君に、愛の言霊を――、

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44:遥姫 ◆ml2:2016/07/08(金) 00:08



七夕の夜に 【 緋色の欠片 / 真弘×夢主 】


 学校からの帰り道、不意に空を見上げた。しかし、都会の光のせいか見えるのは僅かな星たちだけ。昔、満天の星空を見たことがあるせいか、黎は今目の前に広がる空がひどく寂しそうに見えた。
 しばらく眺めたあと、空から視線を外して歩き出す。すると、とある民家に飾られた笹が見えた。そこには折り紙で作った飾りや、短冊が掛かっている。


(そうか、今日は七夕か……)

 
 ――七夕。空の上にいる彦星と織姫が、年に一度天の川を超えて出会える日。そういえば、村の頃は大きな笹の葉に願いを書いた短冊を飾って、飾りも作ってたっけと思い出す。そうすると、どこか1年に一度しか会えない彦星と織姫が。自分と、村に残してきた少年に重なった。


(……真弘)


 村から離れて数年。優しい祖父母のもとで育てられていたおかげで、何一つ不自由なく暮らしてきた。学校でも、友達は男女共に多い。とても幸せだった。しかし、ふとした瞬間に寂しさを感じるのだ。――そう、あの元気な笑い声がないことに。その心情はまるで、曇りひとつないけれど星がない、今の夜空のようだった。


(まだ、彦星たちのほうがましかもねぇ)


 彼らはまだ、1年に一度。しかし自分たちは、もう一生会えないかもしれないのだ。
 さらりと風が、黎の長い髪を揺らす。


(短冊、かぁ)


 いつの時だったか。短冊に、「ずっと一緒にいられますように」と書いたことがある。その時にまだ、こんなふうになっているとは当時の自分も知らなかったが。
 

(……書いてみようか)


 無理でも、叶わなくても。それでもいいから、自分の願いを形として残しておきたかった。
 家に帰って祖父に笹をたのもう。それで、祖母と飾りを作ろう。
 黎は早まる気持ちを抑えて、帰路を先程よりも早足に駆け抜けた。


 ――その願いが叶うのは、その翌々年。

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 くっ…間に合わなかった!!
 
 今回は、村に戻る前の黎ちゃんと真弘先輩をイメージ。…あ、この本編は別サイトにて連載中です。
 この辺のお話も、今度しっかり書きたいなぁ。(ってか、真弘先輩×黎ちゃんのcpのくせして、真弘先輩が出てきてない…、)
 


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