イヤフォンから流れていた音楽は、いつの間にか止まっていた。 ぼーっとしていたから、そのことにも気が付かなかった。ぱっとイヤフォンを外す。いつか、彼女から貰ったものだ。流れていた曲も、彼女が好きだったものだ。 「夢中になれないなんてね、淋しい」 その曲の、ふと思い出した部分を口ずさむ。彼女が自分に分かれを切り出した理由なんて、訊かなくても、この曲ですべて歌われている。 * 中森明菜のDESIRE >>159あたりのふたりとは別人