた

開いた腹から

ヒクヒク動く
蛙の臓物

まじまじと
観察していた

触れてみた
生暖かい

其して
柔らかかった

トクントクンと
脈打つ心臓に

一突きしてみたら
たらたら流れる
赤い液は

だらだら
流れて

全部が全部
動か無くなった

其う云えば
此の蛙は
如何なるのだろう

埋めたらいい
棄てたらいい

197:アビス◆wc:2018/01/26(金) 20:42

「玩具遊べ」

ぱぁぷう
ぱぁぷう
玩具のラッパ音

箱から
出てきた
ガチャラガチャ

皆勇し
行進 行進
ザッザッザッ

お隣さん家へ
遊びに行こう
ニコニコ笑顔

今晩は
お隣さん家の
玩具達

寝惚け眼を
擦ってさ

でないと
貴方達のお八つを
食べちゃうよ

其れが
嫌なら
遊ぼうよ

皆で一杯
遊んだよ

ぽこぽこ
叩いたり

ひゅんひゅん
物を
投げたりさ

きゃはは きゃはは
楽しいね

ぱぁぷう ぱぁぷう
玩具のラッパ音

帰ろう 帰ろう
箱のお家に

一杯
眠って
また遊ぶんだ

198:アビス◆wc:2018/01/28(日) 00:02

「心の中歌」

一人で
何処か別の世界へ
行こうと思っていた

首に紐を
掛けてみた
けど行けない

炭を焚いてみた
けど行けない

眠る薬を
飲んでみた
けど行けない

水に
入ってみた
けど行けない

何故だろう
何故邪魔を
するのだろう

何処か
別の世界へ
行きたいと云うのに

此の世界から
疾く去りたいのに

理由を
聞かれれば
飽きたとしか

云い様が無い

一人で行くのが
虚しく
なってきた

此んな気持ちを
残した侭
行けたとしても

きっと心には
後悔しか
残ら無いだろう

其処の人よ
若し心の中の
気持ちが

同じならば

私と共に
来ては
くれないか

二人で行こう
誰にも
邪魔を

されない様に

199:アビス◆wc:2018/01/28(日) 21:29

「ケェキの歌」

苺が云った
紅茶は何処に

クリィムが云った
ケェキを探しているよ

スポンジが云った
紅茶は知らないの

私達が
ケェキだと
云う事に

紅茶は聞いた
ケェキは何処と
ラスクに聞いた

ラスクは云った
ケェキじゃないから
僕は知らない

クッキィに
聞いて御覧

紅茶は聞いた
ケェキは何処と
クッキィに聞いた

クッキィは云った
ケェキじゃないから
私は知らない

苺と
クリィムと
スポンジに

聞いて御覧

でも個別に
聞いちゃ駄目

三つ一辺に
聞くんだよ

紅茶は聞いた
ケェキは何処と

苺とクリィムと
スポンジに聞いた

私よ私よ私と
一辺に云った

気づいた
気づいた
漸く気づいたの

ケェキは私達

誰も欠けちゃ
ならないの

だから私達が
ケェキなの

200:アビス◆wc:2018/01/28(日) 21:39

「深淵因り出づる」
(200スレ突破記念詩)

私の詩を
善か悪かと
問うならば

人は悪だと
云うだろう

私も書いて
そう思う

私は日常が
得意では無い

非ィ日常が
好きなのだ

皆は
綺麗な詩を
書けている

其れが
多々暗くとも

だが私は
全く違う

兎に角
暗いのだよ

一時は
皆が書く
綺麗な詩に

憧れた

だが私は
光に手を伸ばし

此の身焦がされ
滅っされる事を

恐れる故の
臆病者

だから私は
不思議と
云われる

暗き
詩しか
ほぼ書けんのだよ

我 深き淵因り
出でし者なり

其処から連なりし
凡百闇よ

我が身を
包みて

光焦がれぬ
者へと…!

201:アビス◆wc:2018/01/29(月) 21:16

「玩具×戦=(イコォル)」

音楽鳴った
始まるんだよ
玩具の遊び

積み木のお城を
組み立てよう

相手より
立派に高く

積んで積んだら
整列だ

足並み揃えて
一二一二

構え用意は
元気良く!

旗を掲げよう
自分達の
志と誇りを乗せて

わぁわぁ騒げ
けちらし目指せ
相手のお城

今だ!くずせ!
やれそこだ!

がしゃあん崩れた
お城が崩れた

やぁやぁ勝利
我等の勝利!

ファンファアレを
吹き鳴らせ

相手の上で
吹き鳴らせ

響き渡れ
我等の
勝利の音!

202:アビス◆wc:2018/01/30(火) 21:22

「青い鯨の印」

鯨よ
青い鯨よ

貴方は
陸にあがって
ひとりぼっち

さみしいから
歌を大きな声で
歌っているのね

とても良く
響いているわ

私は印として
鯨を腕に
刻んだの

貴方の為に
青い鯨よ

貴方の歌を
聞いていると
何も怖くなくなるの

何回も傷を
作るのも

線路の
上に立つのも

きっと貴方の歌は
生きる価値と
気力を奪うのね…

鯨よ
青い鯨よ

私は今
橋の上の
貴方の下にいるの

貴方の歌が
間近に
聞こえるわ

此処から
飛べば

私は貴方と
共に歌える

203:アビス◆wc:2018/01/31(水) 18:03

「血鷲」

人間から鷲を
作れるだろうか

さらけた背を向ける
君に私は聞いてみた

作れる訳が
無いだろうと君は云った

其んな事
やってみなきゃ
判らないよ

君の背中を
深く切ってみる

其処から両手で
広げてみる

白い骨が
目に見えている

骨を折って
背中に逆刺し

ほら出来たじゃない

作れたじゃない
人間から鷲が

赤い体の
白い翼の鷲が

204:アビス◆wc:2018/01/31(水) 21:27

「Avatar 持たざる者」

自分の
Avatarと云う物を
作ってみる

パァツが
色々ある

パチリとした
大きい目や

化粧の紅い唇

スラリとした
細長い手足

何れも現実で
私が持たざる物

目頭が
熱くなるも
私はAvatarを作る

Avatarが出来た

サラリと長い髪に

パチリとした二重の目

スラリと細長い手足

私が現実で
持たざる物を
詰めてみた

Avatarは
画面にて
手を振っている

皆は可愛いと
褒めてくれる

だが其れは
Avatarであって
私では無い

其れでも
己の事の様に
錯覚する

現実で
涙を流す
私に対して

Avatarは
仮想世界で笑顔で

他のAvatarに
挨拶する

205:アビス◆wc:2018/02/02(金) 20:47

「暴客」

呆れた云い分と
云う物は
本当に存在する

嘘だと
思われるかも
しれないが

一人一個の
限定物を
二個寄越せと云う

理由は
腹の中にいる
赤子の分だとか

焼肉をしていた
女等は

肉が焦げたと云い
料金も払わないと云った

理由は
食べて無いからだと

靴のせいで
異性に
振られたと云う

理由は
店員のあどばいすの
せいだとか

他にもあるさ
祭りのお面に説明が

バスの番号が
縁起悪いと
変えさせられ

明らか
いちゃもん

客の方が
悪いと云うに

悪いのは
店の者だと云う

店員の
身と心は
如何に

206:アビス◆wc:2018/02/03(土) 17:02

「夢の悪」

寄らば招かれ
招かば魅いられ
魅いらば入れる

夢の中

甘く匂う
ムラサキの花
幻をみせよう

絡まる
棘のツタ
現の痛み

私は痛い
逃れたい

寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば入る

夢の中

天頂に刺さる
白骸に手を引かれ

血走る
眼が見てる
檻へとおいで

私は嫌だ
逃れたい

寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば入った

夢の中

貘は
助けに
来ちゃくれない

感覚なんて
わからない

私は何処に
私は誰

寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば逃れられず

悪夢の中

207:アビス◆wc:2018/02/04(日) 21:07

「蜚(ひれん)の観察」

蜚に
出会った

蜚は
彼方此方
動いている

噴射器が
手元に無い

しょうがないので
暫し観察する

相変わらず
蜚はカサコソ
動いてる

八つ時に食べた
カステイラの破片を
蜚の方へ投げる

蜚は長い触角で
カステイラをつつき乍
食べていた

其の隙に
蜚を
捕まえた

仰向けに
してみる

六本ある足を
一本千切ってみる

其れでも未だ
元気に動くので
全部千切った

見た目はもう
蜚では無く
達磨だ

馘を切り取った
其れでもまだ
生きている

段々動かなく
なったので

蜚を
ちり紙に丸めて
捨てた

208:アビス◆wc:2018/02/05(月) 21:15

「塵捨ての歌」

塵を捨てた
燃えない塵を

歯ブラシ コップ
プラスチック

塵を捨てた
燃える塵を

ちり紙 写真
指輪と箱

塵を捨てたら
気分が良くなった

二人の人間は
泣いているけど

未だ何処か
気分が晴れない

粗大塵を
捨てたら
気分は晴れるのか?

塵を捨てた
粗大塵を

箪笥 自転車
掃除機も

私は捨てたい
塵を捨てたい

生塵は
捨てただろうか

そういえば
生塵は明日だ

少し重たく
なるかも
知れないが

何回にか
分ければ
良いだろう

209:アビス◆wc:2018/02/06(火) 20:53

「水沈」

目を閉じている
冷たい感覚が
私を包んでいた

目を開いた
水に刺す日光が
私を照らしていた

沈む音と共に
吐き出される泡は

直ぐに消えては現れ
直ぐに現れては消えた

何処迄
沈んでいくのだろう

今 足掻いて泳げば
助かるかもしれない

だがそうはしない

私は見てみたい
沈める水に
此の身を委ねて

其の先に
辿り着く
底の国を

其して又
私は目を閉じる

次に私が
目を開ける時は
何時だろうか

210:アビス◆wc:2018/02/07(水) 22:25

「九相図」

美人様が
横たわて
おりました

草場の陰で
ひっそりと

息はしてないので
経過を見守る事に
致します…

先ずは脹相と
なりました
体が瓦斯で風船みたく

次に壊相と
なりました
皮膚が 破れ 壊れ出し

次に血塗相と
なりました
脂肪 血液 体液滲み

次に膿瀾相と
なりました
体が溶けてる

次に青?相と
なりました
体が青黒く

次に?相と
なりました
虫が湧きて鳥獣喰らう

次に散相と
なりました
部位が彼方此方に

次に骨相と
なりました
骨だけに

最後に焼相と
なりました
燃えて灰となったのです

どんな人様も
此の美人様の様に

辿る末路は
皆同じなので
御座います…

211:アビス◆wc:2018/02/09(金) 00:50

「刻と老」

刻は動きて
今の我在り!

この世に
生を授かりて
只の一度も

この世の刻は
止まった事無し!

刻は我を我等を
置いてゆく!

過ぎ去りし刻は
我を我等を
老い得させる!

ならば刻を
止めとするならば
老いをやめられるか?

否!其れは!
生くる事を
やめし者だ!

そうなるならば
我は老い得る方を選ぶ!

212:アビス◆wc:2018/02/09(金) 19:34

「時よ止まれ今こそは」

カッカコ カッカコ
私の中で動く時計は
世話しなく

私を意味無く
駆り立てる

動かねばならない
兎に角兎に角
周りの者は皆遅い

あぁもう早くしてくれ…!
あぁもう焦れったい!

周りは私の事を
せっかちだと云う

何をそんなに
急ぐ事あるかと

止められる物ならば
止めたいさ…

時よ止まれ今こそは!
私が身急かすなかれ!

カッカコ カッカコ
それでも時計は
容赦なく

私を意味無く
駆り立てる

もう止められはしない
私が身時計

だれか止めておくれよ
もう疲れたわ…

私の身抱きしめ云ってくれ…
もう止まってよいのだと…
急く必要は無いのだと…!

時よ止まれ今こそは!
私が身急かすなかれ!

213:アビス◆wc:2018/02/10(土) 21:42

「猫について」

可愛い可愛い
あぁ可愛ゆらしぃ…!

何かしらの反応示す度動く
其の三角耳

明るひ時と暗ひ時で
魅力が変わる二つの眼

四つ足全てにつく
桃色の肉球

ふりふりふるう
感情表現のしっぽ

全身覆う
もふもふやわ毛…!

小首かしげて
此方を見るな…!

にやうと鳴いて
此方に近づくな…!

あぁもう何処まで
私をまどわせる!

214:アビス◆wc:2018/02/11(日) 21:35

「汝ヲ 己ガ罪デ 償ワソウゾ」

汝 侵せし罪は
汝 侵せし罪で
償うが良かろう

己が児を
己が鬱憤のみで打つ親は
親より力強き者で打つが良ひ

己が児に毒言吐く親は
児に吐いた毒言を反芻させやう耳元で

己が情欲満たさんが為に
児を玩具にする親ならば
己が玩具になる事知らずに

児の行動一片一片に
点数付ける親よ
御前の行動一片一片に点数を

付けてやろうか?

目には歯を!
歯には牙を!
そして牙には金剛を!

215:アビス◆wc:2018/02/12(月) 21:15

「修道毒女」(ポイゾシスタァ)

教会の鐘が鳴る
幼児を抱く聖母描かれし
彩色玻瑠に光入る

十字架の前に跪つきて
黒の聖布纏う修道女は今日も祈る

或る日を境に修道女は
祈らなくなってしまった

修道女は知ってしまった
背徳の蛇と毒林檎を

蛇に惑わされ毒林檎を食べた
味を知った修道女は
祈らなくなってしまった

では代わりに修道女は何になる?

毒を伝える者となるかいや?

216:アビス◆wc:2018/02/14(水) 21:22

「猪口齢糖あげます」

鍋の中ぐつぐつ煮える猪口齢糖
渡したい貴方を想い乍作ってる

ドロドロに溶けた猪口齢糖に
私なりの呪いを掛けてあげる

私の片と私の糸とか
魔法じゃないわ 呪いよ

貴方は虫が直ぐたかるから
私が守ってあげなくちゃ

渡す日になったら
少し照れくさくなるわね

でも貴方の事が好きだから
勇気を出して渡すわね

見返りなんて
要らないわ

貴方が食べた時から
私が貴方の中にいるもの

217:アビス◆wc:2018/02/15(木) 14:06

「雪上の侵略者」

雪だ

積もった雪に
誰一人足跡は
ついていない

僕は一歩
踏みしめる

もう一歩
踏みしめた

ざくざくざくざく

あぁ楽しい!
楽しいなぁ!

僕はあれだ
そうあれだ

侵略者!
侵略者だよ!

雪の上を
我が物顔で
歩いて

僕だけの
足跡で満たした!

218:アビス◆wc:2018/02/15(木) 21:22

「三途」

小石等の上に立っていた
中通るさらさら流れる川の向こうは
彩色溢れる花達が埋めていた

彼方に行き 花を摘んで持ち帰りたい
渡ろうとした 出来なかった

向こうに在る者達が止めたから
皆同じ格好をしていた
三角巾の白装束

お前が此処へ来るのは 未だ早い
帰るが良い 帰るが良い

目覚めた時
私の手には花が一本握られていた
何処で取ったかは 覚えが無い

219:アビス◆wc:2018/02/16(金) 19:15

「狂い鬼女」

呪うてやる!呪うてやる!
我裏切りし者を呪うてやる!

おまへの毛髪は手に入れた
後はおまへを苦しめるだけだ!

おまへが長く苦しむやうに
心臓より遠き端から打ってやらう

おまへを模した人形の右足から打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の左足に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の右手に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の左手に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の脳天に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の首に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の胸に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを七日呪うた!
あぁおまへが我が呪いによりて

苦しみ悶え命果てる姿が
想像出来るわ!

苦しめ 苦しめ 苦しめよ!

220:アビス◆wc:2018/02/16(金) 22:26

「赫い牙の黒い鬼」

彼奴はもういない
遂に我は裏切り者に復讐終えたり

彼奴の最期は
それはそれはもう
陰惨たるものだったと云う

我 呪い 込めし 部位が
全て 有り得ぬ 方へ 捻曲がって
いたそうな

あ はは ははは
はは は はははは…!

此れで如何して笑いが
込み上げて来なかろうか!

我を苦しめる彼奴は
我が呪いにより命果てた!

…こいつは誰だ?
水面に映るこいつは誰だ?

乱らた髪に赫い牙
まるで鬼のやう…

…嗚呼 我か
これが今の我か…

221:アビス◆wc:2018/02/17(土) 21:31

「しゃあぼん玉」

しゃあぼん液に
ちゃぽんとストロォつけて
ぷぅと吹いたら

しゃあぼん玉が出来た
ふうわりふわり浮いていき

呑気にとびては
突然ぱちんと消えてった

しゃあぼん玉は何処へと
消えたろか

幼き私は考える

久しく吹いていたら
幼き頃を思い出した

222:アビス◆wc:2018/02/18(日) 22:20

「まほろしの骸」

私は誰だ?
私は骸か
ならば招かねば

がしゃがしゃ揺らして
甘幻にて誘い
何時までも飾りの骸ではいられない

おや 人が来たようだ
現世で受ける痛みをどうやら
忘れたいらしい

ならば好都合
ならば招かねば
ならば夢を見せねば

おいでよ おいで
痛みで流れる血を止めて

逝き先は彼方
此方の方へ

君は方向音痴か?
ならば手を引こう

怖いからと泣いても
引き摺って連れていく

望んだのは君だ
今更帰す訳が無い

甘い汁だけすすって帰る?
馬鹿云うな

あぁ 五月蝿いな
口を塞げば良かった

でも駄目だ
 君が云うから

さぁ着いた
此処なら思う存分泣いても良い

誰にも聞こえはしないから
勿論私にも

223:アビス◆wc:2018/02/19(月) 21:18

「私の友達」

遊びに行く
友達が待っているから
じめじめした所で

蜚と百足と蛾とかが
私の友達だ

何が可笑しい?
私に人間の友がいない事に
笑っているのか?

ならば聞こうか
何故お前は
私に人間の友がいない事で

笑っている?

ほら黙った
黙るくらいなら
私を笑うな

あぁ ごめんよ
蜚と百足と蛾よ
さ 遊ぼうか

皆が忌み そして嫌う者等が
私の友達だ

蜚は私の頭を這い回る
百足は私の腕に絡み伝う
蛾は私の体にしがみついた

こうやって なついてくれるから
愛着が湧いて
そして今や私の友達なのだ

224:アビス◆wc:2018/02/20(火) 21:17

「春をみせよう」

月に照らされた
地面を歩く
土の色は白かった

それでも俺は
白積もる土から
おまへを見つけて救ってやる

おまへに春を
見せたいから

土を掘る
手が冷たくそして痛い
それでも俺はやめない

おまへが此の下で
日光を浴びれずに
眠り続ける事に比べれば

俺は此んな手の痛み位
此の白土共にくれてやる

皮膚は裂け
白土は赤土に変わる

全て持っていくがいいさ…!
其れでおまへに会えるのなら
安い対価だ…!

…見つけた
やっとおまへを
見つけた…!

嗚呼 此れで
おまへは日光を
浴びれるな!

そして俺は満足だ
おまへに春を見せてやれたから…

俺は眠るさ
なに ほんの少しだけだ…

225:アビス◆wc:2018/02/21(水) 20:38

「多恨酩酊感」

やぁ 今日もおまへは
善の皮を被りやて
人に欺滿しやがるの

だが私は知っていなかった
だから近付いて仕舞ったのよ

私がおまへの機嫌損なうならば
おまへは激昂して私を打つ

其の癖おまへは鉄面皮で
私に摺り寄り他の女と酒へ
享楽に更ける

あぁ私は鳩でありたい
かの英国お伽噺踊靴の
姉二人の目をくり貫いたから

あぁ私はガロットでありたい
私におまへを座らせて
鉄の輪で馘を絞めるかへし折るか

ただ何方も叶わぬ事よ
せめておまへの私へした事の
非道の数々を

おまへの友人 家族 そして
おまへの愛人へ送ってやらう

其しておまへは
私以外の全てを
失った時

おまへは私に対して
泣いて請うのだろうな

そうしたら愛してやるさ
おまへが私の隷属になる迄

其してそうなったら
私は梟になっておまへの元を去る

其しておまへは
酔生夢死を送るがいいさ

其して私は
酩酊感に浸るのだ

226:アビス◆wc:2018/02/21(水) 20:43

(作者ヨリ)
>>225ニツイテ

以下ノ言葉ハ、コウ云ウ読ミ方デアル

・英国お伽噺踊靴(シンデレラ)
・酩酊感(エクスタシー)

227:アビス◆wc:2018/02/22(木) 18:13

「枯花」

私がお話しましょうか
私の膝の上に座りなさい
却説 どんな話が良いかしら?

こんな話が良いわね

昔々 大変美しい少女がいました
ですが少女は容姿を理由に
何時も村の人々を馬鹿にしてました

人々は願います
少女に何時か罰が下ればいいと

其の願いが通じたのでしょうか?

或る日少女は森で遊んでいると
体の一部に花が咲きました

幾ら抜いても幾ら抜いても
其処から新しく花が咲くばかり

少女はやがて花になりました

其れを見た村人は
花を持ち帰りました

綺麗な花は
村の人々に代わる替わる
愛でられました

ですが花は枯れる物です
其して花は枯れました
ボロボロのシワシワに

花は 枯れて 棄てられた
誰も 見向き なんてしない
踏みにじられて 其れで お終い

228:アビス◆wc:2018/02/23(金) 19:38

「銀短剣」(題材人魚姫)<全5章>
<1章>
海の岩の上にて
玲瓏の歌声で
単吟たる者あり

彼女は憧れた
何時か地上に行く事を

でも其れは叶わない事
判ってい乍も
憧れて仕舞う

或る荒波立つ夜
海の中で沈みつつの
眉目秀麗の男がいた

彼女は助けて
近くの浜辺へ男を置いた

男が目覚めぬ内に
彼女は海に戻る

自分の姿を
見られる訳にはいかないから

其の日を境に
単吟は聞こえない

229:アビス◆wc:2018/02/23(金) 19:47

<2章>

寝も覚めも
想ふのは
彼の人ばかり…

あぁ彼女は恋をした
愛しの… 愛しの…
会いたい… 会いたい…

彼女は魔女に云ふ
どんな対価も払って良いから
地上に行きたいと

魔女は等価に
彼女の声を欲した

彼女は魔女に
声を捧げた

魔女は彼女に
足を与えた

彼女は喜んだ
地上へ行ける
彼の人に会いに

魔女は笑った
想いを伝えられ無い時
お前は泡沫になるよ…

230:アビス◆wc:2018/02/23(金) 19:55

<3章>
彼女は地上にいた
己の足であって
足で無いので

歩く度に痛みが…
痛い… 灼ける様に…

砂浜にて倒れる
彼女を助けたのは
あの男である

気付いた彼女は城の中
礼を云おうと歩き回る

話し声聞こえて
知って仕舞った
彼の人の結婚話

彼女は悩む
彼の人の愛が欲しい…
彼の人を助けたのは…

目の前に彼の人が
礼を云いたいのに
声が出ない…!

彼の人が心配している
彼の人が私に優しくする…

231:アビス◆wc:2018/02/23(金) 20:00

<4章>
お願いよ…
これ以上私に
優しくしないで…!

こんな心になるのなら
彼の人に恋など
抱かねば良かった…!

砂浜にて
うつ向く彼女

魔女は其処に
銀の短剣を差し出す

其れで彼の人を
刺しなさい

そうすればお前は
泡沫にならないよ

彼女は決めねばならない

海の為の単吟か
彼の人の為の泡沫か

刻限は
教会が祝福の鐘を
鳴らす迄

232:アビス◆wc:2018/02/23(金) 20:07

<5章>

月昇の夜
彼女は眠る彼の人の横にいた
銀の短剣を握り閉めて

振り下ろせば終るかな…?
彼の人に対する私の苦しみが…

矢っ張り無理だ…
彼の人には
生きていて欲しいから

そもそもは
私が勝手に彼の人に
恋をして苦しんだ事なのよ…

祝福の鐘が鳴った
砂浜に一人の女がいた

彼女は海に向かい
歩き出した

漣が彼女に触れる
彼女は自分が泡沫になり乍も

彼の人への愛を忘れずに
最終単吟叫喚を
黙して何時までも…

233:アビス◆wc:2018/02/26(月) 14:58

「菓子幻譚」(全6章)(1)
(題材ヘンゼルとグレーテル)

仲良し兄妹
木こりの父と母の話をきいて
怖気が立った

明日子供達を
捨てちまおうよ
口減らしの為にさ

妹はわんわん
泣いていた

兄はコソリと森に行き
月の光で照らされた白石を集める

父と母
実の子捨てる為
手を引き森へと入る

兄は歩き乍
石を落とす

父は聞いた
何故歩く度家の方を振り向くか

兄は云った
屋根の上にいる 飼い猫シロが
バイバイしてるんだ

234:アビス◆wc:2018/02/26(月) 15:06

(2)

兄妹に麺麭を渡して
父と母は去ってった
木を切りに行く為だとさ

勿論其れは嘘であると
兄妹は判っている

でも只木を切る為に
去っただけなのだと

兄妹は信じたかった
無理も無い

宵闇の森の音は
不安がる兄妹を
嘲笑けて笑う

月の光と白の石が
兄妹を導く標となって
二人は家に帰る

父と母は
大層驚いた

兄と妹は
ベッドにて
すやすやぁ眠った

235:アビス◆wc:2018/02/26(月) 15:15

(3)

次の日も父と母
兄妹の手を引いて
森へと入る

今度は麺麭の欠片を
道標とす

父と母去る
兄妹は麺麭の標を
辿ろとす

標が無い
標が無いのは鳥のせい
鳥が麺麭を食べたから

兄妹は迷いて嘆いた
彷徨う 彷徨う 森の中

突如現れた謎の家
家と呼ぶには妙過ぎる

屋根や扉は猪口齢糖で
壁は曲奇餅で
柱は飴だ

普通なら怪しむが
今の兄妹にとっては
とても蟲惑的に見えたそうな

236:アビス◆wc:2018/02/26(月) 20:45

(4)

飢えし兄妹
貪り喰らう
屋根と柱と壁と扉

誰だい 誰だい?
ワシの家を食べるのは?

中から出てきた
しわくちゃの小さな婆は
二人を中へ招いたよ

さぁさぁお食べ
いっぱいお食べ
シチュウや 木の実 焼き立てのパイも

おやおやお腹いっぱいかい?
ならならふかふかベッドで
すやすやお眠りよ…

…久々のご馳走だよ
人間の子供 どちらも美味そうだ…
太らせて喰らおうかねぇ!

婆の正体 魔女だった
眠る兄妹の顔を見ては
にたりニヤニヤ笑う

237:アビス◆wc:2018/02/26(月) 20:52

(5)

起きろ!起きろ!
いつまで寝てるんだい?愚図女!
お前は私の召し使いだよ!

ほらほら働きな!
手ぇ休めるんじゃ無いよ!

因みにお前の兄は
太らせて私が喰うからねぇ
ご馳走用意してやろう

召し使いには
ザリガニの殻で充分さ

幾ら日が経とうとも
何故か兄は太らずの痩せたまま

おかしいねぇ…
もう待ちくたびれたよ!
痩せたままだが喰ってやる!

実云えば
兄は魔女を騙してたのです

動物の骨を
触らせて自分だと思わせて

238:アビス◆wc:2018/02/26(月) 20:58

(6)

召し使い竃の火を焚いとくれ
お前は丸焼きにしようかねぇ…
兄は鍋に入れてシチュウにしようか

魔女様よ 竃の調子が悪いのかしら
少し覗いて見てくれませんか?

しょうがないと魔女は確める
其して閉まる扉の音
出せ!出せ!出しとくれ!

燃える火の中 魔女一人
熱いと叫ぶの誰かしら?

悪い魔女は火でやっつけた
帰りましょう 帰りましょう
私達の家 父が待ってるわ

魔女の宝をお土産に
二人で仲良く帰ったよ

其して三人で幸せに
暮らしたよ

お母さん?いないわよ
そんな物

239:アビス◆wc:2018/02/27(火) 22:23

「朝餉と昼餉と夕餉と」

朝餉を食べていた
フォオクに刺した目玉焼きを見てみた
其して私は考える

此の目玉焼きの材料の
卵を産んだ親鶏は
今も卵を産み続けてるのだろうか?

昼餉を食べていた
箸でつまんだ魚を見てみた
其して私は考える

此の魚はどの海を泳いで
どんな餌を食べているのだろう?

夕餉を食べていた
鶏の唐揚げだった
其して私は考える

若しかしたら此の鶏は
朝餉の目玉焼きの
親なのかもしれない…

其んな事を考え乍
私はご馳走様と云う

240:アビス◆wc:2018/03/01(木) 20:44

「天使を埋めた」

天使を埋めた
目の前に
光を纏っていたから

本を読んでいるから
光を消してと頼んでも
天使が無理と云ったから

天使はしきりに訴えている
何でも鉄の塊が
直ぐ隣迄迫ってるんだって

あんまりにも五月蝿いので
天使を掴んで
穴を掘って埋めた

天使はもがいているね
飛んでみせてよ
白い翼で

埋めたら其の直後
鉄の塊が
ぶつかってきたから屍んだ

悪い事をした
天使は穴から出てきて
僕の体を掴んで

馘から下を埋めて
其れで飛んでった

せめて手は出してよ
本の続きが
読めないよ

241:アビス◆wc:2018/03/02(金) 20:39

「トランプの決め方」

赤く染めようか?
黒く染めようか?
お前達よ何方が良い?

ハアト ダイヤ
スペエド クロオバア

赤か黒か決めたなら
次は役割を決めようか?
お前達は何が良い?

王子?女王?
王様?其れともエース?

悉皆うっかり忘れてた
切り札のJOKERを決めてない

残りの役割ね
数字の兵士2〜10で

列をなしなさいな
なさないなら捨てるから

約立たずなら
馘をはねるわよ

242:アビス◆wc:2018/03/03(土) 22:01

「鉄処女」

さぁ 始めようか
鉄処女よ裁いておくれ
汚れた魔女等を

私は地に住む天の裁判官だ
お前達魔女を裁きに来た

主である泥烏須に背き
じゃぼと契りを交わして
自ら堕落歩む者等よ

お前等はこの私と
鉄処女が痛みを与え
其の後の浄化の炎にて

お前等魔女を
因辺留濃に堕とすのだ

其の前にお前等が魔女か
本当に確めねば

自ら吐けよさぁ吐けよ
己が魔女だと云え!

吐かぬのならば
おまへの体に
鞭の赤蚯蚓を這わそうか?

吐かぬと云うならば
梨をおまへの体に喰わせよう

吐いたか?吐いたならば
鉄処女の中へと入れ

開いたお前の血は
鉄処女の涙となった

あぁ主よ!我等が泥烏須よ!
今日も悪しき魔女等を

我等が住まう
波羅葦僧弖利阿利より
追い出しました

243:アビス◆wc:2018/03/05(月) 16:04

「朝と麺麸」

朝が私を起こす
気怠く私は体を動かし
麺麸を焼く為に下の台所へ

麺麸を一枚オォブントスタアに入れる
目盛りを捻り麺麸を焼く
ヂイヂイと云っていますよ

焼いてますよ 焼いてますよと
オォブントスタアは云っている

零に近付く目盛りを見てたら
又うとうとと眠くなる…

そしたら急にチインと鳴った
焼けましたよと云っていた

私は麺麸を手で踊らせ乍
皿の上に乗せる

もそもそ さくさく
私は麺麸を食べる
寝乍食べる

244:アビス◆wc:2018/03/06(火) 22:47

「奈落の掌」

巨大な掌だった
奈落に落ちていく私を
受け止めたのは

如何してこうなったのだろう
誰かに突き落とされたのか?

違うな と 答えたのは掌だった
お前が自ら落ちたのだ

成程納得した
だったら何故私を
受け止めた?

お前が勝手に落ちたのだ
今直ぐにでも落とそうか

落とす前に聞いてくれ
何故掌しか無い?

お前には俺が掌に見えるのか
とんだ阿呆が居たものだ

阿呆で結構
自ら奈落に来たのだから

違ぇ無ぇわ 違ぇ無ぇわ
其処の阿呆
奈落に行くのも悪くは無ぇが

掌の俺に喰われてみるか?

其れは其れは面白い

喰ってみせてみ此の私を

245:アビス◆wc:2018/03/07(水) 21:14

「悪夢食獏」

何処かに味の良い
夢はあるかなぁ

やぁ 其処のお嬢さん
今 お眠りかい?
悪夢を見たんなら教えておくれよ

この獏がバクバク
食べてあげよう

下らない冗談はいらない?
それもそうだ では お休み

やぁ 其処のお坊っちゃん
何で泣いているのだい?
怖い夢を見たんだね

それはそれは悪夢だったと?
ほうほうほう!?

だったら食べてあげよう
その悪夢を
目を閉じておくれよ

はい!ご馳走さまです
怖い夢は今夜もう見ないよ
それじゃあバイバイね

悪夢と云うのは
外れ無しに美味いんだ

見た子の恐怖が
程好い塩加減だからさ

だから僕は
悪夢を見る子が
大好きさ

先程のお嬢さんは
何の夢を見てるかな?

おやおや楽しそうだ
悪夢じゃ無いのか
残念な事だなぁ

別に良いのさ
悪夢を見る子は
他にいる

246:アビス◆wc:2018/03/09(金) 23:10

「衆合」

今日も男が群がるわ
蓮の花上に座る美女目指して

無駄なのにのぉ 無駄なのにのぉ
あの男等にゃ一生届きゃあせんよ

ほれ見てみい 蓮の花上に
既に美女はおらん

下におるじゃろうて
其の美女は

男等は下の美女目指して
降りてくよぉ

無理じゃねぇ 無理じゃねぇ
今度は蓮の花上におりよるよ

そなにも手ぇ伸ばしたいかえ
登る降りる間に傷付いた体で

剣林が男等を傷付けよるのよ
男等が流す紅の血はぁ

剣林と蓮と其して美女の
栄養となるのじゃよ

ほれ見てみさ
また登りよるよ男等が

あれが此処に来た
助平共の末路じゃて

色欲に眈溺した
者共の末路じゃて

247:アビス◆wc:2018/03/12(月) 20:54

「夢先案内人」(全3章)

夢を見せて何が悪い?
あれはあの子等が望んだ事だ
私は只 夢を見せただけ

あの子等は現で場所を
失くしつつあるんだ

其処に安寧を与えるのが
夢先案内人の私なのさ

お腹が空いてる子には
食べ物の夢を

遊びを望む子には
遊ぶ夢を

ほら見てよ
あの子等の笑顔
現じゃ絶対見られない

私は好きなんだ
そんな子等の笑顔がね

現を忘れて
夢へと来てよ 楽しいよ

248:アビス◆wc:2018/03/12(月) 20:59

(2)

誰かが云ったっけ
私の事を残酷な奴だと

夢を見せるだけ見せて
後に起こる更なる現の痛みを
知らない奴だと

勿論 知っているさ
そんな事は

だが私にとっては
如何でもいい事だ

私はあの子等が
望むから 夢を見せたに

過ぎないよ

何故其の事迄
私が責任持たなきゃいけない?

私は只の夢先案内人よ

夢を見る時は御自由に
但し責任は取らないよ

杖をつついて
次の子へ

249:アビス◆wc:2018/03/12(月) 21:05

(3)

私の見せる夢で
悪夢を見る子がいると?
たまにあるよ そんな事も

きっと夢を見る過程(プロセス)で
現を見たんだね 可哀想に…

なんで現を見ちゃう哉
夢に其の侭溺れて欲しいのに

現の事を夢として
夢の事を現と認識して
現に戻らなければいいのに

私が悪い奴だって?
私は自分の事は

悪い奴だとも
良い奴だとも

一度も云った事は無いよ

悪夢は貘に喰わせて
次の子の所へ行こうか
飾りの小さい礼帽翻して

250:アビス◆wc:2018/03/14(水) 21:21

「涙の血」

白い景に
椅子が一つあった
私は其れに座る

ギィと少し軋む音がした
見上げれば空の色は血だった

不思議な事に
大地には少し水が
張っていたのだけれど

空の色なぞ全く
映っていなかった

目を閉じていたら
声が聞こえてきた

目を開いたら
声は聞こえなくなった

聞きたいので
もう一度目を閉じた

痛い…苦しい…
何故…私が…!

其れは自分の声だった
はと目を開いたら

私は目から
血を流していた

痛み等は無く
服も汚れていない

血は全て
珠になって
空へと還って

目を開いていた私は
何の感情なぞ湧かなく
其れを見送った

251:アビス◆wc:2018/03/15(木) 21:34

「八寒」

猛る吹雪の中を
歩いていましたら
或る物を見つけました

紅蓮の花を咲かせた
人間がいたのです

綺麗だと
思いました
でも無理なんです

其の紅蓮の花は
正物では無いので

皮膚が裂けて
ようやっと咲いた花なので

見つめるしか
愛でる術は無いのです

良く見ると
彼方此方に咲いてますよ
見てみれば

如何ですかね?

252:アビス◆wc:2018/03/16(金) 20:05

「舞赤靴」(『童話』赤い靴)

赤いクツ 赤いくつ
ちいたか ちいたか
踊ってる

厳かな教会の下
皆は同じ格好
黒い服に黒い靴で

天へ逝く者へ
祈りを捧げる

其処にたった一つある赤い靴
目立たない筈が無い

赤いくつ 赤いクツ
ぐうるりぃ 狂うりぃ
回あって踊ってる

ぬげない ぬげない
つかれた つかれたよ

足を切って ぶつりと切って
赤い靴は更に赤いクツ

赤いくつは森の奥へ
てぇらら てぇらら
歩いて消えた

森の奥の廃れた教会
欠けた十字架と聖母の前で

赤い靴をはいた
足だけが
ちいたか たった

踊ってた

253:アビス◆wc:2018/03/17(土) 02:13

「猫とまんま」

まんままんまと
合唱的叫喚を
繰り返して私を起こす猫

少し前迄は
其の行為に対して
可怖可驚していた自分がいた

今はもう慣れた
そんな自分がいた

餌の猫缶をかぱんと開けて
中身をぷるんと出せば
猫は食ぐ食ぐ其れを食べる

水も時々てちてち飲む
私は見ているだけ

食べ終わった猫は
私を見てにやうと鳴き
むっくりの腹を見せてまた眠る

猫はどの様な夢をみるのだろう?
私はそう思い乍
猫の寝顔を見て微笑む

254:アビス◆wc:2018/03/17(土) 21:40

「黙れ 蝿」

卓子の煎餅を
食べてました 八つ時に

そんな時 目の前を
蝿が飛んで いたのです

目の前で 目の前で
ぶんぶんぶんぶん

五月蝿いので
黙れ 蝿

煎餅の食べる続きを
してました

卓子に頬杖を
つき乍

先刻の蝿が
飛んでました
ぶんぶんぶんぶん

手元に噴射器が
ありましたが

煎餅に掛かったら
不味くなる

なので退治するのに
蝿叩きを使ったのです

ぶんぶんぶんぶん
五月蝿いので
黙れ 蝿

卓子の蝿を
ぶえっちんと
蝿叩きで叩いた

255:アビス◆wc:2018/03/18(日) 22:10

「照坊主」

雨の降り止まぬ村
人が幾ら願っても
止む事は無い

坊主を雨晒しにしても
雨は止まない

照る坊主よい 照る坊主よい
晴れぬのはお前のせい
お前の馘をはねようか

はねた馘を天に晒そうか
そうすれば晴れるのか

晴れはした
坊主は泣いている
離れた馘を思って泣いている

村人は涙すら出ない
乾いた体からは何も

照る坊主は笑っていた
馘も体も

256:アビス◆wc:2018/03/19(月) 19:42

「海(うな)の旅人」

私は海を旅したいのです
でも生きている間じゃ無い
厶(し)んだら海旅をしたいのです

火葬場で私を焼いて下さい
もくもく上がる煙を見上げても
私はいません…

骨は粉になる迄砕いて下さい
骨壺には入れないで

お墓は嫌です作らないで下さい
私が海を旅立て無くなるから

私が粉になったら
海へと撒いて下さい…

海波が 何千となった
私を 連れて行ってくれる

ざざぁざざぁと音立て乍

私は旅立ちます
左様なら皆さん…

私は海の旅人
私は海の旅人…

257:アビス◆wc:2018/03/20(火) 18:03

「或る掃除婦の愚痴」

或る掃除婦が
掃除をしていました
厠の掃除を

道行く人々の中には
厠を使う人もいるのですが
掃除婦は笑顔で譲るんです

でも私には
笑顔で愚痴を云ってる様に
見えますが?

清掃中の看板が見えない?
怪訝な顔をして此方を睨むな
扉を急に閉めるな

はぁ…思っている事を上げれば
キリが無いのです

掃除婦が何時でも
ニコニコしている訳では無いです
心の中は規則無い客達に対しての

愚痴で一杯です
でも判りますよ掃除婦の気持ちは

私も同業なので

258:アビス◆wc:2018/03/21(水) 12:59

「夕焼ノスタルヂア」(全2章)
(題材:赤とんぼ)

夕焼の空の下
姉様におぶられて
僕はいました

赤とんぼが飛んでいます
捕まえたかったのですが

姉様に背中で暴れないでと
怒られて仕舞いました

そんな懐かしい記憶が
僕の中にあるのです

夕焼空の赤とんぼに
僕はノスタルヂイとなった

あの日もそんな感じだ
姉様がいなくなったのは

十五でお嫁に行ったと聞きました
何処の誰のお嫁になったかは
僕にはちっとも判りません

僕は大人になりました
町で購い物をしてました
すると姉様がいたのです

259:アビス◆wc:2018/03/21(水) 13:04

(2)

僕は姉様に声を掛けました
でも姉様は僕の事を
他人のやうな目で見てました

姉様は僕の事を
ちっとも覚えて無いのです

姉様は虚いた目で
又歩き始めました

僕が見送った其の背中に
あの頃の姉様は
もういないんです…

僕は川原で
わんわん泣く

其の時の空は
夕焼でした

赤とんぼが
数匹飛んでました

夕焼空の
赤とんぼ

僕は其の度に
ノスタルヂアになる…

260:アビス◆wc:2018/03/22(木) 11:01

「羊を抱いたメリー」(全4章)
(1)

メリーメリーメリー
鳴る電話からは
知らない番号

私はメリー
今 駅に着いたの

羊と共に
貴方の所へ行くわ

メリーメリーメリー
また鳴った

私はメリー
今 商業場の前にいるの

貴方は今
家にいるかしら?

メリーメリーメリー
また鳴る

私はメリー
今 レストランの前にいるの

貴方に云うわ
この電話を切っちゃ駄目

261:アビス◆wc:2018/03/22(木) 11:07

(2)

僕は恐ろしくなり
電話を切った

メリーメリーメリー
電話が鳴った
切った筈なのに

私はメリー
今 煙草屋の前にいるの

貴方 電話を切ったわね
…許さないわよ

どんどん近付いてくる
僕は家を出ようとした

メリーメリーメリー
鳴っている

私はメリー
今 電柱から貴方を
見ているわ羊と共に

家から出ないで
ちょうだい

262:アビス◆wc:2018/03/22(木) 11:12

(3)

メリーメリーメリー
ずっと鳴っている
僕は取るのが怖い

私はメリー
今 貴方の家の前にいるの

会いに行くわ
羊も貴方に会いたいって…ウフフ

僕は部屋に
鍵を掛けて
震えて閉じ籠る

メリーメリーメリー
鳴りっぱなし
メリーメリーメリー

私はメリー
今 部屋の前にいるの
開けてちょうだい…

扉の叩く音が止んだ
電話の音も止まった

メリーメリーメリー
メリーメリーメリー
メリーメリーメリー

263:アビス◆wc:2018/03/22(木) 11:16

(4)

激しく鳴る音
線を千切っても
メリー叫喚は

止みはしない

止めてくれ!
僕はあんたの事なんか
知らない…

メリーメリーメリー…
私はメリー
今 貴方の後ろに羊と共に

…いるの

264:アビス◆wc:2018/03/23(金) 08:17

「縁切屋」(全3章)

でっかい鋏を持った
縁切屋
他人の糸が見えると云う

切りたい縁はお有りかい?
ならこの縁切屋にお任せを

おや 早速お客さんの様だ
ちょいと其処を退いとくれ

これは御嬢さん
一体誰との縁を切りたいと?

成程 成程
元彼との縁を切りたいか

普通の太さの赤い糸
ちょんちょん切れ掛かってる

ちょきんと切ったさ
其の糸は
今日か明日から効果が出るよ

次のお客さんは誰だろね?

265:アビス◆wc:2018/03/23(金) 08:25

(2)

これは珍しい
子供のお客さんだ
坊よ一体如何したんだい?

親との縁を切りたいと?
自分を打つから切りたいか

わかった わかった
叶えよう
其の薄汚い糸はばっさりだ

次のお客さんは誰だろね?

これはこれは男のお客さん
一体誰との縁切りをお望みで?

数多の女との縁を切りたいと?
この男は一体如れだけの身勝手で
女を捨てたのだろうな

黒重油みたく
女の怨嗟がねっとりと
糸に絡みつきよるわ

正直云って
切りたくない
切りたくはないが

切るしかない

266:アビス◆wc:2018/03/23(金) 08:34

(3)

この縁切屋に
御代はいらんさ
無一文でも構わんよ

御代代わりと云っちゃ
何だがだ

御前さん等の
生き様ならぬ
別れ様を

見せて貰おうかい!

縁を切ったからと
良い結末が訪れる
わきゃあせん

女は誰ぞに刺された
坊の親は目の前で窓から落ちよった
男は女の怨嗟で病んだとさ

今日も私は満足だ
御前さん等の大団円が見れたから
嗚呼 愉快だ 愉快だ面白い!

其れでも客は絶えんのよ
この縁切屋には
これは次のお客さん

一体誰との縁切りをお望みで?

267:アビス◆wc:2018/03/23(金) 22:58

「強請(ねだ)る女」

頂戴よ と
私は貴方に強請る

貴方は桃の液を
口に含んで
私に親嘴をする

流れてくる液体を
残さずに受け飲むの

すると躰が熱を帯びるわ
段々火照って来て
目もトロンと蕩ける

躰は既に貴方を縋る
心は更に貴方を求める

貴方は笑んで
私を受け止める

私の意に反して乱る躰と
求めて止まない心を

全て全て
貴方にあげる

其の代わり
淫靡な夢を
貴方に強請るわ…

268:アビス◆wc:2018/03/23(金) 23:07

「蝶の千切絵」

春になったら
庭先の菜の花に
蝶が止まった

私は蝶を捕まえてみました
羽を広げたら綺麗な色なので
千切って紙に散りばめました

もっと色が欲しいので
庭に来た蝶達を皆捕まえて
羽を千切って千切絵に

体は如何して仕舞おうか
潰して絵具と混ぜよう

調色板にぶちゅると
潰された蝶の体

絵具と
ぐるぐる混ぜる

蝶の体と触角と
口と復眼は

絵具の中に
寸断寸断である

千切絵に
蝶の体を溶かした
絵具を塗る

そうして出来たのは
蝶で表す銀河の千切絵

269:アビス◆wc:2018/03/23(金) 23:13

(作者ヨリ)
>>267は、
自分にとってだが
やや官能的な詩なので、
やらかしたのかもしれない…御免ね
(引き続き詩の感想御待ちシテマス)

270:ゆ◆z6:2018/03/24(土) 11:31

全部の感想は言えないけど、
ストーリー系の縁切屋がめっちゃ好きだなぁ
一人でここまで伸ばすの凄いね!( ˶ˆ꒳ˆ˵ )
感想はたまにしか書き込めないけどまた見にくるね〜!

271:アビス◆wc:2018/03/24(土) 22:43

>>270
!?
見に来てくれるだけでも、
有難いっス!ヒャッホウ!
(夜間でテンションが可笑しな事になっている)(笑)

272:ミカ:2018/03/24(土) 23:02

所々、わからない言葉があるけど、なんかグッと来ました。
また書いてほしいです‼才能あると思いますよ‼

273:アビス◆wc:2018/03/24(土) 23:05

「桃花心木(マホガニー)の乙女」

崖の上に
小さな家が建っている
其処からは紺碧の海が広がっていた

夏の日が照ってる
蒼穹の下で
天鵞毛のアッパッパを纏った乙女が

日傘を差して
三明治と珍陀の酒を共にして
海を眺めている

乙女はつまらなそうだった
私は声を掛けてみる

乙女は私の方を振り返って
にこりと微笑み頭を下げる

潮風になびく
乙女の髪は浪漫的だ

乙女は身体が弱く
三千世界を自由に旅する私が
羨ましいと云った

私は乙女の為に話をした
あんな事や こんな事
乙女はコロコロと笑ふ

紺碧の海は
黄昏により 橙に染まる

乙女は私を
家に招ひた

家の中はひんやりとしてたが
静謐であった

家具は全て桃花心木だ
裕福なのだろう

鹿嶺を用意してくれた
私は其れをかっか食べる

急いで食べてむせる私を見て
乙女はコロコロ笑い乍
水を差し出した

乙女は寝る前に
他に何処を旅したか
聞かせて欲しいのだと

私は一杯話したさ
乙女が退屈しない様に

乙女はわくわくしながら聞いてる
まるで子供の様だ

空は暁闇となる
乙女は海からの
日の出を待っていた

私は次の旅へと行き
乙女はひらひら手を振った

274:アビス◆wc:2018/03/24(土) 23:07

>>272
有り難う!
書ける限りはとりあえず書いてくが
私のスタンスだからねぇ。

275:ミカ:2018/03/25(日) 10:20

乙女に当てはまる人っているんですか?
あと、表現の仕方がうまくてこの男の人の気持ちがぐんぐん伝わってきて、読みやすいです‼

276:アビス◆wc:2018/03/27(火) 21:45

>>275
有り難うね
乙女に当てはまる人…?
んー…?…?如何だろうねぇ…

私は詩を書く場合、
頭に言葉が朧気に来るから、
其れをノートに書いてから載せてる。

詩に対する情景を問われたら
申し訳無いけど少しきついなぁ。
私は感想述べるのは下手だからねぇ…


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