君に、愛の言霊を――、

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1:遥姫 ◆ml2:2015/09/02(水) 21:20 ID:NrY




スレタイ適当、笑。

えーと、ここは私が様々なジャンルの小説を書くところになりますね、
公式cpだったり、伽羅の独白だったり、夢だったり…。

まあ、暇つぶし程度に寄ってくれたならと思います。


・ 荒らしや、迷惑行為はお断りです。
・ 感想は大募集しております!
・ 更新は亀さんです、笑。


それでは、よろしくお願いしますね!

 

31:遥姫 ◆ml2:2016/04/16(土) 15:21 ID:gBQ


闇に差し込んだ光 【 緋色の欠片 / 真弘×珠紀 】


 ふと、真弘は目を開けた。目の前に広がるのは黒。その一色のみ。
 口から空気の泡が流れていく。
 真弘は、静かにその空間を下へ、下へ沈んでいっていた。


(……ああ、そうか)


 ――俺は、鬼切丸の生贄として捧げられたのか。
 そうであるならば、この場所にも納得がいく。ここは、きっと鬼斬丸が封印されている沼の中なのだろう。
 あんな邪なものがあるせいか、沼の水もどこか濁っている。光が一切刺さないほどに。
 どこまで続くかわからないその黒を、真弘はぼーっと見つめた。


(……わかってたことだ)


 あの日、自らの宿命を言われた時からこうなることはもう既にわかっていた。もう、諦めるしかないのだということも。
 己の命一つで、世界が、大切な人が、ものが、全て助かるのならば安いものだろう。
 沼の水は、重たく真弘の上にのしかかり、下へと引っ張っていく。何かに引き寄せられるかのように。


(後悔も、何もない)


 意識が遠くなる。これが氏ぬということか
 これが運命なのだと、抗うこともせず、瞼を閉じかけた真弘。
 ――本当か? 本当になにも後悔はないのか?
 しかし、その彼に心の内の己が声を上げた。


(うるせぇ……もう、どうしようもねぇんだ)


 未だ無様に足掻き続けようとするもうひとりの自分を押さえ込むかのように、真弘は胸に手を置いて、拳を作る。
 声は帰ってこない。今度こそ、目覚めることのない闇に身を委ねようとしたとき、耳にす、と声が聞こえた。


――…ぱい、……ろ先輩。……真弘先輩っ!!

 
 初めはノイズがかかっているような微かな声。しかし、次第にはっきりしたその声は、確かに、己を呼んでいる。意識が一気に覚醒した。
 聞こえてきた、その声は悲痛そうで、苦しげで。でも、いつも聞いていたような気がした。そう、戦いで傷ついて、地に伏せていたとき、ごめんなさいと謝り続けながら耳元で聞こえていた小さな声。
 一筋、――真弘に光が差す。それは、真弘ただひとりを照らしていた。太陽でもない、月でもない、ましては人工の光でもない。暖かい光。


(……いや、そういえばあったな心残り)


 真弘は、思い出した。泣き虫で、頑固で、でも決して立ち止まらず、前を向き続けたお姫様のことを。――己が一番好いていた女性を。光と呼べる存在を。
 そうだ。自分は氏ねない。彼女がいる限り、彼女が自分を求めてくれる限り。だって、彼女は――。


「……俺がいなくちゃ何にもできねぇんだからよ」


 体に力をいれ、手を使って沼の水をかいて上へ浮上する。まとわりつく、重たい水に押されながらも、もがいてもがいて、そして、その光に手を伸ばした。
 
 

32:遥姫 ◆ml2:2016/04/16(土) 15:46 ID:gBQ


 ――顔に光が当たる。その眩しさに耐え切れず真弘は目を開けた。目の前に広がったのは、黒――ではなく、赤色に染まった空。朝焼けだ。真弘は、地面に仰向けに寝転がっていた。
 腕に重みを感じ、首を横へ少し傾けさせれば自分の腕を枕にして、息を立てて眠るひとりの少女がいる。
 脱いだ上着を腕枕の代わりにし、少女を起こさぬように体を起こす。そこは、あの忌々しい剣が眠っていた沼の岸だった。


(……そうか。鬼斬丸、は……消えたのか)


 どれほどの前かはわからない。でも、確かに鬼斬丸はこの世からその存在を消した。自分の身に宿る、封印の力と、少女の玉依の力によって。
 しかし、それは本当に危険なことで。下手をすれば命を落としていた。――いや実際落としかけていたのかもしれない。自分も、少女も最後は命を削って力を注いでいたのだから。


(でも、助かってるということは……、やっぱあの光か)


 鬼斬丸を壊すために、力を使い果たし、気を失う寸前。真弘は、一瞬であるが暖かい光が、少女と自分を包んだのを感じた。
 もとより、鬼斬丸は、天之御中主神が弱きものの助けになるように残した力。始めから負の力ではなかった。それが、鬼斬丸が壊れたことで消滅し、本来の力に戻ったとするならば。あの光は、鬼斬丸の本当の力で。それが、己らを助けてくれたのだろう。


(なんつーか……複雑、だな)


 今まで忌々しい因縁の元凶としか思っていなかったものに最後の最後で助けられるとは。真弘は、小さく苦笑した。
 隣で、むずむずと少女が動く。そして口からこぼれる声は、己の名前で。思わず頬が緩んでしまう。


(全部、終わったのか)


 明るくなり始めた周りを見渡し、改めて実感する。
 全てを終わらせた。今、隣で眠るどこにでもいるような少女が。
 

「……ありがとな、珠紀」


 優しく、その頬を撫でてやれば珠紀は、頬を緩めさせる。それでさえ愛しく見える。
 ――本当にありがとうな、夢でも、現実でも、……助けてくれてよ。
 遠くから、自分たちを呼ぶ声が聞こえる。それは段々と近づいて来る。
 また、隣の少女へ目線を落とし、これから訪れる日々へ思いを馳せた――。


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 唐突ネタ。
 シリアスはよく書くんだけど苦手。
 


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