君に、愛の言霊を――、

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43:遥姫 ◆ml2:2016/06/18(土) 23:55 ID:gBQ


 うたプリのやつの続きー、

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 ぴんぽーん。無機質な機械音が鳴った。春歌は持っていたマグカップを机の上において、ソファから立ち上がる。その時に、机にあたってしまい上に重ねていた楽譜が床に散らばってしまった。しかし、そんなことが気にならないほど春歌は翔に会いたかった。
 誰なのかなんて確かめずに、ドアを開く。見えた、金色の髪、青色の双眼。そして久しぶり、という機械で阻かれていないその声に、春歌はたまらずその人物に抱きついた。


「翔君っ!!」
「は、春歌!?」


 勢いよく抱きついた春歌を、咄嗟に受け止めた翔。背が小さくとも、体つきはいいためか少しバランスを崩した程度で済んだ。
 春歌は、顔を上げ、そしてニッコリと笑った。


「おかえりなさい、翔君!」
「ああ、ただいま」


 そう言って、翔は優しく春歌の頭を撫でた。春歌は、くすぐったそうに笑い声を零す。それを、いとおしげに見つめていた翔であったが、ふと春歌の顔を見て、撫でていた手をとめた。そして、空いている手で扉を閉めて、部屋の中へとはいる。


「なぁ、春歌」
「なんですか?」
「目の下の隈、どうしたんだ?……眠れてないのか」


 翔に指摘され、春歌はようやく気づいた。スランプのせいで、作品が仕上がらず、それが悩みとなり最近寝れていなかったのだ。今だけは、仕事の話をしたくなかったのに、春歌は慌てて、翔から顔を隠すように背を向ける。


「春歌?」
「な……なんでもないです、大丈夫ですよ!」
「隈作っといて、大丈夫じゃないだろ……、ん、これは?」

 
 春歌の方に歩み寄った翔は、床の上に散らばっているものに気づいた。あ、と声を上げて静止をかける春歌を無視して、それを拾い上げる。それは、先ほど春歌が落とした楽譜だった。


「春歌、これって……」
「……仕事です。でも、大丈夫ですよ、もうすぐで終わりますから」


 自分がスランプであること。仕事に行き詰っていることを翔に知られたくない春歌は、それだけを伝えると翔の手から楽譜を抜き取る。そして、ほかの楽譜も拾い上げてばまたまとめて机の隅に置いた。


「何にもない、のか?……本当に?」


 背後から聞こえてきた声は、先程とは違う。低く、怒りが込められているように聞こえた。怒らせてしまったのだろうか。怖くて、春歌は振り返ることができない。


「俺は、そんなに頼りないか?」
「そんなことありませんっ!! 翔君は素敵で、かっこよくて……ただ、これは私の問題だから。私が解決すべきことだから」
「そんなこというなよ。俺とお前は、パートナーで、恋人だろ? パートナーってのは、支えあうもんじゃないのか?」


 後ろから伸びてきた腕が、春歌の腰を捉えて引き寄せる。あっという間に、春歌は後ろから抱きしめられていた。
 久しぶりに再会して、嬉しいはずなのに。なんでこんなにも悲しいの、寂しいんだろうか。春歌は、腰に回された手に自分の手を置いた。


「学園時代、隠し事してた俺が言えることじゃないかもしれない。でも、お願いだ。何かあるなら言ってくれ。俺の知らないところで苦しむ春歌は、見たくない」


 春歌を抱きしめる腕が震えている。
 ――学園時代、翔は心臓病という病を抱え、それでも無茶を繰り返していた。それを春歌は、いつも不安に見ていた。止めることはできない、それは彼の夢を否定してしまうから。今ではそんなことないけれど、もしかしたら翔は今の自分と同じ気持ちなんだろうか。


(……不安、だよね)


 大切な人の苦しむ姿を見てきた春歌にはその気持ちが分かる。だから、――春歌は話すことにした。
 


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