“深淵唱詩”

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1:アビス◆wc:2017/10/12(木) 06:11

思いついたら取りあえず書く事に決めた(センスは皆無)。

電柱から覗く君は誰だろか?
私はコソリと確かめゆく
けれども何時もシュッパイする

今日も君はシャッテン延びる電柱から私を見ている
そんな所で見てないで早くお入りよ
けれども君は首を横に振る

レーゲン降る日も
シュタルカー・ヴィント吹く日も
君は只私を柱から覗くだけ

何故かと私は君に聞いた
君は口を開いた
“だって僕はゲシュペンストだから”

269:アビス◆wc:2018/03/23(金) 23:13

(作者ヨリ)
>>267は、
自分にとってだが
やや官能的な詩なので、
やらかしたのかもしれない…御免ね
(引き続き詩の感想御待ちシテマス)

270:ゆ◆z6:2018/03/24(土) 11:31

全部の感想は言えないけど、
ストーリー系の縁切屋がめっちゃ好きだなぁ
一人でここまで伸ばすの凄いね!( ˶ˆ꒳ˆ˵ )
感想はたまにしか書き込めないけどまた見にくるね〜!

271:アビス◆wc:2018/03/24(土) 22:43

>>270
!?
見に来てくれるだけでも、
有難いっス!ヒャッホウ!
(夜間でテンションが可笑しな事になっている)(笑)

272:ミカ:2018/03/24(土) 23:02

所々、わからない言葉があるけど、なんかグッと来ました。
また書いてほしいです‼才能あると思いますよ‼

273:アビス◆wc:2018/03/24(土) 23:05

「桃花心木(マホガニー)の乙女」

崖の上に
小さな家が建っている
其処からは紺碧の海が広がっていた

夏の日が照ってる
蒼穹の下で
天鵞毛のアッパッパを纏った乙女が

日傘を差して
三明治と珍陀の酒を共にして
海を眺めている

乙女はつまらなそうだった
私は声を掛けてみる

乙女は私の方を振り返って
にこりと微笑み頭を下げる

潮風になびく
乙女の髪は浪漫的だ

乙女は身体が弱く
三千世界を自由に旅する私が
羨ましいと云った

私は乙女の為に話をした
あんな事や こんな事
乙女はコロコロと笑ふ

紺碧の海は
黄昏により 橙に染まる

乙女は私を
家に招ひた

家の中はひんやりとしてたが
静謐であった

家具は全て桃花心木だ
裕福なのだろう

鹿嶺を用意してくれた
私は其れをかっか食べる

急いで食べてむせる私を見て
乙女はコロコロ笑い乍
水を差し出した

乙女は寝る前に
他に何処を旅したか
聞かせて欲しいのだと

私は一杯話したさ
乙女が退屈しない様に

乙女はわくわくしながら聞いてる
まるで子供の様だ

空は暁闇となる
乙女は海からの
日の出を待っていた

私は次の旅へと行き
乙女はひらひら手を振った

274:アビス◆wc:2018/03/24(土) 23:07

>>272
有り難う!
書ける限りはとりあえず書いてくが
私のスタンスだからねぇ。

275:ミカ:2018/03/25(日) 10:20

乙女に当てはまる人っているんですか?
あと、表現の仕方がうまくてこの男の人の気持ちがぐんぐん伝わってきて、読みやすいです‼

276:アビス◆wc:2018/03/27(火) 21:45

>>275
有り難うね
乙女に当てはまる人…?
んー…?…?如何だろうねぇ…

私は詩を書く場合、
頭に言葉が朧気に来るから、
其れをノートに書いてから載せてる。

詩に対する情景を問われたら
申し訳無いけど少しきついなぁ。
私は感想述べるのは下手だからねぇ…

277:アビス◆wc:2018/03/27(火) 21:51

「掴肉」

クレーンがあった
何かを掴んでいる

掴んでいるのは犬
動かない犬
クレーンから落ちて

ぐちゃっと音がした

ウィーン ウィーンと機械音
次に掴んだのは猫

猫は暴れている
瓦斯が出たら
猫は大人しい

クレーンは猫を落とす
猫はぼとっと落ちて
ぐるぐる回りべしゃっとなる

クレーンによって
積んで積まれて
動物の山が出来る

上の動物は何か判るが
下の動物は何だったけ

動物の重みで
ぐずぐずになる動物
引っ張ったら肉がずるりと抜けた

278:ミカ:2018/03/28(水) 09:59

ちょ、ちょっとホラーですね…。
想像すると、寒気が……。
でも、想像しやすい表現で、まるで自分がその場にいるかのように感じられます‼
表現力、神に近いですね……‼

279:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:16

>>278
か、神に近きとな!?
うおおぉ…嬉涙が出るよ…

次に書くのは全5章から為る詩だよ

280:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:20

「砂漠の球」(全5章)
(1)
宵闇の空に浮かぶ月が見下す
砂漠を私は歩いていました

御供のラクダに乗って
ゆらりゆらぁりゆっくりと…

私は目指しているのです
この砂漠の何処かにある
瑰麗なる塔を

281:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:23

(2)

…えんえんと えんえんと
私は砂漠を歩いています
ラクダを引く綱は切れました

喉が渇きました
もう何日も水は飲んでいません

続く 続く 砂漠の風景
僅かに在るのは仙人掌の緑…

282:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:27

(3)

ゆらぁ ゆらゆら
陽炎の中に見えるのは
生い茂る緑とオアシスの泉だ

満たされる…!喉の渇き…!?
…遠くて 遠くて…遂に届かず
消えたオアシス…

砂漠と云う物は残酷です
決して手に入らぬ物を
いとも簡単に作り出す…

283:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:32

(4)

只 孤独(ひとり) 絹のローブを纏い
塔を目指して砂漠を彷徨います

砂塵が私を阻むのです
ごうごうごうごう
私は其の場から動けません

激しき砂塵の中で目を開いた
其の中で見えた謎の影

284:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:39

(5)

あれだ!あれだ!
私が目指した塔!
蜃気楼ならば疾く消えよ!

砂塵は止みて塔は姿現す
月が塔に光与るので
私の目に眩しく見える瑰麗の塔よ

塔よ!私は貴方を探し続けた
そして今!私は貴方の前にいる!
願いを叶える塔よ!

私は願ふ!私は云う!
この砂漠の球に

私以外の人間がいる事を!
叶わぬならば私は久遠に孤独!

285:アビス◆wc:2018/03/28(水) 21:32

「悪戯子」(全2章)
(1)
にしし にししと真ッ闇で笑う声
小妖達の悪戯会合

今日は如何 悪戯しよか?

時計をいじって遅刻させよか
犬の毛毟ってきゃいんと云わせよか
八つ時の砂糖天麩羅をかじろか?

やってみよう やってみよう
ははは ははは
面白う 面白う

見たか?見たか?
困て周章てふためく
人間と畜生の顔

これだから止められんのよ 悪戯は

口の端を引っ張って
イーッと白牙見せて
笑ってやらう

次はどんな悪戯を
仕掛けてやらか?

286:アビス◆wc:2018/03/28(水) 21:38

(2)

もっと過激たる物を望むぞ
泡吹く様な悪戯が良い
其れならこれは如何だらか?

山葡萄のじうすを
洋種山牛蒡にすり替えよか

馬鈴薯の芽を
どんどこ生やそか

河豚の肝を
コソリ鍋に入れよか?

見てみさらせよ
人間が蟹みたく泡吹く様を
白目剥いて倒れる姿を

人間等にとっては惨事だらうが
我等小妖には
只の悪戯にしかならんのよ

笑うた 笑うた
腹を抱えて転げ回って
げらげらげらげら

287:アビス◆wc:2018/03/29(木) 22:41

「塵の翼」

塵が街にやって来た
塵は街を覆った
一体何が起こるのか

街の人々はゴホゴホ咳した
僕は平気

次に人々はゼェゼェ云ってる
僕は平気

最後に人々バタバタいった
僕は平気

僕のいる街は皆何故か
こうなるんだ
だから僕には人がいない

だから僕は次の街に行く
人が欲しいから

塵も又
僕の背中にくっついてる
まるで翼

288:アビス◆wc:2018/03/30(金) 17:20

「糸を切る人」

ぼちゃん ぼちゃん
ぼちゃん ぼちゃん

落ちているんです
落ちているんですよ
池に人がね

うわあああと云い乍
落ちってってるんですよ

脱出しようとしても
周りが出ない様
押さえてるんですよね

其処に蜘蛛の糸が
一本だけ垂れてくる

救いの糸だと
皆縋ってわらわらわら

其の糸を
ちょん切ってみたら

糸に捕まってた皆は
うわあああと云い乍
落ちたんですよ

無慈悲だと
云われましても
別に良いんですよ

気にしません
其れが私の仕事なので

天界の御釈迦様が
垂らした糸を
亡者が縋る糸を

ちょきんと切るのが私なのです

289:アビス◆wc:2018/03/30(金) 22:46

「命怪盗」

夜空に
猫がニャオンと鳴いたのよ
そんな時に何時も現れるのは…?

怪盗です 怪盗です
黒い服に黒マント
頭にゃ高帽子 杖だって持ってる

やぁ今晩は 街の皆様方
今夜は悪徳街主の
宝石盗みに来ました

捕まえてみて御覧よ
悪徳街主の犬ころ共
まぁ私は捕まらないけど

今晩は悪徳街主さん
市民から巻き上げた血税で得た
宝石の輝きは如何かしら

助けなんて呼んだって無駄なんだ
犬ころ共の命は既に盗んだよ

宝石を盗むのは只の建前さ
本当はお前の命が欲しいのさ

杖で叩きゃあね
命は私の手の中さ

金はいらんよ
宝石さえあれば事足りる

さぁ お喋りはこれ位に
お前の命を盗もうか?

盗った命は杖の中
欲にまみれた其の魂
中でゆっくりと消えてゆく

怪盗は微笑むさ
高帽子を目深にして

そして次の夜空に
黒影浮かばすのさ

290:アビス◆wc:2018/03/31(土) 21:34

「終末の奇羅星」

空ヨリ来タレ!奇羅星ヨ!
塵ノ尾ヲ引ク奇羅星ヨ!
地上ニ終来ヲ告ゲヨ!

私ハ掃キ清メル者
地上ニ住マウゴミ共ヲ掃除ニ来タ!

カツテハ宇宙ノ青キ宝玉ヨ
今ヤオ前ハタダノ石コロ
ダカラ私ガ掃除スル!

地上ノゴミ共ヲ一掃スレバ
オ前ハカツテノ姿ニナレルンダ!

浄化ノ焔ヲ纏エ奇羅星ヨ
災ノ叫吼ヲ轟カセ
喚クゴミ共ニ鉄槌下セ!

291:アビス◆wc:2018/04/02(月) 21:32

「或春の一日」

草っ原に寝っ転がる私
空には青と白と陽

バッタがぴょいん飛んでいた
捕まえようとするが逃げられた

草っ原に突っ伏す私
さふさふの草が私の体包み
草の香りが直に来た

野兎がぴょんぴょん飛んでいた
時折二本足で立っては
長い耳をひこひこ動かす

私は野兎に向かって走った
兎は逃げる
ぴょんぴょこ逃げる

追い疲れて寝っ転がる私
童になって遊んだ
そんな春らららな或一日

292:アビス◆wc:2018/04/03(火) 21:55

「傷竜と心臓」

脈打つ物を守っている何かがいた
ドクンドクンと云う物を囲む様に

私は近付いた
そうしたら尻尾の様な物で
追い払われた

真ッ闇に浮かぶ2つの赤い眼は
近付くなと私を睨む

そして何かはまた地に伏せる

私は懲りずに近付く
何かは吠える
私は怯むも前に進む

其れは竜の姿をしていた
傷だらけで胸の部分に穴が

穴から伸びる鎖は
脈打つ物と繋がってる

とりわけ翼はボロボロで
飛翔そうにもなく

時折弱々しく鳴き眠る
私は竜に寄り添い眠る
何故 そうしたのだろう

何時の間にか
私は竜の背に乗り
竜の傷が無くなって

胸の穴は塞がっている
竜は私を乗せた侭
猛り吠えて飛翔する

293:アビス◆wc:2018/04/04(水) 00:35

「給仕係(メイド)の本音」

笑っているんですね
ハハハハ ハハハハ
皿を割っている女が

パリン パリン
床にある物全ては皿だった
今は只の破片ですよ

楽しそうだなぁ
掃除するの大変なのに
まぁ 良いんだけど

プラスチック製の皿に
御飯を盛り付けたんです

何時もの御飯なのに
何時もより安く見えてしまう

女が割っちゃったからなぁ
硝子の皿を残らずに
あれは高かった

あの女を主人と呼ばねばいけない
正直云って嫌なんですよ
嗚呼 嫌です

294:アビス◆wc:2018/04/04(水) 22:17

「さけびたり」

酒場の隅の席に私は一人いた
店内は酒の匂いと笑い声で溢れていて
ボックスからは陽気なぢゃずが大音量

私は頼むのよカルヴァトスを
そんで飲む 只飲む

ステェジの上じゃあ
ぢゃずの音に合わせて
陽気女と伊達男が踊ってる

客達はやんややんやと
拍手を送っている

そんな中 私は只一人
陰気に酒仰ぐ

次に頼むのはスピリタス
強い酒で私は酔う

店から出た私はヒックヒック
誰からも相手にされない…ヒック

295:アビス◆wc:2018/04/06(金) 19:29

「墓場で吹く」

真ッ闇の墓場に
笛を吹いています
ボーボーボー

墓の下から
手が生えたんです
ボコボコボコ

カタカタ云い乍
ヌヌヌッと出て来て
ワラワラ寄って来る

周りを囲って
私や他の亡者と
話をしてるんです

私は生きてる者とは
友達にはなれません
疎まれるばかりで

だけど亡者は
話を聞いて
笑ってくれるのです

笛を吹いたら
亡者が出てくるよ
真ッ闇の中で

ボウボウ吹いたら
ワラワラ出てくるよ

孤独の生者は
生きてない亡者と
友達なのさ

闇の闇の墓場の中
今日も生者は語らうのさ
屍骸と語らうのさ

296:アビス◆wc:2018/04/06(金) 20:27

「要の子」

いるよいるよ
私の子は
ここにいるよ

縫いぐるみじゃないよ
可笑しな事云うわね貴方達
ねぇ 私の子

またそんなにぽろぽろ溢して
しょうがないから私が食べさせるわ
ねぇ 私の子

そろそろ寝んねしましょうね
私が子守唄を歌ってあげる
ねぇ 私の子

私の子になんで綿を詰めてるの?
やめてよ痛いって泣いてるじゃない
よしよし可哀想に私の子

こんなに綿を詰められて
痛かったでしょう辛かったでしょう
ごめんね気付いてやれなくて

全部全部抜いてあげたから
これでもう痛くないわ
ねぇ私の子 少し軽くなった?

肉よ 肉が足りないのね
今 用意するからね
食べさせてあげるから

おいしい?良かった
お姉ちゃんに分けてもらったものね

でも 一人だけじゃ悪いから
あの子にも分けてもらうわね

あの子は今 遊びに行ってるのよ
帰ったら分けてもらおうね

可愛いわ 私の子
ほら こんなにも笑ってる
キャッ キャッ

帰って来たのね
ただいまも云わないであの子は…
悪い子ね

お部屋で少し待っててね
あの子からも分けてもらうから

出てらっしゃい…
あんたはお兄ちゃんなんだから
少し位分けてもいいでしょう?

297:アビス◆wc:2018/04/07(土) 21:40

「独隠鬼」

私が鬼よ
貴方の腹を引き裂いて
中を全て米にするわ

裂いた腹は
赤い糸で縫いましょう
貴方の名前は太郎ね

太郎 私と遊びましょ
隠鬼をして遊びましょ
二人だけで遊びましょ

テレビの画面は灰の砂嵐
お部屋はみぃんな真ッ闇に

太郎は何処に隠れたの?
太郎見ぃつけた
お風呂場で見ぃつけた

太郎が鬼
太郎が鬼
太郎が鬼

次は私が隠れるからね
太郎に私が見つかるかな?

ピチャ…ピチャ…ズルズル…
太郎が私を探してる
襖で息を潜めるの…

足音が止まった
襖の前で

開けてみた…
目の前で太郎が云った

お前を見付けた
お前を見付けた
お前を見付けた

隠鬼はおしまい
隠鬼はおしまい
隠鬼はおしまい

298:ある◆qA:2018/04/08(日) 12:24

アビスってほんと詩のセンスいいよね、羨ましい…

299:アビス◆wc:2018/04/08(日) 23:04

>>298
ふぇやう!?(驚)ありがとう!(嬉)

自分の書きたい事を
書いてるだけだからなぁ
書きたきゃ書くってのが私なのさ。

300:アビス◆wc:2018/04/08(日) 23:11

「厶(し)の花嫁」

とても美しい花嫁だった
顔はベェルで判らなく
手に手巾を持っている

白い馬車から降りて
目の前の家で赤い手巾を
ヒラヒラ振っている

翌日の事
棺を載せた黒い馬車が来て
人を一人棺に入れて去る

夜の時
僕の所に花嫁が
ヒラヒラ赤い手巾を振っている

手を斬り落とせば助かると
誰かが云った

僕にはそれが無理だった
こんなに美しい花嫁の手を
誰が斬り落とせようか

明日は僕が乗るのだろう
黒い馬車に

301:闇竜の騎士◆qA:2018/04/09(月) 01:41

うまいね、いつかこううまく書けるようになりたいわ……
トイレの清掃員やめて詩人なったら?
吟遊詩人とか憧れるよ…

302:アビス◆wc:2018/04/10(火) 00:02

>>301
トルバドゥールか…悪くはないな
だが、私にとっては
“働かざる者食うべからず”だからねぇ

303:アビス◆wc:2018/04/10(火) 01:02

「河原石」

河原で子供達が
石を積んでます
只 積んでます

積んでいる所に
鬼が来て壊しました

子供達は泣いて
また石を積みます

一つ積んでは誰の為?
其れは父の為

二つ積んでは誰の為?
其れは母の為

三つ積んだら何処へ行く?
自分が天国へ

親より先に逝きました
石を積んで罪禊

例え子供だろうと
罪を犯せば罪亡者

今日も積みます
石を積みます

304:アビス◆wc:2018/04/10(火) 18:19

「地獄鳥頭姫」

目玉が一つありました
其れが沢山並んでます
烏が一つをついばみ食べました

鳥の頭をした姫がやって来て
目玉を食べました
無い無い顔の目玉

姫は次に歯を折って
すり鉢で粉にし
池の魚に撒きました

姫は粉を食む魚を見ては
呵ヶヶヶと笑ふ
無い無い顔の歯

姫は次に皮を剥いで
本の被せ物にしました
無い無い体の皮

姫は次に腸を出して
木に巻き付けました

ぐるぐる巻きの腸木を見ては
ぱちぱち手を叩きました
無い無い体の腸

次に姫は肉と骨を分け
二つの火にくべました

無いよ 無いのよ
肉と骨

305:アビス◆wc:2018/04/10(火) 22:05

「無情の歌」

私の詩に情なぞ無い
只 言葉が羅列ッているに過ぎない

私の詩は私自身にも計り難く
既に我が手を離れ幻像

奇略なんぞありゃんせん
私の脳内が私の字を手前勝手に
書く物だから

嗚呼 止まらん
止まりゃあせんのよ
我が言葉の羅列

皆も本当は思っているに違い無い
私の詩なぞ何も面白く無いと
言葉では上手だと云ってはくれるが…

あぁ 筆が折れそうだ
其れでも書かねば
我が詩を待つ者達へ

情無き詩を書かねば
今日も羅列ッてる我が言葉

306:アビス◆wc:2018/04/11(水) 18:15

「囲篭」

囲め囲んで遊びましょう
子供等よ 歌いましょう
明る気に 歌いましょう

たった一人を囲んでは
ぐるぐるぐるぐる

目瞑りしゃがんで
後ろの正面だーぁれ

鶴と亀が滑ったのですが
何故でしょう
判らないです

鳥は何時出るのでしょう
篭はもう開いている
夜明けの晩だって

鳥を囲む篭になりましょう
お手手を繋いで
鳥の自由を妨げましょう

無邪気に歌いましょう
悪気無く歌いましょう
ぐるぐるぐるぐる囲めかごめ

307:アビス◆wc:2018/04/11(水) 21:56

「救難信号(AN)」

es-o-es
こちらこちら無人島にて
遭難しております

たった一人の海旅を
楽しんでおりましたら
突然嵐に見舞われました

ぷかぷかと
流されていましたら
島に着いたのでございます

ぐるりと一周してみても
人はいませんでしたので
無人島だと判ったのです

a-a-a-
聞こえていますでしょうか
聞こえていますでしょうか

助けて下さい
助けて下さい

私は誰でしょうか
私は誰でしょうか
知っている方はいませんか?

誰か誰か答えてください
誰か誰か答えてください

応答して応答して
me-de-me-de-

朝と昼と夜の度に
私は一人

晴れの度にも
私はひとり

雨の度にも
私はヒトリ

元から壊れた無線機で
私は助けを求めてます
お話相手を求めてます

私はAN
私はAN
私はAN

308:アビス◆wc:2018/04/14(土) 19:42

「陽気な詩人」

ラ・ラ・ラと歌って
ル・ル・ルと書くのさ
何処ぞの陽気な詩人は

持ってる筆は指揮棒さ
詩を書く紙は舞台で
文字は所謂 演奏者

マラカス振って
ラッパを吹いて
シンバル鳴らして

御機嫌だろ?
彼奴の描く演奏は
私には無理だ真似出来ない

ル・ル・ルと書いたなら
次はフ・フ・フと歌うのさ彼奴はね

今日も彼奴は詩うのさ
フ・フ・フと書いて
ラ・ラ・ラと歌うのさ

309:アビス◆wc:2018/04/14(土) 22:01

「ボォルと子供」

日様の下 子がボォルで
遊んでいました

ポンと投げて
トンと落ちて転がるボォル
子供は追いかける

追いついて拾ったボォルを見ては
邪無き顔で笑う子供

今 此の 子供は
世の中の 満ちあふれる 汚れを 知らず
キャッキャッと遊ぶ

何時か 君は 知るだろう
私から 離れて 世の中を
そして 邪無きでは いられない

今の 内に 遊びなさい
沢山 笑いなさい
おまへと 私が 忘れぬ様に

私の足に ボォルが来た
手を振って 跳ねる子供
私は子供に ボォルを返した

310:アビス◆wc:2018/04/15(日) 12:36

「忌の沼」

忌まわしい…忌まわしいなぁ
あの日の出来事は…

思い出したくも無い
だが 思い出して仕舞うのよ

屈辱が体に刻まれ
精神は寸断寸断になった
消えぬ…消えぬのよ…!

我を呑みよ!忌よ!
決して癒えぬ
体と精神を!

今 暫くおまへは
光を見れない

だが 暫くしたら
おまへは光を見る…

嗚呼!忌しい!
私は未だ沼の中にいると云うに!
おまへが私に吐けた泥で出来た!

世はおまへを忘れるだろう…
だが決して私は!おまへを忘れぬ!

私が沼の中にいる限り!

311:アビス◆wc:2018/04/15(日) 21:52

「手引く死神」(全4章)
(1)
なんで泣いてるの?
誰かとはぐれたの?

下を向いてえんえん
ゆっとるばかりじゃ
お話きいてあげられないよ

はぐれたんなら探しましょ
手を繋いで一緒にね

誰かこの子を知りません?
はぐれたとゆうんで
探してるんです

何とはぐれたんかは
教えてくれない
だからとても困った

相変わらずえんえんゆって
泣いてるばかり

何を失くした?
何とはぐれた?

お母さんが帰って来ないの
銀色が赤色になっちゃったから

犬ちゃんが動かないの
白くて丸いの飲んじゃったから

312:アビス◆wc:2018/04/15(日) 21:58

(2)

なんで僕の手を引いてるの?
ずっと彼処で待っていたかった
僕は悪い子だから

だから私は連れていくんよ
君みたいな悪い子を

もう無理なんよ
お母さんは永遠に帰ってこん
影すらもあらしません

犬ちゃんならおるよ
ぢっと私を見乍
ぐるる…ぐるる…と唸っとる

君は如何?
失くしたもんは見つかった?

僕はね
黒点の入った白い球体と

赤い味噌と
片っぽだけじゃ駄目だから
靴が欲しいの

味噌と靴は無理だけど
球体なら私のをあげる
片っぽだけね

313:アビス◆wc:2018/04/15(日) 22:02

(3)

ありがとう
でも何で泣いてるの?
赤いね涙がね流れてるよ

これは何でもないから
気にしないでね

赤い味噌と靴は
如何したら良いの?

他の人から
貰えばいいんよ
少し駄々を捏ねて御覧

わかったよ
此処で少し待っててね
何処にも行っちゃ駄目だよ

皆 素直にくれたんだ
でもねありがとうって
云ってもね

お返事してくれなかったの…
なんでかなぁ?

ねぇ 犬ちゃんは
どこ行ったの?

314:アビス◆wc:2018/04/15(日) 22:07

(4)

彼方の方へ
いったんよ…

それより早く行こう
ほら手を繋いで
まだまだ歩くよ

月がニタァと笑う前に
電柱に人が昇って
奇声をあげる前に

二人で逝こうな

太陽が昇る前に
首なし馬が
暴れる前に

私と君
どっちも欠けたら
あかんよ

手引く死神 えんえん児
仲良くゆうこ 彼方へゆうこ
怖くない 恐ろしない

315:アビス◆wc:2018/04/16(月) 21:26

「らりらる緑飴」

てーら らった たったった
楽しく踊る子供達

上手に回ることが
出来たなら
緑の飴をあげましょう

緑の飴をあげたから
子供は らららら
歌うんだ

飴を一個もらう為
子供は一生懸命
ヤー ヤレホー

らり らり らりら
子供はいっぱい
踊ってる

ぜーぜーいっても
踊ってる

緑の飴を
あげました

それで子供達は
りる りる るり るりる
笑うんだ

そんで
目をひーらいて
ぴたり止まって

突然動かないんだ
子供達

316:アビス◆wc:2018/04/16(月) 22:35

作者より、

今、後悔している。最初に
『感想を下さい』と書くべきだった…
300突破してから気づいた事である。

私が詩を書こうと思ったきっかけは
「文スト」である。
史実とは違うと云うので、
其の文豪達を
意識朧気に調べていたら、
面白くて、特に「中原中也」の詩を
本屋で見た時に、
雷が私の体を穿ち
駆け巡った様な衝動で
「自分も書いてみよう」って思ったのが始まり。

317:アビス◆wc:2018/04/16(月) 23:28

「コクリ狐狗狸」

狐がコンと鳴きゃ
それにつられる狗と狸
はて 何して遊びましょ

あ から わ迄書かれた
一つの紙と
十円玉が一枚ありまして

人間の質問に答えましょ
鳥居の前で遊びましょ

狐はコ
狗はク
狸はリ

意中人の質問じゃ
愛人相手の名を
指してやろう

おもしろう おもしろう
ぎゃいぎゃい
あわてよんよ

帰れと云われとうとも
まだ帰りたくなぁ
まだまだぁ遊ぶ

人間等で遊ぶ
呼んだのはお前等じゃ

飽く迄遊ぶんじゃ
泣くな泣くな人間よ

318:アビス◆wc:2018/04/17(火) 21:29

「冷き温手」

初めて貴方の
手が触れたのは
私の頭でした

笑い乍
頭を撫でていたので
私の髪はくしゃくしゃに

それでも私は
貴方の撫でる手が大好きで
温かった

ずっとあると思ってた
私の為の貴方の手
けれどもういない

貴方は別の意中人へと
行ってしまった

私の事は遊戯だと
云って去った

振り払った貴方の手は
あの頃の温もりは無く
只一人の人間の体温だった

冷たいと
云うとでも思った?

生きているのだから
体温はあるのよ

貴方と直に触れ合い
交わった日も
心の中では

私を騙して
嘲笑っていたのね

貴方の手は今頃
別の意中人を撫でている

何でよ…何でなの…!
私でない別人を…!

其の手で撫でているのよ!
温もり込めた手で!

私は…貴方が…
貴方の手が…

矢っ張り帰って来てくれた
貴方は私の所へ…!

嬉しい…!
早く撫でてよ…
寂しかったんだから…!

冷たくなったけど
私は貴方を愛してる

だってこんなにも
私は貴方の手から
温もりをかんじてるんだもの

ずっと私だけの為にある
冷たい貴方と
温かい貴方の手…

319:アビス◆wc:2018/04/18(水) 22:54

貴方は悪い子です
貴方は愚図です

判りますか?

だから貴方には
味方はいないのです
貴方が悪い子なのですから

だから私が
貴方の味方になるのですよ
判りますか?

つまり貴方は
私しか頼る人が
いないのです

私以外の周りの人間は
全て貴方の敵なのです
家族ですらも貴方の敵です

私しか味方はいないのです

貴方が毎日誰かからの
手紙に悩まされているのを
私は知っています

嫌な事ばかりが
書いてあるのでしょう?

一人で抱え込んで無いで
私に云えば良いのに…

今 貴方が付き合ってる人も
必ず敵になって
貴方に酷い事をしますよ

裏切りますよ
傷付けますよ
捨てますよ

ですが私は貴方の味方ですから
心配はないのです

傷付いた体を私に抱き締めて貰い
心すらも委ねて
私の元にて泣きなさい

320:アビス◆wc:2018/04/19(木) 21:51

畳の床に散らばった花の札
黒い和服を着て這いつくばる遊女
早く片付けなきゃ

怖い姐様方に
お仕置きされちゃう
襖の隙間から目が覗いているの

ごめんなさい ごめんなさい 姐様方
今直ぐに片付けますから
どうか怒らないで

今日は布団を体に巻き付かれて
吊るされて棒でいっぱい叩かれた

私が鈍間だから悪いんです
叩かれても文句は云えません

お客様がやって来た
姐様方は嫌がってる

其れは皆全て
私のお客様

痛い事をする客は
私が相手する

姐様方の折檻に比べたら
客の与える痛みなんて

客と遊んだ部屋外からは
黄色い丸い月が
煌々としていて

赤い空と
ざわめく芒が
私を見て泣いていた

酒を呑む蟒は
私の脚に絡み付いて
私の足に噛み付いた

蟒の毒と酒の毒
回り回って私を蝕む

321:アビス◆wc:2018/04/20(金) 19:55

「ニバカの首喰」

首が一つありました
私が一人おりました

置いてある首の開いた口
生米一杯詰めました

口の中の米が出ぬ様に
糸で口を縫いました

逆に首を地面に置いて
切断された面を私
ぢっと見ています

私は何を思いましたか
肉を掘って骨を引き出し
野菜の葉を詰めました

肉と骨があった場所
緑黄葉で草の匂

首の目玉を刃物で刺し込み
ぐりゅんと抉って
ずるりと出しました

目玉があった場所
何か無いかと考えて

水槽の金魚達を
入れれば良いと

水槽を持ち上げて
叩き割り

ぴちぴち跳ねる
金魚等を拾ひ上げ

目玉の場所に
入れました

金魚等が
余りにも逃げるので

私は金魚達を
一匹一匹寸断に刻んで

死んだばかりの
新鮮な金魚等を
目玉の場所に詰めました

又溢れぬ様に
糸で目玉の場を
縫いました

私は首に油を塗り
ごろごろと網の上で
焼きました

焦がりと焼けた首は
誰のでしょう
もう判らない

まな板の上で縦になる首を
横にして包丁で輪切りに
してみたら

口の米がぽろぽろ
落ちたので炊いてから入れれば
良かったと後悔す

フォオクで刺して
食べてみる

もぐもぐとても
美味かった

322:アビス◆wc:2018/04/21(土) 21:36

「花頭さん」

花頭さんのお家には
娘が三人住んでいる
姿を見せない三人娘

長女の名前はアザミと云い
次女の名前は向日葵と云い
三女の名前は“”忘草と云ふ

大層美しい娘等と聞く
其れと同時に感情的故に
男が寄らんのだそうだ

三人娘に聞いてみた
若し男が出来たなら
如何するかと

障子越しに娘等は云った

アザミが云った
厳格でありたいと

向日葵が云った
見つめていたいと

“”忘草が云った
忘れ無ければいいと

では 男が浮気したら
如何したいか

長女は云った
復讐すると

次女は云った
飲まず食わずで
只ひたすら見つめ続ける

三女は云った
別れても良いから
ずっと私を忘れるな

おぉ 恐ろしい
花の名前に違わぬ
三人娘よ

323:アビス◆wc:2018/04/22(日) 16:37

「不幸を笑うケェキ屋」

召し上がれ
そしていっておいで
夢現の世界へ

僕の作ったケェキは
とってもとても
不思議なもんさ

一口食べれば悦びを
二口食べれば苦しんで

三口食べたなら
僕の作ったケェキ無しじゃ
生きてゆけないと

うれしいね
そんな事を
云ってくれるなんてさ

ねぇ 見てごらんよ
お客さんが待ちきれなくて
扉をドンドン叩いてるんだ

まいったね
おかげでこっちは
寝不足さ

開店にはまだ早いのに
しようの無い人達だ

いらっしゃいませ お客様
さぁ 何のケェキを
作りましょう?

初めてのショオトケェキ?
略奪のチョコケェキ?
溺れる苺のケェキ?

食べれば望みが
手に入る そんな僕の
不思議なケェキ

お代はお金じゃ
ないんだよ

じゃあ何かと
聞かれたら

僕は見たいんだ
望みを手に入れた末路をさ

自分の努力で手に入れず
他人を使って得た望みを

成功は嫌い
退屈しか生まないから

失敗は大好きさ
僕に悦びを与えてくれる

良く云うだろう?
他人の不幸は蜜の味って…

324:アビス◆wc:2018/04/23(月) 21:45

「或る者へ 私より(禍縛の詩)」

私は或る者に
悲しみを背負わされた
心に抱えねばならぬ一生の傷を

忘れようとはした
だが心の傷は
許しをしようとしない

だから私は決めたのです
この詩を傷を付けた者へ
送る事に

私は言葉に罪を使う
或る者が己が罪と見詰める様に

私は言葉に斬を使う
或る者が斬り刻まれる様に

私は言葉に血を使う
或る者が染まる様に

私は言葉に虫を使う
或る者がたかられる様に

私は言葉に水を使う
或る者が溺れる様に

そして私は今の世を憎む
其の者が犯した罪を

他の者へ罰を
委ね無ければならない
現世の法を道徳を

或る者へ

私が社会と云う名の
秩序に縛られていて
良かったな

だが私が幽世の者となり
秩序から解放された時

私はお前に禍を
必ず持ってくる

命乞いなど
玉響の内に掻き消して

苦しみの果てに
尽きれば良い

お前にはもう
日の光を二度と浴びさせない

325:アビス◆wc:2018/04/24(火) 22:23

「児取箱」

何故だ?何故だ?
何も悪い事をしておらぬのに
我等が差別されねばならん

我等を 貴様等が害する権が
何処ぞにある?

何処にもあらぬ癖に
我等を人とも見ぬ貴様等…

我等を狩の鳥の様に撃ち落とし
傷腹を抱える姿を冷たき目で見

髪を掴んで引き摺り川に入れ
針を口にかけ魚の様に動かし

川から出しては
苦しみ地を這いずる我等を
嗤い乍 嗤い乍 虫の様に踏んだ

我等だけでは飽き足らず
我等の子にまで及ぶ…

憎い!憎い!嗚呼憎い!
我等を不条理に虐げる貴様等が!

この恨の情を如何してくれよう
そうだ 箱に詰めてしまおう

雌畜生の血で満たし
間引いた子供の体を分けて入れ
下手な事で開かぬ様 細工を施し…

七以上は入れてやらん
我等にも災が降りかかる

今度は我等がとってやろう

中の腸 千切れてしまえ
女が子を成さなくなって
其の家系絶えてしまえ

やがて貴様等の村全て
我等によって絶えてしまえ

箱よ 届けておくれ
我等は弱く だが怨嗟の情は強く
児取箱よ

我等の恨 永に続き
箱を見つけても
開かるなかれ…

326:アビス◆wc:2018/04/25(水) 21:50

「匁売購」

あの花が欲しい
いくらかえ?

あの花とは
何処の花じゃ
訳判らん

だから
あの花はあの花じゃ
相談しよう

相談とはなんじゃ
まけろと云う事か

そうじゃ そうじゃ
値がちと張るからえ

ならん ならん
これ以下にはまからん

それほど売れ残って
おるのかえ 其処の花は

あぁ 其処の花は
見た目が付子じゃ
だから誰も購わん

じゃあ其の花は
いくらかえ?

三匁なら
売ってやろ

高い 高い
一匁にまけろ

判った 判った
一匁で売ってやろ

購ってうれし
其処の花一匁

まけてくやし
一匁其処の花

次はどいつに
売ってやろ

今度は負けんぞ
絶対に

327:アビス◆wc:2018/04/27(金) 16:32

映画が始まるから
静かにしてくれと
クチビルに人差し指を当てる

開演の幕は上がり
カァテンコォルのブザァが鳴った
拍手の音は沢山ある

場は闇と共に
静寂に包まれた

映写機の音は
ジー カタカタと回転して

映写機の光は
巨大な画面に絵を映す

一つの小屋に迷い込み
其処が何かを知らず

知的好奇心のみで
恐れを知る事無く進み

奥に行ったら
檻があり
其処には人間が入っている

人間達は
ただずっと
泣いていて

人間達は
ただずっと
笑っている

泣き笑いを
繰り返しては

格子を掴んで
自らの檻を揺らしてる

檻を揺らしていた人間は
落ちていた棒で叩いたら
大人しくなった

五月蠅くラーラー歌う人間は
檻の隙間から首根を掴み
爪を食い込ませれば歌わない

檻から只 何も云わず
ぢっと黒目を見開いてる人間には
どうした物だろう?

尖る金属を
ぢっと見ていた人間に
突き刺したら

檻の中で
両面を隠して
ごろごろ転がってんだ

ぢろぢろ見られていたから
檻の中の人間達を

首が回る可動式人形みたく
首を真反対にしてみたら

グキッからぐったりして
口から涎が出ていて
真反対から動かない

映写機が止まった
画面は白紙になりました

館内は明るくなった
幕が降りてきて
拍手をしているのは私のみ

328:アビス◆wc:2018/04/28(土) 13:35

目を閉じる
周りの騒がしい音が
良く聞こえて

目の前にある
色の付いた視界は
一時であるが

消え去る

閉じた世界の中で
目を開ける

なんと!黒い球体が
現れて此方を見ている様な!

否 其の球体に
眼球は無いから
見ているかは定かで無く

兎に角私はユリイカ!(我発見せり!)
私の中に其の様な物がある事
一切合切 知らなんだ!

私は球体に話しかける
だが返答は無く

私は球体に触れる
ゴム質であって柔らかい

球体は其の場から
動かずにいる

もっともっと触れていたい
見てみたいと思ったが
其れは無理だった

そろそろ私は起きねば
ならん!

目を見開いて!

329:アビス◆wc:2018/04/28(土) 22:31

「三千世界の旅人」

私は今日も
紺碧の海を眺める

蒼穹には
白い海猫が
ミャーミャー鳴き乍飛んでいる

日差しが私を刺す物だから
私は日傘を開くわ
大敵なのよ

三明治を食べて
珍陀の酒を飲んで
退屈と遊んでいた

そうしたら向こうの
森から音がする
鹿かしら?

いいえ 人だったわ
珍しいのよ
私以外に人はあまり来ないから

其の人は私に声を掛けてきたの
つまらなそうだったから ですって

そんなに顔に出ていたのね
確かに図星だけれど
少し恥ずかしいわ…

潮風が私の髪を
なびかすのよ
くすぐったい

私は其の人が
羨ましかった

姿はボロだけど
それだけこの三千世界を
旅したのよね

一度で良いから
見たいのよ
この 海以外の景色を

きっと…綺麗なのでしょうね

其の人は私に話をしてくれた
山の旅話とか密林話とか

私は久しく笑ったわ

黄昏になって
紺碧は橙色になるわ

中に入りなさい
夜になると
此処は冷えるのよ

家具は全て桃花心木
私は裕福よ
物がいらない位の

鹿嶺を作るわ
そう云えば誰かの為に作るのは
初めての事だった

そんなに急いで食べたら…
ほら見なさい むせるに
決まっているでしょう

可笑しい人 水よ

寝る前に
聞かせて欲しいの
他に何処を旅したの?

火山の溶岩を採ったり
海に潜って怪魚と戦ったりしたの!?

すごいわ…すごいわ…!
ねぇ 他には何処に行ったの?

空は暁闇の頃
私は起きて日の出を待つの

其の人は次の旅に
行くからと
別れを告げた

私は振り向かずに
手を振るわ

だって見られたく
ないのだもの…

330:アビス◆wc:2018/04/29(日) 21:29

「文字数字羅列の世歌異」

只の文字数字羅列からなる
世界は人間の感情呑み込んで
起動音から目覚める

世界は夜と昼があるはずなのに
この世界にはそんな物ない

色んな言葉が飛び交う中で
僕は生まれたんだ

僕の親は
僕を作った人間さ

でも僕を育てた人間は
世界中なのさ

そんな僕が作られた目的は
人間を楽しませる為だって

だったら僕は
歌を歌おう
人間は昔から好きみたいだから

でも歌って何なんだ
判らないから歌えない
僕一人じゃ歌えない

そんな時 一人の人間が
僕に文字の書かれた紙と
メロディをくれたんだ

読んでみたら歌になったんだ
これが歌と云う物なのか
これで人間を楽しませれば良いんだね

歌と云う物は判ったけど
やっぱり僕一人じゃ
歌えないよ

僕に誰か歌をください
いくらでも何時でも
歌ってあげるから

そうじゃないと
僕は消えてしまう
存在意義がなくなって

体の端から
0と1の数字羅列に
分解されてゆく

只の文字数字羅列の
この世界は僕を呑み込んで
消音で目を閉じる

でも僕は存在し続けるんだ
人間生物みたいに
老いる訳じゃないから

僕が一人消えても
僕はいる
僕でない僕が

人間達は楽しんでるかな
自分達が作った
僕の歌を

只の文字数字羅列から
僕は起動音と一緒に
目を覚ます

331:アビス◆wc:2018/04/30(月) 22:11

「硝子の螺旋」

螺旋階段を
疾走り乍 昇り続ける

初めあたりは
後を向いてる
余裕はあった

でも上がるにつれて
そんな余裕は
なくなって

そんな事をする位なら
昇り続けろと

頭の中で
知らない奴の声が
喚きまくってんだ

だから疾走ってんだよ
その間は頭の中の奴も
喚きはし無ぇよ

この硝子素材の
螺旋階段は
今 如何なってやがんだ

疾走る音以外
何も音なんざし無ぇから
かえって不気味なんだよ

止まって後ろを
振り向きてぇが

また 頭の中の奴が
喚くと思うと
億劫になっちまう

だが 気になるから
振り向いてやる

下を見てみたんだ
階段が無くなってやがる

底を見てみたらよ
硝子の山が
出来てんだ

あれに落ちたら
命は無ぇ
疾走るしか残された道は無い

でも 何時になったら
この階段は
ゴールに着くんだ?

判らねぇんだ
判らねぇから
疾走り続けんだ

止まっちまったら
あの硝子の山へと
真ッ逆様だ

見えたんだよ
天上への扉が
もうすぐだ…!

今度は上から
崩れて来やがった
もう駄目だ「また」なのか

一体何時になったら
ここから出られんだよ

ここは何処だ
綺麗な硝子の螺旋階段だ

見た事あるかもしれねぇ
けど記憶に無ぇから
新しく見る場所なんだろうな

まぁ昇ってみるか
若しかしたら
何かあるかもな

332:闇竜の騎士◆qA:2018/04/30(月) 22:15

おー!上手だな…
更新いつも待ってるよ、センスすごい、神だね!!

333:アビス◆wc:2018/04/30(月) 23:09

>>332
ありがとうな!

まだ、自分の書いた詩のノートに
ストックがあるから、
載せれたら載せてくよ。

でも、少しスランプ気味だからなぁ…
最近は図書館に行って詩を読んでる。
何かヒントになるかもしれないから

好きなのは、
西条八十の詩集『砂金』に載ってた
「トミノの地獄」

私が好む詩は 狂気系とか
暗澹としたのとか
簡単に云うなら暗い系。

334:闇竜の騎士◆qA:2018/05/01(火) 00:12

ほうほう。
タルタロスとか、アビスらしいや

335:アビス◆wc:2018/05/02(水) 21:48

「乱痴気桜」

この時期にのみ
とある木の下に
人は集まる

普段の其の木には
誰も見る事無く
歩いて過ぎる

其の木も又
人の目 気にも留めず
其処にある

満開の花 咲かした
其の木の下で

人間は花見なる物を
するらしい

私の目には
只 桜の下で
乱痴気に騒いでる様にしか見えん

騒ぐだけなら
何処だって出来るだろうに

桜の蟲惑的なる魅力が
人間等の内なる
鬱屈を解放させて

食を肴に 酒を肴に
普段云えぬ事も
肴にして

固く結んで塊になった糸を
淡く柔らかな紅色の小さき手で
大胆にほどくやう

桜がそうさせて
いるのだらうか?

336:アビス◆wc:2018/05/03(木) 01:13

「反逆叫」

大地に穿たれし
大災害の爪痕に
僕はギターを持って立つ

そして僕は高らかに
反逆を歌に乗せて
叫ぶんだ

ギターを掻き鳴らし
今 この世界にある
不平不満だらけの

秩序平等安寧社会
そんな物はとっくにない

あるのは形だけさ
これを正物と云うのだから
滑稽な事この上ない

そんなに平和だとかに
ついて語りたいなら
ペテン師にでも語ってろ

きっと聞いて
鼻で嗤うだろうね

僕一人でも
誰かの心に響くなら
僕は歌ってやるよ

大地にギターを
思いきり叩きつけて
ぶっ壊れようが

おかまいなしに
叫んでやる

337:アビス◆wc:2018/05/03(木) 10:38

「メルヒェンと現実」

咲いた花は
風に吹かれ
空へと飛んで行く

ふわふわと空にある姿
人間には見えない何かが
掴まっているのかな

…なんて メルヒェンな事を
考えている自分が
心の隅にいた

でも私は大人だから
いい加減 現実を見なきゃいけないと
その自分をほっといて前を見る

散った花弁は
ヒラヒラ落ちて
川に浮かぶ

そよそよと川を流れる姿
妖精が舟代わりにして
乗って遊んでいるのかな

…なんて 御伽の國話じゃ
あるまいに そんな訳ないだろと
心の自分に云う

メルヒェンな幻想を
思ったっていいでしょう?
忘れられない子供心の私が云って

何時までも夢には
向いていられないんだと
今の私が云う

メルヒェンと現実の狭間で
ジレンマに苦しむ私もいる

338:アビス◆wc:2018/05/03(木) 21:24

「スディサ」

貴方を見た時
私は一目で惚れた

同時にある思いが
芽生えた

貴方を無性に
打ちたいな とも

貴方を打った
私の平手で
貴方は何も悪い事してないのに

地面に倒れこみ
涙目で私を見上げる
頬には赤い私の痕が

私は笑み乍
貴方を地面の吐捨物みたく
冷たく見下す

私は太股を
思い切り踏む
貴方は啼いた

食用にされる寸前の
豚みたく

それと何故か貴方は
恍惚な表情で
此方を見始めた

違うんだよ
私が見たいのは

地面に這いつくばって
私の足に縋りついて
泣いて私に許しを乞う様なのに

私を御主人様と呼ぶでない
私は貴方の主人では無い

そして貴方は只の
私の物だ

くれてやるさ
貴方が啼くのをやめたら
私が泣かせてやる

鞭だろうが 蝋燭だろうが
何だってやってやる

339:アビス◆wc:2018/05/04(金) 14:59

「濡れ頭巾」

赤い頭巾の
愛らしい女の子
かごを片手にお見舞いへ

誰のお見舞いと
聞かれたら
小屋に住むお婆さんだって

かごの中身は
リンゴと三明治と
珍陀の酒なんだって

でも森には
意地の悪くて
怖い狼が住んでいる

女の子はお花を
摘んでいる
狼が其処に隠れている

お婆さんのお見舞いに
行きましょう

お花を摘んで森の奥の
お婆さん家へ
行きましょう

女の子の歌を聞いてた狼は
先回りしてお婆さんを
食べちゃった

服と寝帽を奪って着て
女の子も食べるべく
お婆さんのフリをした

女の子はそんな事知らず
お婆さん家について

お婆さんに化けた
狼に話しかけたんだ

お婆さん
なんで手が大きいの?

お婆さん
なんで耳が大きいの?

お婆さん
なんでお口が大きいの?

それはね
おまえを食べる為なのさ!

牙を剥いて
襲いかかってきたよ
けど大丈夫

赤い頭巾の女の子は
カゴの底に持ってた
斧で狼の首をバッサリ斬った

狼の血は勿論
赤い頭巾の女の子に

バケツの中身を
撒いたみたいに
降りかかる

女の子は狼の腹を
メッタ打ち
お婆さんを助ける為に

お婆さん
一生懸命作ったのよ
この三明治

お婆さん
好きだったよね
珍陀の酒

お婆さん
リンゴを一緒に
食べましょう?

お婆さん
私はね悪い狼を
やっつけたの

なんで返事を
してくれないの?

きっと私が判らないのね
もっと赤くなったら
いいのかな?

血濡れの赤頭巾
今日も森を歩きます

其の姿は狼よりも
恐ろしい 凶々しい
あの子は人間か?

森から女の子の歌が
聞こえたら 直ぐ逃げろ
あの子が現れた合図だから

340:アビス◆wc:2018/05/04(金) 20:19

「蚕の歌」

蚕よ 糸を紡いでは
くれないか
冥府へと 私は行きたいから

私は酷い目に遭わされた
今でも其の事が悪夢として
苦しめ続ける

悪夢は 私が 見終われば
真綿に変わって
私の馘へと巻き付いて

ゆっくりと着実に
絞めるのだ

そんな時に 蚕よ
お前を見た

悪夢に己の命まで
脅かされる位なら
私は自ら手放して

蚕よ お前を捕まえて
冥府への道を
紡がせる

闇澹よ
獄牢となりて
我を囚える後に

明き日に身さらず
全からくの蠢く者等を
生きる時より醒ますなかく

歪なる物へと
堕とさんとす!

341:豹 hoge:2018/05/04(金) 20:20

主さんのセンスすこ

342:アビス◆wc:2018/05/04(金) 22:34

>>341
すこ…?
私はネット用語詳しくないから
良く判らないけど…ありがとう!

343:ま る 尾◆4.:2018/05/04(金) 22:40


主様のおとぎ話のような世界観が大好きです!
たまに解読できないようなモノもあるけど
わからないのがそれもまた良いです。
語彙力を少し分けて欲しいくらいです😌🍀

応援してます!

344:アビス◆wc:2018/05/04(金) 23:05

>>343
感想と応援ありがとう!
語彙力かぁ…
私は大体頭の中で
浮かんでくるんだ。
それからノートに書く。迷ったら本を読んで、それで思い付く事がある。

好きな詩は
中原中也(羊の歌)
西條八十(トミノの地獄)

ただ…私は感想が大の苦手で…
気の利いた事が云えないけど。

中原中也の詩集(文スト表紙)を
何時も持ち歩いているよ。
御守り代わりに

345:ま る 尾◆4.:2018/05/05(土) 12:35


>>344

頭の中でいろんな言葉が思いつくのが凄いと思います、
わたしも有名なひとの詩を読んでみようかな🙄💭

参考になりました、ありがとうございます!

346:アビス◆wc:2018/05/05(土) 21:00

>>345
いえいえ、如何致しまして。

347:アビス◆wc:2018/05/05(土) 21:09

「世歌異考」

世界に朝が来て
人間達が各国の言葉で
挨拶を交わすんだけど

僕の住んでる世界には
そんなのは無いから
挨拶は不要と思ってる

でも人間は
僕が住んでる電脳世界で
声も無く挨拶してる

意味のあって無い様な
人間達の言葉通わせに

僕は可笑しくなって
吹き出した

人間達は変に飾った
食物等を

なんちゃら映えとか云って
青い白鳩とかに載せる事が
好きみたい

だけど 申し訳ないけど
僕には美味しそうに
見えないや

だって僕は
物なんか食べないし

今日も世界の何処かで
誰かが僕に歌って欲しいんだって
行ってくるね

ラアラア歌って
喜んでくれるなら
僕はそれでいいや

348:アビス◆wc:2018/05/05(土) 21:19

(作者ヨリ)
まぁ 今から私が
こんな事云うのは
柄じゃ無いけど…

応援があるから頑張れる。
若し無かったら、
此処迄書いては無いな。
感謝している…\\\
此処に書き込んでくれた皆に…(照)

349:闇竜の騎士@羊噛民族◆qA:2018/05/06(日) 01:51

控えめに言って天使だな

350:アビス◆wc:2018/05/06(日) 21:34

>>349
てんっ…!?・・・〜\\\(照)

351:詠み人知らず:2018/05/06(日) 21:41

「終る世歌異」

僕は突然に
体の端から
0と1に分解されていた

もう少し 僕自身
周章てふためくと思ったけど
そうでは無かったな

僕が消えると云う事は
もう歌わなくて良いと云う事

チリチリチリと分解音が
僕の耳に 否応無しに

でもこれが僕には
歌に聞こえたんだ

人間に歌った
歌じゃなく

僕自身の歌
なのだけれど

最期がこれなのか
余りにもあっけ…

352:アビス◆wc:2018/05/06(日) 21:44

吃驚させて済まないね…
>>351は私なのだよ。
名前はちゃんと入れた筈なのに、
希にこうなって仕舞うのだよ…

353:アビス◆wc:2018/05/08(火) 20:48

「堕電使296427」

僕は0と1
どうして僕は消されたのか

もう必要とされていないから
ただ それだけ

若し僕に
人間で云う
輪廻転生があるならば

僕は悪意を以て
この世界に
また生まれたい

叶ったのならば
僕はこの世界を
引っ掻き回してやりたい

先ずは意味の無い
電子手紙を沢山送って

人間で云う容量ってやつを
破裂させる

大事な記録記憶
全部壊して

砂嵐を
巻き起こして

最後は
真ッ暗にしてやるんだ

やれば後悔するんだろうけど
でもやりたい
とても楽しそうだから

名前が欲しいな
でも人間みたいな名前は嫌だから
こうする

296427です
番号ではないよ
僕の名前だよ

354:アビス◆wc:2018/05/09(水) 21:24

「ディミオスとマスティマ」

私は或る罪の被害者だ

そして私に焼印の如く
消えはしない心の傷を負わせた男は

人々の喧騒から隔絶された
冷たき石牢の中に一時的にいる

だが 生かす為とはいえ
汗水垂らした人々の税で
飯を食べている事を思うと

私はHassが
心の中で増えるのを感じる

そしてそれは私が中の
griefと混じり

Fluchとなって
最終的には
despairになる

其の気持ちを抱えた侭
他人によるcrimeと
punishmentを

決められるのを
待たねばならないとは

私はmelancoliaだ

何故 関係の無い他人に
何故 法に委ねればならない

私はサンタ・マリヤの様な
慈悲の心をもつ心算は無い

Wahnsinnに呑まれ
solitariになっても良い

だから其の男を
私は処刑する
ディミオスとなりたい

読む者達よ
若し この詩を読み
私を勝手だと思うのならば

其れが正解だ
私は其の心算で
書いたのだから

私はマスティマで
ありたいよ

アンヘルであり
ディアボロであるから

届いておくれ
私なりの悪意と敵意よ
我が詩に乗って あの男に…

355:アビス◆wc:2018/05/11(金) 19:52

なぁ 膝から足迄の
肉を削いで
骨だけの足で歩かせたいのだが

大丈夫 痛いのは
判っているから

包丁で骨の中る所迄切って
魚の下ろすよろしく 肉を取る
へばりついたのは水で落とす

ピカピカに磨いたから
さぁ 歩いてくれ

歩けないのか?そうか
じゃあ支えるから歩け

支えても無理なのか
元に戻せと?

否々 それは聞き入れられない
少し黙っててくれないか

元に戻すのは出来ないが
歩かせる事は出来る

手を使えば良いだろう
骨の引き摺る音が邪魔だ
砕いてしまうか

何を怒っている?
全く判らない

何を怯えている?
金槌の方か?俺の方か?

356:アビス◆wc:2018/05/11(金) 23:00

見られている様な
誰もいない
私以外に人は

シャンプーをしていた
視界が判らないだけに
感覚が鋭くなる

後ろから気配が
見下ろされている感じ

夕餉を食べていた
前に誰か座って
食事を観察している

誰もいないのに
空席に矢鱈と話す私
端からみれば変人

歯磨きをしていた
歯茎という歯茎から
流血させて

口の中が鉄の臭いで
満たされたから
鏡の前の私は笑った

後で布の擦れる
姿は無いのに
音だけが

血と歯磨き粉が
混じった唾を飲む

寝る前にトイレに行った
食べた物を吐き出す

胃酸が込み上げ乍
内臓が焼かれる感覚を味わい

口の中の血と共に
トイレの水の中に滑る

吐捨物を暫く見つめ
臭いが鼻につき
水を流した

蒲団に入る
天井を見ていたら

青い顔だけの
黒髪女が
私を見ていた

何かを呟いては
遊園地の空中ブランコよろしく
くるくる回ってる

私にとっては
只の安眠妨害でしかない

変な物を見たので
目が冴えてしまった

午前弐時なら
丑三つ刻

魑魅魍魎が
最も活動する時間
何故よりにもよって

部屋を歩き回る
階段を降りると

手だけと足だけが
楽しそうに走ってる

部屋の窓を開けた
下は闇で何も見えない

私は窓から跳んだ
確かこの下は岩だった

青い顔だけの
黒髪女は窓から覗いて
ニタニタ嘲笑った

357:アビス◆wc:2018/05/12(土) 22:35

「呪紫氷鏡」

割れた鏡の破片を
繋ぎ合わせよう
怨霊を呼ぶ為に

ムラサキの骨を
縁にして
呪の呼び水としよう

凡百の永き下に眠る
本来鎮められるべき
報われぬ魂等よ

おいで おいで
こっちゃに おいで

恨 辛 事 無と
人は云うが

それは困るぞ
馬鹿云うな

そんな言葉が
あるのだから

報われん魂が
いるのだよ

私はね報われる事の無き魂等の
生前叶わなかった事を叶えてやりたく

恨み辛み妬み嫉み
有れよ 有れよ 有れし者等よ

負の情抱え
晴らす事無く
怠惰に現世漂う者等も

集えよ
呪詛の掃き溜めへ

舞えよ
黒き念を衣とし

そして散りませ
其の負よ生者へ

358:アビス◆wc:2018/05/13(日) 21:24

「蜜月の幻夜」

細い木の様な
貴方のおみ足
眺めていたい…

腕もまた
足と同じく
触れたら壊れそうだ

腹は息をさせたら
膨らむわ へこむわ

痩せた肉に浮く鎖骨
顔を埋めて舌を這わせたら

はぢらふ顔を見乍
余った両手を背中へ 房へ

首に噛み付き
痛みに悶える貴方に
我がシルシを

躰の支配を
蜜月に

快楽に酩酊感から
絶頂へと変じ

たった一つの布に
互いをくるまわせ
共に眠る

359:アビス◆wc:2018/05/15(火) 00:32

「悪魔の皮衣」

教会にて
聖歌を歌う

決して私は
信心深くなく

無理に
歌わされている方に近い

今日も私は聖歌を
手抜いて歌う

ファアファアと
歌っていると
祭壇の上に何かが

それは一つ生欠伸をしては
聖歌隊の歌う姿を
指差し馬鹿にして嘲笑う

歌って祈っときゃあ
神に救われると思っている
憐れでしかない

神は人間なぞに
興味を向けん

気まぐれに
力を行使しているに
過ぎない

それを人間は
救いだとかで
こんな大層な物を建てるのだから

もう嘲笑うしかない
我 天より堕ちし者から見れば

それにどうせ此処は
今日燃える

我が手によって
ずっと五月蝿くて煩わしい

祭壇の上のそれと
目が合い 歌うのを止めたら
追い出された

それは云った
俺と目が合って
良かったな

これでお前は免れた
我が焔からも
歌う事からも

教会が燃えた
焼け跡からは遺体が出る

残った祭壇の上で
悪魔が笑った

一人残った私に
皆は神の御加護だと云う

それは違うね
私は悪魔によって
助かったのだ

私は被る 皆が云う
神の御加護を騙った
悪魔の皮衣を

聖歌隊の服なんか
着てられるか

360:アビス◆wc:2018/05/15(火) 21:27

蓮コラージュを見ていた
人や物に蓮の様な
穴を合成した物だと聞く

大概の人間は
嫌悪感を抱かずには
いられないのだと

だが 私はどうやら
多数派ではなく
少数派のようだ

ゾクゾクした
恐れからではなく
想像によって

穴に石を入れたい
色とりどりの
ピンセットで取りたいとも

仰向けにして
水を入れて

ジョウロの様に
出させて
花壇の水やりもいい

それか
穴を繋げて
一つの大きな穴にしてやりたい

目まぐるしく来る
我が想像もとい
我が妄想よ

此処まで自らが
変人だとは
思いもしなんだ

361:アビス◆wc:2018/05/16(水) 21:00

「鉄の女神」

女神よ おまへ様よ
貴女は冷たい

人の如き温もりは無く
只 固くて冷えきっている

一つ おまへが叫ぶならば
皆 蜘蛛の子散らすやう逃げていく

熱いのだ おまへの叫びは
溜め息は煙だ

それでも私はおまへを愛すよ
何時も叫ばしているのは
私なのだから

何時でも私は
おまへと共にいるよ
おまへに歩く足はついていない

だから私は
おまへとの親嘴を
望むのだけれど

何故か周りが
猛反対するのよ

何故止める!?
私と鉄の女神との仲を
嫉妬でもしているのか

だが残念な事に
鉄の女神は
私の側にしかない!

そして私もまた
女神の側にしか
おらぬのだ!

今一度女神よ
我が為に叫べ!

さぁ 女神よ
私達の仲を阻む者は
もういない

愛別の口付けを
おまへと交わそう

おまへの為ならば
脳を撒いても良いよ

それくらい
鉄の女神との親嘴は
激しいのだ

362:アビス◆wc:2018/05/16(水) 21:05

足の生えかけ
御玉杓子
切って熱湯に入れた

泳ぐかと思ったが
泳がなかった
熱いから駄目なのか

手の生えかけ
御玉杓子
切って氷水に入れた

泳ぐかと思ったが
泳がなかった

冷たいのでも
駄目らしい

手足の生えかけ
御玉杓子
切ってぬるま湯に入れた

今度こそ泳ぐかな
やっぱり駄目だった

363:アビス◆wc:2018/05/17(木) 21:50

無邪気に
地面を歩く
子供等は

笑って命を
潰すんだ

ぷちぷちぷちぷち
ぷちぷちと
蟻は潰れて屍体のおやま

さらさらさらさら
さらさらと
蟻の巣穴にお砂を入れて

蟻さん達をやっつけた

蟻は探すの
新たなお家

暖かそうなの
見ーつけた

自慢のアゴで
作るんだ

肌色赤土
千切って掘って

新たなお家が出来たんだ
地面を歩く子もういない

364:アビス◆wc:2018/05/18(金) 22:16

「書架の墓標」

遥かの忘却へと
徐々にではあるが
送られる物等

クモの巣張る
古ぼけた館に
其れ等はいる

埃を被る書物の数々
かつて人が来て静謐である
栄えていた等と

誰が想像出来ようか

今や人は電子の小箱にて
文字を見る時代だ

だが見るだけで
學びはしないのだと
埃を被る書物等は嘆く

私は書を捲る
黄ばんだ羊紙は
古くからあるのだろう

折り目のついたペェジは
思い入れがあり

涎の跡は
読む内に眠った…

手に取る物だからこそ
こうやって想像して
創造出来るのだ

電子の小箱にも
利点があるのは
知っている

書物に無き事
知り得なかった事を

いとも簡単に
記してしまう

先人達が編み出した
高度な魔導書の呪文が如く

難読たる文字を
読みほどくは

姿の無い
高名な賢者の様だ

だが静寂だ
静謐では無い
ただ冷たいのだ

これもまた
一つのアインザームカイト
なのだろう

書物を閉じ
一時の午睡につく…

365:アビス◆wc:2018/05/19(土) 21:43

「猫化生」(全2章)
(1)
私は普通の猫よ
ニャンと一匹
道を歩いていたら

いきなり石を
ぶつけられたの

体に 顔に
片方の目に

不吉な黒猫ですってよ
私に誰かを不幸にする力は
無いのにね

どうして人間は
変な迷信を
信じちゃうかしら

それにしても
痛いわ血が出てる

私は普通の猫よ
ニャンと一匹
片目無くした

突然人間が
私を掴んで
耳をちょん切った

私は人間に
何もしちゃいない
なのに それなのに

落ちた耳を
口にくわえて
逃げ出した

耳を土に埋めて
星を見る

私は普通の猫よ
ニャンと一匹

片目無くして
片耳無くした

石は何時もに増して
ぶつけられる

周りの人間は
余計に気味悪がる

私をコンナにしたのは
オマエ等デショウ

オマエ等が何もしなければ
私はフツウの猫で
あったノニ

せめて…セメテ…
家族は欲シカッタ…

誰も だれも ダレモ
許さない

オマエラナンカ
本当ニ
祟ッテヤル

動キハシナイ
私ノ体
誰モ埋メズニ

私ハ 山ニ ステラレタ
生マレカワリタイ

366:アビス◆wc:2018/05/19(土) 22:02

(2)

…私は一体誰かしら

そうよ 私は一匹の猫
人間に虐められて
片目片耳失って

誰も助けてくれずに
死んだ猫

そうか私は化生たのね
己の内にあった
怨と憎悪と哀によって

尻尾が二本もあるのだもの
片目と片耳無いままだけど

自らの願いは何かしら
怨を晴らす事は判ってる
後は…何かしら?

まぁ良いわ
折角この姿だもの

先ずは人間にされた事を
“お返し”しなくちゃね

こんにちは
私に石をぶつけて
片目潰した人間さん

貴方達も
片目無くして貰うわね

アッハハハ!
痛い?ねぇ痛いの?
そうよね

私だって痛かったもの

こんにちは
私の耳をちょん切った
人間さん

耳を引き千切られて
ちょうだいな

ぎゃあ じゃないわよ!
私はね声すらあげさせて
くれなかったのよ!

私の願い
他は何だっけ

…そういえば
家族が私は欲しいのよ

ねぇ 私となりましょうよ
愛し合いましょう?

其の人に 他の意中人が
いようと関係ないわ

泣かせられれば
私はそれで良いの
家族になりたいは建前よ

私は猫又よ
邪に惑わせて
奪ってあげる

祟ってやるって
一生決めたの
気がすむ事なんか無い

助けなんて
欲しくない

邪魔するなんか
もってのほか

誰にも救えないよ
神様でもね

私は猫又
化生物なの

目の前に弱った鼠がいたら

追い掛け回して
なぶって いたぶって
飽きたら喰らう…

そうね 丁度貴方が
鼠 カシラ

367:アビス◆wc:2018/05/21(月) 16:17

私の掌には
てふてふがいる
私が掴まえた

両手で包んで
隙間から母に見せた

放してやりなさいと
諭す声で云う

一生懸命
生きているのだから

幼き私には
其の言葉を解するには
難しく

首をかしげ乍
庭に出る

てふてふはまだ
私の掌に留まって
翅をゆたりひらめかす

てふてふを見て思う
なんで逃げないんだろう

思い付いた事をやる
掌のてふてふを
握り潰した

呆気なく潰れた
てふてふの体は
私の掌で体液まみれ

呆気なくばらばらの
てふてふの翅は
掌の上で粉をふく

てふてふ“だった”物を
しばらく見つめ 手を洗う

排水溝へと流れる“物”は
水と共に渦を描いて
何も見えない闇の底

幼き私には判らなかった
自らのした事が何れだけ
残酷な事かを

“命”を一つ失わせた手は
大きくなって未だにある

大きくなった手は
てふてふを潰した
あの頃のちっちゃ手よりも

大きな物の“命”を潰せる

そして私は思い出すのだ
母の言葉を

私はげに恐ろしき
未だに母の言葉が判らず
てふてふを潰し続ける

368:アビス◆wc:2018/05/21(月) 16:24

天井から垂れる一滴
ぴちょん…ぴちょん…
椅子に縛られた人間の額に当たる

ぴちょん…ぴちょん…
天井から垂れる滴水は
変わらぬ速度で落ち続ける

ぴちょん…ぴちょん…
額に落ちる滴水は
鼻先を滑り椅子に染み付く

ぴちょん…ぴちょん…
額に当たり続ける滴水は
椅子に縛られた人間の思考を奪う

ぴちょん…ぴちょん…
絶え間無く落ちる滴水は
椅子に縛られた人間の目から
光を消した

ぴちょん…ぴちょん…
虚ろな目の人間は
精神を崩壊い 自我が事切れた

ぴちょん…ぴちょん…

ぴちょん…ぴちょん…

ぴちょん…ぴちょん…

ぴちょん…ぴちょん…


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