莉愛の短編集

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9:絵菜◆8Q:2017/05/01(月) 19:56

4.いじめ
「何も決まらないままだ。広川さんがいなくちゃダメだし、今回は解散にしようか。各自、何をしたらいいか考えてきてね。解散。」

わたしが言うと、野々村さんは、広川さんを追いかけるように走っていく。
大輔と和樹も、普通に歩いていった。
あ、さっきの子!

「いますか?さっきの子。」

そう言いながら、ドアを開ける。
かわいらしい女の子が、ウロウロしながら待っていた。

「先程は、広川さんがごめんなさい。意地っ張りだから。」

「いいの。わたくしが勝手に来たのがいけないんだし。参加しようとしてしまったから。」

『わたくし』って柄なんだ。
今時の子で、わたくしってあんまり聞かないなあ。

「それで、何のご用ですか?」

「わたくしじゃなくて、親友のことについてなの。ホワイトボード片付けてから、ゆっくりお話ししない?」

そう言いながら、女の子はホワイトボードを指差した。
もしかして、気を使ってくれてる?

「ありがとう。片付けてきますね。」

急いでホワイトボードを片付けると、
女の子は前に立って歩き出した。
やがて、屋上に着く。
昼休み中だからか、屋上は混んでいて、ベンチは空いていなかった。

「わたくしの親友は、野々村由美子。野々村咲子さんの妹。ちなみにわたくしは、5年2組の、相川きらりよ。」

確かに、名前通りキラキラしてるもんなあ。
わたしと違って。

「野々村由美子は、いじめられてて、怖くて助けられなくて。先生に言ったら、絶交って言うの。だから!」

い、いじめ!?
それを、わたしたちが救うの!?

「葉金井児童会長なら、いじめを止められると思うの!お願い。野々村由美子を助けて!」

きらりちゃん…。
野々村由美子ちゃんへの、熱い友情。
聞いているだけでも伝わってくる。

「きらりちゃん!わたしが助けてあげるから、待ってて!」

きらりちゃんの顔が、また名前通りキラキラ光って見える。
ちょっとまぶしいくらいに。

「わたくし、野々村由美子の所へ行きますね。」

そうして、きらりちゃんと別れた。
えっと。
どうしてきらりちゃんは、野々村由美子ちゃんのことを、『野々村由美子』って呼ぶのかな?
由美子ちゃんでいいのに。


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