雨が降っている。雨は嫌いだ、人の心を曇らせるから。君は、どうだろうか? 僕と違って雨が好き? ――いや、そうじゃない。彼女はもう外を見ても得られるものなどないんだ。だから、そもそも雨が降っていることすら知らない。それはどれだけ寂しいことか。せめて僕が君の光になれたら。そうだ、彼女に会いに行こう。とびっきり楽しい話をしよう。そしたら君も、少しは笑ってくれるだろうか。彼女の部屋へ向かって走り出す。その間も、雨音がしつこく耳にこびりついて離れなかった。