“深淵唱詩”

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1:アビス◆wc:2017/10/12(木) 06:11

思いついたら取りあえず書く事に決めた(センスは皆無)。

電柱から覗く君は誰だろか?
私はコソリと確かめゆく
けれども何時もシュッパイする

今日も君はシャッテン延びる電柱から私を見ている
そんな所で見てないで早くお入りよ
けれども君は首を横に振る

レーゲン降る日も
シュタルカー・ヴィント吹く日も
君は只私を柱から覗くだけ

何故かと私は君に聞いた
君は口を開いた
“だって僕はゲシュペンストだから”

41:アビス◆wc:2017/10/29(日) 07:55

>>40
うん!わかったよ

42:アビス◆wc:2017/10/29(日) 16:22

一つの葛には
光明を

一つの葛には
おぞまし醜き怪物を

どちらを選ぶ
小さき葛
大きき葛

決めるのは
貴方だ

私じゃない

とある所の
翁と媼の夫妻

片方は欲無き優しさ故に
光明を

もう片方は己が強欲が故に
醜き 醜き
毒蟲
幽霊
怪物と
生きてはいられない戯れを

貴方はどちらを選ぶだろう
小さき葛
大きき葛
選ぶが良いさ

罪人よ

43:アビス◆wc:2017/11/01(水) 21:40

(詩じゃ無いよ)
ノートに今書いてるんだけど
長くなりそう。

44:アビス◆wc:2017/11/02(木) 20:36

(1章)

母山羊は
子山羊達に
云いつけた

良いですか
誰が来ても
すぐに開けてはいけません

たとえ私でも
疑いなさい
でないと

狡猾で
飽食を望む
狼に

喰われてしまうから

母行く後
子山羊達は
各々戯れる

外より忍ぶ
黒影が
皆喰らいをせんと

見ている事も
知らずに

45:アビス◆wc:2017/11/02(木) 20:40

(2章)

狼は望む
己が腹に
満たされる程の

子山羊達を
詰めたい

狼は考える
先ず声だ
似せよう母山羊に

チョオクを食べて

コン コン コン
扉の音
お母さんだよ

開けておくれ

子山羊達は口々に
嘘だ
嘘だ
お前は狼だ

黒毛と
鋭い爪が
見えてるぞ

46:アビス◆wc:2017/11/02(木) 20:46

(3章)

狼は考える
次は毛だ
似せよう母山羊に

白粉を被り
爪を仕舞い

コン コン コン
扉の音
お母さんだよ

開けておくれ

子山羊達は口々に
嘘だ
嘘だ
お前は狼だ

其の黒い足は
何だ
嘘つきめ

狼は鬱屈する
子山羊共
何故騙されん

嗚呼 苛々する

47:アビス◆wc:2017/11/02(木) 20:51

(4章)

狼は考える
次は足だ
似せよう母山羊に

白布を履いて

爆ぜ兼ねなき
感情を抑え乍

コン コン コン
扉の音
お母さんだよ

開けておくれ
お前達

子山羊達は口々に
お母さんだ
お帰りなさい

開けよう
扉を

ギギィと一つ
扉の音

カランと一つ
鐘の音

開けた先は狼が

48:アビス◆wc:2017/11/02(木) 20:57

(5章)

狡猾狼
鬱屈爆ぜる

己が望むままに
飽食を

子山羊達は
逃げ惑う

逃れられない
牙と爪

金切り鳴きが
一つ消え

また一つ
また一つと
声が消え

やがて鳴きは
皆絶えた

ふわり舞う
黒毛白毛

残りたるは
破壊の惨禍

そして
時を刻む台の中で
怯える末の子一匹

49:アビス◆wc:2017/11/02(木) 22:04

(6章)

母山羊見やるは
惨たらしき
己が家の中

何処だ
何処なの
私の愛しき子らは

末の子山羊は
慟哭す

食べられたんだ
狼に

聞こえたんだ
狼が兄姉達を
ゴクリ ゴクリと

飲む音が

母山羊は
泣きじゃくる末の子山羊を
抱きしめ慰める

まだ間に合う
狼の腹を裂こう

持つ鋏に復讐を込めて
心に秘めよう
怨恨の情を

50:アビス◆wc:2017/11/02(木) 22:13

(7章)

木の下にて
惰眠を貪る
狼は

まだ知らない
己に迫る
磨羯による怨嗟の音が

狼を見つけた母山羊は
裁縫鋏で
狼の丸腹を切り裂いた

わらわら出てくる
母山羊の子ら

代わりに何を詰めよう
そうだ石を詰めよう
いっぱい詰めよう

ゴロン ゴロン入れて
ギュウ ギュウ押して
縫い 縫い

縫い合わせて

母山羊達去りし後
眠りから覚めし狼は
気付かない

腹の中身が
子山羊から石に
なっている事を

51:アビス◆wc:2017/11/02(木) 22:17

(終章)

フラフラ歩く狼
石詰め腹を抱え
見つけた井戸

覗いたら

バシャアンと
狼落ちた
水の音

ブク ブク ブク
沈む音

助けを乞う声
井戸の中

沈んだ体も
井戸の中

何も聞こえやしない
井戸の中

52:モルガナ◆fI:2017/11/03(金) 22:20

かっこいい〜☆
流石だぜ☆

53:アビス◆wc:2017/11/03(金) 23:33

>>52
ありがとう!

54:アビス◆wc:2017/11/05(日) 17:26

(1章)
堅実に生きる妻
せっせ せっせと
家の事

現実を見ずの猟師夫
今日もまた
獲物が捕れずの木の実だけ

あくる日
夫が帰ってきたら
其処には妻と握り飯

これは旅人の置き去りし物
妻は妻の親族から
言伝を

あんな奴に食わせるな
家でただ威張るだけしか
能が無い奴なんかに

夫の手には柿の種
何かを思いついた

交換しよう
種と握り飯を

種はいつか実に生るが
握り飯は増えりゃしない
そんな理由で取り上げた

目先の利益に囚われる夫に
将来の利益を得た妻よ

55:アビス◆wc:2017/11/05(日) 17:34

(2章)
そんなこんなで
年月8年
植えた柿の種

立派に木と成り実をつける
だがしかし
夫は変わらず威張ったまま

木の上登り柿の実喰らう
妻は身重で登れない

くれと
くれと
懇願す

夫は知らぬ存ぜぬの
独り占め

くれと
くれと
懇願す

夫は木から降り
この柿は
俺の物だ渡さない

蹴られた妻
其の場で倒れる
下から流るる紅い液

逃げ去る夫
動かぬ妻

56:アビス◆wc:2017/11/05(日) 17:41

(3章)
生まれた子
母無き子
親族は告げる

酷なる事実を

お前の
母は

お前の
父に

“__”された

憎かろう
憎かろう

其の感情は
子が知るには
早すぎた

感情は
子に初めて生を与えた

子は願う

母の敵討ちを

親族は力を貸す
子の復讐の為に

一つの怨嗟と
一つの怨恨
今一つとなる

57:アビス◆wc:2017/11/05(日) 17:52

(4章)
かつての父
今は敵

家の中
入ってきた

子は誘う
敵は追う

遠縁は敵の足に
紐掛ける
敵は転び

床の針に
全身ぶすり

恰幅の良いおば
上から乗す

深く
深く
刺さって仕舞え

おっ母の受けた痛みは
こんなものじゃない

従兄弟と従姉妹は
木棒で
全身叩く

58:アビス◆wc:2017/11/05(日) 17:59

(終章)
吊るし上げの敵は云う
お前は
俺の子だろう

だったら助けてくれ

嗚呼そうだな
おらのおっ父は

握り飯を取り上げた

柿を食わせなかった

家で威張った

おっ母の腹を蹴った

恨み骨髄に徹する程の
恨み言を云い乍
子は鉈を降り下ろす

あの世でおっ母に謝れ

一族の復讐劇
これにて幕を

59:アビス◆wc:2017/11/06(月) 17:18

何回味わった事
口の中の鉄の味

貴方につけられた
赤黒ひ花弁

涙を見せれば
貴方は笑む

光無き瞳
私を映し乍

綺麗だと云い

私の口の中を
貴方の其れで荒しく掻き回す

あぁ!

もっと私を

其の加虐の愛で

歪に

貴方の元へと

堕としてくれ

60:アビス◆wc:2017/11/06(月) 17:25

閉じ込めたい
貴方を
私の冷たひ世界へ

マイナスの
何もかも
真白の凍土

お互いに
朽ちる事は
永遠に無いから

怖くは無いよ

私は
マイナスの世界でしか
生きられない

氷の女王

白の玉座は
骸の塊

逃がしたくないの
だから皆は氷柱の中

待って
待って
私の愛し人

背かないで
御願い
独りにしないで

だったら要らない
貴方の温もりなんて

私の氷で
包んであげる

だって私は
氷の女王

広く孤独な
人の子だ

61:アビス◆wc:2017/11/07(火) 21:00

(1章)
悪戯狸
今日も里の者達を
困らせう

あくる日畑荒し
罠に掛かりて
捕まった

悪戯狸
狸汁にして
食ってやろ

それはやめてくれ
もう悪戯しない
お願いだよ

優しき婆は縄を解く
狸はにたりと笑い
えげつなき事しなさった

爺が畑から帰りて
婆は用意した鍋を
食わせる

爺が鍋の汁一口
そして婆は狂笑す

じじぃがばばぁ汁
食ったやぁい

じじぃがばばぁ汁
食ったやぁい

婆を“_”し
皮被り
汁にした

してやったりの悪戯狸
爺は怒りて
追い回す

狸は逃げ去り
いかれた歌を
カンラカラカラ笑い乍里中に響かす

じじぃがばばぁ汁
食ったやぁい

じじぃがばばぁ汁
食ったやぁい

爺去る後
飼われていた白兎
何思ふ

62:アビス◆wc:2017/11/07(火) 21:06

(2章)
山の中
悪戯狸
てらてら歩く

茅の束運ぶ白兎
もしもし其処の狸どん
手伝っちゃくれませんか

茅の束背負いて運ぶ
狸どん
後からみょうちきりん音が

カチ カチ カチ
何の音

カチ カチ カチ
かちかち鳥の鳴き声さ

ぼう ぼう ぼう
燃える音

狸の背中も
ぼう ぼう ぼう

熱い
熱いよ
兎どん

63:アビス◆wc:2017/11/07(火) 21:12

(3章)
まぁ大変
塗ってあげませう
この薬

ただれた背に
塗り薬
実は違う

蓼の汁
忽ち火ぶくれの
狸の背

痛い
痛いよ
兎どん

蓼食う虫も好き好きとは
良く云った物で

64:アビス◆wc:2017/11/07(火) 21:18

(終章)
まぁ大変
舟があるから
其れに乗ろう

狸どんはそちらの舟に
私は彼方の舟を

ギコ ギコ ギコ
舟漕ぐ音

ブク ブク ブク
何の音

お前の泥舟が
沈む音さと
兎どん

ずぶ ずぶ ずぶ
沈む音

助けて 助けて
兎どん

掴まって狸どん
そう云い
櫂の棒

ばし ばし ばし
狸を叩く
更に沈む狸どん

遂には
沼の底の
狸どん

65:アビス◆wc:2017/11/08(水) 17:28

(1章)
ピィヒャラピィ

とある國の
とある町
鼠がわんさかいましたと

鼠は運ぶよ
黒の使者

使者の正体
黒“_”病

大人も子供も
皆平等

彼方の世へと
連れて行く
黒の使者

ふらり現る
謎の者

私に任せてくれないか

追い出してみせよう
鼠達
報酬出してくれるなら

66:アビス◆wc:2017/11/08(水) 17:33

(2章)
嗚呼 出してやる
本当に
追い出せたら

約束守れよ
ピィヒャラピィ
ラッパ吹き鳴らす

鼠は群れなして
大行進
彼方の方へお行きなさい

それなのに
何も出しゃしない
大人達

者は鳴らす
ピィヒャラピィ
子供ぞろぞろ

連れて去った

もう一つおまけ
ピィヒャラピィ

67:アビス◆wc:2017/11/08(水) 17:37

(終章)
とある國の
とある町
鼠がわんさかいましたと

そしてとても奇妙です

鼠は運ぶ
黒の使者

大人だけが
皆平等

彼方の世へと
連れ去る
黒の“_”者

ね 奇妙でしょう

子供は何処に行ったのか

わからないから
ラッパを吹こう
ピィヒャラピィ

者とは誰の事
ハァメルン

68:アビス◆wc:2017/11/08(水) 18:13

(作者より)
見てくれる人がいる

楽しみにしてくれる人がいる

こんな私の詩を

ありがとう
ありがとう

私は見てくれた者に届けよう

音無き拍手を

存在して初めて意味をなす
感謝の言葉を見てくれた貴君達に

69:アビス◆wc:2017/11/08(水) 22:18

僕は夢を見る
怪物に喰われたいと

少年は周りにずっと
そう云ってきた
周りは

奇妙な奴だと
少年を疎む

少年は云ふ
だって知りたいのだもの
怪物に喰われるのが

どんな気持ちか

少年はやがて
青年となりても
夢を語る

怪物に喰われたいと

周りは云う
目の前にいるじゃないかと

ぎょろりと血走る眼
垂れる涎
其の隙間から光る牙

70:アビス◆wc:2017/11/08(水) 22:24

>>69の続き

青年は喜んだ
夢が叶う

だってねぇ
夢じゃ怪物に
食べられないもの

幻想怪奇の
主人公に
今なろう

頭からガリゴリ
いってくれ


一つずつ千切られるのも
悪くない

兎に角
僕を喰ってくれ

叶えたいんだ
僕の夢

痛い 痛いと
叫ばせて

助けて 助けてと
命乞いさせて

そして
全て聞き入れず無慈悲に
食べてくれ

71:アビス◆wc:2017/11/09(木) 20:58

>>59の詩の別視点の詩ですよ。

乃公が君に付けた
赤と黒が混じった
印を見る度に

君が乃公の物だと云う事に
綺麗だと云う事に
何時も気付かされるよ

人は思うだろう
其れが愛なのか
おかしいと

だが其の事でしか
愛を確かめる
与える事しか出来ない

彼女もわかってくれている
それで良いじゃないか

リンドウの花が散る迄

加虐の愛を

72:アビス◆wc:2017/11/09(木) 21:08

ねぇ 何がそんなに
嬉しいの

華美な服着て
キラキラ宝石で
飾ってさ

全て私には
偽りにしか
見えないよ

くすんで見えるの
服も 宝石も
そして貴方も

何故だろね

貴方は云ったね
お姫様になりたいの

既になっているでしょうに
何度も 何度も

一夜限りの
王子と共に
踊る姫君に

貴方は一体
何人の王子と
踊ったの

其の度に
棄ててきたね
王子も

そして中のモノも

今は未だ身軽かい
お姫様

汚れた華美な服着て
汚れたキラキラ宝石付けて
貴方は去って行く

行ってらっしゃい
お姫様

しがない魔女
只手を振る事しか
出来なかった

73:アビス◆wc:2017/11/09(木) 21:35

館に
また誰か
迷い込んだ様ですよ

其の館は
とても不思議な
文字が宙を舞っているんだ

冒険心を掻き立てられると
思いませんかね
でも気をつけて

此処の主は
人であって
人じゃない

見つかったら
“_”されて
文字にされちゃいます

そんな事知ったこっちゃ無い
貴方は進む

溜め息溢し

警告はしましたよ

74:アビス◆wc:2017/11/09(木) 21:40

>>73の続き

主とやらが何だ
僕は怖くない
ほら ほら

こんな事しても
怒らないの
此処の主様とやらは

首の欠けた
片足無くした人形を
ブンブン振り回す

其の人形は
主様の大切な
御人形

なんとまぁ
愚かな事を
あぁ ほら

起きてしまったよ

この館の主様が

何をしている
後ろから響く声
振り返る者

75:アビス◆wc:2017/11/09(木) 21:43

文字にはしてやらない
其の代わり
人形のぱぁつに

なって貰おう

主様を
怒らせた冒険者
人形のぱぁつに

なりましたとさ

え 私は誰ですと
まぁ 其れは
後程と云う事で

また会いましょう

76:アビス◆wc:2017/11/10(金) 18:25

「ネクロ性愛」

今日はこんな事があったんだ
何も答えない私

明日は晴れるかな
何も答えない私

答えないんじゃなかった
答えられなかったんだ

寂しそうに笑みを浮かべる彼
でも好きだと云う彼

そりゃそうでしょうよ
私を動かない様にしたのは
彼だもの

愛して貰わなきゃ
困りますよ
でないと

貴方の
貴方だけのネクロになった
意味が無い

あの夜の事は
忘れませんよ

涙を浮かべて
私に手を掛けて

生きてた頃の
最後の光景
なんだったけ

嗚呼そうだ

思い出した

笑っている

彼の顔だった

77:アビス◆wc:2017/11/14(火) 10:40

「睡眠フィリア」

良く眠っているね
其のままで良い

誤解しないで
起きている君も
勿論好きなんだよ

だけれど
一番好きなのは

眠っている時の君

スゥスゥ寝息を立てて
寝返りで
少し乱れた髪に隠れる顔は

なんて愛らしいのだろう

あ 五月蝿かったか
でも丁度いいや

君の寝顔が
正面にきたもの

本当は
其の頬に触れてみたいけど

君が起きちゃうから
ガマン ガマン

空の闇が深くなったよ

今夜も良く眠ってね

星は瞬き
月は昇り
眠る女の横に

クスリと笑い乍
佇む者一人

78:アビス◆wc:2017/11/14(火) 10:52

「オキュロ愛好」

はぁ と深く溜息をつく

今日も輝いているなぁ

君の眼は
そんな事を思い乍
君の顔を見つめる

恥ずかしそうに
顔をそらす
赤ら顔は更に

君の眼を
際立たせる

君は
聞いてくれるだろうか
私の願いを

目玉が欲しい
抉り取ってくれ
そして私の手の中に

聞いてくれる訳無いか
それに
君の眼から光が消えるのは嫌だ

だから
君が生きている間は
この思いは胸に秘めおこう

君が逝ったら
眼は貰ってあげる
光は無いけれど

それでも良い
思いを馳せれば

喜びに輝く眼も

陽炎みたくゆらりと悲しの眼も

怒りにたぎる鋭ひ眼も

私だけの物に

79:アビス◆wc:2017/11/14(火) 11:18

「赤クレヨンと少年」

暗い 暗い
部屋の中
真ん中にぽつりと少年

右の手には
赤のクレヨン
そして今日も描く

助けてと

何して
閉じ込められた

皿を割った

云う事を聞かなかった

目障りだった

只の理不尽も
少年にとっては
理由となる

子供であるがゆへに
どんな暴力も

愛として
受け止めるしかなひ

壁に助けてと

出して下さいと
無き声で叫ぶ

やがて忘れ去らるる

見つかつた少年
白骸となりて

手に握りめたるは
赤ひ小さな欠片

80:アビス◆wc:2017/11/14(火) 11:28

「色山羊に妄呵責」

それは人であり
人間でなかった

皮を被った
色欲の山羊なり

欲の侭に
私の体に触れ
口付けを交わそうとした

其の時の感触は
今でも残りたり

己は私に問ふ
されし事を黙るのは
己の罪なりや?

周囲に助けを求むる事せず
只 己が内に閉じ込めて
過ぎ去る時が流してくれると

お思いか?

私は己に云った

若し願いが
叶うと云うのならば
私は

色欲の山羊に
呵責をしたい

生きた侭 皮を剥ぎ

癒えぬ 責め苦を与え

そして“_”したいと思う私は

罪なりや?

思ふ事は罪では無い
するとならば罪だがな

81:アビス◆wc:2017/11/14(火) 11:38

「吉遊情事(きちゆうじょうじ)」

蝶は誘う
おいで おいで
此方へと

蝶の色香に
まいってしまった魚
招かれるが侭に

格子の中へ

惑わす蝶は
身を差し出し

魚は
貪り喰らふ

一夜の情事を
記憶する事無かれ

蝶よ

一夜の魚に
恋慕する事無かれ

約束の証
指ひとつ

万の拳で
殴られようと守られよ

嘘吐きは
千の針を呑まそうぞ

蝶は手招く
己を閉じ込めし
赤格子の中へ

何時か
誰か
連れだして

赤格子の中は
もう飽いた

成すならば
夜が明けぬ内に
はらへらを

82:アビス◆wc:2017/11/15(水) 21:16

「兎に思ひ 角も人」

起きた時
私は泣いていた
嗚呼 私は未だあの時の事を

忘れられてはいないのだ

必死に記憶から消そうとした
だが体に染み付いた
見えなひ傷は

私を確実に蝕んだ

空に浮かぶ細の三日月と
足元の靄は
心の現れだろうか

私を笑うな細の三日月よ
早く消えて仕舞え
忌々しき靄よ

兎 叫ぶ私は
角に狂人

周りは只云う
忘れろと

消せぬのだ
無茶云うな

其れしか
云えぬのなら

黙っててくれ

された事が無いから
云えるのだろう
忘れろと

汚れの淵に
落ちて仕舞え

悲の深に
溺れて仕舞え

兎 思ふ私は
角に咎人

83:アビス◆wc:2017/11/16(木) 08:54

「文字館 遣蝙蝠」

皆様方へ
御機嫌様

え 私は誰ですと
また会いましょうと云った
私ですよ

今は主様の使いを
しております

私の事が知りたいと
数奇者ですね
さては貴方

良い 良い
 良いでしょう

お教えしませう
私の事

姿在りし頃
私は蝙蝠でありました
トーテンシェーデルが友でありました

語り相手で
寝の床で
仲間蝙蝠と共に

宴の
飲めや歌えや

そんな時
一人の者が
迷い込み

仲間蝙蝠
血の気多く
襲うけど

皆々レーベンを
奪われました

其の者は
プリュンダラーと
云いませう

私迄レーベンを
奪われたく無いと
命乞い

こうして私は
主様を得ましたと

私の姿が無いのは
何故で御座いましょうかと

主様は苦手なのです
自ずの姿を見られるの

はてさて
 そろそろナハトが明けますよ

私は結局何者ですと
只のフレーダーマオスですよ

ま フェアラート
フレーダーマオスですが

84:アビス◆wc:2017/11/16(木) 09:21

(作者より)
>>32>>33>>35の題名は
「文字館 好奇猫」

>>73>>74>>75の題名は
「文字館 愚ノ冒険者」

“しりぃず”みたいな物ですね

85:アビス◆wc:2017/11/17(金) 08:07

「洗い髪のヴイナス」

ぼうと見やる庭の先道に
カランコロンと
下駄の音

石鹸の香り
たなびく黒髪

洗い髪のヴイナス

はと気づくと
ヴイナスは消えた

喫茶処で茶をしていても
学び舎にて学業を積もうと
浮かぶのは

洗い髪のヴイナスの事ばかりだ

胸中が熱い
ヴイナスの事を考えると

顔は如何だろうか
判らない

洗い髪のヴイナスよ
願わくば
もう一度 我が前に

そして顔を
見せてくれ

友にヴイナスの事を話す
友は鼻で笑ふ

何が可笑しい
人を想う事が
そんなに

庭前の道に
カランコロンと
下駄の音

ヴイナスだ

ヴイナスの下へ
私は駆け寄る

洗い髪のヴイナスの足先に
小動物がいた

ヴイナスは邪魔だと
蹴ろうとす

私は庇い
ヴイナスに蹴られた

ヴイナスは
知らないと
足早に去る

麗しかった
だが麗しくなかった

小動物を蹴ろうとす時の
顔はまるで
鬼女であった

自分は恋をしていたのだ
洗い髪のヴイナスに
だが其れは

私の理想の中だ

私は眠り泣いた

女中は心配そうに
私を見ていた

私は鈍感故に
知る由もなかった

86:アビス◆wc:2017/11/17(金) 20:05

(作者より)

私の詩を見た者は
皆言葉を揃えてこう云う

不思議だと

こんな私の語彙力の欠片も無い詩を
或る人は云った

謙遜をと

其の言葉に私は発破をかけられた
様な気がした

嗚呼 見てくれているのだと
なんと私は果報者だろう

有難い
私は改めて感謝せねばなるまい

この詩を見てくれる者達に

87:アビス◆wc:2017/11/18(土) 21:35

「桜花の正腐虫」

悪人を懲らす者達

地に墜ちる

権力を傘にし
民衆に虐の限りを
尽くす者達の何処に

 正 があろうか

黄金の桜花は
端から腐りて
形のみありきの

存在ではないか

未だすがるか
偽の者達が

何も保たない
黄金の桜花に

今日も輝くのだろうな

桜花の紋は
民衆を守る為ではなく

偽正の腐虫を
隠蔽す為に

88:アビス◆wc:2017/11/18(土) 21:53

「泥壺」

物は形あれば
何時か壊れる
では

見えない物は如何だろうか

壊れる事を許されない物は
考に服す

もう限界だ
これ以上は

壺は叫ぶ
負の情を詰める物

最初は耐えた
だが負の情は
絶える事無く更に増す

ひびが入った
未だ大丈夫
そう己に云い聞かす

負の情は
減る事無く
水として入り

泥となる

泥は
外に出ずらんと
壺の中で暴る

壺は出さまいと
地に張り留まる

ひびはやがて
全てを巡った
本来は壊れる筈である

だが
形は保った侭だ
何故だろか

泥である

泥は
出ようとした
壺は許さなかった

故に
泥がひびを
補する形となった

これが水ならば
とうに壊れたろう

今日も壺は
其処にある

壊れる事を許されずに
泥と共に或

89:アビス◆wc:2017/11/18(土) 22:03

「大正明暗混々」

ざんぎり頭を
叩いてみりゃあ
文明開化の音がする

誰の頭を
はたいたので

自分の頭か
そりゃそうだ

他人の頭は
逆にしばかれる

人々は
各々の自由を
謳歌する

アッパッパを翻せ

喫茶処で
清涼珈琲水を飲め

閑雅な食慾
おむれつ ふらい

成金彼方ほら
御嬢さん
これで明るくなったろう

札を一枚
贅沢な灯り

体の中に
過剰投薬
其れで逝こうとも

狂になろうとも

自由 自由だ
アッハッハ

ばんから其処らに
西洋風の
ハイカるさん

兵隊勘定
御馳走様でした

90:アビス◆wc:2017/11/19(日) 20:19

(作者より)
>>89のについて

アッパッパ→女性のワンピース
兵隊勘定→割り勘
ハイカる→西洋風な格好、振るまい

これ等は大正で使われた言葉なんです
最近大正の言葉が良いなって思ふ
今日この頃

91:アビス◆wc:2017/11/20(月) 21:22

「惰する操人ノ形」

誰かに従っている方が
楽だ

自分の考えなんて
等に棄てた

怠惰に生きる事の
何が悪い

別に迷惑を
かけている訳じゃない

操人形は
全てを知り尚

たったった

らぁらぁらぁ

はいで御座います
ご主人様
歌いましょう 踊りましょう

仰せの侭に

糸ぷらりぴんと張り
手足逆でも
構いませぬ

さぁさぁ
どうぞ
操って下さいませ

自分が考えを
持つなんて
ろくな事が無い

災事を招くだけ
だから私は
怠惰に生きる

人の形をした
操で良ひ

人間を棄てた
後悔は無かった
今迄は

操人形は飽きられる
人間もまた飽きられる
私もまた飽きられた

埃を被り
うずくまる

望んだ筈なのに
何故後悔が

まぁ良ひとしよう

もう動かなくて
良いんだ

誰の為にも

欠伸を一つ
眠りませう

考える事すら
面倒くさい

92:アビス◆wc:2017/11/21(火) 21:27

「嫉蛇妬犬」(しじゃたくいぬ)

私は今日も我慢した
今日も良い子でした
なのに

報われないのは何故なのか

自分の欲しい物は
皆心に秘めた

家に帰れば
直ぐに家事もしている
なのに

何故彼奴ばかりが
報われる

何故彼奴ばかりが
幸になる

嫉ましい
妬ましい

私は刄を
心に突き立て
欲の木に降り下ろす

ぐしゃりと音立て落ちて
足元は赤と紫に
染まる

これで良いんだ
これで私は
もっと良い子に

なれる

良い子であれば
報われる

我慢をすれば
幸が来る筈

なのに来ない

他を困らせる貴様が
幸を手に入れられる

何故貴様なのだ

私は刄を
貴様に突き立てる

嫉みを鞘に
妬みを刀身に
貴様の心に

降り下ろす

今の私は蛇だ
嫉に狂いた

今の私は犬でもある
妬みて吼える

答えろ

貴様は如何やって

幸を手に入れた

首を足蹴に
私は問ふ

93:ピース・シィーン:2017/11/23(木) 15:43

とても才能のある詩だね。情景が想像しやすいし、思いが伝わってくる。これからも頑張ってね。

94:アビス◆wc:2017/11/23(木) 22:46

>>93
…私には勿体無い言葉だ
“才能”なんて…
とても嬉しいよ!有り難う!

95:アル◆RY:2017/11/24(金) 06:32

あ、アビス!
お久〜
アク禁解けたよ!
ごめんねこっちに書いて
ポエム上手いね!私なんて全然だから羨ましいよ…

96:アビス◆wc:2017/11/24(金) 17:52

>>95
久しぶり!
アク禁解けたんだ!
良かったね!!
詩、見てくれたんだ。
ありがとう!

97:アビス◆wc:2017/11/24(金) 17:59

「哀愚の人形師」

坊っちゃん 嬢ちゃん
寄っといで
お話しが始まるよ

工房から音がします
カンカン トントン

町一番の人形師
人の笑顔の為に
人形作り

人形師の人形は
誰かの手に渡る度
其の人を笑顔に出来る

不思議で素敵な御人形

さぁさぁ
坊っちゃん 嬢ちゃん
寄っといで

この人形師が
笑顔にしてあげよう

泣いてる子には
人形をあげる

涙を拭いて
さぁ笑おう

今日も頑張る
町一番の人形師
魔の手が来るよ

98:アビス◆wc:2017/11/24(金) 18:04

>>97の続き

人形師の工房に
ある人物が
やって来た

身なり絢爛の
貴族様
人形師に云いました

友達になろう
広い工房を作ってあげよう
僕の城に

君の為に

友達 其の言葉は
人形師にとって
初めての言葉

勿論です
嬉しいなぁ

初めての
友達が出来たのです
でも気をつけて

飴の様な
甘い言葉ほど
怖いものは無いのだから

99:アビス◆wc:2017/11/24(金) 18:10

>>98の続き

城にやって来た
人形師

貴族様が手招いて
おいで おいで
こっちだよ

案内された
地下工房
とても広くて

道具もいっぱい
うれし泣きだね
人形師

早速作ろう
人形を
トントン カンカン

ガシャアンと
突然何の音
戸惑い焦る人形師

檻の音だよと
貴族様
したり顔で微笑んで

作っておくれ人形を
僕と云う
友の為だけに

100:アビス◆wc:2017/11/24(金) 18:18

>>99の続き

まだまだ続くよ
坊っちゃん 嬢ちゃん
席は立っちゃいけないよ

閉じ込められた
人形師
それでも作ります

友達の為に
トンカン トンカン

心優しい
人形師
騙されている事に

まだ気づかないのです

そしてもう一つ
作った人形達が
何に利用されているのか

町の人々から
笑顔が消えました
それは何かわかりますか

人形師の人形達です

楽しませる為の踊りは
狂気のワルツへ
人々の体が飛ぶんです

101:アビス◆wc:2017/11/24(金) 18:36

>>100の続き

町の人々は云いました
人形達のせいで
家族が恋人が

友達が消えたんだ

作ったの誰だ
人形師ですよと
貴族様

許さないぞ
人形師

怖くないかい
坊っちゃん 嬢ちゃん
でも見ておいきなさい

町の人々に
貴族様は云います
退治しましょう

悪の人形師を

ガシャリと開いた
檻の音
出ろと云われ出た先は

怒りの町の人々で
人形師に
次々と石ぶつけ

102:アビス◆wc:2017/11/24(金) 18:51

>>101の続き

助けて友達よ
すがる人形師を

冷たく払う貴族様
次にこう云った

ここにおります
人形師
人々惑わす悪の人形師を

この僕が一生閉じ込め致しましょう
高らかに宣言
喜ぶ人々

理解出来てない
人形師

どうなるの ねぇどうなるの
まぁ焦らないで
坊っちゃん 嬢ちゃん

再び閉じ込められた
人形師
ここでようやく気付きます

自分が騙されている事に
でも人形師は
貴族様を責めませんでした

それは何故でしょう

友達だからです

103:アビス◆wc:2017/11/24(金) 19:04

>>102の続き

あぁ何という事だ
それでも信じているのです
余程うれしかったのでしょう

友達と云われた事が

何とまぁ
そして友達と云う言葉程
呪いが強い言葉はありませんね

そう思わないかい
坊っちゃん 嬢ちゃん
なんで泣いているのかな

刻々迫る
命の火が消える刻
人形師は考えます

どうすれば
人々は再び笑顔に
なれるのか そうだ

人形になればいい
早速作ろう
自分の人形

トンカン カントン
できたは良いが

次に何をすれば良い
そうだ

心臓に
心を乗せて
抜き取ろう

でも入れるのは
誰でしょう
人形ですよ

自分に従順な
人形です

自分の心臓と心を
抜いた人形師

人形は入れます
心臓と心を
でも目覚めません

人形は待ちました
自分が朽ちるまで
いつまでも

如何でしたか
坊っちゃん 嬢ちゃん
この愚かで哀れな

人形師の物語

この私の物語は

ぱち ぱち ぱち
拍手をありがとう

来てくれたお礼に
人形をあげましょう

笑顔になりましょうね

104:アビス◆wc:2017/11/26(日) 22:09

(作者ヨリ)
見てみたら100スレ行ってました

…飽き性でネガティブな
22歳の放浪者(バガポンド)が
此処までいくなんて

思ってもいませんでしたよ。

やー めでたや めでたや

105:闇竜の騎士◆cs:2017/11/27(月) 20:37

おー!
百レスおめ!

106:アビス◆wc:2017/11/27(月) 21:41

>>105
ありがとう!

107:アビス◆wc:2017/11/27(月) 21:52

「フロイント・アーデル」

かぁてんこぉる
ぱちぱち拍手
さぁまた始まるよ

わぁわぁと
寄っておいで
坊っちゃん 嬢ちゃん

開演には
まだ少し待ってくれるかな
ほら赤い飴をあげるから

いい子に三角座り
してようね

ごめんね 待たせたね
糸が絡まっちゃってたんだ

私を貶めた
貴族様

かつての友達
いや違う
今も友達だ

ねぇ早くみたいよ
焦らせないで
いい子にしてろと云ったろう

108:アビス◆wc:2017/11/27(月) 21:57

お城に住んでる
貴族様
民に慕われる

良い貴族様でした

ある日こんな噂を
聞いたとさ
自分よりも人々を

笑顔にできる
人形師がいると
僕の町に

そりゃ一目会ってみたい
僕よりも
慕われる者が

いるのなら

城を出た
貴族様

会う事で
互いの運命の
歯車が

ギギィと歪に音立て
廻り出す事を
まだ知らない

109:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:01

トンカン トンカン
鎚の音
ここにいるのか

町一番の人形師

これは客人
珍しい
こんにちは

何の用でしょう

僕と友達に
なってくれ
人形師よ

城に来てくれないか
君の為に用意しよう
広い工房を

人形師
友と云う初めての言葉に
感激し

友達になった
貴族様と人形師
ここからです

貴族様の心に
魔物が
住みはじめたのは

110:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:06

城に招いた
貴族様
ようこそ

町一番の人形師
僕の友よ

案内しよう
工房へ

逃がしは無い様に
扉に鍵かけて
君をここに

閉じ込めよう

僕の町で
僕より噂に
なるなんて

許せないから
君を招いたんだ

檻の音だよ
気にしないで
頑張って

作ってね
僕の為に

友の為に

111:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:11

地下工房に
鎚の音
トンカン トンカン

作られた人形
何れも今に
動きそうだ

ガタガタタ
突然動く
人形達

貴族様
驚き腰抜かす

人形達
貴族様の方に
ギョロリ振り向き

膝をつく

従います
どうぞ何でも
お申し付けを

それならば
町に行き
民に害を

与えてくれ

112:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:16

これでいい
僕が慕われるなら
民に害があろうが

知った事じゃない

黒笑浮かべる貴族様
そこに
かつての貴族様は

もういません

いたのは
心を嫉妬に燃やされた
己の称賛のみを欲する

一人の人間ではなく

一匹の魔物なのでした

この時の
人形師は
知る由もない

友達が
魔物になって
自分の作った人形が

人々に害を
なすなんて

113:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:24

町に人形降り立った
人々の逃げと悲鳴は

狂気のワルツと
ゲシュライ・プレリュードだ

厄災のギグを用意した
指揮者の貴族様

自作自演のリフは
準備済み

民達よ
あの人形達を
作りしは

町一番の人形師だ

人形師を許さない
怒れる民達に
僕はこう云った

悪の人形師は
この僕が
退治しましょう

114:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:26

僕に対する
拍手喝采
これなんだよ

もっと僕を
慕って敬え
ほらさっさと

民草共が
グズグズするな
僕は貴族様だ

115:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:30

ここから先は
前に話した
通りを参考に

今回のお話
これでおしまい
坊っちゃん 嬢ちゃん

貴族様は
如何なったか
今もここにいるよ

私の人形として
友達として

さぁさぁお帰り
坊っちゃん 嬢ちゃん
親の所へ

朝告げ鶏が
鳴いたから
ここでお別れ

また会おう
会えるかな

116:アビス◆wc:2017/11/28(火) 16:23

「金満虚心」

友の沙汰も金次第
赤の他人に
金積んで

友達装わす業が
本当にあるだとさ

其の場凌ぎの
孤独紛らし
楽しい 楽しい

誰の為
他人の為
そんなわきゃない

自分への上げ指が
欲しいだけだろう

友充あぴぃる代行業

ご先祖様へも金次第
赤の他人に
金積んで

墓へ参わす業が
本の当にあるだとさ

ご先祖様も
馘捻る

こやつは誰だと

墓参り代行業

他にも色々
代行業界

忘れちゃならない
呪祖代行

丑の呪神への
願い事
代わりに

請け負うと
云われとます

宿題工作の
代行業

子にやらせたくないからと
親心

ロクな大人にゃ
なれないね

金が満つりゃ
人の心は
虚となる

117:アビス◆wc:2017/11/30(木) 21:10

「王は故に である」

人はこの世から去るたら
何に先ずなると思う

王様になるんだよ

人から姿は
見えないから
好き放題

何処へだって
行き放題

この浮世を
楽しもう

あっはっはと
笑い乍
飛んで行く

君を空を
私は
見上げる

彼の者は
知らないのか
誤魔化しているのか

何処へだって
行けるのなら
想ひ人の処へも

行けるだろう

生前思いを
伝えられなかった
今度こそ

想ひ人よ
此方を
向いてくれ

そして
云わせてくれ

貴方を思ふ者は何時でも
貴方の傍に

いたと

其の声は
想ひ人に
届かない

なら姿も
見えないさ

大粒の
涙珠を流する
王様は

何とまぁ
孤独な
王様で

ありましょうか

好き放題
していても

想ひ人に
伝える事はもう

出来ないのですから

118:アビス◆wc:2017/12/01(金) 20:22

「喜亡生叫」
(ヨロコビナキハ イケシモノサケビ)

骨はだけた
白手で招く
おいで おいで

此方へと

目玉片方
落ちた顔で
ぎょろりと見つめる

其の先は

三味線
弾き語る
坊主様

うとりと
聞き魅いられて
次々仲間が

浄土か
地獄へ

葦原中つ國を
去る者達への
慰め歌

坊主様は
今日も
弾き語る

亡者仲間に
誘われ今日も

弾き語り
坊主様の元へ
行って来ます

今日は何やら
仲間が怒りだ

何故だろか

坊主様が
弾き語る
三味の線音

あの頃の魅力は
何処へと行った

あの音を聞いて
私も漸く
逝けるかと

浄土か
地獄へ

役に立たぬ
坊主はいらぬ

雑音奏でる
坊主の耳を
引き千切れ

女の事ばかり考える
生臭坊主の
脳味噌を

掻き摺り出して
代わりに
石を詰めようか

今はもう
我等を浄する
歌は無い

代わりに
我等が
歌うだけ

生者よおいで
此方へと
共に歌おう

喜と叫に分けて

119:アビス◆wc:2017/12/01(金) 20:34

「人形が遊ぶ」

人形は遊ばれる
腕を千切られようと

只 其処にあるだけ

目をぶちりと
毟り取られても
人形は

表情を変えない

綿が出てきた
人形にとっては
人間にとっての

内臓である

色々な所を
いじられて
弄ばれて

人形とて
平気な訳がない
そして思う

私達だって
遊びたい
人間で

ねぇねぇ
人間 何して遊ぶ

かごめかごめが やりたいよ
後ろの正面だぁれ

わぁい私達の

かぁち

周りの人形が
騒いでる

何するの
そうだ
私達がやられている事を

しましょうよ

それじゃあ
何しよか

わたしは腕を
千切られたから
腕にしよう

ぼくは目を
毟られたから
目にしよう

それよりも
中身が見たいな
人間の

私達は
綿でしょ

人間は
どうなのかな

人形達は
無邪気な
好奇心で

人間に群がる

ありゃりゃ
綿じゃないんだね

赤い綿なんだね
人間て

120:アビス◆wc:2017/12/03(日) 22:26

「不噛合」(カミアワズ)

月に住む
美しの君よ
餅をつく兎は

其処にいるかい
ぺったん ぺたん

此方の兎は
餅をつかないけど
元気に野山を

走り回るんだ

月の友たる地球に住む
名知らぬ男子よ
そちらの四季は折々ですか

私は一度
地球に
降りましたが

人の美しさ等
霞の様で
もう一度

見に行きたいと
思いました

僕は知りたいな
貴方の名が
なんて云うんだろう

私の名は
輝夜姫と
云うのです

とても素敵な
名前だね
輝夜姫

私は貴方と
話していると
何処か楽しいです

僕もだよ
ねぇ次は何時
会えるかな

わかりません
この文のやり取りは
私と貴方だけの

秘密ですから

私にしかわからない
地球の男子と

僕にしか見えない
月の美しの君との

何処か噛み合っていて

何処か不噛合の
文のやり取り

121:アビス◆wc:2017/12/05(火) 21:46

三匹の子豚
何時も仲良く
暮らしてた

日常平和の謳歌
其れを壊す
腹空きの狼が

涎だらだら
丸腹肥えた
三匹子豚

御飯は彼奴達だ

長男は作る 藁の家
次男は作る 木の家を
三男は作る 煉瓦の家

藁の家と木の家は
狼の息で
びゅびゅうと

飛ばされた

長男 次男
たったか逃げる

狼其れを
だっだ追う
待てこら逃げるな餌共が

三男の家に
逃げ込んだ

狼びゅびゅうと
吹いてても
壊れやしないの

煉瓦だから

しょうがない
狼諦め
帰ってった

其の侭
居座る
長男 次男

掃除しろ
綺麗にして

お腹が空いた
ごはんを用意しろ

家を建てろ
長男と次男の分
建てた

そして三男
火をつけた
二匹の兄の家

ごうごうと
焼ける音

もくもく
いい匂い

釣られ来たぞ
腹空き狼
逃げないと

長男次男
窓から逃げる
けど抜けない

其れを見て
やつれた顔で笑む三男
良かった ぴったりだ

うふふ うふふ

腹空き狼
満腹狼になって
帰ってった

122:アビス◆wc:2017/12/06(水) 21:49

「虫の苗床」

暗い深い
森の中
動かなくなつた体を

虫達が食べに来る

きいきい鳴いて
もそもそ体を
這つて上る

体がこそばゆい

開いた
口に
巣作つて

肉をぶちり
餌にして
蟲育て哉

月を臨む
母蝿は
腐肉に仔を

産み落とす

蛆等は
じゆるじゆる
顔の中

他の虫達も
ぞろぞろ
体の中

気持ちが悪い
筈なのに

気分は何故だか
子を育む
母の様だ

愛おしい

人間ではない
かといつて
屍でもない

今の自分は

虫の苗床だ

そう思える

123:アビス◆wc:2017/12/06(水) 22:24

「白銀問答」

雪降る白空に
目を遣り

其の視線を
地へと移せば
いるみねいしよんが

ちかちか光る

拡声器からは
冬に因む音楽が
飽くる程に

耳に来た

街歩く人々見やば
互いの温もり求むる
男と女が

ちらほらと

人は聞くだろう
こんな時期に
人間観察なぞ

面白いのかと
外に出楽しむのは
如何かと

私は答えよう
面白いさ
ほら御覧よ

彼処で
ぎやんぎやん
云いあう

男と女を

まるで
犬の様だろう

くつくつと
私は口元
隠して目を細め笑う

其れに私には
寒で冷えた手を
暖める者等

居やしない
独り者の
身 故に

外に出
楽しむ勇等
ありやしない

臆病者さ

どうせ
行つたつて
何も無い

ならば
暖かい部屋に
引篭つて

蛞蝓と
なつた方が良い

そう思わないかね

と 私は人に
質を投げ返す

そして青鯖缶を
開けて
一つ口へと放つた

124:アビス◆wc:2017/12/08(金) 20:11

「空の壺は何で満つるやら」

他に汚された私を
貴方は何処まで
消してくれるだろうか

見知らぬ者に
拐わかされ
私の秘所を姦されて

泣きじやいて帰つて来た私を
貴方は只黙つて
抱き締める

其の侭
貴方の匂いが
染み付いた寝の床へ

私は倒され
上に跨がり
貴方は囁く

何処を姦された
云つてみろ

云いたくない
私は拒んだ

云わなければ
消す事が

出来ないだろう

妖しく笑い
艷気を含んだ
声で云つた

震える手で
私は己の体に触れた

忘れさせてやる
消してやるさ
乃公の手で

だから泣くな
記憶の為だけに

啼いて良いのは
乃公の為だけだ

体が重なる
映る影も又重なる

消して欲しい
貴方の手で
記憶を

そして満たして
貴方の物で
何も無くなつた

私の空壺を

125:アビス◆wc:2017/12/08(金) 20:20

「文字館 孤ノ主」

古ぼけた外装に
蔦が張つている

中は蜘蛛の巣ばかり
こんな所に人なんて
住んでいるのか

と里人は頚をかしげる

本当にいるのだ
嘘では無い

外から声がする
喧しい事
この上無いな

目玉の入つた
かんてらと共に
外を見下ろす一人の影

其れこそが
この館の主である

私には
不思議な力があつた

者を物を
文字にす力
だから他に

化物だと
疎まれた

だから私は
人で在り乍
人では無い

以前
迷い込んだ猫は
文字にしてあげたよ

理由は無い
強いてあげると
するならば

私に質問を
したからだ

館の主は
今日も孤である

漂う文字は
今日も意味を成さず
主の為に

126:アビス◆wc:2017/12/08(金) 20:29

「愛閉ジノ檻」(メトジノオリ)

私が入つている
檻の外にいる
貴方に手を添える

貴方は
何を考えているのか
判らない表情で

私の首に
触れ返す

そうだつた
貴方は愛情を
伝えるのが下手だから

私を檻に
閉じ込めたのだつけ

逃げない様に
首輪と紐迄
購つて

色は青だよ
私の好きな
色だから

貴方は云つた
嫌な事はしない
檻の中に

居てくれるだけで良い

だから私は
ずつと檻の中だ

外の世界なんて
知らない
知らなくて良い

私にとつては
貴方が世界だ

貴方が何処か
別の世界へ
逝つたら

私も又
貴方を追い
其の世界へ

逝く事でしよう

貴方は世界で
世界は貴方
なのだから

127:アビス◆wc:2017/12/08(金) 20:49

(作者ヨリ)

私ガ小サイ“ッ”等ヲ
大文字ニシテイルノハ
ワザトデアル

決シテ間違イデハ無イノデ
アシカラズ

128:アビス◆wc:2017/12/09(土) 22:22

「背徳ニ請ウハ道徳カラノ解放」

ねぇ
次は何時
会えるの

何人の誰に
云つたつけ
この言葉

布に
己の体を包み乍
私は呟いた

布には
互いに交合つた
匂いが

未だ染み付いている

私は
奪う事でしか
人を愛せない

こんな私は
可笑しいのだろうか

否 可笑しくは無いな
奪う事が悪いと云うのは

其れは只の周りの
道徳的価値観だ

奪う事は
私にとつての
価値観だ

道徳的で
在る事は
私にとつての

苦痛でしか無い

洗脳的道徳から
解放されたくて
私は他人の愛を

奪つた

背徳と云う
禁断の蜜の味は
とても甘美であつた

他の愛が
私への愛と
変わる様は

私を
快楽の泥沼へ
頭の先から

溺れ堕とさせる

沼からは
もう這い上がれ無い

這い上がら無い

道徳と云う洗脳から
解放されるならば

其れで良い

129:アビス◆wc:2017/12/11(月) 00:42

「音終弾」(ねおわのたま)

乾いた銃弾は
又一つ音を
終わらせた

虚空に目を遣り
吐く息の白さに
寒を感じる

赤に染まる地と
倒れる人間を見て
呟く

駄目だ
今日も
去る事が出来なかつた

この退屈に
崩れ去る世界から

去りたいなら
去れば良いだろう
自らのこめかみに

銃口を向けて
其れで終わり
この世界から

去れるぞ

其れが駄目なんだ
もう一人の自分が
拒むから

我は汝
惨憺たる者なり

汝は我
弱き者による
壊を望まず

強き者にて
壊を望みたり

音に終わりを
告げし者が

涙を流す
御前では無かつた

130:アビス◆wc:2017/12/12(火) 21:37

「病風」(やまいかぜ)

己の不摂生
其処に祟りて寄るは
病風

躰の隙に
入り込んで
凡百病を引き起こす

風の邪
肺が炎か
或いは別か

全が蝕まる前に
医者に診て貰え
針の一射し其で了だ

だが病の魔は
風に乗つて
又やつて来た

全が蝕まりや
動けず仕舞いの
其で了で

天井の
木目仰ぎ
苦を抱えん

131:アビス◆wc:2017/12/13(水) 20:47

「眠 子子 寝」(ネ ネコ ネ)

夜ガ来タリ
命或者ハ
眠リニツコウ

船ヲ漕グ躰ハ
岸ニ着ケテ
コクリ コクリ

羊ガゾロゾロ
メエメエ鳴イテルヨ
数ヲ数エテ

壱匹
弐匹
参匹

眠レ無イナラ
温カイ牛ノ乳ヲ
カツプ一杯

子守唄デモ
聞キマシヨウ

揺籠ニ
躰ヲ埋メテ

金糸雀ガ
唄ツテ

上ノ枇杷ノ実
揺レテ ユラアン

蔦ヲ木鼠
ユサユサ揺スル

夢ニ黄色イ
月ガ出テ

スヤア スヤア

フワア

目ヲ閉ジテ

グウ グウ

132:アビス◆wc:2017/12/13(水) 21:54

「言葉届ど只卑下たる己」

私の綴る
言葉は魚である
逃げる魚を

針と云う
筆で釣り

たもと云う
紙にて捕らえる

さしずめ私は
太公望

私の綴る
言葉は虫でも或
逃げる虫を

蜜と云う
墨で誘い

籠と云う
本にて捕らえる

さしずめ私は
麦藁帽の
夏山駆ける

虫採り少年哉

否 私は只の
年を喰つた
人間の女

美しさも
可愛気すらも
存在しない

居ても居なくても
変わらない

其れが私である

133:アビス◆wc:2017/12/15(金) 19:09

「釘と標本」

釘と云うのは
実に便利だ
物を其の場に

留めて置ける

欠かせないのは
本だ
留めた物を

挟ま無ければ
標本にはならない

釘を片手に
私はアハハと笑う

両手両釘
両足両釘の
君は問う

恨みでも
何か在るのかと

有るには或
私は他者が
嫌いだ

君は
私にとつての
他者だ

けど君が
他者と
笑うのを見るのは

もつと嫌いだ

そして私は
標本が好きだ

生きずして
黙ても尚
生きている様だから

君が
私にとつての
他者で無くなるには

如何すれば
答えは簡単だ

私の好きな
標本にすれば良い

だから君は
私の好きな
物で

在つてくれ

光る釘の切つ先よ
最後の一刺しを
君にあげよう

134:アビス◆wc:2017/12/15(金) 22:52

「脳界異探」

在る者が云つた
私の脳内を
覗いてみたいと

如何やつたら
其んなに言葉が
出てくるのかが不思議だと

止めておけ
迷うぞ
と或国の少女みたく

案内役等も
存在無い

繋がらない
階段は無数に在り

橙と黒の混じる
昼か夜かも判らぬ空に

汚濁なる海と
反して地に白砂が
在るだけだ

其れでも
いいと云うなら
覗くが良い

私の脳内に
道は無いが
猫と足跡に

付いて行くと良い

桃色の象には
触れるなよ
彼奴は凶暴で

頭蓋は
簡単に粉と臓物に
なるからな

地面をうごめく
群毛虫にも
触れないでくれ

私が笑う

猫と足跡が
途切れたら
杉の木を切れ

そうしたら
目が覚める

135:アビス◆wc:2017/12/15(金) 23:05

「言ノ葉の魔法使い」

私は
魔法使いである

あらゆる言語を使い
新たなる呪文を創り出す者

世や人は
其を詩と呼ぶ

私は憧れた
サムボリスト・アン・ノワァルに

其の者は何時も
黒ずくめの帽子と
マントを愛用し

仲間と共に
複雑難解な言葉記されし
高度な魔導書を読み更けていたと云う

其の者の創造せし呪文は
現代においても
数多を惹き付け魅了する

私も又
惹き付けられた者の
一人故

魔法使いと
なった

未だ未熟な
魔法使いだが

私なりの
呪文を描きし
魔導書は

これからも
思いつければ
書いていこうと思う

136:アビス◆wc:2017/12/18(月) 21:51

「傲慢女王 首バケツ」

女王の声は
民の耳に良く通る

民の声は
女王の耳には届かない

女王は
肥えている

民は
飢えている

女王は云う
飢えているのなら
食べ物を食べれば良い

民は云う
食物は何処に在る

女王は指す
其処らに在るじゃない

民は指す
虫や雑草の事か

そうよと
女王はケラケラ

ふざけるな
怒れる民

逆らう者は
首斬りで
兵に女王が命ずる

斬首の民は
バケツの中

絶対独政の
傲慢女王
其の姿は

獅子か孔雀か

吼えて荒げ
絢爛装飾

だが其れも
長く続かず

斬首台の上に
女王が居る

取囲み
未だか 未だか
待ちわびる民

女王の姿は
何処にも無い

在るのは
牙無き獅子か
尾羽根毟れた孔雀か

ギロチンは
首を斬った

女王は
バケツの中だ

137:アビス◆wc:2017/12/20(水) 21:24

「叶わぬ夢は己為の娯楽」

遠き座に在りて
手元に残らぬ銭程
虚しい物は無い

朝から夕迄
己の時を贄にし
生くる為に働いた

己が何れだけ
働いたかは
紙に記された

数字のみぞ知る処

紙を持ち乍
私は帰路に着く

皆で働かねば
生活は成り立たない
だが少しでも

娯楽は在る
片方だけだが

もう片方には
殆ど無い

くれる余裕は
無いと云い乍
片方の娯楽を楽しむ姿は

正直羨ましい

余裕は無い事は
知っている
だから私は

我慢を
し続けている

賞与すらも
生活の為に
捧げた

本当は
己の為のみに
使いたかった

叶わぬ夢を
持ち乍
私は今日も働く

目の前の
人参を食べられぬ
馬の様に

138:アビス◆wc:2017/12/21(木) 22:17

「脳界探人」

彼の者の
脳界は
実に不思議だ

階段は
階段の意義を
成してはいなかった

空の色は
目眩がする程の
橙と黒が

白砂を歩いていたら
生物は住んでいない
汚濁な海で

否 生物はいた
生きていない物だったが

コクリコの様に
赤い森の中で
桃色の象が

酔っ払いみたく
機嫌良く踊っている
近付いたら

頭蓋を
潰されそうに
良く見たら

怒って
暴れているのだった
危ない 危ない

案内の
猫と足跡が
跡絶えた

目の前に
杉の木と鋸が

切り倒したら
元の世界へ
帰れたが

戻れなかった

139:アビス◆wc:2017/12/21(木) 22:27

「炬燵漫談」

炬燵の上に
蜜柑が篭に一杯
其の一つを剥いて

口へと放り
端からも見て
自分達からも見て

下らない漫談を交わす

蝸牛と蛞蝓の違いは
何か
答えは殼が在るか無いかと

仲間が云う

では美女や美男の
定義とは何かと
仲間が云う

私は云った
人は性格以前に
見た目を見る

顔と体だろう

幾ら性格が
良くとも

顔と体が
良く無ければ
異性は振り向きにくい

そうだろう

剥いた
蜜柑の皮で
熊が出来た

此方は
皮が途切れずに
此処まで長く剥けた

今度鍋をしようか
材料は如何する

何か適当に
一品ずつで

世間では
其れは鍋では無い
闇鍋と云うんです

炬燵の上で
広がる
漫談と笑いは

下らないが
平和で或

140:アビス◆wc:2017/12/22(金) 22:17

「賽子賭天獄博」

丁か半か
さあ何方だ
選べと急かす

半だ
奇に賭けて
よござんす

賭けた結果は
丁で
負けざんす

又負けた
畜生もう一回

賭ける物は
未だ有るのか

嗚呼 有るさ
自らの命を
賭けてやらあ

次で
倍以上に
してやるよ

あんたさんの
たった一つの
命は

此の二つの
賽子に
委ねられやした

切った
張ったの
丁か半か

選びなすって

今度は丁だ
偶に賭けて
よござんす

結は果にして
如何に

ピンゾロの丁で
ございやす

救われやしたね
賽子に

此れが有るから
止めらんねえ

次のチンチロ
有り金全て
賭けて

賭博長者と
なってやる

丁か半か
何方を選び
天を見るか

獄を見るか
丁に次も賭けてやる
さあ結果は

如何に

おや
あんたさんの
負けでござんすね

有り金全て
戴きやしょう

序でに
命も
戴きやしょう

半でやんすから


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