4.いじめ
「何も決まらないままだ。広川さんがいなくちゃダメだし、今回は解散にしようか。各自、何をしたらいいか考えてきてね。解散。」
わたしが言うと、野々村さんは、広川さんを追いかけるように走っていく。
大輔と和樹も、普通に歩いていった。
あ、さっきの子!
「いますか?さっきの子。」
そう言いながら、ドアを開ける。
かわいらしい女の子が、ウロウロしながら待っていた。
「先程は、広川さんがごめんなさい。意地っ張りだから。」
「いいの。わたくしが勝手に来たのがいけないんだし。参加しようとしてしまったから。」
『わたくし』って柄なんだ。
今時の子で、わたくしってあんまり聞かないなあ。
「それで、何のご用ですか?」
「わたくしじゃなくて、親友のことについてなの。ホワイトボード片付けてから、ゆっくりお話ししない?」
そう言いながら、女の子はホワイトボードを指差した。
もしかして、気を使ってくれてる?
「ありがとう。片付けてきますね。」
急いでホワイトボードを片付けると、
女の子は前に立って歩き出した。
やがて、屋上に着く。
昼休み中だからか、屋上は混んでいて、ベンチは空いていなかった。
「わたくしの親友は、野々村由美子。野々村咲子さんの妹。ちなみにわたくしは、5年2組の、相川きらりよ。」
確かに、名前通りキラキラしてるもんなあ。
わたしと違って。
「野々村由美子は、いじめられてて、怖くて助けられなくて。先生に言ったら、絶交って言うの。だから!」
い、いじめ!?
それを、わたしたちが救うの!?
「葉金井児童会長なら、いじめを止められると思うの!お願い。野々村由美子を助けて!」
きらりちゃん…。
野々村由美子ちゃんへの、熱い友情。
聞いているだけでも伝わってくる。
「きらりちゃん!わたしが助けてあげるから、待ってて!」
きらりちゃんの顔が、また名前通りキラキラ光って見える。
ちょっとまぶしいくらいに。
「わたくし、野々村由美子の所へ行きますね。」
そうして、きらりちゃんと別れた。
えっと。
どうしてきらりちゃんは、野々村由美子ちゃんのことを、『野々村由美子』って呼ぶのかな?
由美子ちゃんでいいのに。