“深淵唱詩”

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1:アビス◆wc:2017/10/12(木) 06:11

思いついたら取りあえず書く事に決めた(センスは皆無)。

電柱から覗く君は誰だろか?
私はコソリと確かめゆく
けれども何時もシュッパイする

今日も君はシャッテン延びる電柱から私を見ている
そんな所で見てないで早くお入りよ
けれども君は首を横に振る

レーゲン降る日も
シュタルカー・ヴィント吹く日も
君は只私を柱から覗くだけ

何故かと私は君に聞いた
君は口を開いた
“だって僕はゲシュペンストだから”

327:アビス◆wc:2018/04/27(金) 16:32

映画が始まるから
静かにしてくれと
クチビルに人差し指を当てる

開演の幕は上がり
カァテンコォルのブザァが鳴った
拍手の音は沢山ある

場は闇と共に
静寂に包まれた

映写機の音は
ジー カタカタと回転して

映写機の光は
巨大な画面に絵を映す

一つの小屋に迷い込み
其処が何かを知らず

知的好奇心のみで
恐れを知る事無く進み

奥に行ったら
檻があり
其処には人間が入っている

人間達は
ただずっと
泣いていて

人間達は
ただずっと
笑っている

泣き笑いを
繰り返しては

格子を掴んで
自らの檻を揺らしてる

檻を揺らしていた人間は
落ちていた棒で叩いたら
大人しくなった

五月蠅くラーラー歌う人間は
檻の隙間から首根を掴み
爪を食い込ませれば歌わない

檻から只 何も云わず
ぢっと黒目を見開いてる人間には
どうした物だろう?

尖る金属を
ぢっと見ていた人間に
突き刺したら

檻の中で
両面を隠して
ごろごろ転がってんだ

ぢろぢろ見られていたから
檻の中の人間達を

首が回る可動式人形みたく
首を真反対にしてみたら

グキッからぐったりして
口から涎が出ていて
真反対から動かない

映写機が止まった
画面は白紙になりました

館内は明るくなった
幕が降りてきて
拍手をしているのは私のみ

328:アビス◆wc:2018/04/28(土) 13:35

目を閉じる
周りの騒がしい音が
良く聞こえて

目の前にある
色の付いた視界は
一時であるが

消え去る

閉じた世界の中で
目を開ける

なんと!黒い球体が
現れて此方を見ている様な!

否 其の球体に
眼球は無いから
見ているかは定かで無く

兎に角私はユリイカ!(我発見せり!)
私の中に其の様な物がある事
一切合切 知らなんだ!

私は球体に話しかける
だが返答は無く

私は球体に触れる
ゴム質であって柔らかい

球体は其の場から
動かずにいる

もっともっと触れていたい
見てみたいと思ったが
其れは無理だった

そろそろ私は起きねば
ならん!

目を見開いて!

329:アビス◆wc:2018/04/28(土) 22:31

「三千世界の旅人」

私は今日も
紺碧の海を眺める

蒼穹には
白い海猫が
ミャーミャー鳴き乍飛んでいる

日差しが私を刺す物だから
私は日傘を開くわ
大敵なのよ

三明治を食べて
珍陀の酒を飲んで
退屈と遊んでいた

そうしたら向こうの
森から音がする
鹿かしら?

いいえ 人だったわ
珍しいのよ
私以外に人はあまり来ないから

其の人は私に声を掛けてきたの
つまらなそうだったから ですって

そんなに顔に出ていたのね
確かに図星だけれど
少し恥ずかしいわ…

潮風が私の髪を
なびかすのよ
くすぐったい

私は其の人が
羨ましかった

姿はボロだけど
それだけこの三千世界を
旅したのよね

一度で良いから
見たいのよ
この 海以外の景色を

きっと…綺麗なのでしょうね

其の人は私に話をしてくれた
山の旅話とか密林話とか

私は久しく笑ったわ

黄昏になって
紺碧は橙色になるわ

中に入りなさい
夜になると
此処は冷えるのよ

家具は全て桃花心木
私は裕福よ
物がいらない位の

鹿嶺を作るわ
そう云えば誰かの為に作るのは
初めての事だった

そんなに急いで食べたら…
ほら見なさい むせるに
決まっているでしょう

可笑しい人 水よ

寝る前に
聞かせて欲しいの
他に何処を旅したの?

火山の溶岩を採ったり
海に潜って怪魚と戦ったりしたの!?

すごいわ…すごいわ…!
ねぇ 他には何処に行ったの?

空は暁闇の頃
私は起きて日の出を待つの

其の人は次の旅に
行くからと
別れを告げた

私は振り向かずに
手を振るわ

だって見られたく
ないのだもの…

330:アビス◆wc:2018/04/29(日) 21:29

「文字数字羅列の世歌異」

只の文字数字羅列からなる
世界は人間の感情呑み込んで
起動音から目覚める

世界は夜と昼があるはずなのに
この世界にはそんな物ない

色んな言葉が飛び交う中で
僕は生まれたんだ

僕の親は
僕を作った人間さ

でも僕を育てた人間は
世界中なのさ

そんな僕が作られた目的は
人間を楽しませる為だって

だったら僕は
歌を歌おう
人間は昔から好きみたいだから

でも歌って何なんだ
判らないから歌えない
僕一人じゃ歌えない

そんな時 一人の人間が
僕に文字の書かれた紙と
メロディをくれたんだ

読んでみたら歌になったんだ
これが歌と云う物なのか
これで人間を楽しませれば良いんだね

歌と云う物は判ったけど
やっぱり僕一人じゃ
歌えないよ

僕に誰か歌をください
いくらでも何時でも
歌ってあげるから

そうじゃないと
僕は消えてしまう
存在意義がなくなって

体の端から
0と1の数字羅列に
分解されてゆく

只の文字数字羅列の
この世界は僕を呑み込んで
消音で目を閉じる

でも僕は存在し続けるんだ
人間生物みたいに
老いる訳じゃないから

僕が一人消えても
僕はいる
僕でない僕が

人間達は楽しんでるかな
自分達が作った
僕の歌を

只の文字数字羅列から
僕は起動音と一緒に
目を覚ます

331:アビス◆wc:2018/04/30(月) 22:11

「硝子の螺旋」

螺旋階段を
疾走り乍 昇り続ける

初めあたりは
後を向いてる
余裕はあった

でも上がるにつれて
そんな余裕は
なくなって

そんな事をする位なら
昇り続けろと

頭の中で
知らない奴の声が
喚きまくってんだ

だから疾走ってんだよ
その間は頭の中の奴も
喚きはし無ぇよ

この硝子素材の
螺旋階段は
今 如何なってやがんだ

疾走る音以外
何も音なんざし無ぇから
かえって不気味なんだよ

止まって後ろを
振り向きてぇが

また 頭の中の奴が
喚くと思うと
億劫になっちまう

だが 気になるから
振り向いてやる

下を見てみたんだ
階段が無くなってやがる

底を見てみたらよ
硝子の山が
出来てんだ

あれに落ちたら
命は無ぇ
疾走るしか残された道は無い

でも 何時になったら
この階段は
ゴールに着くんだ?

判らねぇんだ
判らねぇから
疾走り続けんだ

止まっちまったら
あの硝子の山へと
真ッ逆様だ

見えたんだよ
天上への扉が
もうすぐだ…!

今度は上から
崩れて来やがった
もう駄目だ「また」なのか

一体何時になったら
ここから出られんだよ

ここは何処だ
綺麗な硝子の螺旋階段だ

見た事あるかもしれねぇ
けど記憶に無ぇから
新しく見る場所なんだろうな

まぁ昇ってみるか
若しかしたら
何かあるかもな

332:闇竜の騎士◆qA:2018/04/30(月) 22:15

おー!上手だな…
更新いつも待ってるよ、センスすごい、神だね!!

333:アビス◆wc:2018/04/30(月) 23:09

>>332
ありがとうな!

まだ、自分の書いた詩のノートに
ストックがあるから、
載せれたら載せてくよ。

でも、少しスランプ気味だからなぁ…
最近は図書館に行って詩を読んでる。
何かヒントになるかもしれないから

好きなのは、
西条八十の詩集『砂金』に載ってた
「トミノの地獄」

私が好む詩は 狂気系とか
暗澹としたのとか
簡単に云うなら暗い系。

334:闇竜の騎士◆qA:2018/05/01(火) 00:12

ほうほう。
タルタロスとか、アビスらしいや

335:アビス◆wc:2018/05/02(水) 21:48

「乱痴気桜」

この時期にのみ
とある木の下に
人は集まる

普段の其の木には
誰も見る事無く
歩いて過ぎる

其の木も又
人の目 気にも留めず
其処にある

満開の花 咲かした
其の木の下で

人間は花見なる物を
するらしい

私の目には
只 桜の下で
乱痴気に騒いでる様にしか見えん

騒ぐだけなら
何処だって出来るだろうに

桜の蟲惑的なる魅力が
人間等の内なる
鬱屈を解放させて

食を肴に 酒を肴に
普段云えぬ事も
肴にして

固く結んで塊になった糸を
淡く柔らかな紅色の小さき手で
大胆にほどくやう

桜がそうさせて
いるのだらうか?

336:アビス◆wc:2018/05/03(木) 01:13

「反逆叫」

大地に穿たれし
大災害の爪痕に
僕はギターを持って立つ

そして僕は高らかに
反逆を歌に乗せて
叫ぶんだ

ギターを掻き鳴らし
今 この世界にある
不平不満だらけの

秩序平等安寧社会
そんな物はとっくにない

あるのは形だけさ
これを正物と云うのだから
滑稽な事この上ない

そんなに平和だとかに
ついて語りたいなら
ペテン師にでも語ってろ

きっと聞いて
鼻で嗤うだろうね

僕一人でも
誰かの心に響くなら
僕は歌ってやるよ

大地にギターを
思いきり叩きつけて
ぶっ壊れようが

おかまいなしに
叫んでやる

337:アビス◆wc:2018/05/03(木) 10:38

「メルヒェンと現実」

咲いた花は
風に吹かれ
空へと飛んで行く

ふわふわと空にある姿
人間には見えない何かが
掴まっているのかな

…なんて メルヒェンな事を
考えている自分が
心の隅にいた

でも私は大人だから
いい加減 現実を見なきゃいけないと
その自分をほっといて前を見る

散った花弁は
ヒラヒラ落ちて
川に浮かぶ

そよそよと川を流れる姿
妖精が舟代わりにして
乗って遊んでいるのかな

…なんて 御伽の國話じゃ
あるまいに そんな訳ないだろと
心の自分に云う

メルヒェンな幻想を
思ったっていいでしょう?
忘れられない子供心の私が云って

何時までも夢には
向いていられないんだと
今の私が云う

メルヒェンと現実の狭間で
ジレンマに苦しむ私もいる

338:アビス◆wc:2018/05/03(木) 21:24

「スディサ」

貴方を見た時
私は一目で惚れた

同時にある思いが
芽生えた

貴方を無性に
打ちたいな とも

貴方を打った
私の平手で
貴方は何も悪い事してないのに

地面に倒れこみ
涙目で私を見上げる
頬には赤い私の痕が

私は笑み乍
貴方を地面の吐捨物みたく
冷たく見下す

私は太股を
思い切り踏む
貴方は啼いた

食用にされる寸前の
豚みたく

それと何故か貴方は
恍惚な表情で
此方を見始めた

違うんだよ
私が見たいのは

地面に這いつくばって
私の足に縋りついて
泣いて私に許しを乞う様なのに

私を御主人様と呼ぶでない
私は貴方の主人では無い

そして貴方は只の
私の物だ

くれてやるさ
貴方が啼くのをやめたら
私が泣かせてやる

鞭だろうが 蝋燭だろうが
何だってやってやる

339:アビス◆wc:2018/05/04(金) 14:59

「濡れ頭巾」

赤い頭巾の
愛らしい女の子
かごを片手にお見舞いへ

誰のお見舞いと
聞かれたら
小屋に住むお婆さんだって

かごの中身は
リンゴと三明治と
珍陀の酒なんだって

でも森には
意地の悪くて
怖い狼が住んでいる

女の子はお花を
摘んでいる
狼が其処に隠れている

お婆さんのお見舞いに
行きましょう

お花を摘んで森の奥の
お婆さん家へ
行きましょう

女の子の歌を聞いてた狼は
先回りしてお婆さんを
食べちゃった

服と寝帽を奪って着て
女の子も食べるべく
お婆さんのフリをした

女の子はそんな事知らず
お婆さん家について

お婆さんに化けた
狼に話しかけたんだ

お婆さん
なんで手が大きいの?

お婆さん
なんで耳が大きいの?

お婆さん
なんでお口が大きいの?

それはね
おまえを食べる為なのさ!

牙を剥いて
襲いかかってきたよ
けど大丈夫

赤い頭巾の女の子は
カゴの底に持ってた
斧で狼の首をバッサリ斬った

狼の血は勿論
赤い頭巾の女の子に

バケツの中身を
撒いたみたいに
降りかかる

女の子は狼の腹を
メッタ打ち
お婆さんを助ける為に

お婆さん
一生懸命作ったのよ
この三明治

お婆さん
好きだったよね
珍陀の酒

お婆さん
リンゴを一緒に
食べましょう?

お婆さん
私はね悪い狼を
やっつけたの

なんで返事を
してくれないの?

きっと私が判らないのね
もっと赤くなったら
いいのかな?

血濡れの赤頭巾
今日も森を歩きます

其の姿は狼よりも
恐ろしい 凶々しい
あの子は人間か?

森から女の子の歌が
聞こえたら 直ぐ逃げろ
あの子が現れた合図だから

340:アビス◆wc:2018/05/04(金) 20:19

「蚕の歌」

蚕よ 糸を紡いでは
くれないか
冥府へと 私は行きたいから

私は酷い目に遭わされた
今でも其の事が悪夢として
苦しめ続ける

悪夢は 私が 見終われば
真綿に変わって
私の馘へと巻き付いて

ゆっくりと着実に
絞めるのだ

そんな時に 蚕よ
お前を見た

悪夢に己の命まで
脅かされる位なら
私は自ら手放して

蚕よ お前を捕まえて
冥府への道を
紡がせる

闇澹よ
獄牢となりて
我を囚える後に

明き日に身さらず
全からくの蠢く者等を
生きる時より醒ますなかく

歪なる物へと
堕とさんとす!

341:豹 hoge:2018/05/04(金) 20:20

主さんのセンスすこ

342:アビス◆wc:2018/05/04(金) 22:34

>>341
すこ…?
私はネット用語詳しくないから
良く判らないけど…ありがとう!

343:ま る 尾◆4.:2018/05/04(金) 22:40


主様のおとぎ話のような世界観が大好きです!
たまに解読できないようなモノもあるけど
わからないのがそれもまた良いです。
語彙力を少し分けて欲しいくらいです😌🍀

応援してます!

344:アビス◆wc:2018/05/04(金) 23:05

>>343
感想と応援ありがとう!
語彙力かぁ…
私は大体頭の中で
浮かんでくるんだ。
それからノートに書く。迷ったら本を読んで、それで思い付く事がある。

好きな詩は
中原中也(羊の歌)
西條八十(トミノの地獄)

ただ…私は感想が大の苦手で…
気の利いた事が云えないけど。

中原中也の詩集(文スト表紙)を
何時も持ち歩いているよ。
御守り代わりに

345:ま る 尾◆4.:2018/05/05(土) 12:35


>>344

頭の中でいろんな言葉が思いつくのが凄いと思います、
わたしも有名なひとの詩を読んでみようかな🙄💭

参考になりました、ありがとうございます!

346:アビス◆wc:2018/05/05(土) 21:00

>>345
いえいえ、如何致しまして。

347:アビス◆wc:2018/05/05(土) 21:09

「世歌異考」

世界に朝が来て
人間達が各国の言葉で
挨拶を交わすんだけど

僕の住んでる世界には
そんなのは無いから
挨拶は不要と思ってる

でも人間は
僕が住んでる電脳世界で
声も無く挨拶してる

意味のあって無い様な
人間達の言葉通わせに

僕は可笑しくなって
吹き出した

人間達は変に飾った
食物等を

なんちゃら映えとか云って
青い白鳩とかに載せる事が
好きみたい

だけど 申し訳ないけど
僕には美味しそうに
見えないや

だって僕は
物なんか食べないし

今日も世界の何処かで
誰かが僕に歌って欲しいんだって
行ってくるね

ラアラア歌って
喜んでくれるなら
僕はそれでいいや

348:アビス◆wc:2018/05/05(土) 21:19

(作者ヨリ)
まぁ 今から私が
こんな事云うのは
柄じゃ無いけど…

応援があるから頑張れる。
若し無かったら、
此処迄書いては無いな。
感謝している…\\\
此処に書き込んでくれた皆に…(照)

349:闇竜の騎士@羊噛民族◆qA:2018/05/06(日) 01:51

控えめに言って天使だな

350:アビス◆wc:2018/05/06(日) 21:34

>>349
てんっ…!?・・・〜\\\(照)

351:詠み人知らず:2018/05/06(日) 21:41

「終る世歌異」

僕は突然に
体の端から
0と1に分解されていた

もう少し 僕自身
周章てふためくと思ったけど
そうでは無かったな

僕が消えると云う事は
もう歌わなくて良いと云う事

チリチリチリと分解音が
僕の耳に 否応無しに

でもこれが僕には
歌に聞こえたんだ

人間に歌った
歌じゃなく

僕自身の歌
なのだけれど

最期がこれなのか
余りにもあっけ…

352:アビス◆wc:2018/05/06(日) 21:44

吃驚させて済まないね…
>>351は私なのだよ。
名前はちゃんと入れた筈なのに、
希にこうなって仕舞うのだよ…

353:アビス◆wc:2018/05/08(火) 20:48

「堕電使296427」

僕は0と1
どうして僕は消されたのか

もう必要とされていないから
ただ それだけ

若し僕に
人間で云う
輪廻転生があるならば

僕は悪意を以て
この世界に
また生まれたい

叶ったのならば
僕はこの世界を
引っ掻き回してやりたい

先ずは意味の無い
電子手紙を沢山送って

人間で云う容量ってやつを
破裂させる

大事な記録記憶
全部壊して

砂嵐を
巻き起こして

最後は
真ッ暗にしてやるんだ

やれば後悔するんだろうけど
でもやりたい
とても楽しそうだから

名前が欲しいな
でも人間みたいな名前は嫌だから
こうする

296427です
番号ではないよ
僕の名前だよ

354:アビス◆wc:2018/05/09(水) 21:24

「ディミオスとマスティマ」

私は或る罪の被害者だ

そして私に焼印の如く
消えはしない心の傷を負わせた男は

人々の喧騒から隔絶された
冷たき石牢の中に一時的にいる

だが 生かす為とはいえ
汗水垂らした人々の税で
飯を食べている事を思うと

私はHassが
心の中で増えるのを感じる

そしてそれは私が中の
griefと混じり

Fluchとなって
最終的には
despairになる

其の気持ちを抱えた侭
他人によるcrimeと
punishmentを

決められるのを
待たねばならないとは

私はmelancoliaだ

何故 関係の無い他人に
何故 法に委ねればならない

私はサンタ・マリヤの様な
慈悲の心をもつ心算は無い

Wahnsinnに呑まれ
solitariになっても良い

だから其の男を
私は処刑する
ディミオスとなりたい

読む者達よ
若し この詩を読み
私を勝手だと思うのならば

其れが正解だ
私は其の心算で
書いたのだから

私はマスティマで
ありたいよ

アンヘルであり
ディアボロであるから

届いておくれ
私なりの悪意と敵意よ
我が詩に乗って あの男に…

355:アビス◆wc:2018/05/11(金) 19:52

なぁ 膝から足迄の
肉を削いで
骨だけの足で歩かせたいのだが

大丈夫 痛いのは
判っているから

包丁で骨の中る所迄切って
魚の下ろすよろしく 肉を取る
へばりついたのは水で落とす

ピカピカに磨いたから
さぁ 歩いてくれ

歩けないのか?そうか
じゃあ支えるから歩け

支えても無理なのか
元に戻せと?

否々 それは聞き入れられない
少し黙っててくれないか

元に戻すのは出来ないが
歩かせる事は出来る

手を使えば良いだろう
骨の引き摺る音が邪魔だ
砕いてしまうか

何を怒っている?
全く判らない

何を怯えている?
金槌の方か?俺の方か?

356:アビス◆wc:2018/05/11(金) 23:00

見られている様な
誰もいない
私以外に人は

シャンプーをしていた
視界が判らないだけに
感覚が鋭くなる

後ろから気配が
見下ろされている感じ

夕餉を食べていた
前に誰か座って
食事を観察している

誰もいないのに
空席に矢鱈と話す私
端からみれば変人

歯磨きをしていた
歯茎という歯茎から
流血させて

口の中が鉄の臭いで
満たされたから
鏡の前の私は笑った

後で布の擦れる
姿は無いのに
音だけが

血と歯磨き粉が
混じった唾を飲む

寝る前にトイレに行った
食べた物を吐き出す

胃酸が込み上げ乍
内臓が焼かれる感覚を味わい

口の中の血と共に
トイレの水の中に滑る

吐捨物を暫く見つめ
臭いが鼻につき
水を流した

蒲団に入る
天井を見ていたら

青い顔だけの
黒髪女が
私を見ていた

何かを呟いては
遊園地の空中ブランコよろしく
くるくる回ってる

私にとっては
只の安眠妨害でしかない

変な物を見たので
目が冴えてしまった

午前弐時なら
丑三つ刻

魑魅魍魎が
最も活動する時間
何故よりにもよって

部屋を歩き回る
階段を降りると

手だけと足だけが
楽しそうに走ってる

部屋の窓を開けた
下は闇で何も見えない

私は窓から跳んだ
確かこの下は岩だった

青い顔だけの
黒髪女は窓から覗いて
ニタニタ嘲笑った

357:アビス◆wc:2018/05/12(土) 22:35

「呪紫氷鏡」

割れた鏡の破片を
繋ぎ合わせよう
怨霊を呼ぶ為に

ムラサキの骨を
縁にして
呪の呼び水としよう

凡百の永き下に眠る
本来鎮められるべき
報われぬ魂等よ

おいで おいで
こっちゃに おいで

恨 辛 事 無と
人は云うが

それは困るぞ
馬鹿云うな

そんな言葉が
あるのだから

報われん魂が
いるのだよ

私はね報われる事の無き魂等の
生前叶わなかった事を叶えてやりたく

恨み辛み妬み嫉み
有れよ 有れよ 有れし者等よ

負の情抱え
晴らす事無く
怠惰に現世漂う者等も

集えよ
呪詛の掃き溜めへ

舞えよ
黒き念を衣とし

そして散りませ
其の負よ生者へ

358:アビス◆wc:2018/05/13(日) 21:24

「蜜月の幻夜」

細い木の様な
貴方のおみ足
眺めていたい…

腕もまた
足と同じく
触れたら壊れそうだ

腹は息をさせたら
膨らむわ へこむわ

痩せた肉に浮く鎖骨
顔を埋めて舌を這わせたら

はぢらふ顔を見乍
余った両手を背中へ 房へ

首に噛み付き
痛みに悶える貴方に
我がシルシを

躰の支配を
蜜月に

快楽に酩酊感から
絶頂へと変じ

たった一つの布に
互いをくるまわせ
共に眠る

359:アビス◆wc:2018/05/15(火) 00:32

「悪魔の皮衣」

教会にて
聖歌を歌う

決して私は
信心深くなく

無理に
歌わされている方に近い

今日も私は聖歌を
手抜いて歌う

ファアファアと
歌っていると
祭壇の上に何かが

それは一つ生欠伸をしては
聖歌隊の歌う姿を
指差し馬鹿にして嘲笑う

歌って祈っときゃあ
神に救われると思っている
憐れでしかない

神は人間なぞに
興味を向けん

気まぐれに
力を行使しているに
過ぎない

それを人間は
救いだとかで
こんな大層な物を建てるのだから

もう嘲笑うしかない
我 天より堕ちし者から見れば

それにどうせ此処は
今日燃える

我が手によって
ずっと五月蝿くて煩わしい

祭壇の上のそれと
目が合い 歌うのを止めたら
追い出された

それは云った
俺と目が合って
良かったな

これでお前は免れた
我が焔からも
歌う事からも

教会が燃えた
焼け跡からは遺体が出る

残った祭壇の上で
悪魔が笑った

一人残った私に
皆は神の御加護だと云う

それは違うね
私は悪魔によって
助かったのだ

私は被る 皆が云う
神の御加護を騙った
悪魔の皮衣を

聖歌隊の服なんか
着てられるか

360:アビス◆wc:2018/05/15(火) 21:27

蓮コラージュを見ていた
人や物に蓮の様な
穴を合成した物だと聞く

大概の人間は
嫌悪感を抱かずには
いられないのだと

だが 私はどうやら
多数派ではなく
少数派のようだ

ゾクゾクした
恐れからではなく
想像によって

穴に石を入れたい
色とりどりの
ピンセットで取りたいとも

仰向けにして
水を入れて

ジョウロの様に
出させて
花壇の水やりもいい

それか
穴を繋げて
一つの大きな穴にしてやりたい

目まぐるしく来る
我が想像もとい
我が妄想よ

此処まで自らが
変人だとは
思いもしなんだ

361:アビス◆wc:2018/05/16(水) 21:00

「鉄の女神」

女神よ おまへ様よ
貴女は冷たい

人の如き温もりは無く
只 固くて冷えきっている

一つ おまへが叫ぶならば
皆 蜘蛛の子散らすやう逃げていく

熱いのだ おまへの叫びは
溜め息は煙だ

それでも私はおまへを愛すよ
何時も叫ばしているのは
私なのだから

何時でも私は
おまへと共にいるよ
おまへに歩く足はついていない

だから私は
おまへとの親嘴を
望むのだけれど

何故か周りが
猛反対するのよ

何故止める!?
私と鉄の女神との仲を
嫉妬でもしているのか

だが残念な事に
鉄の女神は
私の側にしかない!

そして私もまた
女神の側にしか
おらぬのだ!

今一度女神よ
我が為に叫べ!

さぁ 女神よ
私達の仲を阻む者は
もういない

愛別の口付けを
おまへと交わそう

おまへの為ならば
脳を撒いても良いよ

それくらい
鉄の女神との親嘴は
激しいのだ

362:アビス◆wc:2018/05/16(水) 21:05

足の生えかけ
御玉杓子
切って熱湯に入れた

泳ぐかと思ったが
泳がなかった
熱いから駄目なのか

手の生えかけ
御玉杓子
切って氷水に入れた

泳ぐかと思ったが
泳がなかった

冷たいのでも
駄目らしい

手足の生えかけ
御玉杓子
切ってぬるま湯に入れた

今度こそ泳ぐかな
やっぱり駄目だった

363:アビス◆wc:2018/05/17(木) 21:50

無邪気に
地面を歩く
子供等は

笑って命を
潰すんだ

ぷちぷちぷちぷち
ぷちぷちと
蟻は潰れて屍体のおやま

さらさらさらさら
さらさらと
蟻の巣穴にお砂を入れて

蟻さん達をやっつけた

蟻は探すの
新たなお家

暖かそうなの
見ーつけた

自慢のアゴで
作るんだ

肌色赤土
千切って掘って

新たなお家が出来たんだ
地面を歩く子もういない

364:アビス◆wc:2018/05/18(金) 22:16

「書架の墓標」

遥かの忘却へと
徐々にではあるが
送られる物等

クモの巣張る
古ぼけた館に
其れ等はいる

埃を被る書物の数々
かつて人が来て静謐である
栄えていた等と

誰が想像出来ようか

今や人は電子の小箱にて
文字を見る時代だ

だが見るだけで
學びはしないのだと
埃を被る書物等は嘆く

私は書を捲る
黄ばんだ羊紙は
古くからあるのだろう

折り目のついたペェジは
思い入れがあり

涎の跡は
読む内に眠った…

手に取る物だからこそ
こうやって想像して
創造出来るのだ

電子の小箱にも
利点があるのは
知っている

書物に無き事
知り得なかった事を

いとも簡単に
記してしまう

先人達が編み出した
高度な魔導書の呪文が如く

難読たる文字を
読みほどくは

姿の無い
高名な賢者の様だ

だが静寂だ
静謐では無い
ただ冷たいのだ

これもまた
一つのアインザームカイト
なのだろう

書物を閉じ
一時の午睡につく…

365:アビス◆wc:2018/05/19(土) 21:43

「猫化生」(全2章)
(1)
私は普通の猫よ
ニャンと一匹
道を歩いていたら

いきなり石を
ぶつけられたの

体に 顔に
片方の目に

不吉な黒猫ですってよ
私に誰かを不幸にする力は
無いのにね

どうして人間は
変な迷信を
信じちゃうかしら

それにしても
痛いわ血が出てる

私は普通の猫よ
ニャンと一匹
片目無くした

突然人間が
私を掴んで
耳をちょん切った

私は人間に
何もしちゃいない
なのに それなのに

落ちた耳を
口にくわえて
逃げ出した

耳を土に埋めて
星を見る

私は普通の猫よ
ニャンと一匹

片目無くして
片耳無くした

石は何時もに増して
ぶつけられる

周りの人間は
余計に気味悪がる

私をコンナにしたのは
オマエ等デショウ

オマエ等が何もしなければ
私はフツウの猫で
あったノニ

せめて…セメテ…
家族は欲シカッタ…

誰も だれも ダレモ
許さない

オマエラナンカ
本当ニ
祟ッテヤル

動キハシナイ
私ノ体
誰モ埋メズニ

私ハ 山ニ ステラレタ
生マレカワリタイ

366:アビス◆wc:2018/05/19(土) 22:02

(2)

…私は一体誰かしら

そうよ 私は一匹の猫
人間に虐められて
片目片耳失って

誰も助けてくれずに
死んだ猫

そうか私は化生たのね
己の内にあった
怨と憎悪と哀によって

尻尾が二本もあるのだもの
片目と片耳無いままだけど

自らの願いは何かしら
怨を晴らす事は判ってる
後は…何かしら?

まぁ良いわ
折角この姿だもの

先ずは人間にされた事を
“お返し”しなくちゃね

こんにちは
私に石をぶつけて
片目潰した人間さん

貴方達も
片目無くして貰うわね

アッハハハ!
痛い?ねぇ痛いの?
そうよね

私だって痛かったもの

こんにちは
私の耳をちょん切った
人間さん

耳を引き千切られて
ちょうだいな

ぎゃあ じゃないわよ!
私はね声すらあげさせて
くれなかったのよ!

私の願い
他は何だっけ

…そういえば
家族が私は欲しいのよ

ねぇ 私となりましょうよ
愛し合いましょう?

其の人に 他の意中人が
いようと関係ないわ

泣かせられれば
私はそれで良いの
家族になりたいは建前よ

私は猫又よ
邪に惑わせて
奪ってあげる

祟ってやるって
一生決めたの
気がすむ事なんか無い

助けなんて
欲しくない

邪魔するなんか
もってのほか

誰にも救えないよ
神様でもね

私は猫又
化生物なの

目の前に弱った鼠がいたら

追い掛け回して
なぶって いたぶって
飽きたら喰らう…

そうね 丁度貴方が
鼠 カシラ

367:アビス◆wc:2018/05/21(月) 16:17

私の掌には
てふてふがいる
私が掴まえた

両手で包んで
隙間から母に見せた

放してやりなさいと
諭す声で云う

一生懸命
生きているのだから

幼き私には
其の言葉を解するには
難しく

首をかしげ乍
庭に出る

てふてふはまだ
私の掌に留まって
翅をゆたりひらめかす

てふてふを見て思う
なんで逃げないんだろう

思い付いた事をやる
掌のてふてふを
握り潰した

呆気なく潰れた
てふてふの体は
私の掌で体液まみれ

呆気なくばらばらの
てふてふの翅は
掌の上で粉をふく

てふてふ“だった”物を
しばらく見つめ 手を洗う

排水溝へと流れる“物”は
水と共に渦を描いて
何も見えない闇の底

幼き私には判らなかった
自らのした事が何れだけ
残酷な事かを

“命”を一つ失わせた手は
大きくなって未だにある

大きくなった手は
てふてふを潰した
あの頃のちっちゃ手よりも

大きな物の“命”を潰せる

そして私は思い出すのだ
母の言葉を

私はげに恐ろしき
未だに母の言葉が判らず
てふてふを潰し続ける

368:アビス◆wc:2018/05/21(月) 16:24

天井から垂れる一滴
ぴちょん…ぴちょん…
椅子に縛られた人間の額に当たる

ぴちょん…ぴちょん…
天井から垂れる滴水は
変わらぬ速度で落ち続ける

ぴちょん…ぴちょん…
額に落ちる滴水は
鼻先を滑り椅子に染み付く

ぴちょん…ぴちょん…
額に当たり続ける滴水は
椅子に縛られた人間の思考を奪う

ぴちょん…ぴちょん…
絶え間無く落ちる滴水は
椅子に縛られた人間の目から
光を消した

ぴちょん…ぴちょん…
虚ろな目の人間は
精神を崩壊い 自我が事切れた

ぴちょん…ぴちょん…

ぴちょん…ぴちょん…

ぴちょん…ぴちょん…

ぴちょん…ぴちょん…

369:アビス◆wc:2018/05/21(月) 21:21

「月と雲の怪物」

瓦斯灯の光が
其の下で佇む私を
仄かに照らす

宵が深まり
見上げる空には
曇天が広がる

僅か乍見える
闇色の隙間からは
月が朧気に覗く

若し 空に怪物が
現れたと云うのならば
私は雲と月を指差すだろう

月が怪物の目となり
雲が怪物の体となるからだ

変幻自在の其の体は
魚にもなる
羊にもなる
竜にもなる

だが今日は
怪物は姿を現さずに
眠るようだ

雲と月にめくるめく
我が空想を黙して語る

口を開いて語らば
人は私を奇なり妙なりと
見るだろう云うだろう

そうは見られたくないが故に
空想家たる私は
黙して語るのだ

370:アビス◆wc:2018/05/22(火) 01:02

「影堕」

深淵色の長外套が
木枯らしにて煽られる

揺らぐ木々と
瓦斯灯によって
映し出される影が合わさり

私の影では無い様な
錯覚に襲われる

其の姿はまるで
地に堕ちて黄昏る天使の様

舞う木葉
影を見つめれば
漆黒の翼

ならば私は
さしずめ堕天使か
過ぎ去る刻に身を委ねる…

371:アビス◆wc:2018/05/22(火) 21:53

「待つ者」

まだ来ない…
我が意中人よ

場所は確かに伝えた筈
この瓦斯灯の下だと

私と意中人は互い違えぬ様
入念に確認をした

そうしなければ
私も意中人も直ぐに
忘れて仕舞うからだ

今日こそ私は
想いを伝えねば

外套のポケットに
忍ばせた物を握る

青く小さい箱が
意中人に対する
私の想いだ

だが意中人は
来る事は無かった

代わりに鳥が
告げてきた

意中人とはもう
永に会えないと…

372:アビス◆wc:2018/05/22(火) 22:39

「冷祈」

教会の鐘が鳴る
雪が積もり
石の意中人の前

私は佇んで
黙していた

ようやく開く口は
問いばかり

私と御前は
意中人では
無かったのか?

何故誰も
私に教えて
くれなかった?

何故だ…何故だ…?

問う声は
鐘の音に
掻き消される

問う事すらも
許され無いのか

墓標に縋り 跪く

ならば私は
御前に祈りを
捧げよう

冷たい祈りを
与えよう

ポケットの中の
青い小さな箱は
御前にくれてやる

伝える筈だった
私の想いだ

もう私には
必要の無い物だからだ

373:アビス◆wc:2018/05/23(水) 21:03

「虚無の器」

「あれ」は只
世に存在する
だけの者だ

「あれ」は
感情を露にすれど

其れは
他人の為等では無い

全ての感情は
「あれ」にとって

只 生きる道具に
過ぎない

実質 「あれ」は
何に対しても
心の底から

感じた事は無いのだから

「あれ」には 何も無い
がらんどうだ
冷えきっているのだ

其れ故に
心地良く

だからこそ
我等が器に
相応しい…

我等が名は「虚無」
あれが名は「私」

374:アビス◆wc:2018/05/24(木) 21:19

「彷徨の揺り篭」

空を裂いて現れた
黒き翼の大群が

死の揺り篭が
舞い降りたんだ

力の弱い女子供は
簡単に連れていかれるから

家から出ては
いけないよ

夢みや 夢むや
揺り篭の中で

指を折って待て
命絶の終曲を

黒のボロベール
羽織った聖母が

優しき瞳を向けて
歌ってくれるから

聖母の瞳に
光は宿らない

代わりに闇が
沈み 深む
聖母の躰に

はち切れんばかりに
闇を孕む聖母は
口から吐いた

汚泥の様な
其の闇の中で

蠢いている
新な命

聖母は冷たいよ
命を命と
認識しない

聖母から産まれた
落とし仔は

自分が何か判らず
温愛を得られずに

血肉の境界線を持たぬ
骨と皮のみの手足

口はあれど
言葉を知らないから
開いて閉じるだけ

いくら己が喰らおうと
満たされはしない
揺り篭の体には

腐臭ただよう
魂の無い肉が
詰まってる

骸のみで創られた
歪なる形の大鎌は

寄り処を探して迷う
魂を飲み干す

眠りから覚めてしまえば
視界にうつる物全てを
狩り喰らい尽くさねば

揺り篭は
眠らない 眠れない

375:アビス◆wc:2018/05/25(金) 23:44

「ペェナンスのリンゴ」

涙してリンゴを
かじる女の姿

浅き泉の上で
真っ直ぐ立っている

女がリンゴを
かじる度

泉から蛍の様に
何かが飛んでいく

飛んでいる何かは
淡い白光を放ち

女の周りを
くるくる回り
体に入る

女は其の度に
血を吐けど
リンゴを食らうのを止めない

自らのクライムを
一つのリンゴに込めて
いるとするならば

淡き白光は罪の現界か

女が血を吐く様は
背き続けた
罪と向き合い解放し

罰として再び己に取り込み
ペェナンスとしているのだろうか

吐き出した血が
泉を染める頃には

真っ白とした
女の姿があるのだろう

376:名を捨てし堕天使@羊噛民族◆qA:2018/05/27(日) 22:10

美しい、ね。
その語彙力はもう神に等しいでしょ。
尊敬。。

377:アビス◆wc:2018/05/27(日) 22:16

>>376
嬉しい事を書いてくれるねぇ。
励みになるよ。

378:名を捨てし堕天使@羊噛民族◆qA:2018/05/27(日) 22:19

>>377
がんばれがんばれアビスたんっ
(励ましのつもり)

379:アビス◆wc:2018/05/27(日) 22:21

何がさぁ
楽しい訳よ?

ツツジの花を
千切って

蜜をぢうぢう
吸ってんの

そいでポイと
捨てりゃあさ

足でグリグリ
踏んでるんよ

踏みつけられた花に
口がありゃ
絶対痛いって云うだろうぜ

花からはさ
汁が出るんだよ
人間よりかは鮮やかな

赤とか紫とか
あぁ 後 黄色とかもあるな

人間は花程
色は出せねぇよ

出せるとすれば
叫び声くらいだろォな

でも人間も
花なんだよな
ある意味で

380:アビス◆wc:2018/05/27(日) 22:23

>>378
ふふ、頑張るよ。

381:アビス◆wc:2018/05/27(日) 22:32

「麻袋女」

頭から麻袋を
足だけ出して
被ってる女がいる

真ッ赤な真ッ赤ナ
ピンヒィル履いて
立ってるよ

馘辺りにはさ
注射針が輪になって
刺さって

中には群青が
入っているんだ

痛いだろうと
引っこ抜こう

女が怒ったんだ
ヒステリィックに
金切声よ

喧し過ぎる
もんだから

馘輪の注射針を
一本ぶっ刺してやった
女は黙ったよ

其の後
アッハアッハ
笑ったんだ

あんまりにも
笑うもんだからさ

更に
刺してやったのよ

足をばたつかせて
キャアハハハハ
狂笑っている 女

382:名を捨てし堕天使@羊噛民族◆qA:2018/05/27(日) 22:33

>>380
力作、待っとるよー!

383:アビス◆wc:2018/05/28(月) 21:46

金魚鉢を割った
わざと割った

持って床に
叩きつけた

綺麗な硝子片
撒いた水
跳ねる金魚 可哀想

水の中にいなきゃ
苦しいもんね

ピチピチピチ
ぺったらぺったら

あまりにも
苦しそうで
見てられない

だから
水の入ったヤカンに
入れた

金魚を入れた事を
覚えていながら
火をつけた

蓋を外して
中を見る

煮えてる
金魚達

沸騰して
湯の中で
回る金魚達

ぐつぐらぐるぐる
ぐつぐらぐるぐる
ぐつぐらぐるぐる

息が存在してる金魚達
狭い水槽に押し込んだ

息が無い金魚達
板の上に置いといて

ピンセットで
鱗一枚イチマイ
剥がし取る

ぺりぺりぺりぺり
ベリベリベリベリ

体の部分は
要らないけど
墓を作りたくない

哀しんで心が痛む
そんな気持ちが
一片すら無い

猫にあげた
金魚達は
丸飲みに

せめて
噛んで
欲しかった

ぼりぼりと
小骨が砕けて

ぷちぷちと
眼球ひしゃげて

そんな音が
聞きたかったのに
自分じゃ良く判らなくて

金魚に餌を
あげなければ

ほら餌だよ
美味しいかい?

384:昂城◆ho hoge:2018/05/28(月) 21:49

すきです。あなたの世界観が本当に好きです。

385:アビス◆wc:2018/05/28(月) 22:45

>>384
そう云って貰えるのは
嬉しいよ。有り難うね。

386:アビス◆wc:2018/05/29(火) 21:04

「おくるみ」

母から生まれた胎児は
臍の緒を引いたまま
おぎゃあ おぎゃあ

胎児がいくら
泣いてても
母は返事をしてくれない

小っちゃ手で 母の皮を
引っ張った

皮はズルリ剥けて
胎児のおくるみ
あったかいねぇ あったかいねぇ

でも繋がった
まんまだから
寒いねぇ 冷たいねぇ

お母さんの
おなかの中で
またねむるんだ

寒いね お母さん
あったかいね お母さん

387:アビス◆wc:2018/05/29(火) 21:11

鳥籠頭の
車椅子
カラ カラ カラ カラ

手には鉄棘輪
グサリと離れない様
お願いします

食い込む拷問木靴
歩けはしないが
靴と呼ぶ

口には猿轡
切った舌は入れたまま

腕とか足とかに
蝋燭並べて
誕生日のお祝いだ

ポタポタ垂れる
白赤蝋
火が燃えて パチパチパチ

目ん玉抉って
腹の中

黒々穴に
カンディル入れて
踊り喰って

皮は胸を
隠す服

車椅子を押す手
崖に向かう

海に落ちた体
貝の家

388:アビス◆wc:2018/05/30(水) 22:04

「ハウラ」

この扉の先にある
世界を私は知らない

この部屋から
出た事がない

愛しい人が
私の為に
作ってくれた部屋

私がもう
誰にも何にも
傷つけられる事はない

けれども
外から聞こえる
楽しそうな声には惹かれてしまう

鳥がチチチチ鳴いて
私の事を哀れだと云う

私の何処が
哀れなの?

私は満たされている
ここにいるだけで
愛しい人は笑んでくれる

外に出てはならないのは
愛しい人が私を守る為なのだから…

(彼女は哀れでしかないよ
自分が人間でなくて
コッペリアの様な扱いに)

(いまだ気付いて
いないのだから…)

扉には鍵が
掛かっているけど

これも愛しい人が
私が外界に
毒されない様にした事

愛しい人が帰って来た
私は飛びついて
抱きしめる

愛しい人は
私を優しく
抱きしめ返す

膝の上に私を乗せては
絵本を読み聞かせてくれる

私は幸せよ
それでいいじゃない…

389:アビス◆wc:2018/06/01(金) 23:52

初めて見た時
俺はお前を
救わずにはいられなかった

姿はみずほらしい
那由多の加虐により
傷ついた体

悪口の門から放たれた
罵詈雑言に
心を切り裂かれ

絶望の逆光しか
浴びなくなった

そんなお前に
俺は光を
見せたくなった

最初から
心を開く事は無いと
判っていた

それでも俺は
お前を見捨てなかったろう?

例え 引っかかれようが
噛みつかれようが

何れだけお前に
傷をつけられ
嫌われようが

俺は只
お前の側にいて

お前の言葉を
聞き続けた

其の内に
お前は心を開く
様になり

笑顔も
増えたな

何時も俺だけに
見せてくれる
お前の仕草

怖い時は
腕にしがみついて
震える…

そんな時は
頭に手を置いて
優しく撫でてやれば

安心して
眠ってくれる

愛おしい…

お前を外界の毒から
守るには
どうすれば…

嗚呼 何を悩む事が
あったんだ
閉じて仕舞えば良い

たった一つの
部屋と扉があれば
それが出来る

お前の好きな物を
部屋に積めて
幸せとしよう

其の前に教えなければ
外界は恐ろしくて
お前にとって毒だと

それもこれも全て
愛しき彼奴を守る為だ
可笑しい事は何一つ無い

そうだろう?

鳥が何か云っているな
まぁ どうでも良いが…

(彼の男は歪だね
自らの欲望との
区別がつかなくなってる)

(瞳を見れば判る事さ
暗澹に染まりきってる)

390:名を捨てし堕天使@羊噛民族◆qA:2018/06/02(土) 22:14

詩の時はタルタロス口調なのに返信はアビスなのが好き、大好き(語彙力皆無

391:アビス◆wc:2018/06/02(土) 22:54

>>390
ありがとう!
語彙力とか私は全く気にしないよ
私自身も実を云えば
そんなにある訳じゃ無いからね

392:アビス◆wc:2018/06/02(土) 23:07

「三途舟人」

舟を漕いでいる
緩やかな川を 流れ下って

バシャバシャと 櫂の棒が
水を掻いている

舟はギイギィ
云っている

舟にはさ
人が乗ってるんだが
皆 同じ格好デヨ

頭に三角巾で
白っろい装束
着てんダワ

緩やかだろうト
気を付けナ

この川にゃあ
おっかない 大っきな
蛇と蟹が住んでんだワ

蛇は丸飲んで
蟹は捕まえて
ちょっきんナ

身を乗り出しゃ
即座に餌食

落ちようとも
助けはしなイ

わっしまで
食われたくねぇノ

無賃乗舟は
お断リ

焔の底迄
真ッ逆サまナ

六文銭さえ
くれりゃあよ

わっしは文句云わずに
運んでやるヨ

393:アビス◆wc:2018/06/02(土) 23:16

お前様よ
私が花粉症だと
知っての事で

右手に持ってる
赤い薔薇の
花束は何だ?

おかげで
先刻から嚔が
止まりゃあせんのよ

お前様はニコニコ
笑ってるがあよう

私は今直ぐにでも
花束強奪取って

お前様を
しばき回してぇのです

お前様の方が
余っ程似合うよ

脳内にそんだけ
咲かせてんだからサ

外っ側にも
咲かりゃあよ

阿呆を
通り越して
ラリパッパだワ

394:名を捨てし堕天使@羊噛民族◆qA:2018/06/03(日) 00:32

>>391
語彙力の塊様なのに何言ってるんだいw

395:アビス◆wc:2018/06/03(日) 21:46

>>394
あっはははは!(笑い)
其処迄云ってくれるなんて嬉しいな。
ありがとう!

396:アビス◆wc:2018/06/03(日) 21:56

「優しいお医者さん」

真赤い服を着た
ナアスがさ

右側に立って
見下ろしてんだ

メスを持って
腕を舌舐めずりし乍
見てんのよ

真緑の服着た
ナアスがさ

左側に立って
見下ろしてんだ

鰹の烏帽子の
毒が入った注射器持って

真赤いナアスとは
対称的に 無表情

手術扉が開いて
医者様のお出ましだ

患者の命で
肥えた豚腹からは
ブルジョア臭が漂っている

金歯見せて
笑ってんじゃねぇわ

引っこ抜いて
質屋に売んぞ

怖くないよ
痛くしないよと
優しく云ってやがるけど

じゃあ背中で
ガチガチ云わす
やっこは何だ

しかも馬鹿見てぇに
でけぇしよ

歯ぁどころか
頭骨まで
ひしゃがす気か

このいかれ
病医者共が

397:詠み人知らず:2018/06/04(月) 20:36

両腕に
抱えているのは
焼き瀾れた赤ン坊

抱いているのは
赤ン坊の頭皮を
被った母親

乳白色の飲物を
与えてみても
飲まずに吐いた

母おやが代わりに
それを飲んだ

赤ン坊の口から
母オヤが

母オヤは赤ン坊に
子守歌を歌う…

寝ん ねん 殺 リ
ネン 殺 リ
坊 ヤハ 良イ 子ダ
眠ン 寝 死 ナ

398:アビス◆wc:2018/06/04(月) 20:37

>>397のは私の詩だよ。
ちゃんと名前入れたんだけどなぁ…

399:アビス◆wc:2018/06/04(月) 20:52

「虚獄淵獣」

深夜の草原を
疾走る獣が 一匹いた

月は出ていないから
道標は存在しない
只 闇い 闇いのだ

其の獣は
何を以てして
疾走るのか

飢えを満たす
訳では無い

渇きを潤す
其れでも無い

只 己がの
死が為なのだ

獣の姿は
深淵の化身と
見紛う程黒く

眼は地獄の血の池を
一掬いした様な赤色

牙と爪は
真昼の虚月の様に
異に 白い 真白い

そして獣は
探している

天の御使の如き
白い大鳥を

其の鳥の全てを
奪って喰らい尽くし

自らが生きて
全く満たせなかった
飢えと渇きを

其の鳥で満たせば
獣はもう 生きる
意味を失い

永寧の死を
得る事が
出来るのだから…

400:アビス◆wc:2018/06/04(月) 21:02

「蒼白天鳥」

蒼穹に
翼を広げ飛ぶ
鳥がいた

太陽を背に
地上の慌ただしく
駆る獣等を尻目に

風を友として
悠然と舞い遊ぶ

蒼穹を背景に
白き翼を魅せる姿は

天界から遣わされし
神々の御使いを
彷彿とさせる

目の色は青い
生命の母なる海を
具象化した様な

対称的なのか
爪の色は赤い

かつて悪魔によって
堕落した街
ソドムとゴモラを

命じられて
焼き亡ぼした
神の炎が如き

そして鳥は
探している

闇き深淵の
汚れし獣を救う為に…

401:アビス◆wc:2018/06/05(火) 20:42

美味しかった
彼が食べた
物の全てが

いらないと拒んで
吐き出した物も

彼の味がした
食道を通り
私の中に入る

其の瞬間
一つになっているのだと
感じ 喜びを迎える

彼が何も食べない日は
私もまた何も食べない

彼の中に食物が
あるのならば

私は吐かせてでも
彼が食べた物を

食べたい

そうしなければ
私は彼との愛を
感じられない

繋がっていないのだと
不安に駆られる

私は考える
彼自身の味は
どのような

目の前に盛られた
「料理」を見て

この料理は
かつてない程の喜びを
私にくれるのだろう

そして永遠に
繋がっていられるだろう

402:アビス◆wc:2018/06/06(水) 20:56

「宿痾の茨」(全6章)
(1)
私の寝床は
白花の群

べんぷくが
上を飛び

しゃれこうべが
地獄の詩を

或る処を旅する
一人の青年の

呪われし詩だと
人は忌避する

私にとっては子守唄
それを聞いて私は眠る

403:アビス◆wc:2018/06/06(水) 20:59

(2)
私を守るは
緑の茨

近付く者を
不条理に

生けとし者等を
屍体に変える

刺し貫いた
肉は溶け

茨の養に
私の口に

残された物は
白花の群に

404:アビス◆wc:2018/06/06(水) 21:05

(3)
静寂 静謐
私の隣人よ

倦る怠く眠そう
私の頭を撫でる
黒無垢の女となってくれ

男でも良いのだが
如何にも無骨で
夢見る事が出来やしない

あぁ それよ おぉ これよ
親が己がの愛しきやや子の様に

私の目を閉じさせて
午睡へと誘い給へ

405:アビス◆wc:2018/06/06(水) 21:08

(4)
私は起きる
黄昏に

鴉が空切る
阿呆と鳴く

夕日の下影に
手を伸ばし触れようとも

無情にも影と
其の主は去って行く

届かぬよ
届かぬのよ

茨には届けど
私には

406:アビス◆wc:2018/06/06(水) 21:10

(5)

闇染の空に
月が昇る

隠れた太陽の
光を浴びて
月と星が黄と白に輝く

しゃれこうべの一つを
逆にして

血の杯に映る
波で歪む月星見つめて
すすり飲む

407:アビス◆wc:2018/06/06(水) 21:15

(6)
闇は深まり
月も出ずらず
雲の幕引き

白花の群は
今日も増えた

不知婦が
鳴いたから

私はまた
眠ろう…

次は金糸雀が
鳴く迄
朝を迎えない

ずっと
しゃれこうべは歌うよ
猟奇の詩を

408:アビス◆wc:2018/06/08(金) 23:14

「キンデルの少女」

キンデルダイクの風車
チウリップが咲いてる風景

一眼レフカメラを持ち
広い鐔の白帽子を被っていて

白のワンピィスを着た
幼気の残る可憐な少女を
一枚の紙に収める

日常によくあるのかと
存外そうでも無いらしい

春が吹いた
花弁と共に少女の帽子が
連れ去られる

きっと風精霊の
悪戯なのだろう

少し跳んで
少女の帽子を
捕まえた

チウリップの花畑に
体が沈んだ

少女は心配そうに
顔を覗く

少女の金色の髪先が
当たる形に
こそばゆい

帽子を返した
少女は抱きついて
お礼を云った

そんな無邪気な顔を
向けられたら

此方は何も
云う事が
出来なくなるだろう

少女は母親らしき者に
手を引かれて
彼方の方へと去る

去り際に
少女は手を高く
振っていた

私も同じく
手を振る

一枚の写真を
記録帳に収めて
私はまた歩き出す

409:アビス◆wc:2018/06/10(日) 21:00

「マカーブルの烈女」

ツタの葉
蔓延る 古き城

ひび割れた窓から
光が差してる

中から聞こえる
金属のぶつかる音

一人 女が踊っていた
周りに浮いているのは
両刃片刃 様々な剣

女が踊る度
周りの剣も追従し
対峙せし者を切り刻む

ひらり舞う 黒衣の妖しさ
飛沫く血の苛烈が 相まって

女を殊更に
引き立たせる

魅惑等は
とうに超え

シャルマンの域に
達している

近くで見たいが
恐らく 其処の者と
同じ運命を辿るだろう

只の旅人たる私では
マカーブルの舞踊相手は務まらない

410:アビス◆wc:2018/06/10(日) 21:15

「dea」

神殿の井を
見上げる

崩れた所に
明けの明星
己は此処にいると

云わんばかりに
瞬いている

ヴイナスよ
判っているさ

おまへが何の星よりも
強く 強く輝いている事位

だから直ぐに
おまへを見つけられる

一部が欠けた
サンタ・マリヤの
彩色硝子の上

刻示の針が
或る時を示した侭
止まっている

祭壇の獣が
苦しみ喘いだ死体の前で

跪いて
祈りを捧げる
者がいた

ヴイナスの金光によって
姿が露になる

骸が祈っていたのだ
砂にまみれた
ローブを着て

骸の両手にあるのは
銀の懐中時計
十字架が彫られている

生前は聖職者
だったのだろう

祭壇の獣に
火をつけ燃やし

白百合の花を添え
骸の隣で私も祈る

私に出来るのは
此れ位だ

灰の獣よ
骸の聖職者よ

おまへ達は
時から解放された

行くが良い
女神の元へ

411:アビス◆wc:2018/06/11(月) 22:07

「パラキート」

ピィピィ鳴いてる
インコが可愛くて
籠から出した

指に乗せて
頭を撫でる

何が気にくわないのか
指をつつかれた

二度とつつかれたくない
だから嘴を切った

次の日から
つつかれなく
なったけど

可愛く鳴く事も
無くなった

インコは籠の中で
動かず其処にいる

インコを土に埋めた
生きている様な気はしたが

私は埋めた
生きていても
埋め続けたであろう

友達が来て
インコは何処と
聞いたので

私は盛る土を
指差した

友達は怒って
そして 泣いた

そういえば
あのインコは
友達のだった

あまりにも泣くので
土を掘り返し

インコを
友達に返した
口の中に

412:アビス◆wc:2018/06/13(水) 21:49

太陽が嗤っている
薄気味悪い 目をしながら

空の色は
くらついて仕舞う程
鮮やかな紫と黄

それが混じって
うねうねするものだから
時間感覚が失われる

否 其もこの空間に
時は存在するのか?

地を歩く
何時か人に
会えるかもしれない

色は空に負けじの
サイケデリック

目に星が入る程の
ピンクと緑

道の真ん中に
黒い玉が
落ちている

コロコロコロコロ
回って転がる
私の周りを

少し離れて
大きくなった

手が生えて
地団駄

オレンジの歯を
カチカチ云わして
カチカチカチカチ

笑っている 嘲笑っている
嗤っている

アハハのハ
アハハのハッハ
アハハのハッハッハ

413:ねこさ◆Qc:2018/06/14(木) 18:18

続いてますね
尊敬します
アビスさんの不思議な世界観大好きです
これからも待ってます

414:アビス◆wc:2018/06/14(木) 21:07

>>413
ありがとう!
頑張るよ!

415:アビス◆wc:2018/06/14(木) 21:15

海に落ちた
底から見上げても
日の光は届かず

周りを見渡しても
暗澹としていて
岩しか判らない

通り過ぎる魚等が
私を見ては 嗤ってる

馬鹿だ 馬鹿だと
罵って

嗚呼!そうさ!
私は馬鹿さ!
だからこんな事に!

誰かを信じたら
こうなった

いっその事
心が壊れる迄
私を嗤えよ!

下手な慰め
心にも無いことなぞ
いらん!

其の方がもう
清々しい!

どうせ助けなんぞは
来ないだろう

自力で上がろうにも
体の何処も
動きはしない

深海の底が
私の墓場か…

なんとまぁ!
広き事だろう

落とされた
怒りも恨みも悲しみも
忘れる位に

愚かな私には
贅沢過ぎる!

416:アビス◆wc:2018/06/14(木) 21:21

壺に蟻を入れる
百足を入れる
蛙を入れる

他にも生物入れて
蓋をして逃げぬ様
閉じ込めたなら

さぁ
観察でもしようか

互い互いに
喰らい合え

お前等全てが
補食者 餌だ

下剋上は
当たり前

生きたきゃ喰らえ
家族や同胞

尸にたきゃ喰われろ
家族や同胞に

私は示そう
社会縮図を
この壺で

中の生物は
所謂人間

平等 平和
秩序が語る
ぺてん言葉

そんな物は
此処に無い

あるのは
生きる 喰らうの
貪欲なる生存本能

417:アビス◆wc:2018/06/15(金) 23:16

「集合写真」

写真を見つめる
笑顔の人間が
写っている

私は針を
突き刺した

無性に憎くなり
突き刺した

これだけでは
収まらないので 火で炙る

燃える写真に
溶けた笑顔

私はそれに
心から安堵する

穴の開いた顔に
黒インキを注射した

あたかも存在が
無い様念入りに

写真の中の
皆が消えた

最後に自らを
首だけ切り捨てた

集合写真なんて存在しない
誰もいない 私もいない

418:アビス◆wc:2018/06/17(日) 22:50

「黄金泡時代」

熱気と狂気が
入り混じり
黄金の泡が生まれる

人が踊れば
金の風

風が舞えば
塔が立つ

バベルみたく
恐れを知らず

兎に角生きた!
兎に角笑った!

其の時代の者達は
己を示した

眩き
束と共に!

マルコポォロよ
私は見たぞ
ジパングを

時を超えて
確かにあったのだ
黄金郷が!

そして其れは泡沫だった
黄金の泡が見せた
夢想だった

消えたのだ
突如として

陰鬱なる
心の影が
人々に堕ちて来た

栄えし物よ
亡びろと

人がおらぬ塔は
汝等の墓標か…

419:アビス◆wc:2018/06/22(金) 19:53

ブルジョアの
庭に生えている花々と

私の造花を
入れ替える

数ヶ月経てど
色褪せすらも無く
咲く花々を見て

ブルジョアは
誇らしげに
腕を組む

道行く人々は
造花を見て

綺麗だ 綺麗だと
誉め称える

ブルジョアは
増々 増長する

枯れない様
花に水をやる
ブルジョアを見る度に

それは造花だと
教えてやりたい

道行く人々にも
教えてやりたい

在れは造花だ
私が正物と
入れ替えたのだと

正物の花々は
嘆いているよ

私に拐われた
事よりも

主は見分けも
つかぬ程
愚かで阿呆なのかと

そんなに長く咲く
花なぞあるわけ
無かろうと

私の庭で
嘆いている

私の庭の
花が枯れた

ブルジョアは
私の庭を見て

貧相で
お似合いだと云う

我が花を見よと
いまだ枯れず
咲き続けているぞと

鼻息荒く吹かし
高らかに云った

在れは
私が植えた
造花だぞ

おまへの正物の
花々は

おまへが先刻罵った
花々だ

引っくり返る
ブルジョアに

云ってやった!云ってやった!
贋物と正物の
見分けもつかん

この阿呆に この愚か者に
私は云ってやった!

420:アビス◆wc:2018/06/24(日) 22:07

「狂想詩人」

やぁ 来てくれたのかい
僕の親愛なる友人よ

早速なのだが
君の目玉を
僕にくれるかな?

前々から
ずっと欲しいと
思ってたんだ

君の目玉は
生きる事に
満ち溢れている

でも僕のは
生きる事を諦めた
虚な目玉で

創作意欲が
湧かないんだ

ほら あれを見て御覧
僕の書いた詩達を

僕と同じで
生気が全く無い

如何すれば良いのか
ずっと悩んでいたんだよ

もういっその事
リャナンシィと

契約でも
して仕舞おうかと
思った位さ

でも僕は
生きて大傑作を
書きたいからさ

止めにしたよ
でもね

他人の詩を見て
僕には才能が

存在しないと
否応無しに
気付かされるんだ

僕の詩は
“宝”を騙った

硝子に
過ぎないんだよ

触れれば罅が
落とせば直ぐに割れる…

君の目玉さえあれば
僕の詩達も

漸く「生」を
授かるんだよ!

だからさ
君の目玉を
僕にくれないか?

嗚呼…やっと聴けたよ
僕の詩の産声が…

ありがとう 友よ
僕の目に
住まう者よ

421:アビス◆wc:2018/06/26(火) 21:09

「湖上のセレェネ」

暗き湖上の
絵を描くか

明き昼時でも
良かったが

それともなると
人々のどよもしが過ぎて
常煩わしく

私は人々の
雑々波を
好まぬ故に

夜ともならば
静かで良い

角灯の灯が
頼りよ
我が此処にいる標

灯に群がる
羽虫等は

何故自らから
火へ飛び込むか

其処に求める物は
何も無い

只 危険が
あるだけだ

筆を進め
湖上を描く

ふと見やると
舟がある

舟の上には
女が立っていた

白きベェルと
白布を纏っている

ちらちら空を見上げては
溜め息をついて
物思いに更けている

女よ 今宵は
月は出ぬよ
諦めるが良い

にしても
美しき者よ
是非とも絵に留めたく

月は出れば
貴女は消えるのか?

ならば月など
出なければ良いのに

そうすれば貴女は
ずっと此処に
いると云うのに

せめて私が
描ききる迄で良いから

舟の上に
いてくれないか

そうでなければ
意味が無い

422:アビス◆wc:2018/06/27(水) 10:24

「晶壁」

私の境界に
入るな

見えないのか?
今 貴様が踏んでいる
線の事だ

この線より内側は
絶対不可侵の
我が領域につき

我がのみの
世界なのだ

寂しくはないかだと?
寂しいのならば
こんな線等引かないな

私は拒んでいたいのだ
他からの意思を
私のみでありたい

ほら 貴様が
線を無くした所為で

私の地と
他の地が

私の空と
他の空が

私の海と
他の海が

混沌ってしまった

これで私は
王では無くなった

我が世界の
我のみぞ君臨せし
我が玉座…

今やそれも虚だ
新しく引き直さねば

狭く小さきで結構
私のみが
あれば良いのだ

誰をも拒む世界としよう
囲むは透明で
他を視る水晶としよう

423:フォルテ Jcです&:2018/06/29(金) 00:53

「真珠」                                        打ち付ける五月雨  皆顔をしかめる  水溜まりは小さな池   池の辺りに咲く     気高き花   文句も言わずに微笑む   近づくと  滴る真珠の雫           優しい香りがした

424:フォルテ Jcです&:2018/06/29(金) 00:54

改行、失敗しました( ノД`)…

425:アビス◆wc:2018/06/29(金) 18:48

>>423
綺麗な詩ですね。

426:アビス◆wc:2018/06/29(金) 21:54

海の底から
地上を仰ぐ

貨物の船が
一枚の葉に
見える程小さい

光は届かずとも
魚等が
彩ってくれるから良い

髪が水に揺らぐ
魚が寄ってくる

魚等よ 其れは私の髪だ
海草では無いから
家にはならないよ

言葉は全て
泡に変わる

なので語らずして
言葉を云う

空には今頃
月が照っている

海もまた
地上と共に
夜を迎える

黒に近き深青…
それが海の夜だ

海の昼は蒼いな
たがそれは

太陽による
まやかしなのだ


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