いじめについて。

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5:苺ましまろ*◆LM:2016/12/23(金) 07:17



#1

昔から、他人に合わせることだけは得意だった。
「ねえ、アイツウザくない?」
誰かが誰かの悪口を言えば、率先してそれに同意する。それが当たり前。
「だよね、いつもキャーキャー言ってるし」
「やっぱり分かる?」
同意してくれたことが余程嬉しかったのか、私の顔を見て……次々と陰口を口にした。
「男子にモテたいのか何なのか知らないけど、あの声イライラしない?
この前なんて、大縄跳びでわざと失敗してたし」
「そうだよね〜」
愛想笑いをする。……でも、内心はちょっと下らないって思ってる。
生まれつきの声なんて変えられないし、男子にモテてるのは彼女が可愛いからであって。大縄跳びで失敗したのも、彼女の運動神経の悪さのせいだと思う。
何でもかんでも悪口にしてしまうなんて、怖いなぁ。
「……下らな」
不意に口からこぼれ出た言葉に、当時の私は気付かないでいた。

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「……アイツウザくない?」
偶然聞いてしまった。
「だよね、いつも一番に同意してくるし…」
「何か無理矢理合わせてる感否めないよね〜」
「そうそう、昨日なんて『下らな』って言われたんだよ、私」
「何それ、自分も同意してるくせに」
「ただの馬鹿じゃん」
きゃはははははははは、と複数の甲高い笑い声が教室に響く。廊下で握り拳を震わせている私……実に惨めだ。
「……ねえ、」
「………なに」
昨日、悪口の対象になっていた彼女が話し掛けてきた。
「悪口言う人ってさ、周りの人に自然と壁作られるんだよ。
あの子はきっと私の悪口も言ってるんだ〜って。」
「だから何」
「私のことも言ってたんだってね。あの子から聞いたよ、すぐ同意したってね」
……アイツ、自分から言い出したくせにばらすなんて…。
「そうやって悪口ばっかり言うから、本当の友達も出来ないんだよ」
彼女はそう吐き捨てて、教室に入っていった。

放課後の冷たい空気が、頬を撫でる。
自然と、冷たい涙が、頬を伝った。
「………あれ、いつの間に」
いつの間にか、私はこんなにも冷たい人間になってたんだ。
そして、最初から__他人の顔色ばっかり伺っていた私に、本当の友達なんて居なかったんだ。

私は、声を殺して泣き崩れた。



          ……


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