恋愛小説、書こうと思ってます!

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1:美菜穂:2016/09/15(木) 19:38

美菜穂です。
短編の恋愛小説書こうと思ってます。暇潰し程度の感覚で読んでいってください。
読んでくれた方のコメントもOKです。ただし、荒らしは禁止です。
更新遅れることも多いと思いますが、よろしくお願いいたします♪

2:美菜穂:2016/09/15(木) 19:47

☆登録人物☆
·時岡千郷(ときおかちさと)
 ドライな性格の中1。思ったことは結構なんでも言うタイプ。
 その性格のせいで友人が少ないが本人は気にしていない。
 他人の目は気にしない方だが日々の我慢が祟って目がキツイ。

·逢坂冬真(おうさかとうま)
 常に冷静沈着、クールだが優しい中1。千郷と同じクラス。

·雪村陽菜(ゆきむらひな)
 千郷、冬真と同じクラス。美人で明るい人気者。

3:美菜穂:2016/09/15(木) 20:17

「ねえ、聞いた?ユイちゃん、山下先輩に告白するんだって」
「うそ!?」
「本当だよ、ライバル多いっぽいから、早めに行動することにしたんだって」
「さすが、ユイちゃん」
「ねえ、そこ退いてくれない?」
「あ……時岡さん」
朝のにぎやかな教室で、今日も女子たちは恋バナで盛り上がっていた。
中学生女子にとって、一番盛り上がる話は、やっぱり恋の話だ。
しかし、必ずしも全員がそうというわけではない。
このクラスの、時岡千郷なんかがいい例だ。
飾り気のない髪に、ややつり上がった目。にぎやかで派手な子が多い一年三組の中では、ただでさえ浮くのに、この性格。案の定、友達は出来なかった。
恋にも興味を示さず、人を寄せ付けない。いわゆる、一匹狼という奴だ。
千郷が去った後で、女子たちは会話を再開する。
「時岡さんって、性格キツイよね」
「人を寄せ付けない一匹狼の自分かっこいい〜って酔いしれたいんじゃない?」
 (聞こえてるっつーの)
どうして、女子は悪口でしか団結できないのだろう。事あるごとに、会話は悪口へ方向性をかえる。
そんな奴らと友達になるくらいなら、1人の方が、絶対いいに決まっている。
これが、千郷の信条だった。

4:美菜穂:2016/09/15(木) 20:34

「皆さん、注目ー‼これから、野外学習のグループを決めます。」
 (うわー、嫌なの来た)
グループ決め、それは千郷にとって最悪の行事だった。
友達作りをやって来なかった千郷を、グループに入れよう、なんて人はいない。もうすでに、女子の仲良しグループ的なものはできてしまっている。もちろん千郷はどこにも所属していない。
他人の目なんか気にしない性格の千郷も、さすがに先生に「時岡さんをグループに入れてあげてください」と言われ渋々入れてもらうのは、恥ずかしい。
万事休すかと思われた時、1人のクラスメイトが、声をあげた。
「時岡さん、入ってくれる…?」
それが自分に向けられていると気付くまで時間がかかった。
「え、私?」
声をかけたのは、逢坂冬真。まだ一度も話したことのない、クラスメイト。
「人数1人足りないんだけど、時岡さんが来てくれたらちょうどなんだよ」
「…うん」
(なぜ緊張しているんだろ…)
異性と話すなんて、久しぶりだからだ。そう、その時はそう思った。

5:美菜穂:2016/09/15(木) 20:51

逢坂冬真。常にクールで冷静沈着だが優しくてモテる。
千郷が、女子の会話をひっそり聞いて、やっと手に入れた彼の情報。
なるほど、自分とは無縁な訳だ。
しかし、まさかこんなところで一緒になるとは。しかも、移動のバス席でも隣になるとは。
「時岡さんと話すの、初めてかな?」
「…はい」
「あはは、何で敬語なの?」
「まだそんなに、親しくないから…」
「じゃあこれから、親しくなろうよ」
「は?」
 (よくそんな恥ずかしいこと、さらりと言えるな)
「いいよね?」
「はぁ…」
それに、何で私もこんな話しているんだろ…。全く、謎だらけだ。
千郷にとって、異性は未確認の生態。それなのに、どうしてこんなにコイツの話に、乗っているんだろうか。
無視したら変に思われるから。それが、千郷にとって一番理解しやすい答だった。
とりあえず、今はそう思おう。よくわからないことは考えるだけムダ。
そう、その時はそう思った。いや、そう思いたかったのかもしれない。

6:美菜穂:2016/09/15(木) 22:24

野外学習は何ごともなく進んで行った。千郷は、出来るだけ1人でできる作業を選んで何とかやっていた。
「時岡さん」
不意に、うしろから声がかかった。同じグループの、雪村陽菜さんだ。
陽菜は女子の仲良しグループをまとめる、明るい美人の人気者だ。
千郷とは、全く縁の無いタイプの人。そう言えば、逢坂と仲が良かった。
「時岡さん、その作業、1人で大変じゃない?」
「…大丈夫です。」
千郷はつい素っ気なく答えてしまう。長年の癖だった。
「それならいいけど…無理しなくていいからね」
陽菜が言う。
「あと私、時岡さんと友達になりたい!まだあんまり喋ったことなかったよね」
「はい…」
「これからは、千郷ちゃんって呼んでいい?」
「はい…」
「やった☆じゃあ、千郷ちゃんも陽菜って呼んで♪」
「はい…」
すごいなあ、と千郷は思う。どこか人を引き寄せる感じで、多少強引だけど不快にさせない。
逢坂と似た雰囲気を持つ、女の子。
「友達になりたい」と言われるなんて、何年ぶりだろうか。
この出来事が、千郷の学校生活を大きく変えるなんて、まだ千郷には想像出来なかった。

7:美菜穂:2016/09/16(金) 06:41

逢坂冬真に雪村陽菜。
自分とは関わりの無かった、二人のクラスメイト。
野外学習を通して友達になった。(まだ話しただけだが)
二人とも、普通に話しかけてくる。今まで誰も気にかけなかった千郷に二人は普通に話しかけてくるのだ。
不思議なことに、「誰とも関わらない」を貫いてきたのに、二人と話すのは不快じゃない。
これからの学校生活が、変わっていきそうだ。

8:美菜穂:2016/09/16(金) 17:26

「千郷ちゃん」
「雪村さ……陽菜ちゃん」
びっくりした。帰りのバスでも、話しかけてくれるんだ。
「千郷ちゃんは、好きな人とかいるの?」
「…え⁉」
ここで言う好きな人とはきっと、恋愛の方で、だろう。
さっき話したばかりの人に、いきなり恋バナ?
「えっと、いま…いません」
やっとそれだけ答える。いきなり恋の話なんて、千郷にはレベルが高すぎる。
まず、同性と話すのも精一杯なのに、異性で特別な感情を抱いている人なんているはずがない。
恋なんてレベルの高いことは、千郷には100年先でいい。
そう、その時はそう思った。

9:美菜穂:2016/09/16(金) 17:43

 (…野外学習のまとめ学活も、このグループだった)
また、陽菜や逢坂と一緒に一つのことをするんだ。
そのことに、ちょっとだけ喜びを感じている自分に、千郷はちょっと驚きだった。
人間の考えなんて、あっという間に塗り替えられてゆく。
 (これを、また思い出させてくれたのは…)
チラリと、逢坂の方を見る。バスで話したあとは全然話してなかったが、あれから何となく意識している。
グループ活動するの方は、陽菜と逢坂のカリスマ性のおかげでなかなかペース良く進んでいたし、千郷もそれなりの仕事を手伝った。
綺麗にできたポスターをグループの皆で見る。本当に、綺麗に出来上がった。それを作るのに、自分も協力していると思うと、千郷は自然と笑顔になるような喜びを感じた。
「時岡さんって字キレイなんだな」
逢坂が、話しかけてくる。
(今まで空気のように扱われていた私に声をかけてくれるだけじゃなく、認めてくれるんだ…)
嬉しかった。素直に、喜びを感じていた。

10:美菜穂:2016/09/16(金) 19:38

「千郷ちゃんって何小学校だったの?」
生意気にも、陽菜と話すのに慣れてきた頃だった。他にも友人は出来ていたが、昔のことを聞かれるのは、初めてだった。
「西小だよ」
千郷は短く答えた。
「西か〜、じゃあ早百合ちゃんと同じだね♪」
陽菜が言った。
早百合ちゃん。その名前に、千郷は顔をしかめた。
「千郷ちゃん……?」
早百合ちゃんこと、江上早百合は、実は千郷を変えた人物の1人。あまり思い出したくない思い出だった。

11:美菜穂:2016/09/16(金) 20:07

それは、千郷が小学四年の時の話。
中途半端に恋愛に興味のある女子たちが、恋バナをしていた。千郷も、入れてもらっていた。
「知ってる?サキって、上田にフラれたんだって」
早百合が、早速新着の情報を伝える。
「それ、本当なの?単なる噂じゃなくて?サキは恋興味ないって言ってたし」
「でも千郷だって恋興味ないって言ってたけど、彼氏出来たんでしょ?」
「は!?」
恋バナに、時々入ることはあっても、自分が噂になることは、今まで無かった。
意外に思って、続きを聞く。
「何?」
「昨日、川口に係の仕事手伝ってもらってたじゃん」
「そうだけど…」
「付き合ってるんじゃないの?」
「それだけで、そういうことになるの!?」
意味が分からなかった。中途半端に恋愛に興味のある女子は、何でも恋に繋げようとする。なかなか厄介だった。
「私、川口と付き合ってないよ」
「嘘?もう皆に言っちゃったけど」
「…は!?」
そこからが、大変だった。
川口は、女子にモテていたから、誤解した女子たちの、嫉妬の嵐で、千郷は陰湿ないじめに合った。
多分、その時に知った。女友達なんて、嘘の情報で勝手に盛り上がり、人づてに聞いた話を鵜呑みにし、簡単にいじめをする生き物なのだと。それから、友達付き合いを嫌い、恋愛に興味を示さなくなったのだろう。早百合と話すこともなくなった。
 (そんな奴らと友達になるくらいなら、1人の方が絶対にいい…)
そう思いはじめたのも、その頃だった。

12:美菜穂:2016/09/16(金) 20:19

でも本当は

13:美菜穂:2016/09/16(金) 20:19

12間違えた

14:美菜穂:2016/09/16(金) 20:39

(でも本当は)
千郷は逢坂を思う。陽菜を思う。
(そんな人だけじゃないんだ)
自分は、逢坂や陽菜と話すのは不快じゃなかったし、喜びさえ感じていた。
…「1人の方がずっと楽」という考えで学校生活を送るのは、果たして本当に楽だっただろうか。
本当は、そう考えることで、弱い自分を守ろうとしていた。
そう考えるようになってからは、自分は最初からそういう人間だったような気持ちになっていた。
でも、本当の本心は、やっぱりどこかで友達を欲しがっていた。
話かけられてもいつも、ぶっきらぼうに答えていた。チャンスを、無駄にしていた。
それでも逢坂や陽菜は話しかけてくれた。私を見ていてくれた。私に気付かせてくれた。
話しかけられるたびに「1人の方が良い、自分の判断は正しい」と思うことで幸せだと思っていた頃より、「友達と楽しんで幸せを見出だす方が良い」と。

15:美菜穂:2016/09/17(土) 09:57

「千郷ちゃん、おはよ♪」
「おはよう」
次の日、陽菜はいつも通りに声をかけてきた。千郷もできるだけ普通に返事をする。
昨日、陽菜の前で不自然な態度をとったことを、変に思われたくなかった。
(ここで本当のことを言わなきゃ、本当の友達にはなれないのかな)
千郷はチラリと陽菜を見たが、陽菜は何とも思っていないようだ。
「千郷ちゃん」
「何?」
「…昨日のことだけど」
「……」
「何かあって相談相手が欲しくなったら言ってね」
「…うん、ありがとう」
(詳しいことは、聞いてこないんだ)
千郷には、それがありがたかった。でも相談にはのってくれるんだ。
いい人だ、と思った。
(そんな友達と、巡り合わせてくれたのは…)
逢坂。でも彼はグループの人数が1人足りなかったから、たまたま誰とも関わっていない千郷を誘ったのだ。
何となく、それが残念な気がして、千郷は驚く。
(最初は、話してくれるだけで、ものすごく嬉しかった)
なのに不満を感じているということは…
私は、いつからそんな欲張りになったのろう。

16:美菜穂:2016/09/19(月) 21:46

〜訂正〜
最後の行、正しくは
 私は、いつからそんな欲張りになったのだろう。
です。

17:美菜穂:2016/09/19(月) 22:28

「…それ、恋じゃない?」
野外学習から、2ヶ月くらいたった頃だった。
千郷には東雲梨音(しののめりおん)という親友が出来ていた。
陽菜とは、いろいろな話が出来る良き友達だが、流行りものに疎い千郷にはついていけない部分もあったし、同性にも異性にも好かれる陽菜には近づきにくい時もあった。
そんな時、気が合うことに気づいたのが梨音だった。
梨音はおとなしいけど明るくて、おしとやかだけどおもしろい女の子で、千郷とは趣味が合う。
千郷は梨音には何でも話せたし、梨音も千郷を慕ってくれていた。
このような関係を、親友と呼ぶのだろう。自然と分かった。
そんな梨音に、名前は伏せたが意識している人がいることを話した時、彼女が口にした言葉が、それだった。
今まで、最も縁の無かった単語を親友に突き付けられた千郷の第一声は、情けないことに
「…魚?」
だった。
「…!?千郷ちゃんも、そういう冗談言うんだね……」
苦笑のまじった笑顔で、梨音が言う。
「梨音ちゃんこそ、今日調子悪いの?あなたの冗談にしてはつまらないよ?」
大真面目で千郷も返す。
恋。自分には100年先だと思っていた、未知の感情。
人間をあっという間に変える、恐ろしくもあるが不思議な感情。
それが、自分の中にも、あったということ……!?
以前、自分を苦しめた、他の友人たちの『恋』。思い出したくない、自分の過去。
恐怖にも似た感情が沸き上がる。
私の、逢坂への思いは…『恋』…!?

18:千景 改名しました。:2016/09/30(金) 16:22

「千郷ちゃん、おはよ♪」
陽菜が後ろから肩を叩いて言う。
「おはよう」
千郷も返す。昨日の話はきっと間違いだ。梨音の考えすぎ。そう思うことにした。
「時岡さん、おはよう」
「…!?逢坂くん…!!」
逢坂もいたのか。気が付かなかった。ぎこちなく、おはよう、と返す。
(陽菜ちゃんと逢坂くん、一緒に登校してたっけ…?)
何となくもやっとした感情に襲われる。
別に、友達を占領したい、何て気持ちは無かったのに。
「……!」
突然、過去のことを思い出した。
川口と仲良くしていた、という理由でいじめに合っていた頃。
あの頃千郷をいじめた者たちは、川口に恋していた者たちだった。
恋をすると、自分だけが思っているだけではいけなくて、相手にも同じ感情を求めてしまう。
そして、自分以外の者と関わるのを嫌う。
「…」
なぜか、今の自分と川口に恋していた者たちが重なる。
(梨音ちゃんの言うとおりだった…)
…千郷は、逢坂に恋している。

19:千景◆2DOA 久しぶりに浮上です♪:2016/12/07(水) 23:40

「時岡さん」
後ろから、逢坂が声をかける。それだけで、ドキッとしてしまう。
「何?」
(今の返事、不自然じゃなかったかな)
どうしても、気にしてしまう。
「映画のチケットが、あるんだけど」
「映画?!」
「うん、5人分あるから、時岡さんも誘おうかと思って」
「え…何で私?」
「野外学習のメンバーの5人を誘ったんだ」
「ああ…でも何で、5人分も?」
「見たい映画の試写会を応募しまくったら、ちょうど5人分当たったんだ」
「スゴっ」
「夏休み中なんだ。あとで計画立てよう」
「うん」
(初めて、誘われた)
嬉しい。彼といると、全てが未体験だ。ワクワクする。
「じゃ…」
「逢坂くん!誘ってくれて、ありがとう!」
自然と、言葉が出てくる。このワクワクは、全て彼のおかげなのだ。
「そういうのは、終わってから言うものでしょ」
「ああ、そうか」
「…フフフ。時岡さんは、いい友達だもんな。誘って当たり前だよ」
そういう、照れくさいことを、堂々と言えるところが、すごい。
千郷は、彼の紡いだ言葉を頭の中で反響させる。
「友達、かぁ……」
友達。一番、安心する言葉でもあるが、一番切なくさせる言葉でもある。
(私は…)
彼の『恋人』になりたい。
ひそかに頭の中で呟く。それを拭い去っていくように、朝のチャイムが鳴った。

20:千景◆2DOA:2016/12/09(金) 17:31

定期テストも無事終わり、あっという間に夏休みだ。
5人で遊びに行く日が、やって来た。
計画を立てる時も、逢坂と陽菜は積極的に動いてくれて、本当に頼りになる。
(こういうのって…友達って感じがする)
友達。私たちの関係は『友達』というルールの上で成り立っている。
逢坂の顔がちらりと浮かぶ。友達。何となく切なくなってから、恥ずかしくなってきて、自分の考えようとしていたことを止める。
(何考えてるんだ、私…)
「そろそろ行こ」
恋愛なんて、永遠に出来ないことを考えるより、陽菜たちと楽しむことを先に考えよう。
千郷は家を出た。

21:千景◆2DOA:2016/12/09(金) 17:56

「あ〜〜!楽しかった〜〜‼」
「最後感動したよね」
「冬真よく5人分も当てたよな」
「冬真の運の良さに感謝!!」
映画を見たあとの帰り道だった。皆口々に感想を言いながら、歩いている。
楽しかった。素直にそう思えた。
「逢坂くん…本当にありがとう」
千郷は何度も伝えた。何度言っても足りないような気がした。
「律儀だなあ、時岡さんは」
逢坂が言う。
(不自然だった!?)
上映中、逢坂が隣に座った時も、千郷は隣ばかり気にしていた。
(何か恥ずかしッ)
今も隣を歩く逢坂を、気にしながら千郷は赤面する。誰かに見られてないよね…。
「ねえ、逢坂くん」
陽菜が前から、逢坂に話しかける。
「何?」
「……」
千郷はチクリと胸の痛みを感じる。
(この二人って、一緒に登校してたし、仲いいよな〜…)
楽しそうな陽菜の顔。会話がはずんでいるようだ。
(無いよね、絶対に……)
有り得ない。こんな少しのことで、嫉妬しているなんて。有り得ない。
班員に自分勝手な感情を、絶対に悟られまいと、千郷は下を向いて歩いた。

22:千景◆2DOA:2016/12/09(金) 19:21

「千郷ちゃんおっはよー☆」
「おはよ。梨音ちゃん」
新学期。にぎやかな教室の中で、千郷と梨音も挨拶を交わす。
「おはよう、千郷ちゃん」
陽菜も挨拶をする。
「おはよ、陽菜ちゃん」
千郷も返す。
「おーい、陽菜〜」
「はいはーい」
陽菜は友達たちに声をかけられ、去って行った。千郷は人気者ってすごいと関心する。
楽しげな会話が、千郷のところにも聞こえてくる。
「えっ、陽菜って夏休み中も逢坂くんと遊んだの?」
「うん、3回ほどね」
(えっ…3!?)
自分の知らないうちに、2回一緒にいたってこと?
千郷は動揺した。
「千郷ちゃん?」
梨音が不思議そうな顔で千郷の顔を覗きこむ。
「……ん?どうかした?」
表情を変えずに、答えるが、その声は動揺が混じっている。
「何も、ないよ」
「そっか」
(……)
明らかに、微妙な雰囲気を作ってしまった。
(バレたかな…)
千郷は静かに立ち去った。

23:千景◆2DOA:2016/12/12(月) 17:58

「千郷ちゃんってさ」
休み時間、梨音が声をかけてきた。心なしか神妙な面持ちな気がする。
「何?」
千郷も厳しさを含んだ声で言う。吊り気味の目も手伝って、近寄りがたい雰囲気を感じる。
数秒の沈黙の後に、梨音は思い切って切り出した。
「逢坂くんのこと、好きなの?」
またまた沈黙。少し躊躇を見せた後、千郷は厳かな声で言葉を紡ぐ。
「…違うよ」
(ごめん、梨音ちゃん)
私たちの関係は『友達』。その関係が変わる日が来るなんて、絶対に来ない。自分からそれを壊すなんて、絶対に出来ない。自分の意志で、それは出来ない。
千郷は気持ちを隠して学校生活を送ることを決心した。だから、梨音にもそれは言えない。意志の強さなら、自信ある。
変な空気をごまかすように、千郷は笑った。
「何言ってんのさ。そんなこと考えてたの?」
「…ハハ。そっか」
上手く笑えてるだろうか。後ろめたい感情を悟られまいと、千郷は笑い続けた。

24:千景◆2DOA:2016/12/17(土) 13:03

「梨音ちゃんは、好きな人いるの?」
下校中、何気無く千郷は聞いてみた。
「私は他の人の恋バナ聞くのは好きだけど自分自身が好きな人出来たことはないな〜」
「へえ」
(なんか、意外)
クラスの人は大体そういう関係の人がいたりするのに。
「誰が誰を好きとかいう話は、詳しいのに」
千郷が言った。女子の噂話の情報網は怖いほど広まりが早い。
「最新の話は、陽菜が逢坂くんを好きって話」
「…え」
心臓が止まるような感覚がする。予想通りと言えばそうだが、まさか本当にそうだったとは。
「あの二人ならお似合いだよね〜美男美女?」
いつもの朗らかで無邪気な梨音の声のはずなのに、とんでもないくらい苦しく聞こえる。
「だよ、ね」
どうしようもなく落ち着かない。
梨音への後ろめたさか、陽菜に敵わないことへの絶望か。
「応援してあげたい、よね」
「ね」
分かってた。別に、陽菜が逢坂を好きでなくても。
(早く諦めなきゃ…)


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