君に、愛の言霊を――、

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4:遥姫 ◆ml2:2015/10/16(金) 19:37 ID:NrY


膝枕 【 緋色の欠片 / 真珠 】


 すやすやと、己の膝の上で静かに寝息を立てる少女。寝顔というのはその人にとって一番無防備な顔だというが、少女の穏やかな顔を見て確かにな、と納得してため息をついた――。


 宇賀屋家の縁側に座って、風鈴の音を聞きながら柄にもなくぼーっとしていたところに彼女がやってきたのが始まりだった。
 隣いいですか?、と問われ反対する理由もなくそれを了承し、隣に座った珠紀と共にただ外を眺めていた。
 ふと、肩が重いことに気づいて我に返って隣を見れば、自分の方に頭を乗せて眠る少女。そういえばと、最近は受験勉強やら、鏡の事件やらで忙しかったことを思い出す。
 普段なら恥ずかしさに負けて、すぐに起こしてしまうだろうが今回は疲れている彼女のためにも恥ずかしさを抑えてこのままでいてやろう――と思うも、結局は自分が彼女と触れていただけなのだが。一体この言い訳は誰に向けられたものなのだろう。

 この状態で小一時間、やはりこの格好では体が痺れてきてしまい、寝ているのを起こさないように体を動かしたとき。

「あ」

 既にもう遅く、彼女の頭はするりと肩から落ち、そのまま己の膝の上へ収まった。そこで冒頭へ戻る。


 好きな女が、己の膝の上で、さらには無防備な顔で寝ているのだ。どうも思わないわけがない。が、あの珠紀にだけ懐いているあの男にはなるまいと、なんとか理性を働かせる。それでも、自然と視線は彼女へと注がれる。

(……綺麗な顔してんなー……)

 こんな綺麗な彼女が、今まで男に捕まらなかったこと、自分がその彼女を捕まえたことを不意に不思議に思う。もしかしたら彼女と自分は古から繋がっていたのかもしれないなと、珍しくそんなことを思った。

 膝の上で穏やかな顔を見せる少女。この少女が、二度も世界を救ったなんて考えられもしないだろう。でも、確かに彼女は救ってみせたのだ世界を――自分を。
 逃がさまいと自分に縋り付いて、まだ方法はある、諦めないで、先輩!なんて彼女は何度も訴えかけた。時には必死そうに、時には泣きながら。だから、今、自分はここにいる。世界で一番愛しい彼女の傍に。

 真弘は、広げられたいつも手入れを欠かさないと言っていた彼女の髪をひと房持ち上げる。そして、その髪に口づけた。あの男と同じようなことをしていることが気に食わなかったが。別に、自分は自分の欲のためにしているわけではない、誓いのため。

「……安心しろ。お前は俺様が守ってやる。だから、いつも笑ってろ」

 彼女に向けられたはずの言葉は、誰にも届くことなく、セミの鳴き声によってかき消された。


参考:TOY様

‐‐‐‐‐‐

始めて、お題を使わせていただきました!
TOY様のところは、素敵なお題が多く、使いたいものがたくさんあります!なので、これからも使わさせてもらおうと思っています、

さて、今回は前回に引き続き緋色の欠片で、真弘×珠紀です。時間軸は、蒼黒の楔以降ぐらいですね。
まあ、これは――真弘先輩の独白って感じですね。

……まあ、書きたいことはかけたし満足だ!
 


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