第3話アイシクル〜ガゼル視点〜
冬風が来て3日が経った。
最初は練習を見学しているぐらいだったが、今では自らも練習に参加している。
だが、未だに冬風のエイリアネームが決まらない為、チームも少し呼び名に困っている。
「どうしたものか・・・」
冬風には早く決める様に言うが、冬風は今でも悩んでいる。
やはり、急かすのが悪かったかもしれないな。
時々だが、ネッパーの睨みも最近になって鋭くなって来ていて、怖い。
まるでバーンとヒートだな、バーンの立場が冬風でヒートの立場がネッパーとは、何かの縁なのか?これは。
そう考えていると、コンコンとノックの音が部屋の中に響く。
「あぁ、入っていいが・・・」
「失礼しますね」
「冬風か、どうしたんだ?」
「いえ、少しばかりガゼルさんとも仲良くしようかなと」
さん付けは慣れないな・・・、いつも様付けだったから。
「冬風の言葉遣いは上品だな」
「家が屋敷だったので、言葉遣い“だけ”は・・・」
「だけ?」
「わたくしに優しくしてくれたのはもう亡くなっておりますが爺と夏彦さんだけでしたから」
そうだったのか・・・、冬風の顔には辛いとは浮かべていない逆に今が幸せだと言う感じだ。
「な・・・ネッパーとはどうやって知り合ったんだ?」
「フフっ、内緒ですよ。でも、ネッパーさんもあぁ頑固ですが本当は優しい方なんですよ。ですが、喧嘩っ早いのは今も昔も変わりませんね」
クスクスと笑っている冬風に私もつられて笑う。
「初めて見ましたね、ガゼルさんの笑顔。わたくし、見た事なかったもので」
「ここ最近、バーン達と喧嘩も多くてね。」
「喧嘩はよくありませんよ。あ、それとエイリアネームのお話なんですけど・・・」
あ、決めていてくれたのか。
話の何処かで聞こうとは思っていたが・・・。
「決まったのか?」
「はい、その事も伝えにと窺ったんです」
「そうか、で、名前は何だ?決まったのなら、私が伝えに行こう」
「えっと・・・“アイシクル”って決めたのですけど・・・どうでしょうか?」
アイシクル・・・意味は確か、つららだったな。
「いいじゃないか、君にぴったりだと思うよ」
「嬉しいです」
「後・・・そのブレスレットは何だ?」
「え?あ、これですか?」
冬風ことアイシクルが左手の手首を見せると、手首にある水色のブレスレットがシャラリと鳴った。
「これは・・・先程話した亡くなった爺に貰った物なんです。言わば、形見と言ったところでしょうか」
「その爺とはおじいちゃんの事か」
「いえ、わたくしの執事にだったのですが・・・」
「そうか、聞いてすまなかったな。そろそろ午後の練習だ、一緒に行こう」
「はい」
続く