あぁ、
叶わない恋なら捨ててしまいたい。
気づかない愛なら壊してしまいたい。
「猫田さん、起きて」
「…え、あ」
ここは、保健室、かな?
白い天井、白いカーテン、硬めのベッド。
あぁ、ここは保健室で…、
「誰、ですか」
目の前に座るのは、綺麗な顔をした男子だった。
不意に、なんて綺麗なんだろう、と思った。
私の好きな人は、茶髪で、いかにもアイドルみたいなキラキラした人だけれど、
目の前の男子は黒髪で、綺麗な人…。
「同じクラスの…、蓮夜。」
「名字は、何?」
名前まで綺麗なだとも思ったけれど、下の名前を知っても、ね?
「…教える気無いよ。それより、どうしてここにいるか気にならない? 」
何で名字を教えないの…と少し苛立ったけれど、別に知りたくもないから質問に答えることにした。
「だって、これでしょ? 」
そういって腕のほうに目をやると、やっぱり包帯が巻かれていた。
自分を傷付けるその行為は、駄目だとも知っていても止まらない。
「…やめないのか」
哀しそうに眉を潜める蓮夜。
優しい人、なんだね。
「やめないよ。だって私は、ひとりだか、」
ら…、
優しい石鹸の香りに包まれた私は、とにかく冷めていた。
抱き締められているとわかっていても、
「あはは、何?初めて話して、可哀想だったら抱き締めるんだね。」
そんな、少女漫画みたいな話、私は、
「だいっきらいだ…」