若草色の眼だけが知っている

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27:みけ◆/M hoge:2018/12/11(火) 20:16

「透明なんだね、君は」
真っ白なキャンバスを前に、先輩がそう言った。美術室の窓に撮された空は茜色に燃えていた。
「……そうですか…」
素っ気なく返事をしてしまったが絵の具で塗りつぶしてしまえばバレやしないだろう。
「しかし…先輩の方が透明って感じがしますけど…」
茜色の空を眺めながらそう言ってみる。
「私…?私はきっと白だよ」
「白…?」
「そう…何色にでも染まれてしまう白」
藍色の表情を浮かべ、そう言った。僕には先輩の言っていることがよく分からなかった。先輩はどちらかと言えば独りでいるタイプだし、他人の色に染まるだなんてなかなか想像できない。寧ろ僕の方が白と言ってもいいのではないだろうか。
「じゃあなんで僕が透明なんです?」
「なんでって…そりゃ君は誰が色にも染まることがないからでしょう?」
「そうなんですかね…?」
「そうなんだよ」
キャンバスから目を逸らし此方を見る先輩は西日に照らされて一層綺麗だった。嗚呼、この瞬間を、この表情を、この全てを僕は全て収めたい。
貴女は僕が透明だと言った。でも貴女色に染まってしまう僕もきっと白なのだろう。
「透明になれれば楽だったのに…」
の声は最終下校時刻を告げるチャイムに溶けていく。
「帰ろっか」
「そうですね」
カラカラと扉を閉めれば次第に太陽は山の向こうへ帰っていくようだった。
貴女の隣を歩きながら願おう。もう少し透明な僕で居させてくれ、と。


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