フェアリーテイル ナツルーグレルー小説10!

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1:お香しゃちょー◆kk:2016/12/12(月) 23:37 ID:sB.

フェアリーテイルナツルーグレルー小説の10です!

ルールはいつも通りです!みんな気軽にどうぞ!!

174:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 00:01 ID:.wM

くらりと、揺れた足元と、頭の中。

ふと浮かんだのは、暗い暗い、部屋。

どこかで、見たことのある風景だけれど思い出せない。靄がかかったようで、ぼんやりとしか浮かばない。

それでも、ひどく寒かったのを覚えている。

怖くて、何かに見られている感覚が全身を包んでいながらそれが何かが分からない。

窓から感じられる外の気配は完全に日が落ちていて真っ暗だ。

埃っぽい空気と、何かが腐っているような気持ち悪い匂い。

ケホ、と小さく咳をすればそれすらも呑みこまれそうな気配がどこかにあった。

膝を抱えてしゃがみ込んで、時折来る寒気にハーフパンツのためにむき出しだった足が冷たくなっていく。

上だけでもジャージを羽織っていて良かった、と思うくらいに寒くて寒くて、でも季節的にはまだ夏が終わったころだったはずなのに。

ガタガタと、身体が震える。

ねっとりと向けられる視線と、どこかにあるヒトではない、気配。

自分はそう言ったものとよく遭遇することは認識していたけれど、ここまで恐ろしいと思ったのはおそらくこの時が初めてだったと思う。

密閉された空間の中にいるのはおそらく、そのモノと、自分だけ。

自分は視えるだけで、気配を感じるだけで、祓ったり倒したりは出来ない。そんな技術は誰にも聞いたことがない。

ああ、誰かに聞いておけば良かったと少し現実逃避気味に思いながらも、ぞわりと動いた何かの気配に、ひっと小さく声が漏れた。

怖い、怖い。誰か、お願い、ここから出して。

ぎゅっと、小さくなって、顔を膝に埋めて、どうしようもない現実に涙が溢れた。

誰か、なんて、きっと誰も来てくれない。

よくて帰りが遅いと心配した親が見つけてくれるだろうが、それじゃあたぶんダメだ。遅い、自分は、もうダメだ。

どうして、自分だけがこんな目に合うのだ。

どうして、どうして、一人で、怯えて、誰にも信じてもらえず、こんな風に、何かに怯えなくてはいけないのか。

何度も思ったことだった、何度も、恨んだことだった。


怖い、寒い、誰か、ここから出して。
お願い、お願い。誰か。


そればかりを願っていたあの時、最終的にどうなったのだろうか。

どうして、こんなことを思い出しているのだろうか、あれ、だって自分はさっきまで体育館にいたのに。

ズル、と音がする。
後ろから、何かの音がして、振り返ってしまった、瞬間。




見 ツ ケ タ




声が聴こえて、すとんと、意識が落ちた。

175:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 00:14 ID:.wM

ふ、と瞼の上から光を感じてそろそろと目を開ける。

眩しいほどの照明の光に目を細めたスティングは、一番にそばにいたローグを確認した。

いつの間に座り込んでしまったのか、二人揃って体育館の床にペタンと腰を下ろした姿だった

自分と同じように眩しそうに目を細めているローグは、その他に変わった様子はない。

それにホッとしたスティングはぐるりと周りを見回した。

「ここ、どこだ」

思わずポツリと呟いたスティングの言葉に、ローグも顔を上げる。

体育館、なのは間違いないが、さっきまで自分たちがいた場所ではない。

掌に触れた床はどこか埃っぽくさらりと撫でれば指先が少し汚れた。

少し体重を移動させればギシリと音が鳴り、さっきまでいた第三体育館よりも幾分狭い。

さっきの大きな揺れと、一瞬の暗闇、それに、どこか古い感じのする体育館、理解が追い付かない光景に思考が、止まる。

「どういうことだ、」

「わ、かんね、え、なんだこれ」

「おいスティング。ケガはあるか?」

あまりにも現実味の無い状況にポカンとしていた二人に静かに声をかけてきたのは、同じように何とも言えない表情を浮かべたリオンだった

怪我も無さそうである彼の姿を見て、スティングはいつの間にか止まっていた息を吐き出した

「リオンさん!!」

「ああ。あとローグも平気か?」

「え、ああ、はい。」

そうかと二人の普段と変わらない様子にリオンもホッとしつつ、少し離れたところで同じようにポカンとして回りを見回しているヒビキとイヴの姿も確認出来たためにホッと息を吐く

しかし、その体育館の中にビリと広がったグレイの声に、肩を震わせた。

「おいルーシィ!!」

薄暗いような気さえする静かな空間に、突如響いたチームメイトの名前にハッとしたのはスティングとローグだ。

まだ少し震えた足で立ちあがり、グレイがいるところを見ればすぐそばで床に倒れている金髪が見えて目を丸くした。

「ルーシィッ!!?」

「ッ、」

慌てて名前を呼んだスティングと小さく息を呑んだローグがバタバタとグレイのところに駆けて行き、それに続いてリオンとヒビキ、そしてイヴも自然と集まる

ギシリと大きく床が鳴るその違和感にも、ゾクリと足が震えた

横向きに寝転がりグレイに肩を揺すられているルーシィだが、意識がないらしく目を覚まさずピクリとも動かない。

「ルーシィどうしたんですか!?」

「分かんねぇ、揺れが治まったと思ったらそばで倒れてた」

「ルーシィ、起きろよ、おい、」

ローグが肩に触れて名前を呼ぶが、ルーシィの目は閉じられたままだ。

すう、と小さく息をしているのは分かるために少し安堵するが、ここまで騒がしくして、何より身体に触れているのに目を覚まさないのはおかしい。

その上時折うなされたように眉を寄せるために、スティングはますます混乱して泣き出しそうだ。ルーシィ、と必死に彼の名前を呼ぶ1年の姿にグレイは小さく舌打ちを漏らす。

「やべぇぞ…」

小さく小さく吐き出した言葉は、隣に来ていたリオンだけが聞いていて、自然と顔をしかめた

リオンは、グレイが他の人間とは違うものを視ているというのを知っている

幼いときからずっとそばにいれば彼が嘘を言っているとは思えなかったし、何より自分も変なことに巻き込まれたことがあるため信じないわけがなかった

だからこそ、こうして無意識にだろうグレイから出た言葉に、また焦りが浮かぶ

「あの、」

控えめだがしっかりとした声で言うヒビキに、自然と全員の視線が向く。

「ルーシィちゃんの手、すごく冷たいんだけど…」

176:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 16:18 ID:IX2

不自然なほどに白くなっていたルーシィの手を握るヒビキの少し不安そうな視線を受けたグレイはハッとして、ハーフパンツのためにむき出しだったルーシィの足にそっと触れる

そしてそこから感じる冷たさに眉を寄せて、自分が羽織っていたジャージを脱ぎながらもザっと体育館の中を見回した

幸いなのか分からないが、体育館の隅に置いていたそれぞれのジャージやスクイズボトルはそのままだった

「スティング、お前のジャージも貸せ」

「は、はい!!」

「ヒビキはそのまま手ぇ握ってろ。」

「了解」

グレイは脱いだ氷谷のジャージとスティングが持ってきた星野のジャージをルーシィに被せる

スティングとローグはルーシィの状態を見てから顔色が悪い。

「グレイ」

「正直、ここまでのは初めてだな」

「ああ」

自然と浮かぶ冷や汗に気付かないふりをする

同じようにルーシィの様子を伺っていたローグが震える声で自分の名前を呼ぶスティングに気付く

「ローグ、」

「なんだ」

「あれって…」

スティングが指差した先、そこにあったのはステージの横の壁にかけられている校歌の歌詞。その最後にあった学校名に、ローグも目を見開いた

「嘘だろ…さっきまで東京にいたのに、」

「どういうことだよマジでッ…」

さっきよりも焦り出した星野1年二人に、四人もその視線に習って歌詞がかけられている壁を見つめる

「……聖城中学校、ですね」

「おいローグ、どこの中学だ?」

すうすう、と小さく息をするルーシィを見つめていたローグにリオンが声をかける

ヒビキも、無意識にルーシィと繋いだ手を少し強くして、揃って顔を青くしている二人を見つめた

「…聖城は、ルーシィの出身中学です」

「……って、ことは、」

「もちろん、神奈川にあります」

動揺しながらもハッキリと告げるローグ。

カタカタと揺れた窓の音にも誰かが震え、外は夜なのか真っ暗だ。どこか古い印象の受ける体育館だが、照明は眩しいほどに煌々と光を降り注ぐ

しんと静まり返った広々とした空間で、どこかゆらゆらと揺れるようなねっとりとした空気を感じたグレイは未だに意識が戻らないルーシィを見つめて、小さく息を吐いた

「神奈川か…」

移動したのか、どうやって、しかもこのメンバーをそのまま連れて来る意味は何だ、とグレイは内心頭をフル回転させるがいい答えは見つからない

ルーシィの中学ということは少なからず彼女が関わっている可能性が高いが、意識が戻らないと話も聞けない

体温が低くなっているルーシィはすぐに起こさないと危ない、それは分かってるがその方法が分からない

今までここまでの規模で、しかもここまでの人数で怪奇に巻き込まれたことが無かったため、グレイも動揺しているもののそれを表に出すわけにはいかなかった

グレイはそっとルーシィの顔色をうかがう

顔色自体はそこまで悪くないが、身体はやはりひどく冷えている。夢をみているのか、半分引きずられているような様子だ。

「グレイさん」

「どうした?」

ローグの声にグレイが顔を上げれば、彼は何とも言えない表情を浮かべていた

「さっきの、ここまでのは初めて、ってどういうことですか」

リオンとの会話のことを言われているのは分かった、だが一瞬返答に困る

今ここにいるメンバーが、自分の話を信じるという保証はどこにもない。けれど、そんなことを言っている場合でもないと気付いている

ローグだけではなく、不思議そうな様子のスティングとイヴ、ヒビキを見て、グレイは深く溜息を吐いた

「俺は、」

とりあえず自分のことだけ話そうと口を開いたとき、体育館の外から音が聞こえた

「ッ、」

リオンは小さく息を呑んだ。グレイは体育館の入り口に目を向ける。ヒビキは未だに冷たいルーシィの手を両手で包んだ

バタバタと、何かが動く音と、微かに耳に届くのは、誰かの声のように思う

バンッ、と扉が勢いよく開いた。そこに現れたのは燃えるような、赤

「一人で突っ走ってんじゃねぇぞアホ!!何かあったらどうすんだ!!」

「うるせぇ!!人の気配がしたんだよ!!ってあれ?」

慌ただしく体育館に飛び込んで来たのは、グレイたちにとっては見慣れないジャージ姿の二人

グレイは、自然と力が入っていた足を緩めた

177:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 16:37 ID:IX2

「な、ナツさんッ!!??」

「星野のスティングとローグ!!」

「は、お前ら何でここにッ、」

なんでココに!?とスティングを指差している人物と、そんな彼の頭をバシリと引っぱたいている男に、リオンとイヴは揃って同じように目を丸くし、突如賑やかになった空間にヒビキははあーと息を吐いて浮かんだ冷や汗を拭った

「ちょっと待て、ナツさんたちがいるってことはここほんとに神奈川!?」

「え、ああッ!!そうだ、嘘だろどうなってんだよーッ!!」

「おい、そもそも何でお前らここにいるんだ、つーかここ一体何だよ、」

「それにそいつら誰だよ!?」

東京組を置いてきぼりにして慌てだした四人に、グレイははいはい落ち着けと手を叩く。

「あなたたち、どちら様ですか?」

「それはこっちのセリフだ!!」

「あーマジどういうことだこれ、」

へたりと座り込んだまま言うイヴに答えながら、はあー、と溜息を吐きつつそばにやって来た二人はふと、床に触れている金髪を見て目を見開く

「ルーシィッ!?」「バニー?」


これだけ大声で話していてもやはり目を覚まさないルーシィは、ヒビキに手を繋がれたまま静かに呼吸を繰り返している

冷えた手を温めるようにヒビキはルーシィの手を両手で包み込み、リオンもジャージの上から彼女の腕をさすっていた

「おい、どういうことだ」

「待て待て、何で俺を睨む」

随分とツリ目だな、と半分関係のないところに意識を飛ばしつつ、じとりと睨んでくる男にグレイは口元を引きつらせた

「とりあえずお前らも落ち着け。ここに来てからルーシィが目を覚まさない。これは今一番ヤバい状態だから、それをまずは何とかしたい」

「目を覚まさないって…バニー!」

「ルーシィ!!おいルーシィッ!」

さら、と顔を隠してた金髪をそっと撫でてやりながらルーシィを呼ぶ声に、ピクリと震えた手に気付いたのはヒビキだ

「ルーシィちゃん?」

手を握って顔を覗くが、やはりまだその目は閉じられたままだ

けれど今微かに動いたと思いヒビキがちらりと視線を向けた先、グレイもそれに気づいたようで目が合った

「おい、えーっと、お前ら!」

「ナツさんと、ガジルさんです。火ノ国っていう神奈川の強豪校の主将と副主将です。」

「さすがローグくんだね」

「それと……ルーシィの中学の先輩です」

178:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 17:16 ID:IX2

それが一番知りたい情報だっただろう、と言わんばかりに視線を向けて来るローグにグレイはニッと笑い、ヒビキもなるほどと思いながらもルーシィの手は離さなかった。

「えーと、ナツはどっちだ?」

「俺だ。なんだよ」

「そのままルーシィの名前呼び続けろ。あと、そっちのガジルもな」

どういうことだと、二人だけでなくイヴとスティングも揃って首を傾げるがローグとヒビキは何か気付いたのか表情は変わらない

リオンもただずっとルーシィの腕に触れて体温を分けていた

「今、俺たちは怪奇ってやつに巻き込まれてる。それも相当の力で。」

「怪奇って、幽霊とかが関わってるってことかよ」

「ああ。信じねぇってんならそれ以上は何も言わないが、今この異常な状況をまずは受け入れろ。」

真剣に真っ直ぐに言葉を放つグレイに初対面でありながらもナツとガジルも自然とその言葉をするりと呑み込んだ。

本当はあまり言いたくないはずで、あまり知られたくはないはずで、けれどそうも言っていられない状況であるグレイの姿に、リオンはただ寄りそうようにそばにいることしか出来ない

正直この状況で頼りになるのはグレイだけだし、ルーシィが目を覚ませばきっと二人で何とかしてくれるのではないか、と微かな希望だってある

ルーシィから直接話を聞いたことはないし、グレイからも何も言われていない。

けれど、二人のどこか似た雰囲気と、気配、そして同じところを見ているような視線に、きっとルーシィも同じなのだろうとリオンは気づいていた。

だから早く目を覚ましてほしい、大丈夫だと伝えたい。怖くないからと、言いたいのだ。

「で、これは俺の予想だが、お前らの中学時代が関わってるのはたぶん間違いない。ここがどこだかもう知ってるか?」

「…聖城、だろ?お前ら外に出たか?ここは確かに聖城だけどよ、俺たちがいたときの校舎でも体育館でもねェ」

「どういうことですか?」

「この体育館もそうだが、一番分かりやすいのは校舎だ。たぶんあれは、旧校舎。建て替えられる前の木造だったときの校舎だ。俺らも初めて見た…ギヒッ」

二人が飛び込んで来たまま開けっ放しになっている扉の外はここからでは見えない。

しかし不可解そうに言うナツとガジルにその言葉が嘘ではないと分かってしまい、誰かの息を呑む音が聞こえた。

年代も違うのかよ、とまた舌打ちが漏れそうになったのを抑えつつ、グレイはちらりとまだ意識を飛ばしたままのルーシィに視線を向ける。

「ルーシィはたぶん、お前ら二人の声に、反応してる。」

「……ルーシィ」

眉を寄せた少し苦しそうなルーシィの表情にナツはわけも無く悲しくなりながらも、さらりと指先を流れる金髪を撫でながらも呼びかける。

中学のとき、何度も呼んだ。何度も、あの綺麗な目を見た。

声が届くというのなら、もう一度あの目を見れるなら、何度だって呼んでやる。だからほら、早く目を覚ませ。

そうしないと、からかうこともできないだろ。

「ルーシィ。」

手触りのいい金髪を撫でる。そして、彼女の震える瞼をただ見つめていた。

179:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 20:51 ID:IX2

終わりのない真っ暗な空間と、寒さと、気味の悪さ。

カタカタと震える身体を抱え込んで、丸くなって、そして唯一の扉だけをじっと見ていた。
微かに動くだけで埃が舞う、何かに見られている、気配がする。

ああ、ここはどこだったろうか、ズキズキと痛みを訴えてきた頭にじわりと涙が浮かんだ。
痛い、頭が、震える、何かが流れて来る。
ずる、と身体から力が抜けて座っていることすら出来ずにパタリと横になった。

そのときにふわりと舞った埃で一つ咳をしつつ、そっと目を閉じる。

この景色は、見たことがない。

おそらく、誰かの、思い出だ、これはどこだろう。

歩くたびに軋む音がする木造の建物、その廊下。楽しげな、子どもの声。

しかし自分に向けられる視線はひどく冷たいものだ。

この感覚を、自分は知っていた、誰も信じてくれなったあのとき、こうして冷え切った目で見られていた。

ぞわりと震える背中には冷や汗が伝い、それでも一歩一歩歩く、そのたびに、廊下が軋む音が鳴る。

やめて、どうして、どうして誰も信じてくれないの、おかしいのはそっちだろう、どうして、何で、何で。

ぶわりと溢れてくる感情は、しんしんと降り積もる雪のように心をひどく冷たくさせた。

静かに壊れていく、音がする。悲鳴を上げる、苦しいと、怖いと、どうしてと。

ぶわりと溢れてきた感情は自分とリンクしていて心臓が痛い。

誰かの、記憶、思い出。つらい、苦しい、過去か。

その光景が一瞬弾けて、意識が浮上する。けれどやっぱり、どこかが痛んで浮かんだ涙が頬を伝った。

ふ、とのろのろと目を開けた先、扉はやはりずっと閉まったままだ。

ヒタリと背中に触れる冷たい何か、それがどんどん体温を奪っていくような気さえしてひどく怖い。

けれど振り向けない、確かにすぐ後ろにいる何かを見ることが出来ない。怖くて怖くて、もう、身体も動かない。

つ、と流れた涙は静かに頬から落ちる、それを拭う、気力も無かった。

誰か、誰か。

「……ッ、」

声も、もう出ない。喉が、震えない、声の出し方が分からない。

ああ、ダメだ、これ以上ここにいたら、ダメだ、怖い、どうしたら、いいの。

ずん、と重くなる空気、押しつぶされそうなほどの気配に吐き気が、する。

ーーーーーーーー

ああ、そうだ。あの時の、記憶だ。

閉じ込められて、絶望しか感じなかった、本当に、死さえ覚悟したあの時、その扉を開けてくれた、人。

名前を、呼んでくれた人たち。

手を、身体を、温かい体温で包んでくれた、人たち。

思い出した、あの時も、そうだ、助けてくれたのは、あの、

180:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 23:07 ID:IX2

「ルーシィ、」「バニー。」

瞬きを繰り返せば、あの人の桜色が見える。

「ナツ、さん?ガジルさん、」

「目ェ覚めたか」

指先から伝わる体温に不思議に思って視線を向ければ、どこかホッとしたような表情を浮かべたヒビキがいる。

「ルーシィ平気かい?」

「ヒビキ、さん、」

何故かひどく冷たい手をぎゅっと握ってくれる手が温かい

「「ルーシィッ!!」 」

「ルーシィちゃん大丈夫?」

「ルーシィ、苦しくないか?」

次々に聞こえる声。泣きそうなスティングとローグ。そしてイヴも安心したように笑い、そっと腕に触れてくれていたリオンは顔を覗かせた

「ルーシィ、起きられるか?とりあえず今分かってることを説明する。」

グレイの何とも言えない表情を見て、厄介なことになったと察したルーシィは起き上がろうと手を床につけた

「ッ、」

体を起こそうとしたが力が一気に抜けた。しかし目の前の人物に抱き留められる。

「顔色が悪ィ。しかも何でこんな冷てェんだ」

「ナツさん、」

しっかりとルーシィを支えたナツはそのまま上半身を起こすのを手伝ってやる

何とか座った体勢になったルーシィは、肩と膝にかかるジャージを返そうと思ったが、スティングにまだ使っておけと言われたためにそれに甘えた

「どこまで覚えてる?」

「体育館が揺れた、あたりです」

それは大体全員同じだなとグレイは頷き、何か含みがあるような目でルーシィを見つめる。

「正直、結構マズイと俺は思ってる」

「あたしもそう思います。ここは聖城ですか」

「正解。やっぱり何か見たか?」

グレイのであろう大きいの青のジャージを無意識に握る

「おい、二人で何納得してんだよ」

二人が何やら分かったように話を始めたことにガジルが首を傾げつつも疑問を投げかける。それはおそらく残りのメンバーも同じだろう

「…俺とルーシィは、日頃からこういうことに巻き込まれることが少なくない。幽霊とか妖怪とかそんなんが、俺たちにはいつも視えてる」

それこそ毎日のように、昔からずっと。

「…だからか、」

ポツリ、と落とされた呟きはナツのものだ。

「ルーシィ、お前中学のとき階段から落ちたことあっただろ。」

「え、覚えてたんですか?」

「そりゃな。結構驚いたし。」

どういうことだと、ガジルがナツを見る

「あの時、確かに誰かに押されて放り出されたような感じで落ちてきたろ。あれもその、幽霊とかそういう関係なのか?」

「…ごめんなさい。あの時、受け止めてもらって、その、ケガ、」

途端に顔色を悪くしたルーシィ。ナツは慌てて首を振った

「別にそれはどうだっていいんだよ!思い出さなくていい!!」

「お前一人受け止められなかったこいつが悪ィんだ、気にすんな」

「うるせぇ!!」

ルーシィ曰く、学校の中で油断していたら、突然階段から突き落とされてしまったという

それにナツが偶然居合わせ、落ちてきたルーシィを抱き留めたまでは良かったが、勢いに耐えきれずに後ろにぶっ倒れ手首を捻ったのだ。

「まあ言いたくなかったのも、言えなかったってのも、あったんだろうが…怖かったんだろ、言うのが。」

そう言うガジルにルーシィは慌てて首を振る

「あたしが隠してたんです!だから謝るのは巻き込んだあたしです!!…あの、信じてくれるんですか、あたしがその、」

「あの時のことと、今と、それで信じないわけないだろ。相変わらずバカだな、ルーシィ」

「信じるぜ。お前が何か視えてることも、今のこのおかしな状況もな。ギヒッ」

はっきりと言うナツとガジルに、ルーシィは目を丸くする。

「俺も信じるぞ!ルーシィ!!」

「仲間を俺も信じるぞ」

「僕も信じますよ。というかなるほどなって納得出来ます」

「俺もかな。グレイがたまに一人でブツブツ何か喋ってたのはそれのせいか」

当然という風に言い切るスティングとローグ。納得と言うイヴと、思い出し笑いをするヒビキ

「良かったな、ルーシィ」

ふっと笑って言ってくれたのはリオンで、言葉を探すルーシィにまた彼は小さく笑った。

「グレイと同じ感じがしたから、俺は気づいてた。言わなくてすまない」

「え、」

「もちろん、俺はグレイのことも信じてるし、ルーシィのことも信じる。」

ルーシィはリオンが最後に言った言葉が嬉しくて、くしゃりと、笑みを浮かべた

181:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 23:28 ID:IX2

「で、この状況をどうするか、だ。やっぱり聖城絡みか?」

「きっと。ナツさんガジルさん、聖城にあった木造の古い倉庫みたいなヤツ覚えてますか?」

また指先が冷えてきたルーシィの手を今度はスティングが握り、ヒビキはそっと背中を支えてやる

それでもまだ体調が万全ではない様子のルーシィは、グレイからの問いに元先輩であった二人に視線を向けた。

「…倉庫って、あの焼却炉があったっていうところか?」

「はい」

「あれが、関係してんのか」

すぐにピンときた二人はそれに伴って眉を寄せ、ローグがどういうことだとルーシィに続きを促した。

「ルーシィ、

「えと、聖城に、昔からずっと壊されてない、古い木で出来た倉庫みたいな小さな建物があるのよ」

「それとどういう関係がある?」

「あー俺が説明する。あの噂話のことだろ?」

「あ、はい。」

ナツは全員の視線が集まったのを確認しながら、記憶を引っ張り出すようにゆっくり話し出した。

「聖城の敷地内に、何で壊さないのか分からないくらいに古い小さな倉庫みたいなのがあったんだ。噂によると昔その横に焼却炉があって、ゴミを貯めてた倉庫だったんだろって話だ」

しんと静まりかえった体育館にナツの声だけが響き、どこか、ゾクリとした空気が流れた。それに気づいたのはやはりルーシィとグレイだったが、ちらりと目を合わせただけで話の先を促す

「何でそれを壊さないかっていうのも、まあ噂でしかねェけど昔、いじめられていた女子生徒がそこに閉じ込められてそのまま死んだって話だ」

「「え、」」

「壊そうとすれば体調不良の奴が出たり、誰かが怪我したりしてたっていうことが頻繁に起こって、だからそのまま放置されてたらしいぜ」

「それって、」

「まあ、俺らの間ではその女子生徒の呪いだとか何だとか言われてたな」

「ええ!!」と思わず叫んだのはスティングと言うで、無意識に繋いだ手に力を込めたのかルーシィが「スティング、手痛い」とぶんぶんと腕を振った。

イヴうるさい、と淡々というヒビキに、ガジルは可笑しそうに笑みを浮かべる。

「おい、まだ続きあっけどお前ら大丈夫か?」

「続けてください。」

呆れた様子のナツにローグもこれもまた表情一つ変えずに先を促す。

溜息一つ吐き出して、ナツが少し躊躇いつつも続けた。

「で、俺とガジルが3年のときだから、確か女バレの2年か?」

「ああ、確かそうだ。」

「…ルーシィが、その2年だったやつらに噂の倉庫に閉じ込められたことがあったんだよ」

「「はあ?」」

思わず落とされたスティングとローグの声が幾分トーンが低い。

「ちょっと、あんた主将だったんじゃないんですか、何でそういうこと放置してんですか。何してたんですか。」

「俺は主将だけど男バレのだ!女バレまで見てられるか!!」

「お前が女バレの主将に苦手意識を持つからだろーが」

「ガジルそれ今言うなよ!!エルザすっげー怖ェんだぞ!」

主将がそれかよ、とグレイとヒビキからの何とも言えない視線も受けて、ナツは口元を引きつらせた。

俺も同罪だが、と言うガジルとすっかり居心地が悪くなった様子にナツに、慌ててルーシィが口を挟む。

「でもあの時、あたしを助けてくれたのはナツさんとガジルさんです」

「まあ、そうだけどな。あれはほんとにビビったぜ」

「よく考えたらあの時も確かにおかしかったな…ギヒ」

「放課後の練習の後、ルーシィの荷物はあるのにいねえって女バレの1年たちから聞いて俺とガジルで体育館の倉庫とかは全部探したんだ。でも見つからなくて、マジで焦ったぜ」

「外はもう暗くなってたしな。で、まあ怪しかった2年を俺らで問い詰めたらあっさり吐いたから、急いでその噂があった倉庫に走った。1年には先公呼びに行けって伝えてな。」

あの時を思い出すように、それが伝わるように二人は視線を向けて来るメンバーを見返す。

ヒビキに背中を支えられているルーシィはやはり顔色があまり良くなくて、ああ、嫌なことを思い出させていると心が痛んだ。

「普段だったら鍵がかかってるはずだったのに、あの時それは壊れた。それで扉を木の棒みたいなやつで開かなく抑えているだけだったから、急いでそれを外して開けようとしたん。だけどよ…」

「全然開かなかったんだ」

182:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 23:35 ID:IX2

ゾクリ、と確かに全員の背中が震えた。

小さく揺れた照明がカタカタを鳴ったためにグレイが観察するように体育館を見回すが、どこにも何もいない。

それはルーシィも同じだったらしく、すっかり顔色が悪くなっているスティングの手を握り返してやった。

「おかしいと思った。それとめちゃくちゃビビった。けど、中にルーシィがいるんだからいつまでもビビってはいられねェだろ」

「俺とナツ、二人で必死になって扉を開けて、そしてバニーも無事に助けた。」

「けど、もう夏だってのにルーシィの身体は冷え切っててよ、低体温症になりそうだったって後から聞いてすっげー驚いたぜ」

はあ、と肩を落とすナツに、グレイは今度はルーシィに視線を向ける。

その視線を受けて、ルーシィもこくんと静かに頷いた。また、身体が冷えそうな気がして無意識に指先を撫でる。

「さっき、その時のことを夢でみてました。」

「だからそいつが絡んでるってことか。」

たぶんそうです、と言うルーシィはまたあの時の記憶が蘇ってくるようで唇を震わせる。

まだ、小学校を卒業して数か月しかたっていなかったあの時、あそこまで恐怖を覚えたのは正直初めてだった。

憎しみか恨みか、重く暗い感情を一方的に押し付けられて、じっとりと視線を向けられて身体が凍りそうだった。

183:お香しゃちょー◆kk:2018/01/17(水) 00:09 ID:IX2

「あの時、確かに倉庫の中にはあたしと、何かが、いました。視線を向けられていることは分かったけど、その姿まで捉えられなかったです。だけど絶対に、いた。
…それがその亡くなった生徒なのかも、まだ分からないですけど、あの倉庫が関係してるのは間違いないと思います。」

まだ青白い顔色で、それでもしっかりと言い切るルーシィに、誰もがその言葉が嘘ではないと分かる

「その倉庫って、どこにあるんだ?」

「位置関係が変わってないなら、校舎を挟んで反対側だ」

「とりあえず、行ってみるしかねェな。」

グレイは、開けっ放しのままの体育館の扉をちらりと見てから何やら浮かない顔をしているガジルに視線を向けた

「どうした?」

「俺らさっき外から来たけど、不自然なほどに真っ暗だったぜ。木造の古い校舎と、この体育館しか確認できないくらいには、暗かった。」

「ってことは、その古い校舎を突っ切って反対側まで行くしかないってことですか。」

あっさりと、これもまた変わらないトーンで言うローグに、スティングはさっと顔色を悪くし、イヴとリオンも無意識に眉を寄せた

じわりと感じるどこか居心地の悪い空気も、まだ変わらない

しかしそれを吹き飛ばすような明るい声が、響いた

「学校の怪談みてーだな!!」

「な、何で楽しそうなんですかナツさんッ!」

「スティング、アイツはアホだからよ」

「ガジル聞こえてるからな!!」

何やらぎゃあぎゃあと賑やかになった空気に、ヒビキとイヴはぽかんとする。リオンは溜息を吐き、ローグに至っては気にもしていない

「ナツうるせーなぁ。」

カラカラと笑いながら言うグレイも、ずば抜けて高いナツとガジルのテンションに半分呆れつつもどこか安堵したように力が抜ける

「じゃあ、行きますか。」

ひょいと立ち上がったグレイに続くようにそれぞれ腰を上げる。部下帰りであったらしいナツとガジルは荷物を持ったままだったが、スマホはやはり一切使えないらしい

「ルーシィ、立てるか?」

ぺたん、と座ったままだったルーシィはハッとして声をかけてきたローグを見上げて、まだ震える足で立ち上がった。

肩にかかるグレイのジャージはそのまま借り、スティングのものはローグが受け取る

膝が少し震えたがたぶん大丈夫だろう、ルーシィがそう言えば二人も安堵したように息を吐いた

「おっしゃああああ!!お前ら行くぜ!!」

「お前はいちいち声がデケーんだよ!!」

「何であの人たちあんな元気なんでしょう、ヒビキさん」

「火ノ国って神奈川の強豪?しかもナツってあれでしょ?日本で5本の指に入るとかっていう」

「やっぱ俺って有名人!聞いたかガジルッ!」

「ちょっと黙れやアホ!!」

「なんだと鉄野郎!!」

「ビビりすぎだ。吐くなよ」

「う、うるせーローグ!ビビってねぇッ!!」

「嘘だな」

「スティング、足が震えてるぞ。」

「リオンさんまでそんなこと言わないで!!」

何やらさっきまでの暗い雰囲気が嘘のように賑やかになったメンバーにルーシィはきょとんと目を丸くする

「ナツのああいう性格はこういうとき役に立つな。初対面とは思えねーわ。」

隣にいたグレイがククッ、と笑いながら言った言葉にルーシィもふっと笑みを浮かべて頷く

ナツとガジルも、ヒビキとイヴの王子様キャラに慣れてうまく会話をしている。

ルーシィは、ゆらりと視線を泳がせる

声が、聞こえた

おそらく自分を探していた声。見つけた、というたった一言に、分かってしまった

ああ、また失敗した。もう巻き込みたくないと、思ったのに

ルーシィが顔を上げた先、グレイが静かに穏やかに自分を見つめていた。

「一人じゃねぇ、って言ったろ。何かあったら絶対に俺に言え。今回のことだって、お前のせいじゃない。」

「グレイさん、」

「お前はもう、一人じゃないだろ。」

抱え込むな、と優しく落とされた声に、ルーシィはじんと目の奥が痛くなるのを感じた

優しいな、と思いながらもくしゃりと笑えば、グレイもホッとしたように微笑んでくれた。

「おいグレイ」

「ルーシィ!早く来いよー!!」

早くしろと言うリオンと、手を伸ばしてくれるナツの声に二人もようやく足を進める

体育館の外は暗い、それに誰もがたぶん恐怖を覚えているはずだけれど、動かないわけにはいかないのだ

184:お香しゃちょー◆kk:2018/01/17(水) 02:26 ID:IX2

暗い暗い部屋、静まり返るそこは自分以外動くものも無く。

底から冷えるような空気に、唯一ある小さな窓から外を見れば真白な景色が映った。

しんしんと、振り続ける、真冬の、雪。

本来だったら綺麗だと言えただろう、全ての音を呑み込むようなその空気に安堵の息を吐いただろう。

つ、と指先で窓に触れれば、滴が一つ、零れ落ちた。

自分のものだという認識すら忘れて指先を見れば、真っ赤になって感覚ももう遠い。

痛い、のだろうか、それすらも分からない遠い感覚に吐きだした息も震えた。

ドサリ、と床に寝ころべば制服やむき出しの膝が黒く汚れる。

見上げた天井は随分と低い、迫って来るようなそれにそっと目を閉じた。


ああ、寒い。寒い。
助けて、誰か、ねえ、寒いの。


震える喉はもう声を発することも出来ない。
カラカラに乾いた唇はピリと痛みが走って、血の味が、した。

どうして、どうして。

私はここにいるの、どうして私だけ、こんなところにいるの。

誰も、来てくれない。気付いてくれない。

どうして、ねえ、誰か教えて。

私が何をしたの、何もしてない、ただ一人でいるだけだったのに。

だから嫌いなのだ、信じなければよかった、一瞬でも、信じた自分が馬鹿だった。

許さない、みんなみんな、許してやらない。

暗い暗い、部屋。

だんだんと朦朧していく意識の中で、何を求めただろうか。

手を伸ばせない、動かない、もう。

どうして、どうして私だけ。

ああ、ほら、見つけた。

見つけた、見つけた。待っててすぐ、ほら、すぐだから。












































もうすぐ、むかえにいく。

185:お香しゃちょー◆kk:2018/01/17(水) 16:14 ID:6BI

ゾク、と背中が震え、ルーシィはバッと振り返るがそこには何もいない

ふ、と短く息を吐いて、それでも耳元を霞めたような何かの気配に眉を寄せた

「ルーシィ?」

隣にいたスティングから名前を呼ばれ視線を向ければ、どことなく不安げな顔が見えたために「何でもない」と返せば彼は笑顔を浮かべる

押しつぶされそうな暗闇の中、体育館から伸びた外廊下の先、校舎に入るための非常口の前で立ち止まって体育館から拝借して懐中電灯で中を覗いていた。

「うわ、真っ暗だね」

「そりゃな」

グレイが照らす懐中電灯の先は廊下が続いているのがようやく分かるくらいの暗さが広がっている

天井も所々に穴が開いているほど古く、臭いもどこか埃っぽい

一緒になって中を覗いていたヒビキも若干嫌そうに眉を寄せるが怯えた様子は無い

うーんと、一つ声を漏らしたグレイは、最後尾
にいたルーシィに視線を向ける。

「ルーシィ、ちょっと来い」

ひらひらと手招きされたルーシィは、スティングのそばを離れてグレイの元へと進む

「何かありましたか?」

首を傾げたルーシィに、グレイは持っていた懐中電灯をひょい差し出す。うん?と何だか分からないまま自然とそれを受け取って、不思議そうにグレイを見上げた。

「先頭歩けるか?俺は最後から行くから。」

「分かりました!」

扉の窓ガラスから覗いた廊下は、校舎が古いせいか幅が狭く感じる。

それを見てあっさり頷いたルーシィを少し心配に見つめながらも、とりあえず気配を感じやすい自分たちで残りのメンバーを挟んだほうがいいだろうとグレイとお互い納得する。

懐中電灯を握りながらあ、と何かに気付いたルーシィは顔を上げた。

「あ、そうだグレイさん、ジャージ…」

「いいって、そのまま着てろ。」

そう言えば貸りたままだったと、氷谷のジャージを脱ごうとしたルーシィをグレイはやんわりと止める

まだ身体は冷えたままなのだろう、懐中電灯を受けとる指先が少し震えていたのを見て、でも、と渋るルーシィに今度はニヤリと笑みを向けた

「それに、彼ジャーっぽくていい」

手の甲まで隠れている袖とどこかゆったりとした肩のラインに、グレイはうんうんと何故か満足そうに頷くが、一方ルーシィは顔を真っ赤にして俯く。

「おい、ルーシィに変なことすんなよ」

グレイを遮るように割って入ったナツは、ぐいとルーシィの手を引いてぽすんと腕の中におさめる

「しかも彼ジャーでもねえし」

「えーグレイそれ狙っての?ズルいな〜」

「別に狙ってねぇよ!たまたまだ!」

「おい、ちょっと待てズルいって何だ。」

何故かナツに後ろから腕を回されていることに抵抗もしない影の薄いルーシィもおかしいが、突然入って来たヒビキのセリフもどうかと思う

グレイは思わぬ反撃に弁解し、ガジルはヒビキの言葉にツッコミを入れる、その様子を見ながら呆れながらもローグは息を吐いた

無意識だろうがその場が少し明るくなる、今から入る暗い暗い見慣れぬ校舎を前にスティングは恐怖で顔が引きつっているし、リオンとイヴもどこか不安そうだった

それはもちろんローグもだが、三年たちのルーシィを巻き込んだ明るいやりとりに少しだけ気分が軽くなる

グレイはきっと、意図的だろう、そういうところはやはり敵わないなとローグが思っていれば、隣にいたリオンも気付いたのだろう安堵したように息を吐いていた

「とりあえず彼ジャーは置いといてだな、まだ寒いんだろ、着てていい。」

ったく、と八つ当たりに一度ヒビキの頭を引っぱたいたグレイがそう言えば、ルーシィは少しだけ目を丸くした。

指先がまだ凍るように冷たい、足もむき出しになっている膝下は随分と冷えていた

後ろからくっ付いているナツにもきっとバレたのだろう、少しだけ腕に力がこもるのが分かった

「あ、ありがとうございます!」

嬉しそうに微笑むルーシィに、グレイがぐりぐりと頭を撫で、ナツは少し不貞腐れながらもぎゅうと抱きしめた

「それじゃ、行きますか。気合入れろよ。」

ニッ、とまるで試合の前かのようにいつも通り不敵に笑うグレイに、全員が頷いた。

186:お香しゃちょー◆kk:2018/01/21(日) 17:47 ID:fSs

カチャ、と静かに開けられた扉。キイ、と金属が軋む音が鳴るがゆっくりとそれを開け放ち、ルーシィがまず一歩廊下へと足を踏み出した

暗い廊下の先を一度照らし、天井にもざっと目を向けてからあっさりと進んだ。

そんな彼女に続いて何やら嫌そうな声を上げながらも全員が入ったところで、グレイが最後に校舎へと入る

そしてカチャリと扉を閉めて、歩き出した瞬間

ガチャン、と嫌な音が鳴った

おいおいと振り返ったグレイだが、そこには何もない

ただ嫌な予感がして扉のノブに手をかければ、案の定、それが開くことはなかった

(あー、出さないつもりか?)

正直、正体の分からない存在の狙いははっきりと分かっていない

何度やっても開かない扉に溜息を吐き出して、グレイは仕方ないと先を進むメンバーの後に続いた

閉じ込められた、などという情報は言わないほうがいいだろう、ちらりとルーシィと目が合ったために頷けば、彼女も少し嫌そうに眉を寄せるだけだった

ギシ、と歩くたびに軋む床はどこか埃っぽい。
窓も薄汚れ、天井には所々に穴が開き、蜘蛛の巣が張っていた

明りは先頭を歩くルーシィの持つ懐中電灯と、ガジルがスマホを使って照らす足元の光のみ。電波は入らないが電源はそのままだったため、充電が切れるまでは明りとして使える。

ルーシィのジャージの裾を掴んだまま歩くスティングはまだ表情は硬く微かに手が震えているため、引きはがすことを諦めて仕方がないからそのままにしていた

「ビビりすぎだ。ルーシィが歩きづらいから離せ」

「おまッ、ビビってねぇしッ、いや普通に怖いだろうが!!」

「どっちだよ」

ローグが溜め息交じりに小さく呟いた声にもスティングは震え、リオンがあっさりとツッコミを入れる

リオンの後にはイヴとヒビキが続き、その二人の後はガジルとナツが続いた。

最後尾を歩くグレイは、時折天井やら後ろを見ながら軋む廊下を進みながらも前を歩くルーシィの様子も気にかけていた

一方のルーシィも、懐中電灯で先を照らしつつ、何も気配を感じないことを確認しながら足を進める

はあ、と吐き出した息はどこか震える

懐中電灯を持つ手がまだ冷たくて、スティングが掴むジャージの部分から伝わる微かな熱だけが、唯一温かいと感じた

「マジで学校の怪談じゃねーか!」

「だから何でちょっと楽しそうなんだよ」

「君、やっぱりちょっと…かなりバカなの?」

「コイツはいつもこうだよ」

ナツが相変わらずのテンションで言えばガジルが呆れたように見つめ、ヒビキの失礼な言葉にもあっさりと返すものだから当の本人は少し不貞腐れている

ヒビキも全国でも有名なスパイカーの意外な姿に何とも言えない表情を浮かべる

足元が不安定なためにいつもよりゆっくりと歩きながらも、キシキシと軋む音は止まない。それが余計に恐怖を煽るようだったが、ここまで進んでも特に何も起こらない

しかし、と嫌な空気はずっと続いていると感じているルーシィは周りの気配に集中しながら進んでいた

ギシ、と一度鳴った音、それに一瞬足を止めたルーシィは、ぐん、とまわりの気温が下がったような感覚に目を見開く

そして突然、ぶわり、と一気に鳥肌がたった寒気に、ハッとして天井を見上げる

気配を探っても近くには無い、けれど、けれど、強烈な視線をどこからか感じて冷や汗が浮かんだ

(どこから?)

「ルーシィ?」

すぐ近くからスティングの声が聞こえる、そして背後からは同じように名前を呼ぶ先輩たちの声

その間も見られている感覚は消えない。どこだ、と振り返った瞬間、ルーシィは視えたものに息を呑む

187:お香しゃちょー◆kk:2018/01/21(日) 17:56 ID:fSs

天井に開いた穴、その暗い暗い隙間から覗く、白い顔

血の気がない明らかに温度を感じられないその顔は、不気味なほどにはっきりと暗闇に浮かんでいた

そして真っ赤な目を見開いて、うっすらと浮かべられた笑み

ニイ、とまるで嘲笑うかのように口元だけで笑うそれに、ゾクリと背筋が震えたのが分かった

ズルリ、と伸びて来る腕は同じように青白く細い。しかしそこにを這うように落ちるのは、赤い赤い、血だ

それがポタリと床に落ちた瞬間に、ルーシィはハッとして声を張り上げた

「ナツさんッ!!!」

その真下にいた、ナツに伸ばされる、青白い腕

ルーシィの声で背後に迫る異様な気配に気付いたナツが、目を見開くのが見えた

何で、狙いは、俺のはずだろッ、と叫び出しそうな気持ちを含めて叫べば、同じように振り返っていたヒビキがすぐにナツの手をぐいと引いた

「う、っわ!」

「ナツくんッ、」

「ぎゃあああッ、何あれ!!!」

それ、を見て叫んだスティングがジャージを引っ張るため、ルーシィは一瞬動きが止まる

しかしルーシィが動くよりも前に最後尾を歩いていたグレイの方が早かった

「下がれ!!ヒビキッ、ナツの手ぇ離すなよ!!」

イヴをガジルのほうへと押しやって全員を背で守るように立ったグレイは、すぐさま持っていたスクイズボトルの蓋を開けて、スポーツドリンクをその得体の知れない存在にぶっかけた

じゅ、と微かに何かが焼ける音がしたかと思うと、その白い腕は一瞬でふっと消える

その瞬間、重苦しい空気もパッと消えたために、誰かの息を吐く音がやけに響いた

「ナツさんッ、何ともないですか!?」

勢い余って尻餅をついていたヒビキと膝をついたナツのもとに駆け寄ったルーシィは、息を整えている二人の様子を見ながら慌てて声をかける

さっきまでの異様な空気はもう無くなっているし視線も感じない、もう一度天井の穴を見ても何もいなかった

「驚いた…何だ、あれ」

「ッ至近距離で目ぇ合ったッ!!」

心臓バクバクいってる!と顔を上げたナツは若干顔色は悪いものの怪我らしいものは無いようだ

イヴに声をかけられたヒビキも、汗を拭いながらずっと掴んでいたナツの手を放す

「ありがとな、マジで助かったぜ」

息を吐きながら礼を言うナツに、ヒビキはいつも通りの王子様スマイルで返す

スティングはすっかり腰が抜けへたりこんでいるし、突然の人間外の存在の登場にさすがのリオンも顔が強張っている

とりあえず無事だったナツにホッとしたガジルが安堵の息を吐きながら、殻になったスクイズボトル片手に天井を見ていたグレイに声をかけた

「今、何したんだ?」

「ああいうヤツには塩が効くってのが定番だからな。スポドリって結構塩分入ってるだろ?」

「そんなもんですか?」

ヒビキに合わせて膝をついていたイヴの言葉にもグレイはそんなもんだとニヤリと笑う

そんなやりとりにようやく肩から力が抜けたローグは、ふと俯いたまま何も話さないルーシィの細い背中を見て眉を寄せた

「ルーシィ」

驚かさないように、とそっと背中に触れながら声をかければ、ルーシィの肩がビクリと跳ねた

「どうした」

「ッ、え、ああ、いや、」

何でもない、とまったく何でもなくなさそうな顔で言うルーシィにローグは溜息を吐く

「そんな顔で言われても説得力ない」

「………、」

「ルーシィ」

ローグがさらに呼ぼうとする前に、俯くルーシィのすぐ前にいたナツが彼の名を呼んだ

おいしょ、とまだ心臓が忙しないだろう少しふらつきながらも立ち上がったナツは、艶のある金髪をくしゃくしゃと撫でる。

「顔上げて、よく見ろ。俺は何ともない。ルーシィが呼んでくれたおかげだろ」

大丈夫だ、と今度はぽんぽんと、頭を撫でてくれるナツに、ルーシィもきょとんとしたもののその手が優しいから自然とほうと息を吐いた

188:お香しゃちょー◆kk:2018/01/22(月) 17:54 ID:EE6

まだ少し震える指先、それを一度ぎゅっと握ってから、真っ直ぐに顔を上げる。

「…何でナツを狙った?」

同じことを考えていたのだろう、グレイがそう呟いたのにルーシィも視線を向ける。

「たまたまじゃねぇのか?」

「いや、まあそれも無いこともないが…もっとこう…」

「狙ったような、気が、しました」

ナツが首を傾げるものの、グレイとルーシィはしっくりこないらしく揃って眉を寄せた。

さっきの顔が覗いていた天井を見上げ、そして辺りを見回した瞬間に、ぞわりと寒気を感じた。

ズル、と微かに音が聞こえた瞬間、ルーシィとグレイが同時に顔を向ける。

他のメンバーはまだ気づいておらず、二人の様子に首を傾げたり顔を強張らせたりと様々だ。
さっき通って来た廊下はもう真っ暗で扉などはとうに見えない。

まだ遠い、しかし確かに何かの気配を感じてグレイが小さく舌打ちを漏らした。

「とりあえずどっかの教室入るぞ。なんか来る」

「なんかって何ッ!?」

「気配だけで分かるわけないだろ、ヒビキさっさと立て。おいスティング、腰抜かしてる場合じゃねぇぞ。」

ほらほら、とグレイに促されヒビキはすぐに立ち上がり、スティングもリオンに手を引かれてようやく立ち上がった。

そして先を歩き出したルーシィに続いて少しばかり早足で歩きながらもどこか不気味な空気にやはり背筋が寒くなる。

うう、と唸るスティングの手はリオンが引き、全員の体重のせいでギシギシと廊下が嫌に音をたてていた。

「グレイさん、」

ある教室の前で立ち止まったルーシィは、扉から中を伺いつつグレイを呼ぶ。

それにグレイも並んで中の気配を探ってから、静かに扉を開けた。

中は当然暗い、懐中電灯でざっと中を照らして何の気配も無いことを確認すると後ろで固まっていたメンバーを振り返る。

「中入れ。」

「ここ、家庭科室か?」

教室の中に並ぶのは、水道とコンロがついたいくつかの大きな作業台。

普段から見慣れた景色だが、やはり薄暗いそこはあまり好ましくはない。

ごく、とスティングが息を呑んだが、リオンが容赦なく手を引いて中に入った。

そして最後にルーシィを中に入れてからグレイが廊下の奥を見つめ、静かに扉を閉めた。

少しだけ空気が軽くような感覚に、知らず息を吐いたイヴがちらりとグレイに視線を向ける。

「どうするんですか?グレイさん」

「とりあえず窓側に寄って廊下から見えないように隠れろ。急げよ、来るぞ。」

ズル、ズル、と何かを引きずる音が確かに聞こえ、さっきの凍るような感覚を思い出してナツとヒビキは顔を見合わせて眉を寄せる。

さすがにガジルも表情を強張らせ、さっさと行けとナツの背を押した。

二手に分かれてそれぞれ作業台の影に座り込めば、廊下からの死角に入る。

ルーシィとガジルが明りを消せば、そこは本当に真っ暗な空間だ。

自然と肩を寄せ合うようになるのは仕方がないだろう、お互いの体温と息遣いに安堵しながら全員が、息を呑んだ。

189:みさ◆tw:2018/02/12(月) 00:51 ID:8Ro

いつのまにかめちゃくちゃ書かれてる!

前回は>>161です

* * * * * * * * * * * * * * *

この生物はなんだろう。

青い…猫?



「あい!おいらはハッピーです!」







私とグレイさんは電車であの話以降は会話を続けないで、私は窓の外の景色を眺め、グレイさんは肘を立てて寝ていた。

エルザさんとウェンディさんはまだ帰ってこなかった。



でも、時間が経ち気づいた時にはトンネルに入っていた。

どうやら寝ていたみたいだ。



グレイさんに視線を向けるとやはりまだ寝ていた。

まぁ、寝たふりか何かはわからないが、まだ二人は戻っていないようだ。

何も変わっていない…。



…変わって、いない?

一瞬視界の下ぐらいに青い何かが見えた。

ゆっくりと視線を向けると、グレイさんの隣に青い生物がこちらをじっと見ながら座っていた。



「…なんですか?」

「あい!おいらはハッピーです!」



ハッピー…聞いたことがある。

というより、さっき耳にした気がする…。

あ!確かナツさんのそばにいたって言ってた…。



「あなた、ナツさんの…?」

「あい!エクシードです。

おいらエルザに遣いに行かされてギルドまでルーシィのことを伝えに言ってたんだ。

だから、一度もお見舞いに行けませんでした」

「エルザさんに?優しそうなのに?」

「記憶がなくなると、そこまで忘れちゃうんだね。

エルザには誰も逆らえないんだ。だってエルザはね…」



「あ、後ろ」と教える前にハッピーも後ろの気配を察知したようだった。

恐る恐る振り返る、そこには仁王立ちしたエルザさんがたっていた。



「ハッピーこんなところにいたのか。探したぞ」

「ナツのそばにいても意味がなかったので」

「ほう、だがそれよりも気になることがあってな」



何故か、ゴゴゴゴゴという効果音が聞こえた気がした。



「だってのあとは、なんだ?」



その後のことは、はっきりいって伝えられない。

だが、エルザさんに誰も逆らえない理由だけは明確にわかった。







「こいつがハッピーだ」



さっきと同じ席に座り、エルザは自分の膝にハッピーを置いた。

ハッピーはボロボロなのは言うまでもないだろう。



「で、マスターはなんと?」

「あ、あい…。一応このあとチームでの仕事は考えるように、だって」

「そうか…。まぁそれもしょうがないだろう」



私のせいで、仕事に行けなくなったのだろうか?

そしたら、私はなんのためにいるのだろう。

多分私はどう何やっても役に立たない存在なのかもしれない。

だから、今こんな状況になったのかもしれない。



「おいルーシィ。暗い顔すんなよ」

「そうですよルーシィさん!ポジティブに行きましょう!」



私の雰囲気を察したのか、二人が声をかけてくれた。

ほら、やっぱりまた迷惑をかけた…。



「でも…」

「ルーシィ、窓を見ろ」



エルザさんに言われて窓を見る。

そういえば、何故か窓の外の景色を見てなかったことに気づく。



そこには、さっきまでの穏やかな場所とは違い、打って変わって賑やかで明るい騒がしい町中だった。



「ここが私たちの街、マグノリアだ」

190:お香しゃちょー◆kk:2018/02/12(月) 18:55 ID:.hM

ああ、みさだ…みんな!!みさが来たぞ!!!
この乾いた板に、みさがうるおいを与えてくださった!!!!

191:お香しゃちょー◆kk:2018/02/12(月) 19:04 ID:.hM

ズル、ズル。

何かを引きずるような音と、ひたひたと響く、静かな足音。

廊下を進むそれが確実に近づいてくるのが分かる。

息が詰まるような緊張感に汗が浮かぶ。しかし、ただ一人、ルーシィだけがまた冷えていく体温を感じていた

(また...)

ゾクリ、と震える身体。下がっていく体温。ズキズキと痛む頭に浮かぶのは、真白な景色。

(くそ、)

息を吐いて頭を抑えるが、その痛みは消えない。それどころか足音が近づいてくるたびにズキンッ、と響く痛みが増してぎゅっと拳を握りしめた

浮かぶ、景色。暗い暗い部屋、曇った小さな窓。そこから見える雪が積もる真白な景色。どんどんと冷えていく空間に指先が凍るようで、見れば真っ赤になっていた。

どうして、どうして、と懇々と紡がれるのは憎しみと困惑が混じったような声。

(ああ、誰、あんた、)

ズル、ズル、という音が、止まった。

ひ、と小さく悲鳴を上げたスティングの口をリオンとイヴが咄嗟に抑え、グレイがこの教室の前で止まった気配に小さく舌打ちを漏らす

動く気配が、ない。しかし入って来る様子も無く、この無音のプレッシャーから逃れる術がなく全員が固まるしかない。

ほう、と微かに漏れる息遣い、カタリと微かに鳴る音だけで、心臓の音が外に漏れそうなほどにうるさく鼓動を刻んていた。

しん、と静まり返る、空気。

どこまでこの緊張が続くのかと誰かが息を吐いた瞬間、

バンッ!!と勢いよく扉が開いた。

「「「………ッ!!」」」

ひゅッ、と全員が息を呑み、バクバクと鳴る心臓だけがうるさい。

姿を確認するだけの余裕はグレイにもスティングにも無かった、ただ見つからないことを祈るしか出来ない。

スティングなどもう涙目だし、ナツとガジルも小さく息を呑んで額から落ちた汗を拭った。

グレイだけがその気配に神経を尖らせる。

そしてどれほどの時間そうしていたのか分からない、おそらく数十秒だっただろう、ズルリ、と気配が動いた。

廊下へと向かっていく気配、ヒタヒタと重い足音がゆっくりと遠ざかっていく。

徐々に緊張感が消えていくが、グレイがまだ警戒しているために誰も気が抜けなかった。

そして完全に気配が消えたところで、グレイがそっと顔を出して盛大に息を吐いたところで、いつの間にか止めていた息を全員が吐き出した

「ななな、なんですかあれぇ!!」

「あーーーー……ビビった!!!」

「スティング、声を抑えろ」

「ヒビキさん、静かに」

またもやすっかりへたりこんだスティングが真っ先に声を上げ、さすがの緊張感に堪えたのかナツもズルリと力を抜いた。

リオンとイヴも口ではそう言いながらも安堵に息を吐いている。

「クソナツ、生きてるか。」

「……生きてる生きてる、いや吐きそうになった、吐いたら悪ィガジル」

「ふざけんな。」

並んで座り込んでいたガジルとナツも顔を青くしながらもとりあえず乗り切った危機に、揃って肩から力を抜く。

はあ、と汗を拭って立ち上がったグレイに、これもまた何とも言えない安堵を覚えたローグも立ち上がろうとしたとき、視界にぐらりと傾く金髪が見えた。

「ッ、ルーシィ!!」

隣にいたルーシィがグラリと倒れる姿に、咄嗟に彼女の身体を受け止める。

そして触れた体温に、ローグは目を見開いた。

「なんだこれは…!ルーシィ!おい!!」

カタカタと震える肩と背中はジャージ越しでも分かるほどに冷え切っている。

しっかりと身体を支えたローグは、座り込んだままにルーシィの顔を覗くがその色は真っ青だった。

192:お香しゃちょー◆kk:2018/02/12(月) 20:02 ID:.hM

「ルーシィッ!?」

一番に飛んできたスティングはさっきまで浮かんでいた涙を消して、必死に彼女の名を呼ぶ。その尋常でない一年たちの様子にグレイが真っ先に駆け寄った。

「ルーシィッ」

「身体が冷たいです、冷え切ってるッ」

「ルーシィッ!」

「バニー!」

ナツとガジルもすぐにそばに寄り、グレイはそっとルーシィの髪をかき上げる。意識はあるが焦点が合わない視線に小さく舌打ちを漏らした

「イヴ、スクイズ中身入ってるか?」

「はい、少しですけど」

「ローグ、ルーシィ起こせるか?」

「はい」

グレイはイヴからスポーツドリンクの入ったスクイズボトルを受け取り、ローグが自分に寄り掛かるようにして起こしたルーシィの頬にそっと触れた

「ルーシィ、分かるか?」

不思議と耳にすんなり入って来るグレイの声に、ルーシィは揺れる視界の中で微かに頷く。

それに少し安堵したグレイはスクイズボトルを口元に持っていき、飲むように促した。

こくんこくん、とゆっくりだが喉を通って行く感覚にルーシィはだんだんと視界がクリアになっていくのが分かった。

しかしまだ身体が冷たい、思考がまだ、持っていかれる。

ピク、と震えた細い指先、それに気づいたスティングが、ぎゅっと、手を繋いだ。

「ルーシィ、いるぞ。」

温かい手、伝わる温度、力強い声に、ビリと頭の奥が震える。

「ここにいる。」

耳元にそっと落とされた声は、普段は静かで冷静な彼らしくない重さを感じて

ゆっくりと瞬きをした先に、力強く見つめて来るスティングと、心配そうに目を細めたローグの顔が見えて、ルーシィはほうと、震える息を吐く

「うん、」

ふっと、思わず漏れた笑み、はっきりとした視線に、黙って様子を伺っていたグレイやナツたちもホッと表情を緩めた。

まだ震える手をスティングは安心した笑みを浮かべながらも繋いだままにして、ローグも冷えた身体をジャージの上から撫でてやる。

「も、平気…ごめん、」

はあ、と一度息を吐いて何とかローグから身体を離したルーシィに、グレイは持っていたスクイズボトルを差し出した。

「あと少しだから全部飲んどけ。」

「え、でも、イヴさん、」

「いいから飲みなよ」

変なところで遠慮するルーシィにふっと笑いながらイヴが答えれば、彼女は小さく礼を言ってこくんこくんと飲み干した

片手はまだスティングがしっかりと握っており、ローグも支えるように肩に手を置く。それに安堵したように、ルーシィはまた一度深く息を吐いた

「何か見たか?」

心配そうな目はそのままで、グレイが静かに問いかける

「いえ、見たのはほとんど体育館で見たのと一緒です。あ、ただ、
窓から外を見たら、雪が降ってました。あと、ものすごく寒かった」

ぶる、とそれを思い出したせいか微かに震える身体に冷たい唇。それを噛みしめて、ルーシィは無意識にスティングの手を握った

「ルーシィがあの倉庫に閉じ込められたのは、夏だったぜ」

「ってことは、その女子生徒が亡くなったってのが真冬なのか?」

「そうだろうな」

意図的ではないだろう、けれどこうしてルーシィがその生徒の記憶を見ている。ナツとガジルは、雪と真冬、という言葉に揃って眉を寄せた

「真冬に、あんな壁がうっすいボロボロな倉庫に閉じ込める神経が全然分かんねぇ」

「雪が降るくらいの日に、しかもたぶん制服とかだろ?もしそんな状態であんなところに一晩いたら…」

「凍死、の可能性もなくは、ないな…ギヒッ」

二人の言葉に、スティングとローグも不快そうに表情を歪めながらもそうだろうと頷く。

どれほどの造りなのかは実際見ていないが、ナツとガジルがここまで言うなら相当古かったのだろう

当時だって、おそらくゴミ溜めのためだけに作られたのだとしたら、当然室温のことなど気にしていないはずだ

「神奈川ってそんな寒いの?」

「まあ、東京よりは。でも普通に生活してたら凍死なんかしませんよ。」

凍死、という言葉、しかしローグのあっさりとした返しにヒビキは少し安堵の顔を見せる。

そして何やら考えていたグレイが、よし、と立ち上がったために全員が視線を向けた。

「とりあえず、」

ざっと室内を見回してから、視線を向けて来るメンバーに笑みを向けて。

「塩水作るか。」

「「「は?」」」

193:リリィ:2018/04/17(火) 19:24 ID:bDA

おひさです…
毎日来るとか言っといて来れなくてごめんよぉ。゚(゚´Д`゚)゚。
ていうかまだ続いてる、のかな…

194:お香しゃちょー◆kk:2018/04/26(木) 00:46 ID:b.c

リリィ!!
続いてるよ!私今年は受験生だから来る回数減るけど…絶対このスレは潰させない!!いえあ!

195:リリィ:2018/04/26(木) 19:21 ID:bDA

そうだったね!
受験頑張れ(●'д')bファイト

196:お香しゃちょー◆kk:2018/05/23(水) 09:39 ID:yOI

思い付きです。こんなナツルーがあってもいいと思う。


「オレはお前が邪魔で邪魔で仕方ないんだ!いつもオレの足手まといになりやがって!!ルーシィ!!」

「ッ!」

「ルーシィ!耳を傾けるな!今のナツは正常ではないぞ!」

今回の仕事先で、事件に巻き込まれたあたし達。敵は人の心を堕とす魔法を使う相手で、ナツがそれにかかってしまった。

「お前なんか嫌いだ!見たくもねェ!!なんでお前はオレの前に姿を現わすんだ!」

「……うん」

「返事をするなルーシィ!!」

魔法だって分かってるけど、やっぱりちょっと辛いなあ

「声も!魔法も!その長い金髪も!!全部全部嫌いだ!!!!」

「じゃあ、ナツ」

あたしはそっとナツに歩み寄り、抱きしめる。

「あたしを殺して。
ナツに嫌われながら生きるなんて、あたしは世界が滅亡するよりイヤだから。」

あなたに嫌われるぐらいなら、声も、魔法も、この金髪も、全部捨てる。

197:リリィ:2018/05/29(火) 21:53 ID:.mk

良いと思う!
バッドエンドになるのかな?
シリアス系は案外好きだよ(๑•ω•๑)♡

198:リリィ:2018/06/02(土) 20:18 ID:PH.

ちょっとだけ投稿しようかなー



ナツルー

澄み渡った青空の下1人の人間がフード付きマントを被ったまま外を出歩いていた
外は危険とされていて、1人で居ればわるーい海賊達に囚われるという不気味な噂が最近たっていた
しかし、まだ陽も照っていて人通りは良い
マントから覗く口元は嫌そうに歪んでいて、その人間は誰も居そうにない路地裏にへと足を向けた

199:お香しゃちょー◆kk:2018/09/04(火) 15:58 ID:z5k

リリィ!久しぶりだあ!!

200:リリィ:2018/09/18(火) 15:32 ID:CrI

おお!お久だねヽ(*´∀`)ノ

201:お香しゃちょー◆kk:2018/10/08(月) 19:59 ID:Umw

お久しぶりです、お香です。新しく小説を描こうと思います。ちょこちょこですが、また来ます。

設定

ナツ・ドラグニル
西軍のリーダー。特攻組でもある。とある目的をグレイ、ルーシィと共有している。

グレイ・フルバスター
東軍のリーダー。特攻組でもある。とある目的をナツ、ルーシィと共有している。

ルーシィ・ハートフィリア
東軍の参謀。喧嘩はあまり得意ではない。とある目的をナツ、グレイと共有している。



東軍
グレイ(リーダー)、ルーシィ(参謀)、ミラ、スティング、ローグ、シェリア、ルーシィの星霊達

西軍
ナツ(リーダー)、エルザ(参謀)、ジュビア、ガジル、ウェンディ、レビィ、ユキノ、ユキノの星霊達

202:お香しゃちょー◆kk:2018/10/08(月) 21:01 ID:Umw

あたし達の学校は変わっている。中学を卒業し、高校のクラス発表の日。ナツとあたしとグレイの幼馴染3人で見に行った。

「あ!あたしグレイと同じクラス!」

「俺だけ違ェのかよー」

あたしとグレイは1組、ナツは2組だった。



「よく来たな、新入生の諸君」

グレイと教室に行くと、3年生だと思われる教卓に座る先輩とその隣に先輩が2人立っていた。とりあえず席が指定されてないので、あたしとグレイは隣に座る。

「俺は東軍の頭領…まあリーダーだ。よろしくな」

「東軍…?」

聞き覚えのない単語に首をかしげる。

「お前達はこれから東軍として、西軍と喧嘩してもらう。東軍は1組、西軍は2組だ。」

「喧嘩…!?」

「どうやら、俺たちの高校は2つのチームに分かれる族の高校だったって訳か…」

そういえば、先輩達の背後には大きく白で東と書かれた青い旗が凛々しく立っている。

「これは伝統だ。俺たちが卒業する前に、2年の中からリーダーを選び出し、そしてその2年が卒業する前にお前達の中から新たなリーダーが選ばれる。」

先輩が言うには、
・西軍と校内で会えば即喧嘩開始
・西軍と校内、校外で話してはいけない
・リーダーに選ばれれば拒否をしてはいけない
・リーダーは自分の学年から参謀を1人選ぶことができる
などという様々な掟があるらしい。

「説明はこれぐらいかな…んじゃあ、最後に…」

さっきまで笑顔だったリーダーの顔が真剣な表情に変わり、ピリッとした空気になった。

「東軍に命をかけろ!!弱いヤツは置いて行け!!俺達は闘う!!
歴代の頭領の名にかけて!東軍の名にかけて!闘志を燃やせェ!!!」

『おおおおお!!!』

どうやら、大変なことになったみたい…

ーーーー

「え、ナツのクラスもリーダー来たの!?」

「ルーシィとグレイは敵になっちまったな…」

「ナツ泣くなよ」

「泣いてねェよ!」

帰り道、こっそりナツと合流して小学校の頃からお世話になっているカフェに寄った。

「あら?あなた達、1組よね?」

3人でお茶やケーキを食べていると、同い年ぐらいの銀髪の女の子に声をかけられた。あたしとグレイはこの子に見覚えがあった。

「あなた、たしか1組の…」

「ミラジェーン・ストラウスよ。」

「よろしく、ミラさん!あたしはルーシィ!」

「よろしくな、ミラちゃん。俺はグレイだ」

「……」

「ナツ?」

「あなた、西軍よね?」

そうだった、と思い出す。“西軍と校内、校外で話してはいけない”という掟があるんだった。ナツはどうればいいのか分からず、戸惑っている。

「私は東軍だけど、まだあの学校に慣れてないし…あなたが西軍って今聞いたわけじゃない。だから、あなたもよろしくね。…ナツだっけ?」

「!! おう!よろしくな、ミラ!」

よかった、いい人だわ…。

203:お香しゃちょー◆kk:2018/10/09(火) 18:53 ID:/Dc

そして月日が経ち、あたし達は2年になった。今日はあたし達の代の頭領が決まる日。

「お、みんな集まってんな」

第1体育館で東軍全員が集まっていた。その中に3年生の先輩達、そして幹部、最後に頭領が入ってくる。

「これで全員か?」

「たぶんね」

「んじゃ、西軍が来るまでにとっとと終わらせちまうか」

「今日は西軍と会っても喧嘩しちゃいけねェ日だからな…」

頭領と参謀が話しながらステージへ上がる。するとステージ上の壁に校旗と東軍旗が掲げられた。

「今日は集まってくれてありがとな、お前ら。全員分かってるとは思うが、今日は新しい代の頭領を決まる日だ」

頭領がスタンドマイクに向かって話す。するとザワザワしていた空間が、一瞬で静かになった。これが東軍29代目頭領の威厳というものだ。

「俺ら3年で投票を行い、何度も幹部達と俺で話し合った。そして決まったよ」

ニタリ、と頭領が意地悪な笑みを浮かべる。ワクワクしてる時の顔だ。

「東軍30代目頭領は
グレイ・フルバスターだァ!!!!」

わあっと歓声が上がる。グレイは幹部達に背中を押されながら、ステージへと登っていった。

「さすがね、グレイ」

「誰も異論はねェな」

「ああ、俺もだ」

「私も!」

「うん…!そうだよね!」

同い年のミラさんと1年のスティング、ローグ、シェリアと頷く。あたし達は学年を超えた絆がある。

グレイが東軍旗を受け取ると、バッと広げて背中に背負った。

「お前ら全員、俺に付いて来い!!付いて来れねェヤツは容赦なく置いて行く!!」

『おおおおお!!!!』

「そんで、俺の代は革命を起こす」

グレイの言葉に頭領達3年生を含めた東軍のみんなが首を傾げた。あたし達はニヤリと笑みをこぼしてしまう。

「グレイ、参謀を決めろ」

「もう決まってるっスよ」

頭領に言われ、グレイはあたしの前に来た。

「ルーシィ、これからよろしくな!」

「当たり前でしょ!」

拳をコツン、と合わせる。

「参謀はルーシィだな。ルーシィは今後、やる事いっぱいあるぞ」

「はい!あたし、頑張ります!!」

参謀になったあたしはこの後、東軍の幹部を頭領になったグレイと決めなければならない。

「じゃあ時間押してるし、解散!!グレイとルーシィは後で俺の教室に来い」

「ウス」

「はい!」

204:お香しゃちょー◆kk:2018/10/09(火) 23:29 ID:/Dc

「おらよ、ルーシィ」

元参謀にたくさんの資料を渡される。それは西軍の情報だったり、東軍の情報だったり。参謀はその情報を元に幹部達と作戦を立てたり、指揮を取ったりしなければならないのだ。

「いろいろ大変だとは思うが…お前とグレイならできると思ってる。がんばれよ」

「はい!」

資料を抱いて、グレイと頭領のいる3年生の教室へ向かう。

バンッ

「ごめんなさい…!」

「こちらこそすまない…」

誰かとぶつかってしまった。自然と差し伸ばされた手を受け取る。よく見るとぶつかった相手は紅い髪をした女の子だった。手にはあたしと同じぐらいの量の資料らしきを物を抱いている。

「すまなかったな、立てるか?」

「は、はい!あたしの方こそすみません!」

手を借りて立ち上がる。きっと彼女は西軍だろう。東軍では見ない顔だ。

そして、あたしと同じ参謀

「私の名はエルザ。エルザ・スカーレットだ。」

「…あたしはルーシィ・ハートフィリアです。」

「敬語は良さないか。同い年だろう、ルーシィ」

「…ええ。そうね、エルザ」

きっとエルザもあたしが東軍の参謀であることに気付いている。

「また会えたらいいな」

「きっと会えるわ」

お互いすれ違いながら、歩み出す。けれど、ピタリと足を止めた。

「私達の頭領には気を付けろ。」
「あたし達の頭領には気を付けて。」

振り返って、笑顔で伝える。

西軍の頭領はナツだ。

あたしとエルザ、きっと軍が同じだったらいい仲間だったでしょうね。

でも今は、敵であり、新たな友達だ。

205:お香しゃちょー◆kk:2018/10/13(土) 19:15 ID:2Nk

「あ、ナツ!」

「先に来てたのね」

グレイとミラさんと一緒に、ミラさんの家でもあるカフェに来ると、既にナツがケーキを食べていた。

「じゃあ私はお母さんの手伝いがあるから。ゆっくりして行って」

ナツのいるテーブルにあたしとグレイが腰掛ける。ナツとミラさんは西軍 東軍同士だけど普通に仲がいい。だから私達はここで集まるのだ。

「東軍の頭領は俺で、参謀はルーシィだ」

「西軍の頭領は俺で、参謀はエルザっつー女だ」

「あたしエルザ知ってるわよ」

「ほんとかよルーシィ!」

オレンジジュースを飲みながら、情報交換をする。ミラさんはあたし達3人が仲がいいだけだと思っているが、実はお互いの軍の情報交換もしている。

「うん。やっぱりエルザが西軍の参謀なのね…ナツ、今度連れて来なさいよ」

「そいつも俺らの目的には必要だろ」

「それがよぉ、エルザは西軍を誇りに思ってるから東軍のことはかなり嫌ってんだ」

まあ、普通はそうよね…たぶんあたしとグレイもナツが西軍じゃなくて東軍だったら、あんな目的は持たない。

「ちょっと難しいかもしれないわね…」

「そうかァ?ちゃんと自己紹介したら話は通じそうだけどな」

「うちの東軍にだっていっぱいいるじゃない、東軍を嫌ってる人。あんたもたまに聞くでしょ、西軍の愚痴」

「お、おう」

「エルザはそういうタイプの人なのよ。…でも、まあ、これはあたしの勝手な想像なんだけど、無闇に東軍の愚痴を言う人じゃないと思うわ。エルザは」

そう言ってナツを見ると、嬉しそうに頷いていた。

「そうなんだよ!ちょっと怖ェけど、いいヤツなんだエルザは!」

((ナツが怖いって言った…気を付けよ))

あたしとグレイの心が一致した時だった。



「ミラさん、ごちそうさまでしたー!」

「じゃあなー、ミラー」

「また明日な、ミラちゃん」

「ルーシィ、ナツ、グレイ、またね」

カフェを出て、3人でグレイの家に向かう。家が近いので、昔からよく泊まりに行くのだ。親も特に何も言わない。

「おいお前ら、魔導士学園のヤツだな?」

すると、突然大きな男達に囲まれた。隣街の有名な不良校の制服を着てる。

「だったらなんだよ」

「俺らの仲間が魔学のヤツにやられたんだよ!借りはきっちり返させてもらうぜ!!」

うおおおお!!と襲い掛かってくる男達。

「ルーシィ気を付けろよ!」

「ケガすんなよルーシィ!」

「うん!」

3人で立ち向かう。あたしは喧嘩が苦手だけど、決して弱いわけじゃない。

「火竜の咆哮!!」

「アイスメイク・突撃槍(ランス)!!」

「開け!獅子宮の扉!ロキ!!」

「ルーシィの王子様参上!」

魔法で相手を倒して行く。まあ、あたしが直接戦ってるわけじゃないんだけど…

「ふーっ…終わったな」

「おー、ロキ!久しぶりだなぁ」

「ナツもグレイも久しぶり」

ナツとグレイは幼馴染なので、一応東軍であるロキのことは知ってるし、仲もいい。

「そういえば、西軍にルーシィと同じ星霊魔導士がいたよね」

「おー。よく知ってんな」

「星霊界でも情報のやり取りはされるからね。まあ僕達は3人の目的を応援してるから」

そう言うとロキは星霊界へ帰って行った。

あたしと同じ星霊魔導士、か…

206:お香◆kk:2018/11/23(金) 03:24 ID:eqQ

なんか他のスレで見つけた、私の小説…記憶にない笑笑
描こうと思います!

ルーシィ
フェアリー学園の教師兼理事長。理事長であることは数人しか知らない。
明るく、気さくな性格。ナツ、グレイと自分の家で同棲することになる。生徒からも教師からも人気のある先生。

ナツ
通称:火竜(サラマンダー)
不良生徒だが、ルーシィには頭が上がらない。
グレイと共にルーシィの家で同棲することになる。

グレイ
通称:氷魔(ヒョウマ)
不良生徒だが、ルーシィには頭が上がらない。 ナツと共にルーシィの家で同棲することになる。

レビィ、ガジル、エルザ
ルーシィの同僚で、友達。ルーシィが理事長であることを知っている。

ミラ
フェアリー学園の理事長秘書。ルーシィの良き理解者

207:お香しゃちょー◆kk:2019/05/02(木) 21:30 ID:Hp.

あの、実は第一志望の高校に受かりました。
てなわけで、お香お得意のリメイク小説を心機一転描こうと思います。


ルーシィ・ハートフィリア
ナツに出会って妖精の尻尾に入った。星霊と四神と契約している。

スティング、ローグ
ルーシィを実の姉の様に慕っている。ルーシィが大好き。

清龍・白虎・朱雀・玄武(セイリュウ、ビャッコ、スザク、ゲンブ)
ルーシィが契約する四神。清龍はルーシィのお兄ちゃんみたいな存在。白虎と朱雀はルーシィが大好き。玄武はルーシィのお父さんみたいな存在。

208:匿名さん:2019/05/04(土) 19:37 ID:JSQ

私はルーシィ。訳あって旅をしている星霊魔導士よ!

今日は港町 ハルジオンにやって来た。サラマンダーっていう有名な魔導士が来てるって情報を掴んだから。
ニコラの鍵も買えてご機嫌で歩いていると、キャー!!というものすごい歓声が聞こえてきた。

「なんの騒ぎよ?」

人混みをかき分けて騒ぎの中心まで行くと、そこにいたのはカッコいいとはお世辞にも言えない人だった。

「……さら、まんだー…?」

予想してた人と全然違うことに落胆していると、ゴミに埋もれた少年と青いネコを見つけた。

「ちょっとあんた、大丈夫?」

「ん?ああ、ちょっと腹減ってただけだ」

「…お腹減ってるの?」

「あい…」



「メシ奢ってくれてありがとうな!!」

「ありがとうございますなのです!」

「いいのよ。私、ルーシィ。あんたたちは?」

「俺はナツ!こっちは相棒のハッピーだ!」

「あい!ルーシィも魔導士なの?」

近くにある安くて有名なレストランでナツとハッピーに奢ってあげた。

「うん。っていっても、ギルドには入ってないんだけどね…」

「じゃあ来るか?」

「へ?」

「俺たちのギルドにだよ!!」

「はいィ!?」

209:桜◆kk:2019/07/22(月) 04:41 ID:ZVQ

「これが妖精の尻尾…初めて見た…!」

ナツとハッピーに手を引かれてやって来たギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)。ずっと憧れていたギルドを目の前に、あたしは感動しながら足を一歩一歩、大きな扉へと運んだ。
この扉を開けると、あたしの冒険が始まるんだ…!

「ただいまー!」

「ただー!」

ドガァン

「ちょっと!!扉壊れてますけど!?」

あたしの思いも虚しく、あたしの冒険の始まりを表す扉はいとも簡単にナツによって破壊されてしまった。いやもう虚しい通り越して恥ずかしいわ。何を扉1つで冒険の始まり、なんてはしゃいでたんだろあたし…

「ちょっとナツ、扉壊して大丈夫なの?」

「ん?おお、大丈夫大丈夫。いつものことだから」

「いつものことなの!?」

「あい!日常だよね」

「扉が壊れる日常なんて嫌よ!!」

ナツとハッピーにツッコミを入れて汗をぬぐってから、改めてギルドの中を見渡す。
ギルドの中は見渡す限り、喧嘩、喧嘩、喧嘩…って喧嘩ばっかりかい!!いつのまにか隣にいたはずのナツも喧嘩に参加している。

「おらぁ!!」

「うぉっ!!」

何してんのよあいつは…と呆れながら傍観者になっていると、全裸の変態があたしに飛んできた。そのままあたしは後ろに倒れる。

「うぎゃぁ!!」

「いってーな!!ってうぉ!!悪い!」

変態は謝っているが、そんなことあたしの耳には入ってこない。変態に押し倒されるような体勢になり、変態の左手であたしの胸は鷲掴みにされていた。

「なっ…!何すんのよーーーーっ!!」

あたしは羞恥と焦りで、自分の上に覆い被さる変態の腹を蹴り上げた。

「いでぇっ!!」

「お、なんだァ?ルーシィも喧嘩に参加かァ?」

「違うわ!!はっ倒すわよアンタ!」

変態がやっとあたしの上からどいたので、あたしも立ち上がり、おそらく変態のものであろう黒いパンツを指でくるくると振り回すナツを睨みつける。

「ってかパンツ返せ!!」

「ヤダね」

「チッ。…お嬢さん、良かったらパンツを貸してくれ」

「貸すかァッ!!」

キラキライケメンフェイスで私にパンツを借りようとする変態を、その辺に落ちていたハリセンで弾き飛ばす。

「あら、新人さんかしら?」

「はい、ってミラジェーン!?すごい、本物だー!」

ニコニコとあたしに話しかけてくれたのは、週間ソーサラーでグラビアを飾るミラジェーン。あたしはいつも雑誌で見る人がいることに、少し興奮した

「ってか、あの喧嘩止めなくていいんですか?」

「いつものことだから、放っておけばいいのよ」

「いつものことなの!?」

「それに…ヴッ」

あたしとミラジェーンさんが話していると、巨漢が彼女に激突した。巨漢とテーブルに挟まれるような形になっても、彼女は笑顔で続ける。

「楽しいでしょう?」

「ああー!ミラジェーンさん!!」

しかしその直後、彼女の口から魂が出てきた。

「あたし…このギルドで本当にやっていけるのかしら…」

あたしはそっと汗をぬぐった。

210:桜◆kk:2019/07/22(月) 04:59 ID:ZVQ

喧嘩はどんどんヒートアップして、ついに魔法まで出てきてしまった。あたしは泣きそうになりながら、ハッピーを盾にする。

「やだもう…誰か止めて…」

泣きそう、というかシクシク泣いているととてつもなく大きい人が喧嘩を止めにきた。
この人は怖い人なのか、うるさかったギルドが一瞬にして静かになった。あの騒がしい怖いモノなしみたいなナツもだ。

「あら、いらしたんですか。マスター。」

「うん!」

「マスター!?」

「うん?新入りかね?」

「は、ハイ!」

マスターは雄たけびをあげながら体が縮んで…


体が縮んでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?




「よろしくね!」

と言った。っつーか、

「マスターちっさ!!って、この人がマスターって…」

「ええ。この人がフェアリーテイルのマスター、マカロフさんよ。」



そのあと、妖精の尻尾がやってきた破壊行為はほとんど、ナツがやってる事を知った。マスターは評議院でよく怒られるらしく、シクシクと泣いていた。でもマスターは、

「評議院なんてクソくらえじゃぁ!!」

と言った。あたしは訳も分からず、ただ呆然とマスターの話を聞く。

「いいか、理(ことわり)を越える力は理の中より生まれる。魔法は奇跡の力でなんかではない。我々の内にある気の流れと自然界にある波長が合わさり、初めて具現化されるのじゃ。
それは精神力と集中力を使う…いや、魂を注ぎ込む事が魔法じゃ。上から覗いてる目ン玉気にしてちゃ魔導は進めん。
評議院のバカ共を恐れるな。自分の信じた道を進めぇい!!
それが妖精の尻尾の魔導士じゃぁぁぁ!!!」

指を天に向けて刺すマスター。そしてそのあとに続く雄たけび。

みんなはまたうるさくなったけど、あたしなは動けなかった。

マスターの言葉が胸に響いたから。

なんてギルド(家族)を思っている人だろう。ううん、マスターだけじゃない。
血は繋がってなくても、産まれた場所が違っても、ここにいる皆は家族なんだ、そう思った。

そしてこれからは、あたしのその家族の一員になれるのだと考えると、胸が熱くなった。

「…ナツ」

「お?」

「あたしを…妖精の尻尾(ココ)に連れて来てくれてありがとう!!!」

「おう!!」

ナツ、本当にありがとう。

あたし、フェアリーテイル来れて良かったと思う。

それは、ナツに出会ったからで、ナツに惹かれたから。

最初は火竜(サラマンダー)を探してただけなのにね。

ああ、本当…

人生っておもしろい。

211:桜◆kk:2019/07/22(月) 11:32 ID:ZVQ

ポン、とミラさんに手の甲にフェアリーテイルのギルドマークを入れてもらう。

「これでもう、あなたもフェアリーテイルの一員よ。」
「わぁ〜…」

じ、とギルドマークを見つめる。ずっと憧れていたこの紋章が、今自分にも入っている。その事実が、あたしを浮かれさせた。

「ナツー、見て見て!フェアリーテイルのマーク入れてもらっちゃった!」
「あっ、そう。良かったなぁ、ルイージ」
「ルーシィよ!!」

興味なさげに適当に相槌を打つナツ。
何よ、あんたがあたしをここに連れて来たのに。ちょっとはあたしと一緒に喜ぶとかなんとかしなさいよね。

「お嬢さん」
「…さっきの変態」
「変態やめろ!」

なんて思ってると、さっきの変態に声をかけられた。あたしは言われるがままに、変態とカウンター席に座る。良かった、今度はちゃんと服着てるみたい。

「さっきはぶつかって悪かったな」
「いやそれ以上に全裸だったことに謝って?」
「お詫びとしてはなんだが、なんか奢ってやるよ。好きなもん頼め」
「あ、無視なのね…って本当?」
「おう。お詫びだって言ってんだろ」

あたしはさっそくミラさんに、オレンジジュースを頼む。なんだ、こいつもいい奴なのね。

「あ。あたしはルーシィ」
「俺はグレイだ」
「グレイね。それと…」

チラ、とだけあたしの隣に座るサングラス野郎を見る。顔は整っているが、ずっと鏡を見ていて、所詮ナルシストというものだろう。

「あんたは?」
「僕はロキ。君の王子様で、フェアリーテイル1のイケメンさ」
「自分で言う?それ…」
「ロキはそういう奴だ」

あくまで王子様キャラを突き通すロキに呆れながらツッコむと、グレイが隣でうんうんと頷く。

「ルーシィ、僕がフェアリーテイルのこといろいろ教えてあげるよ。もちろん、夜に僕の家でね」
「いやいいからそういうの!」

さっき頼んだオレンジジュースが来たので、頬を膨らませながらストローからチビチビ飲む。ロキはその間もあたしをニコニコしながら見ていた。

「そういえばルーシィ。お前、なんの魔法を使うんだ?」
「あ、そういえば言ってなかったっけ」

グレイが魔法の話を振ってきた。あたしは、ケースから銀色の鍵を出す。

「開け、子犬座の扉!ニコラ!!」

チャイムの音と一緒に出てきたのは、ナツと出会った街で手に入れたニコラ、もといプルー。あたしはギュッとプルーを抱き締めて、ニッと笑いながらグレイの方を見る。

「あたしは星霊と契約を交わして一緒に戦う、星霊魔導士よ!」
「へー。なるほどな」

グレイがプルーの頭を撫でると、横からパリンッという音がした。2人でそっちを見てみると、ロキがいつの間にか頼んでいたサイダーが入っていたコップを落としていた。

「る、ルーシィは星霊魔導士なのかい?」
「え?う、うん」
「ッ!」

ロキはバッと立ち上がり、

「アアッ!!なんたる運命の悪戯!
ごめん!僕たちはここまでにしよう!」

涙を流して去って行ってしまった。

「何か始まってたのかしら…」
「ロキは星霊魔導士が苦手なの。昔、女の子絡みでトラブったって噂なのよ」
「そうだったんだ…」

お皿を拭きながらミラさんが教えてくれた。あたしはたしかに星霊魔導士だけど…せっかく仲間になれたんだから、もっとこう…––––

「…そういえば、グレイはなんの魔法を使うの?」

そのうちきっとロキとも仲良く話せるようになるわ、とあたしはグレイに体を向ける。

「俺は氷の造形魔道士だ」
「グレイの魔法はとっても綺麗なのよ」
「そうか?」

グレイは手のひらにギルドマークを氷で作った。キラキラと儚く光るそれは、たしかにとても綺麗だった。

「綺麗…素敵…!」

人に自分の魔法を褒められて悪い気はしないのか、どこか照れた様子のグレイ。なんだこいつ、可愛いとこあるじゃない。

「ルーシィ、何変態と話してんだ?」
「ナツ見て!グレイが魔法でギルドマーク作ってくれたの!綺麗でしょ?」
「あー、本当だなぁ、ウーピィ」
「ルーシィだっつの!!」

ナツがさっきまでロキが座っていた席に座る。

「大変だ!!」

すると、大きな音を立てて扉が開いた。そこには深刻な表情をしたロキがいる。

「エルザが、帰ってきた」

212:桜◆kk:2019/07/23(火) 16:59 ID:ZVQ

【思い付きです。目標はナツルー←リサーナ】

みんなのナツルーの小説を読んでいると、よく見るのはリサーナの存在。あたしの世界にはリサーナはまだ帰ってきていなかった。

だけど、リサーナは帰ってきた。

「リサーナ!!!」
「リサーナぁ!」
『リサーナ!』

みんな嬉しそうにリサーナの元へ駆け寄る。あたしの恋人であるナツも、そのナツの相棒であるハッピーも、他のみんなも。
リサーナのことをあまり知らないあたし、ウェンディ、シャルル、ガジル、ジュビアはみんなから少し離れたところでそれを見ていた。

「リサーナさん…ルーシィは知ってました?」
「前にミラさんやナツには聞いたことあったけど…会うのは初めてかな」
「サラマンダーのやつ、嬉しそうだな」

ガジルの言葉にヴッとダメージを受ける。それに気が付いたジュビアたちが慌ててフォローしてくれる。

「ちょっとガジルくん!考えて発言してください!ルーシィ泣きそうですよ!!」
「わ、悪ィ…」
「る、ルーシィさん元気出して!」
「元気のないあんたなんて、あんたらしくないわよ」

みんなの言葉はあたしの右耳から左耳へと流れる。うぅ…とうなだれていると、不意にリサーナと目が合った。リサーナは嬉しそうに私の元へ駆け寄る。

(何言われるのかな…他所様のリサーナはナツにはあたしがいるからもう大丈夫とか言ってたな…あたしのこと殺そうとしたリサーナもいたわね…)

なんて、リサーナを見ながらボーッと考える。せめてこの場で涙が出ないことを言われませんようにと願いながら、あたしは笑みを浮かべる。

「えっと…おかえり、リサーナ!あたし––」
「やっぱりこの世界でも私のルーシィは可愛いのね!」
「……ハイ!?」
『?』

リサーナはギュッとあたしの手を握って、向日葵のような笑顔を浮かべる。そしてリサーナの発言に、みんなが首をかしげる。

「あ、急に驚かせちゃってごめんね!私、エドラスのルーシィと恋人だったから…」

少し寂しそうな顔をするリサーナに、胸が痛んだ。自然とリサーナの手を握る手に力が入る。

「そ、そうだったんだ…」
「うん…大好きだったの…
だから、この世界の私のルーシィも大好きよ!ルーシィはどこにいてもルーシィでしょ?」
「うん!あたしはどこにいても、どの世界でも変わらないわ」
「じゃあキスしていい?」
「……ふぇ?」

顔を遠ざけようとしても、すでにリサーナに後頭部に手を回されてできない。
やだ、このままじゃあたし、リサーナとキスしちゃう!…っていうか、あたしとリサーナでナツを取り合うんじゃないの!?

そんなことを考えているうちに、どんどんリサーナの顔が近付いてくる。女の子同士、1回ぐらい大丈夫!と自分に言い聞かせて、ギュッと目を瞑る。

「何してんだよ、リサーナ」
「ナツ!」
「チッ…邪魔が入ったわね」

すると、あたしとリサーナの間にゴツゴツとした大きな手が置かれた。ナツだ。舌打ちをしてナツを睨み付けるリサーナの顔は、よく他所様の小説で聞くセリフを吐き出していた。

「さっきから聞いてりゃァ私のルーシィ私のルーシィって…ルーシィは俺のだァ!!」
「はぁーん?何時何分何秒地球が何回回った日に決まったんですかー!」
「俺とルーシィが出会ってからだよ!!」
「じゃあ私が今日出会ったからナツのルーシィは終わりね!今日からは私のルーシィ!」
「ダメだァ!!」

目の前で繰り広げられる言い合いを、ぽかんと見つめる。
どうやら、あたしの世界のリサーナは、ナツじゃなくてあたしが好きらしい。

213:桜◆kk:2019/07/23(火) 23:40 ID:ZVQ

【またまた思い付きです。ナツルー描いたから今度はグレルー 】

「ルーシィ」
「…いいわよ、グレイ」

ガルナ島の一件以来、あたしとグレイにはある秘密ができた。…いやそんな大層な秘密ってわけじゃないんだけど。

「ナツ、あたしもう帰るね」
「おお。あ、俺今日のメシ肉がいい」
「あんたの家はあそこじゃないから!…っていうか、今日家に来たらチーム解散あたしあんたと縁切るからね分かった?」
「あ、あい…」

ナツに家に来ないようにだけ言って、あたしとグレイはギルドを出た。お互い家につくまで無言で、でもそれが心地良くて。ゆっくりと時は流れて、家についた。

「よし、と…」

あたしはドアに鍵をかける。そしてケースから一本の銀色の鍵を取り出した。

「開け!琴座の扉!リラ!!」
「やっほ〜〜。ルーシィ久しぶり〜。あら、また今日も彼の歌を歌えばいいの?」
「うん。お願い」

リラはグレイがいるのを確認すると、ハープに指をかけた。そして、綺麗な音色をハープとリラの口から奏でる。

「ウル…ウルごめんなぁ…!」
「大丈夫。グレイは強い子だから」

ベッドに腰掛けると、グレイはあたしの太ももに顔を埋める。そしてあたしの腰に手を回して、かつて自分に魔法を教えてくれたという今は亡き師の名前を泣きながら呼ぶのだ。
あたしは幼い少年にするように、彼の頭を優しく撫でる。今このときだけ、グレイはあのときに戻るのだ。

「ウル…行かないで…」
「あなたはもう誰も失わない、きっとね。」
「ウル…俺はあんたの娘も守れなかったよ…」
「充分あなたはあたしたちを守ってくれてる。ウルティアも最後にあなたを守れて良かったと思ってるわ。」
「ウル…俺は…好きな女をいつも傷付けるんだ…そんで、いつも違う奴にそのコは助けられる…」
「大丈夫。あたしは、あなたの気持ちをちゃんと分かってるから。あたしにとって彼はヒーローだけど、あなたはたった1人の王子様よ。」

1時間ほど経つと、グレイは静かに眠っている。泣き疲れたのか、安心したのか。よく分からないけど、彼をリラと一緒に布団の中に入れてあたしはキッチンに立つ。

このあと目覚めた彼に、ご飯を食べてもらう為に。今を生きる彼に、未来を生きる為のご飯だ。

そのあと一緒にお風呂に入ろう。お互い生きてることを地肌で感じるのだ。そしてそのあとは同じ布団で寝よう。

朝起きても、あなたが不安にならないように。

214:桜◆kk:2019/07/25(木) 22:48 ID:ZVQ

>>211の続きです】

「エルザ…って誰…?」
「ああ、ルーシィは知らないわよね。エルザはフェアリーテイルの女の子の中で最強の魔道士よ」

ドスッドスッという音が近付くにつれて、みんなの肩に力が入る。どうやら緊張しているようだ。

「今戻った。マスターはおられるか?」
「き、きれい…」
「おかえり。マスターは定例会よ」

エルザさんはそうか、とだけ言うと周りをキッと睨みつけた。みんなの肩がビクッと跳ねる。

「カナ!なんという格好で飲んでいる」
「ウッ、」
「ビジター!踊りなら外でやれ。
ワカバ!吸い殻が落ちているぞ。
ナブ!相変わらずリクエストボードの前をウロウロしているだけか?仕事をしろ
マカオ!…はぁ」
「なんか言えよ!」
「全く、世話が焼けるな…今日のところは何も言わずにおいてやろう」
「随分いろいろ言ってるような気もするけど…」

でも、ちょっと口うるさいけどちゃんとしてる人みたい…そんなに怖がらなくてもいいんじゃ…フェアリーテイルに1人ぐらいはこんな人が必要だろう。

「ナツとグレイはいるか?」

あい、とハッピーが言う方を見ると、汗をダラダラかきながらナツとグレイが肩を組んで手を繋いでいた。

「や、やあエルザ…今日も俺たち仲良くやってるぜ」
「あい!」
「ナツがハッピーみたいになった!」

あまりの衝撃についツッコミを入れてしまう。エルザさんもうんうん、と頷く。

「そうか。親友なら時には喧嘩もするだろう。しかし、私はお前たちがそうやって仲良くしているところを見るのが好きだぞ」
「いや親友ってわけじゃ…」
「あい!」
「こんなナツ見たことない!」

困惑していると、ミラさんたちが教えてくれた。ナツは喧嘩を挑んで、グレイは裸でいるところを見つかって、ロキは口説こうとして、それぞれボコボコにされたらしい。
っていうか、やっぱロキってそういう人なのね…

「ナツ、グレイ。頼みたいことがある。」

ナツとグレイは手を繋ぐのはやめて、でもやっぱり肩は組みながらエルザさんの話を聞く。

「仕事先で少々厄介な話を耳にしてしまった。本来ならマスターの判断を仰ぐトコなんだが、早期解決が望ましいと私は判断した。
2人の力を貸してほしい。ついてきてくれるな。」

ナツとグレイが顔を見合わせる。周りもどういうことだと、ヒソヒソ騒ぐ。エルザは出発は明日だ、とだけ言うと去って行った。
これにはさすがにナツとグレイも驚いてる。ミラさんの方をチラリを見ると、少し興奮しているようだった。

「エルザとナツとグレイ…今まで想像したこともなかったけど…これってフェアリーテイル最強のチームかも…」



––––マグノリア駅
この駅で騒ぐ、2人の男がいた。なんだなんだと周りが騒ぐ。

「なんでテメェと一緒じゃなきゃなんねぇんだよ?」
「こっちのセリフだ。エルザの助けなら、俺1人で充分なんだよ」
「じゃあお前1人で行けよ。俺は行きたくねぇ!」
「じゃあ来んなよ。あとでエルザにボコられちまえ」

あたしはただ、ベンチに座って他人のフリをしながら喧嘩を見つめていた。
いやミラさんにエルザが見てないところで喧嘩するだろうって仲裁役に抜擢されたけど、こんな奴らの喧嘩なんて止めれるわけない。無理よ無理!

「すまない、待たせたな」
「エルザさん––荷物多っ!!」
「今日も元気にいってみよう」
「あいさ!」
「出た!ハッピー二号…」

荷台に大量の荷物を乗せたエルザさんと、昨日のように肩を組んでさっきの喧嘩が嘘のようなやり取りをするナツとグレイ。
ああ、ツッコミどころが多すぎる…

「うん、仲の良いことが一番だ。…で、君は?確か昨日フェアリーテイルにいた…」
「新人のルーシィです!ミラさんに頼まれて同行することになりました!よろしくお願いします」
「私はエルザだ、よろしくな。」

エルザさんの背後で睨み合う2人だが、チラッとエルザさんが振り返ると即座に肩を組む。そしてエルザさんがまたあたしに向き直ると、睨み合う。

「そうか、君がルーシィか…あのナツとグレイのお気に入りだという…」
「ナニソレ!?」

215:桜◆kk:2019/07/27(土) 12:51 ID:ZVQ

【ナツルーの日(昨日)というわけで、ナツルーで美女と野獣パロです!】

「ルーシィ!!俺と結婚しろ!」
「嫌よ。あんたがあたしと結婚したいのは呪いを解く為…愛のない結婚をしても呪いは解けないわ!」

城中に2人の言い合いが響く。私はグレイと顔を見合わせて息を吐いた。これももう日常になってしまったのだ。

ルーシィの言う呪い、とは王––ナツが野獣に、私たち召使いがアンティークものに変えられたこもである。
そしてこれは、ナツが人を愛し、愛されなければ解けることはない。ナツの部屋にある一輪のバラ。その花びらが散るまでが、タイムリミットである。

「ナツもルーちゃんも、お互い惹かれ合ってるはずなのにね」
「2人とも素直じゃないから認めたくないのよ」
「あとナツのプロポーズのセリフ。あんなの、ルーシィが呪いを解く為の結婚だと思うのも無理ないさ」

辞書に変えられたレビィ、箒に変えられたミラ、酒瓶に変えられたカナが言うことは最もだった。
2人はお互いに惹かれ合っているが素直じゃない故に認めず、またナツのプロポーズのセリフも相まってルーシィの返事はいつもNOだった。

「なんかいい方法ねェのかよ」
「こればかりは2人の問題ですからね…」

テーブルに変えられたガジルが言うと、イスに変えられたジュビアが苦笑する。
そう、これは私たちにはどうにもできないのだ。



「なっ、ルーシィを町に帰しただと!?マジかよナツ!」

ある日、私とグレイはナツに呼び出された。お互い良い雰囲気だったのに、ナツはルーシィを町に帰した––自由にしたと言う。

「ルーシィの父親が病気で倒れた…鏡で見たんだ。俺はルーシィに自由を与えて、町に帰した」
「なんでそんなことしたんだよ」
「…愛してるからだ、グレイ」

ナツは悲しそうな、苦しそうな顔をした。私は分かっているぞ、愛する者と離れなければならない気持ちを。

「…バラが散るのももう時間の問題だ。お前らには迷惑かけたな」
「ナツ…」

私たちは無言でナツの部屋を去った。そして他の者たちにも事情を説明し、各自好きなように恐らく最期になるだろう、時を過ごす。

すると、ミラが大声を出した。

「侵入者よ!!庭に大勢の人がいるわ!」
「なに!?」

窓から外を見ると、確かに大勢の人間がいた。よく見るとそれは町の人間だった。
ルーシィが野獣のことを言ったのか…いや、ルーシィはそんなことをするような奴じゃない。

「チッ…私たちで城を守るんだ!絶対にナツのところへは行かせるな!!」
『おう!!』

扉が破られ、町の奴らが入ってくる。私たちは大広間で食い止めようと、応戦する。しかし、1人の男がナツの元へと向かうのを許してしまった。
頼むナツ…この城を、私たちを、守ってくれ!

216:スズ:2019/12/22(日) 10:57 ID:vsQ

はじめましてスズです。いつも皆さんのグレルーナツルー拝見しています!

217:スズ:2019/12/22(日) 10:58 ID:vsQ

突然ですが!書いてみます

218:スズ:2019/12/22(日) 11:11 ID:vsQ

ルーシィ→ル グレイ→グ ミラ→ミ ナツ→ナ

ル「もうすぐクリスマスですね!ミラさん」

ミ「そうね!クリスマスといえば恋人達が愛を誓う日でもあったわねールーシィは好きな人とかいないの?」

ル「いないですよ///(グレイが好きなんていえるわけないグレイが好きなのはきっとジュビアなんだから!)」

グ「いないのかよ(ボソッ)」

ナ「ルーシィ仕事行こうぜー!」

ル「うん何にするの?」

ナ「もちろん討伐系だ!」

グ「俺も行く!」

ナ「なんでお前も行くんだよ?」

ル「じゃあ三人で行けばいいじゃない?」

グ(よっしゃ〜)

ナ「しゃぁねーさっさと行くぞー!」

ミ(がんばれーグレイ!)

とりあえずここまでです。下手で、すみません。

219:るーしぃ hoge:2021/01/24(日) 02:14 ID:m4E

懐かしすぎて大きい声を出したい!!
このスレまで、4年くらい続いててすごい!

220:ユリカ:2021/07/05(月) 10:50 ID:6WM

うわ。。。!めちゃくちゃ懐かしい!!ちゃんとまだ使われてる!
ユリカって名前でめちゃくちゃ最初の頃に使ってたんだけど。。。
見てくれてる人いるかな??このスレのおかげで元気に過ごせたんだよね

221:るーしぃ:2022/10/21(金) 01:30 ID:C66

>>220
うわ!!うわ!!!ユリカじゃん!!!
なんとなく来てみたらいるじゃん知ってる人!!
一年越しに見てるよ〜〜!!!

過去の言動とか恥ずかしくてあんまり見たくないけど、
当時このスレのみんなと話すの、すんごい楽しかったの〜〜!
仲良くしてくれてた人いっぱい覚えてるよ(´∀`*)

222:ユリカ:2023/03/17(金) 00:03 ID:AlU

>>220
うわうわ!!!久しぶり!!
唐突に思い出してまた見に来ちゃったよ!私も、仲良くしてくれてた人のこと覚えてるよ!!
やっぱり過去の内容は見れないよねwww
そして、返信してくれたの最高に嬉しい!

223:るーしぃ◆Nkg:2023/07/31(月) 06:00 ID:eQM

>>222
FTがみたくなって、ここのこと思い出した(●︎´▽︎`●︎)

ユリカとまた話せて嬉しいよぉ〜!!みるの遅くなっちゃったけど泣泣

ね!!当時はちょー楽しかったけど、お子ちゃまだったから黒歴史。笑
ユリカとはここ以外でもいっぱいお話できて、超楽しかった︎し、ありがとうなことばっかり、、(*´艸`)


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