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1:ねおん◆mU:2016/10/29(土) 20:19


書きたいものを好きなだけ書いていきます

10:空ラビ◆mU:2017/08/01(火) 11:30



ぼんやり,ぼんやりと辛うじて画面をみつめた。
もう、無理だ。私が馬鹿だった。

彼を好きになったときから、何万人もの人が自覚していたじゃないか。


_______『恋』を買ったんだから。


普通の高校生の私は、普通に学校へ行き、普通に日々を過ごしている。
私に友達がいなくて、1人っていうのを除けば…普通なはず。

今日も今日とて、イヤホンをして曲を聞く。
大切に大切に、少しの音も聞き逃さないように胸へ響かせる。

だって精神安定剤だから。この曲が、音が、
……こんなに美しい声が。

アシメのショートカットの私がイヤホンをしてても、そもそも髪に隠れてイヤホンは見えないだろう。
私が、あのアイドルが好きだなんて、バレたくない…
髪型も、友達がいないのも、全ては『あの人』のためにある。

今の私を造る全ては、彼が中心だ。


好きだなんて言葉じゃ足りるわけない。
そして、その感情を彼に抱くことが許されているのは私だけ…なわけがない。
周りの女子だって話している、テレビも雑誌も特集をする、熱愛報道だって出る…。

私のものじゃ、ない。


うるさく、騒がしい朝の教室の隅で、そっと目を閉じた。

11:空ラビ◆mU:2017/08/01(火) 11:51


あぁ、

叶わない恋なら捨ててしまいたい。

気づかない愛なら壊してしまいたい。


「猫田さん、起きて」

「…え、あ」


ここは、保健室、かな?
白い天井、白いカーテン、硬めのベッド。
あぁ、ここは保健室で…、

「誰、ですか」

目の前に座るのは、綺麗な顔をした男子だった。
不意に、なんて綺麗なんだろう、と思った。
私の好きな人は、茶髪で、いかにもアイドルみたいなキラキラした人だけれど、
目の前の男子は黒髪で、綺麗な人…。

「同じクラスの…、蓮夜。」

「名字は、何?」

名前まで綺麗なだとも思ったけれど、下の名前を知っても、ね?

「…教える気無いよ。それより、どうしてここにいるか気にならない? 」

何で名字を教えないの…と少し苛立ったけれど、別に知りたくもないから質問に答えることにした。

「だって、これでしょ? 」

そういって腕のほうに目をやると、やっぱり包帯が巻かれていた。
自分を傷付けるその行為は、駄目だとも知っていても止まらない。

「…やめないのか」

哀しそうに眉を潜める蓮夜。
優しい人、なんだね。

「やめないよ。だって私は、ひとりだか、」


ら…、


優しい石鹸の香りに包まれた私は、とにかく冷めていた。
抱き締められているとわかっていても、

「あはは、何?初めて話して、可哀想だったら抱き締めるんだね。」


そんな、少女漫画みたいな話、私は、



「だいっきらいだ…」

12:空ラビ◆mU:2017/08/10(木) 21:55


少しの沈黙が続いた後、

「嫌えば良いよ…」
少し弱々しい声がこの白い部屋に響いた。

「…意味わかんない、何で、何で蓮夜が悲しんでるの、
悲しいのは私だよ、親もいなくて、やっと本気で好きになった人は……、」


完全な八つ当たり。わかってるよそんなこと。
蓮夜に抱き締められながら、私はぼろぼろと泣き崩れた。

こんなに良いところなかったら、彼と会えていたとしても、
私は選ばれるはずがない。


そう、大好きでたまらない彼の名前は…

「亜蓮、?」

「な…んで、知ってるの…」


蓮夜は、私を抱き締めるのをやめて、私の両肩に手を乗せるようにして言った。
初めて、バレていたらしい。

もうどうしようもないと悟った。今さら何を言っても、バレたものはしょうがない。


………そして私は、神様の悪戯としか思えない事実を知る。


「俺猫田さんのことが好きです。」


突然の告白に私は固まった。私なんて人に好かれるたちでもない、その上アイドル好きもバレている。

何で、好き…?

「俺の、兄の名前、知りたい?」


脈絡のないことを言い出す蓮夜は意味不明でしかない。

「何が言いたいの、」「亜蓮だよ、橘亜蓮。」


「アイドルやってる、橘亜蓮。」


…………神様は意地悪だ。

13:空ラビ◆mU:2017/11/05(日) 11:13



_________


「今日もかっこよかったよー?
 良かったね、真ん中行かせてもらえて」

ソファに座って、猫のクッションを抱きながら彼に向かって言った。

「…俺のパートであの歌詞って、完全な当て付けだよ」

長身でスタイルの良い彼は、ため息混じりに呟きながら、長い足をうざったそうに曲げて私の隣に座った。

「それはさ、ずっと前の話でしょ。
 今は、みんなと同じだよね?」


目指す、方向が。
見ている、景色が。

彼らの目線の、もっと上にある頂へ向かうにはあなたが必要。


「……まぁね。」

そう言って、少し誇らしげに微笑んだあと、綺麗な声で私の名前を呼ぶ。


「なぁに、………_____。」

彼は、誰もが羨む素敵な人、そんな言葉では片付けられないくらい。

大きな、存在。


「秘密を守ったご褒美、あげる」



ずっと、私だけ見ててね…。


私の持つ、猫のクッションに力がこもった。

ねぇ、猫ってさ。


誰かが、好きだったよね…?


__________……。

14:空ラビ◆mU:2017/11/11(土) 15:04


「…好き、めっちゃ好き」

重めの前髪は、そのたれ目にかかってて。たまにチラリと覗く男らしい眉毛がたまらない。

光を反射するほど美しい白の王子が、まさか私に虜になるなんて。

「ねぇ、俺のものになって?」

鼻にかかった高めの声に、クラクラする。

私は普通の一般人。

たまたま彼が地方に来ているときに、道ですれちがっただけ。

『お姉さん、良い匂いするね?俺、君みたいな子タイプよ』

念願の彼に会えて嬉しかったけど、
チャラいな、リップサービスかな、そう思って対応した。

そうじゃないと、境界線が見えなくなってしまうから。

「してほしいこと、ぜーんぶしてあげる」


気づいたら、私の名前も連絡先も、全て把握されてて、

『甘やかしてあげるよ』

そう、とろけそうな笑顔で言われたの。


ごめんなさい、好きです。

15:そら◆mU:2017/11/13(月) 19:31


「やめてやめて、男2人でカフェはキツイよ〜」

天気の良い木曜日、
つかの間の休日を可愛らしいカフェにて、男同士で過ごすおかしい2人組を見つけてしまった私。

黒いサングラスにおしゃれな帽子…、おまけにセンスの良すぎる私服。

「ったく、もう。うるさいなぁ、そんな言い方するけどね?俺ら昨日までコンサートでキラキラしてたわけよ」

「まぁまぁ、別に良いじゃん〜、普通おかしいよ」

彼らは正真正銘、人気絶頂のアイドルで…、

何気なく入ったカフェで、仲の良い男友達と会った…、ついでに彼らがアイドルってわけ。

16:空ラビ◆mU:2018/02/10(土) 16:05


そこで私、名案を思い付いた。

「ってことは、アイドル様に奢ってもらえるチャンスですかね〜?」

ヘラヘラしながら、ズイッと強引に窓際のソファへ腰かけた。

「…は、お前ほんと図々しすぎ!」

美しい顔がグニャリと歪められて、暴言をはかれました、私悲しい。

英国紳士くんに
「いいじゃん、女の子には奢ってあげるもんだよ」

とにこやかに微笑んで、「何にする?」と首をかしげられたので、

「モンブランと、カフェラテ!」

と叫びながら、暴言野郎にニヤリと笑ってみせた。

「ったく、お前は優しすぎるんだよ」

「女の子には優しくして当たり前〜」

「いや、男にも優しすぎるわ」

「…人には優しく接するべきなの!」

「動物にも優しいわ」

「………いいじゃん。」


あれ、口喧嘩なのか、誉めてんのかわかんないぞ。

17:空ラビ◆mU:2018/02/12(月) 11:33


暴言野郎→コウ
英国紳士くん→ヒスイ

18:空ラビ◆mU:2018/02/12(月) 11:54


_____

私がモンブランを食べはじめても、
変わらず、悪口という名の誉め言葉をヒスイに投げ掛け続けているコウを見つめて、少し昔のことを思い出した。

私とコウは、中学生のときに出会った。
その時のコウは、アイドルになるために毎日必死にレッスンや仕事に取り組んでいて、まともに学校に来れたのは週に1日や2日ぐらい。

当然、常に学校にいられないコウはいつも1人だった。

でも…、私は毎日来ているにも関わらず、1人だった。

『女子』という輪の中で、
例えば、常に特定の誰かと行動するとか、休みの日には遊ぶだとか、

縛られてしまうのが、堪えられなかった。

そうして、教室という世界の中で塞ぎこんでいくと、
望んでいた通り、誰も話しかけてこなくなった。

19:空ラビ◆mU:2018/02/12(月) 12:04


でも、思っていたより人間は我が儘。

居心地はとても良かった。
だけど、
このまま誰とも話さず中学校生活を終えるのかと思うと、途端に怖くなって、

『…国語のノート、貸そうか』

しょうもない理由をつけて、

『あぁ、ありがとう。助かる』

特定の友達がいない、コウに話しかけた。

それからは、コウが来たときはどうでもいい話をして、たった2人で盛り上がって。

コウが休みの日は、ただ1人で勉強か読書をする。

そうやって休み時間を乗りきって、私たちが中学生を卒業する頃に、

『今日になったら教えてくれるって、何のこと?』

放課後の教室、耳元でコウに告げられたのは、

『デビュー、することになった』

それは、コウがずっと目指していて、
私も願っていたものだった。

20:空ラビ◆mU:2018/02/12(月) 12:12


高校生になると同時にコウは引っ越して、その1年後にデビューを飾った。


________

「いやぁ〜、モンブランは美味しいね!」

「人の金で食うモンブランは、そりゃ上手いだろうな」

フッ、と口角をゆるりとあげて微笑むコウ。
今の私があるのは、紛れもなくコイツがいたからだなぁ、とぼんやり考えつつ、

口の中をモンブランでいっぱいにしながらモゴモゴと、
「ゴチになりますッ」と叫ぶと、
2人に笑われた…、まぁ良いか。

______

21:空ラビ◆mU:2018/02/13(火) 21:25



カフェを出てすぐの道にて、
コウは、電柱の影でひっそりとマネージャーに電話している。

「奢ってくれてありがと〜う、今日の収録も頑張ってくださいなっ」

コウ待ちのヒスイに対して、
ピシッ、と似合うはずもない敬礼をしてふざけた。

変装バッチリ、不審者モードなヒスイは黒尽くめ。うん、怖い。

結局払ってくれた男前な2人…、
あ、アイドルだから、実際男前なのか。
ふむふむ、なるほど、と感嘆していると、
「ふふふ、いいよ、収録頑張るね。」

と、優しい返答。
サングラス越しに目を細めて微笑んでいるのが見える、ヒスイ。

「大天使…」と小さく呟きが溢れた。

「近くにマネージャー呼んどいた、
おい、マシロ。」

電話を終えたなり、私に話しかけてくるコウ。
…大天使から大魔王になっちゃったよ。

「なに?」

「おまえ、ここで一緒に待ってろ」

唐突に告げられたそれに、
飄々とのらりくらりをモットーに生き…、るようにしている私も、流石に驚いた。

「…いや、それはおかしいでしょ。
奢って、とか言った私も悪い、けど。
流石に、外でそんなことしちゃ、撮られたらどうする…、「ミズキだよ」

…なんでミズキ、?

「お前、ミズキがいちばん好きだろ」

そう、淡々と言われた。

確かに、コウのグループで誰が好き?って言われたら、

全てにおいて、ミズキがいちばん好きだ。

22:空ラビ◆mU:2018/02/14(水) 18:58


「…うん?そうだけど、…え?」

「そうなら良いから、待ってろ。
もう来るから、あ、来た」

…人気アイドルの迎え、早いよ。

______

23:ネオン:2018/02/17(土) 14:42


____ガラッ

黒いカーテンで窓が遮られている、
いかにも有名人を隠すかのような大きい車。

その車のドアが唐突に開くと、

「マシロ、久しぶり!」

どこぞの王子様ですか、なミズキが、笑顔を覗かせた。
黒髪がサラリと目元にかかっている。
うん、爽やか。

いつの間にかいそいそと乗り込んでいたコウとヒスイに視線をやっても、

…あいつら、こっち見ないぞ。

どうしたら、この場を切り抜けれるのかな…。とりあえず、

「あ…、うん。私帰るね〜」

いつも通りな感じでひらひらと手を振ると、

鋭く睨まれて、

「マシロ、早く乗って。撮られたら大変でしょ。」

そう言われて、ひらひらさせていた手首ごとグイッと引かれ、

______ガチャリ

ミズキにもたれかかるようにして
車チェックイン完了してしまった様子の私を乗せて、

ついでに、

「酔わないように、ちゃんと座りな?」

ニコニコとする色白王子様と、

「…ミズキ怖ぇ」
「大丈夫かなぁ」

ふざけんなこの野郎な2名を乗せて、


…車、出発進行……。

24:ネオン:2018/04/06(金) 16:20


__________

「きゃー、きゃー、もうコウ君かっこいい〜、握手してくださいっ」

「ありがとう、俺のこと応援してくれて。そんなに好きでいてくれるなんて…、君のこと…」

そういうと彼は私の耳元まで口を近づけ、

「愛してるよ」

……
「きゃー!かっこい、へぶしっ、ちょ、コウ!!叩かなくても良いじゃん、今リンと楽しくさ、
『街中を颯爽と歩くプライベートのコウと、彼を見つけたファンの女の子ごっこ』してたのに!」

コウが持っていたドラマの台本の角で叩かれた、痛い、酷い。

「名前長すぎるし、俺そんなこと言わねぇし。」

「いいじゃん、こっちは楽しく遊んでるだけなんだから〜」

は?と私を一睨みしてから台本に視線を戻したコウを睨みつつ、

「コウいじるの楽し!」と、もうソファに座ってケラケラ笑っているリンの隣によいしょ、と腰掛けて、

「あれ、何で私ここにいるんだろ〜、と考えた」

「いや、口に出しちゃってるから!」

ぺしィッと、ツッコんでくれるリン、ありがとうよ

「でも、本当なんで?」

SsOW(エスエスオーダブル)の楽屋で1人場違い女がアイドルに問うております。

車で連行されて、車内でミズキに聞いても、「なんでだろうね?」とはぐらかされてしまった。

楽屋の奥でモグモグとおにぎりを食べているヒスイが、ゴクン、と飲み込んで、

「俺とリンは知らないよ、何でなのか、ね?」

ヒスイが首かしげて聞くと、をリンも隣で、「そうそう」と頷いている。

「コウか、ミズキ…、あ、そうだ、マシロちゃん、来て」

ちょいちょい、と手招きされて、
なんだなんだ、とヒスイに寄っていった。

ヒスイの前まで行くと、座っているヒスイと目線が合うようにしゃがむと、

「わざわざごめんね」

と、それだけのことで謝ったヒスイ、なんと優しさが…。

「ミズキね、今隣の部屋で雑誌の単独インタビュー受けてるの、ほら、今度の映画のやつで」

ヒスイにそう言われ、あぁ、あの映画ね、と頷いた。

「だから、もうすぐ戻ってくるから、廊下で待っといて、『何で連れてきたか教えてくれないと帰るよ』って、言えば良いんじゃないかなって。」

25:空ラビ◆jk:2018/06/16(土) 13:05


「なるほどね、ありがとーう「ヒスイ、俺のことからかわないでよ」

手を合わせてヒスイに感謝を表した、
その時に、横から白く長い腕がスルッと伸びて、私の頭にポンっとおかれた。


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