フェアリーテイル ナツルーグレルー小説10!

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1:お香しゃちょー◆kk:2016/12/12(月) 23:37 ID:sB.

フェアリーテイルナツルーグレルー小説の10です!

ルールはいつも通りです!みんな気軽にどうぞ!!

139:みさ◆4.:2017/11/12(日) 17:31 ID:ivE

こんにちはー
まぁ、昔チョロッといたことのある者です
久しぶりに来て読んでたら書きたくなったので入ってもいいですか?

140:みさ◆tw:2017/11/12(日) 17:46 ID:ivE

ごめんなさい、トリップが違いました

141:お香しゃちょー◆kk:2017/11/12(日) 22:41 ID:KMA

何言ってんだよみさーー!!
入っていいとかじゃなくて、入ってんだよ!!むしろ来るの遅すぎてキレてるわ!!ブチギレだわゴルァ!!!

142:みさ◆tw:2017/11/12(日) 23:47 ID:ivE

林檎―!
ありがとう(´;ω;`)
もうみんなに忘れ去られて、また一から始めた方がいいかと思ったー!
すごくうれしい、結構まじめに嬉しい…
ごめんね、遅くなって―!
入学式、部活、塾、文化祭、夏休み、合宿、テスト、体育祭、テスト…いろいろありすぎて遅くなって…
舞い戻ってきた!
結局半端な気持ちでやめれないし、またここの人たちに会いたくて戻ってきちゃったよー!

143:お香しゃちょー◆kk:2017/11/14(火) 21:51 ID:KMA

あ、会いたくて戻って来たとか言われても、嬉しくないんだからね!!

144:お香しゃちょー◆kk:2017/12/17(日) 05:14 ID:XNo

火竜の炎の拳によって、向こうの壁に吹っ飛ばされる鉄竜。

「大丈夫だった?ルーシィ!」

「ハッピー!」

火竜と共に来た青と空色のネコと、巫女の拘束を解く。

火竜は鉄竜に、炎の鉄拳を喰らわせていた。

「あんなナツ、見たことない…」

「オイラもだよ
今のナツは、強いよ。」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「調子に乗りやがって!!!
鉄竜棍!!!」

火竜は鉄竜の攻撃を避けた。

「オラァ!!
火竜の鉤爪!!!」

「ぐっ」

そして、火竜の攻撃は鉄竜の顔を直撃した。しかし鉄竜は、ニヤリとしておる。

「鉄竜剣!!」

「ぐぎっ」

突如、鉄竜の腕が鉄でできた巨大な剣と化した。剣が火竜を傷付ける。

「がっ!」

火竜が鉄竜の蹴りを喰らった。

「ナツ!!!」

「やっと決着がつけられるな。火竜(サラマンダー)」

「燃えてきたぞ、鉄クズ野郎」

(お互いが自らの体を竜の体質へと変換させる滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)
竜迎撃用の魔法をもって人間同士が戦うのか…)

チラリと巫女の方を見ると、巫女もかなり緊張しているようじゃった。

巫女わしも初めてなんじゃ。

ドラゴンスレイヤー同士の戦いを見るのは。

すると、鉄竜の腕が竜の腕へと変わった。そして一気に火竜へ走り寄り、拳を入れる。

「ぐああああっ!!!」

受け止めたように思えたが、火竜は吹っ飛ばされた。ポキ、という音も聞こえた。

「折れたか…!」

「ナツ!!」

「あの鱗は…!」

「鋼鉄で、できてるんだ…!!」

「ギヒッ」

不気味に笑う鉄竜が、火竜へ飛び蹴りをする。しかし次は火竜は避けた。

(これが蹴りの風圧なのか…!?)

(こんなの、並大抵のドラゴンスレイヤーではできないわよ!)

「鋼鉄の鱗が攻撃力を倍加させているんだ!」

「どらあっ!!」

火竜もやられるだけじゃない。すぐに炎の蹴りを鉄竜の顔面へお見舞いする。

「ギヒ…鋼鉄の鱗は全ての攻撃を無力化する」

じゃが、鉄竜には効かんかった。

「そんな!!防御力も上がってるの!?」

「があっ!!」

そして火竜は鉄竜によって床に沈められた。じゃがすぐに立ち上がる。

「火竜の…」

「鉄竜の…」

「いかん!息(ブレス)じゃ!」

「あいつもブレスが使えるのか!!」

「全員ふせるんじゃ!!!」

「「咆哮!!!」」

火竜と鉄竜の魔力がぶつかり合い、周りに大きな衝撃を与えた。

「巫女!」

「きゃあっ!」

吹っ飛びそうになる巫女を、どうにかして支える。

(わしは玄武のように加護は使えん神じゃ…せめて…せめて巫女が玄武と契約していれば…)

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「お互いの性質が出ちまったな…サラマンダー
たとえ炎が相手を燃やしつくすブレスだとしても、鋼鉄にはキズ一つつけられん
逆に鉄の刃のブレスは、貴様の体を切り刻む」

火竜は全身に鉄の刃を受け、血だらけ。じゃが、鉄竜にはキズ一つついておらんかった

「ナツ…」

「あいつ強い…」

「あ?」

じゃが、火竜がギロリと鉄竜を睨むとパキンと鋼鉄は少しだけ破壊され、そこから鉄竜の血が出てきた。

「う…」

「オレの炎もただの炎じゃねえぞ。
火竜の炎は、全てを破壊する。」

さすが、といったところか。伊達に伝説にはなっとらんな。

「本気で来ねえと砕け散るぞ、鉄竜(くろがね)のガジル
さぐり合いは、もう十分だ」

「え、さぐり合いだったの?」

「そうじゃ。なんだ青ネコ、ソラ様。気付かんかったのかィ?」

「以上だね…あの2人」

炎を全身にまとい、鉄竜を睨み付ける火竜

「この空に二頭も竜はいらねえ
堕としてやるよ、火竜(サラマンダー)のナツ」

145:みさ◆tw:2017/12/20(水) 23:45 ID:D1M

冬休みに入りました(笑)

林檎>>それでも私は会いに来ました


新しいの書きます、何かいてたか忘れたので…


* * * * * * * * * * * * * * *

【ルーシィside】

「ルーシィ!」

私のことを呼ぶ、大好きなあいつの声が聞こえた。
だから私はゆっくりと振り返ったんだ。

「どうしたの?……顔赤いよ?」

後ろを振り向くと、やっぱり私の想像通りの大好きなあいつが立っていて、ただ私に向かって手を振っていた。
そしてその開いた口元は何かを話そうとしていた。

「ルーシィ」

私の頭には、あいつが私の名前を大事そうに優しく呼ぶ声だけが鮮明に残っていた。
それしか残っていなかった。

私の大好きなあいつの名前も顔も思い出せない。
でも、それでも私には大切で、向こうも私のことを大切にしてたんだろう、ということは今の私にもわかった。



目を開くと、白い天井が見えた。
ゆっくりと左右に首を振ると、右側に窓があり、左側には一つのドアがあった。
何とも無機質な部屋の唯一の外と繋がれるのは、白いカーテンの隙間から漏れるやさしい光を映し出す窓しかなさそうだ。

からだの節々にはずきずきと痛みが走っていた。
右腕をゆっくり挙げ、そのあと左腕をゆっくりとあげる。
両方痛々しいほどの訪台はまかれているものの、しっかりと腕も指もついていた。
そして、右腕に入っているマークには、なぜか安心感や、安らぎ。なつかしさを感じた。

脚も無事につながっているのだろうか。
あげてみたいが、力が入らず断念する。
懸命に腕を伸ばしても、太ももはまだある、ということしかわからない。

今の私の体はどうなっているんだろう。
まったくわからない。
それよりも、このまぁまぁな広さにベッドと、小さな机といすしか置いてないこの部屋。
まるで、私一人だけが世界に取り残されたような感覚になり、自分しかいないのではないかという不安に駆られる。

だが、ここは病院だろう。
なら、ナースコールがあるはずだ。
腕だけを伸ばし、後頭部の近くにあるであろうボタンを探す。

手にそのボタンが触れたのと、ドアが開くタイミングは同じだった。

中に入ってきたのは、桜色の髪の少年、黒色の髪の少年、緋色の髪の女性に、青髪のツインテールの少女だった。
桜色の少年は、持っていた袋を落とし、青い少女は泣き崩れた。
黒い髪の少年と、緋色の女性は、二人でベッドに飛びつくように近づいた。

私はどれほどの間眠っていたのだろうか。
こんなに人に心配をかけてしまうのだから、相当なのかもしれないし、ただ単にみんなが心配症だったのかもしれない。

二人は私にいろいろな質問をした。
あまりにも、矢継ぎ早に質問するものだから私も答えられず返答に困っていた。
すると、緋色の女性は、一回黒髪の少年の口をふさいで、ゆっくりと質問してきた。

「ルーシィ、簡単でいい。頷いたり、首を振ったりして答えてくれ」

それに対し、頷いた。

「体調は大丈夫か?」

頷く。

「周りの環境もこれで大丈夫か?」

これにも、頷く。

「そうか…何か聞きたいことはあるか?」

頷く。

「なんだ?できることならなんでも聞くが」



「ねぇ、私は?…あなたたちは誰?」

146:お香しゃちょー◆kk:2017/12/25(月) 00:36 ID:Ujw

みさの小説キタァァァァァ!!!!
続きめっちゃいい子にして待ってます。

147:みさ◆tw:2017/12/26(火) 19:31 ID:D1M

林檎>>私にも早く小説の続き見せろよぉ!
どっちが勝つか気になるんだよぉ!

▼ みさの(クソ)小説だ!
  急所にあたった!
 林檎は(クソ過ぎて)倒れた!

148:みさ◆tw:2017/12/27(水) 07:44 ID:D1M

【ルーシィside】

「ねぇ、私は?…あなたたちは誰?」

しまったと思った。
急に二人の顔が曇るのが分かったからだ。
そりゃそうだろう。
私だって、もし大切な人がいきなり私みたいな状態になったらと思うと…。
大切な…人?誰だっけ、思い出せない。
ただ、一瞬だけ、脳裏に誰かのシルエットが思い浮かんだのだけは感じた。



「記憶喪失」

皆が分かっていることを、医者は平然とした顔で言う。
私だって気付いてるものを。

「でも、普段の日常生活に支障は出ないでしょう。
これは、戦いによるものだと思いますので…また戻る可能性は十分あります。
一応、体調が回復するまで、ここで休んでおくといいでしょう」

戦い?
私は何かと戦ったのか?
そういえば、さっき部屋に入ってきた皆もけがを所々していた。
わからない、ねぇあなたは何者なの?ルーシィ…。



病室は、四人の見舞い人が入ってもまだ余裕があった。

「えっと、皆さんこれは何を話すべきですか?」

青い髪の少女が聞く。

「まず、自分自身のことについて知るのがいいのか?」

黒い髪の少年が答えた。
確かに、自分の子音を知らないのはとても怖いし、気味が悪い。
本当にこれが自分か信用できないからだ。

「えっと、じゃあルーシィ自身のことについて話すか。
名前は『ルーシィ・ハートフィリア』で、『FAIRY TAIL』というギルドの一人だ」

ギルド…?
じゃあ、私のこの手の甲のマークは…?
私の視線の先が分かったのか、緋色の髪の女性は微笑んで言った。

「ああ、それはルーシィがギルドに入ったときに付けたマークだな。あの時は私はいなかったからあまり詳しくないが…」

そう言うと、さっきから黙りこくって、こっちを見る桜色の髪の少年を見た。
そして、ため息をつく。

「じゃあ、次は私たちの紹介でもしようか。
私は、『エルザ・スカーレット』で、ここのみんなはみな同じギルドだ。
そして、こいつが…」
「『グレイフルバスター』、氷の魔導士だ」
「私は、『ウェンディ・マーベル』です。で、ナツさん…」
「『ナツ・ドラグニル』。…お前も魔導士だ」

私が魔導士…。
はっきり言って、この中で一番弱そうな私でも魔導士なんだ…。
でも、私はどんな魔導士なんだろう…。

「私は、なんの魔導士ですか…?」
「ルーシィさんは精霊魔導士と言って、精霊を呼び出して戦うんです」
「どうやって精霊を…?」

ウェンディさんは、キョロキョロあたりを見回す。
何かを探しているのだろうか?
不思議そうに首を傾げた。

「いつも鍵を使って呼び出すんですが…どこにあるんでしょう?」
「鍵なら、病院に預けてなかったか?
確か、ルーシィみたいな道具を使う人には入院中使わせないように、って」

私は精霊がいないと戦えないってこと?
だから、私自身は強くないから、きっと一緒に戦ったけど私だけこんなボロボロなんだ…。

そして誰にもばれないようなため息を一つこぼす。

強く、ならなきゃ。

149:お香しゃちょー◆kk:2017/12/29(金) 02:49 ID:TDc

▼みさの(すばらしい)小説だ!

どうする?
→ 読む
→逃げる

お香は読むを選んだ

お香はみさの小説がすばらしくて戦意喪失だ

150:お香しゃちょー◆kk:2017/12/29(金) 03:42 ID:TDc

「私たちのギルドになにすんのよッ!!!」

カナが涙を流した。

「崩れるーーっ!!」

「やめろーーっ!!」

「ギルドが崩れちまう!!」

ミシミシと音を立てるギルド。

「ちくしょオーーーー!!!!」

カナが叫んでも、ギルドはミシミシとさらに音を立てて崩れていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

ゴッ!!と音を立てて、ナツの炎の拳はガジルの顔に、ガジルの鋼の鱗の拳はナツの顔にそれぞれ当たる。

その衝撃は、あたしたちをも吹っ飛ばした。

「巫女!!ソラ様!青猫!!無事か!?」

「あい…なんとか…」

「僕もギリギリ…」

「あんたは!?」

「さっき言った通り、わしの身体は大地そのものじゃ…このくらい大したことないわィ!」

さっき、あたしの胸から現れた白い虎の耳と尻尾を持ち、鋭い爪と牙、そして東洋の服を纏った謎の男…

(敵、じゃあなさそうなのよね…そしてあたしを『巫女』ソラを『ソラ様』って呼ぶ意味も分からない…まず、ソラはこの人の事を知ってるの?)

なんて考えている間もナツとガジルの戦闘は続く。ガジルが押されているようで、ナツも息が上がっている。

(つまり、ほぼ互角…!!)

すると、ガジルは床を剥がして食べ始めた。床は鉄でできている。

「や…やっぱり鉄を食べるのね…!」

「てめえズリィぞ!!自分だけっ!!!」

そして、ガジルはニヤリと笑うと

「鉄竜槍・鬼薪!!!」

さっきとは全然違うパワーでナツに攻撃をした

「あの鉄竜…さっきはふらふらじゃったよな…?」

「ドラゴンスレイヤーは自分と同じ属性のものを食べる事で、体力を回復させたり、パワーアップできるんだ」

「そうなのか青猫!なら火竜も自分の炎を…」

「ナツは自分の炎…自分の発火させた炎は食べれないの!」

あたしは星天竜のドラゴンスレイヤーだから、火を出すことはできない

(それに鍵も…無くしちゃったのよね…)

パワーアップしたガジルは止まらない。ナツはずっと攻撃を受け続けている。

「ハラが減ってちゃ、力も出ねぇか?」

ガジルはナツの足を掴んだ。

「だったら、鉄を食いな!!!」

「ぐあああああああああ」

そしてナツを壁に打ち付ける。

「もうテメェには用はねえ
消えろ
クズがっ!!!」

思い切りナツを投げ飛ばす。ハッピーは手で目を塞いでいた。

あたしはただ、立ち尽くすだけだった。

(ナツはあたしのために…みんなのために…ギルドのために戦ってるのに、あたしは何もできないの…?)

ナツが投げ飛ばされた方は、幽鬼のギルドが少し崩れてむき出しになっていて、ちょうど崩れていく妖精の尻尾と、それを防ごうと戦うみんなが見えた。

(なにがドラゴンスレイヤーよ…なにが星天竜よ…仲間一つ守れないで…
なにが妖精の尻尾よ)



































もう、あたしにはなにもいらないから…

これ以上、みんなを巻き込まないで!!

傷付けないで!!

あたしの大切なものを壊さないでよ!!!!

あなたは一体、これ以上あたしのなにを壊したいの!!?

あたしになにを求めるの!!?

あたしが敗北すればあなたの機嫌は治るの?

あたしがもっと力をつければあなたは喜ぶの?

あなたにお金が入れば嬉しいの?

あなたに権力がもっとあればあたしを手放すの?

なんでもいいから

消えなさいよ!!!!

あたしの世界から!!!!

151:お香しゃちょー◆kk:2017/12/29(金) 16:14 ID:TDc

オレの目に映るのは、

崩れて行くギルド

泣き叫ぶ仲間

絶対ェ許さねえぞ、幽鬼の支配者!!!

ーーーーーーーーーーーーーーーー

ナツが、フラフラになりながらも立ち上がった。もう、立つのもやっとだろう

(もういいよ…ナツ…あたしがこいつらに捕まれば…)

あたしが諦めそうになった時、ポンッと足と背中を叩かれた。

「ナツはまだ諦めてないよ」

「ルーシィが諦めてどうするのさ」

「諦めるのは、まだ早い」

(そうだ、ナツは諦めていない)

あたしは涙が流れそうになるのをこらえた。

「ギルドは崩れた。テメェらは負けたんだよ」

「グハァッ!!」

ナツが壁に投げられた。あたしは手で顔を覆う

「でもあたし…これ以上ナツが…」

それでも、ナツは立ち上がった。

「いい加減沈めよ火竜(サラマンダー)!!!」

「うああっ!」

「オレは手加減って言葉知らねぇからよォ、本当に殺しちゃうよ。ギヒヒ」

「そうだ!鍵!!」

するとソラが、いつも自分が肩にかけているカバンから鍵を取り出した。

「ルーシィ!これ、この前僕に預けたままの人馬宮の鍵!!」

「ええ!?サジタリウスの鍵!?」

サジタリウスは弓の天才だから、火は出せないだろう

「ジュピターの破壊、エレメント4との激闘…魔力を使いすぎたんだ!!
炎さえ食べればナツは負けたりしないんだー!!」

でも、迷ってるヒマなんてない!!

「開け!人馬宮の扉!!サジタリウス!!!」

「はい!もしもし」

あたしはサジタリウスを呼び出した。

「サジタリウス!どうにかして火を出せない!?どうしても火が欲しいのよ!!」

「火そのものという訳ですか?」

「火ならなんでもいいわ!!」

するとサジタリウスはナツとガジルの方へ、矢を放った。

その矢はナツとガジルを通り越して、その向こうにあった機材へと命中した。

その機材から、火が出る。

「射抜き方一つで貫通させることも粉砕させることも、機材を発火することも可能ですからしてもしもし」

「炎だ!!うおおおお!!!」

ナツが炎にかぶりつく。

「さすが弓の名人ね!サジタリウス!!」

「ごちそー様。ありがとなルーシィ」

「うん!」

「火を食ったぐれーでいい気になるなよ!これで対等だということを忘れんなァ!!」

走って来るガジルを、ナツはギロッと睨み付けた。

そして、力強い炎を纏った拳でガジルをブン殴る。

「レビィ、ジェット、ドロイ、じっちゃん、ルーシィ、仲間たち
そして妖精の尻尾」

「んぎぃ!
鉄竜の咆哮!!!」

ガジルの咆哮を、ナツははね返した。

「どれだけのものをキズつければ気が済むんだお前らは!!!!」

「バカな!!このオレがこんな奴に…
こんなクズなんかに!!!」

「今までのカリを全部返してやる!!
妖精の尻尾に手を出したのが間違いだったな!!!!」

「オレは…最強の…」

「紅蓮・火竜拳!!!!」

「ああああああああああ」

ナツの炎と拳によって、ファントムのギルドが崩れて行く。

「これで、おあいこな」

ーーーー

「ヒィッ!」

ファントムのギルドが崩れるということは、もちろんあたしたちもやばいということで…

間一髪のところをソラに助けてもらえた。あの人はハッピーに。

「ナツ!!」

「さすがにもう、動けねえや」

ナツは動けないはずなのに、笑っていた。

「もう…本当…やりすぎなんだから…」

「うん!」

「あい!」

でも…ちょっとかっこよかったよ…

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「すまん巫女、ソラ様、青猫…わしも限界じゃ。少し戻る。」

するとあの人が白の光に包まれ始めた。

「ちょっとアンタ!名前は?」

「白虎だよ」

「ソラ!?アンタ知ってんの!?」

「そんなことは後じゃ…これを持っとれ」

ポンッと投げられたのは白い勾玉。

「わしと契約する時に必要じゃ。」

「契約って…アンタも星霊?」

「四神じゃよ」

そう言ってあの人…白虎の姿は消えた。

「四神って?ソラ、あの人はなんなの?」

「それは後。急いでギルドに帰ろう!!」

「…うん!」

152:お香しゃちょー◆kk:2017/12/29(金) 16:50 ID:TDc

オレたちが目を覚ますと、エルザはボロボロだった。

でも、じーさんがいる。

そしてオレたちは、あたたかい魔力によって助けられた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「こりゃあまた…ハデにやられたのう…」

「あ、あの…マスター…」

「んー?お前もずいぶん大変な目にあったのう」

(どこまで優しいんだろう、この人は…このギルドは…)

「そんな顔しないの、ルーちゃん
みんなで力を合わせた大勝利なんだよ」

「ギルドは壊れちゃったけどな」

「そんなのまた建てればいいんだよ」

「ウィ」

あたしに声をかけたのは、あたしのせいでケガをしたレビィちゃん、ジェット、ドロイ、リーダスだった。

「心配かけてゴメンね、ルーちゃん」

「違う…それはあたしの…」

「話は聞いたけど、誰もルーちゃんのせいだなんて思ってないよ。」

「オレ…役に立たなくて…あの…その…ごめん…」

リーダスの言葉に頭を横に振る。

「ルーシィ
楽しい事も、悲しい事も、全てとまではいかないが、ある程度は共有できる。
それが、ギルドじゃ。
一人の幸せはみんなの幸せ。一人の怒りはみんなの怒り。
そして、一人の涙はみんなの涙。
自責の念にかられる必要はない。君にはみんなの心が届いてるハズじゃ。
顔を上げなさい。

君は妖精の尻尾の一員なんだから。」

マスターの言葉に、我慢していた涙が溢れてきた。

子供のように、ずっと泣いた。

こんなに泣くのは、いつぶりだろうか。

それでも、ソラとレビィちゃんたちがあたしの涙をぬぐってくれた。

(それにしてもちと、ハデにやりすぎたかのう…こりゃあ評議院も相当お怒りに…いや、待て…ヘタしたら禁固刑…!!!)

そして、なぜかマスターも泣いた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「そうだ、ルーシィ」

あたしの涙がおさまってきた頃、グレイがあたしに近付いてきた。

そして、赤、青、白の勾玉を渡される。

「これ…」

あたしも急いでさっき渡された勾玉を取り出す。さっきの勾玉は、白に見える黄色だった。

「青龍と朱雀と玄武の勾玉だ」

あたしがその四つの勾玉に触れると、その勾玉は光出した。

「なになに?」

「なんの光だ?」

「ルーシィとグレイが何してんの?」

みんなもいつの間にか、あたしとグレイに近付いてくる。

「この光…知ってる!!」

「ああ…!」

その光はどんどん大きくなって、やがて人型へとなった。

『我ら四神を呼び出し、巫女の名を受け継ぐ者よ…』

そして鎧を纏い、亀の甲羅を背負い、少し長い白い髪を結った男と

龍のツノを持ち、二の腕には龍の鱗、東洋の着流し姿の男と

オレンジのくせ毛を二つに結び、巫女装束を纏った、少し小柄な女の子と

白い虎の耳と尻尾を持ち、鋭い爪と牙、そして東洋の袴を纏った、あの人が現れた。

「青龍!!」

「よっ、グレイ」

「朱雀ゥ!!?」

「あ、珍しい青猫!!」

「玄武ではないか!」

「…エルザ」

「白虎!それにみんな!!」

「「「「ソラ様!!!」」」」

153:お香しゃちょー◆kk:2017/12/29(金) 17:53 ID:7uw

「なんだなんだァ?ソラはあいつらのこと知ってんのか?」

「うん。僕はあの四神たちの代わりに、ルーシィを守っていたからね」

四神、と呼ばれる人たちがあたしの前でひざまづく。

「オレは春と東を守護する青龍」

「おらは夏と南を守護する朱雀だぜ!」

「わしは秋と西を守護する白虎じゃ」

「私は冬と北を守護する玄武だ。巫女」

なるほど。ツノがある人が青龍、女の子が朱雀、さっきの人が白虎、鎧の人が玄武ね。

「なんであたしが巫女?」

「…それはまた今度話しましょう。それより、契約をお願いしたい。」

リーダー格の玄武に言われて、あたしは頷く。

「でもどうやって契約するの?」

「…少し、痛いがすまない…」

そう言うと玄武は短剣で、あたしの腕を軽く切った。

「え?」

少し血が出ると、玄武たちはそれを指に絡めると舐め取った。

「これで、契約成立だ。貴女の血が、我々のナカに入った。朱雀、止血を」

「おう!任せろ!!」

「アッヅゥ!!!」

「あ、やりすぎた!悪ィ!巫女!!」

小さな炎で止血してくれた朱雀。

「我々は、貴女を命に代えても守り通す。」

「ま、アンタの大切なものも守るけどな」

「おらたちは強ェから!」

「そういうことじゃぜ」

なんか頼もしいな…なんて思っていると青龍とグレイが肩を組み始めた。

「なんだよカッコつけやがって!」

「つけてねえよ!よし!宴だ!!」

『はあ!?』

「お、おい青龍!!…なっ、」

「いいじゃねえかガキ!!」

「そうだぜ!玄武の兄貴!!」

「白虎!肩を組むな!それに朱雀!青龍!巫女の前で無礼だぞ!!」

青龍をはじめにみんなでどんちゃん騒ぎが始まった。あたしもみんなで騒ぎ始める。

「お、おいお前たち!!」

「いいじゃないか、玄武」

「エルザ…!」

あたしの前ということを気にかける玄武に、エルザが声をかけた。

「見ろ。ルーシィも笑っている。」

「……!そうだな」

「玄武さんよォ、お前ら神力とかは大丈夫なのか?」

「氷の子…!それも後で話そう。とにかく今は宴だ!!」

『おおう!!!』

154:みさ◆tw:2017/12/29(金) 20:58 ID:D1M

▼みさは林檎の小説を読んだ!

 震えて、倒れた!
 
 このあとどうする?
 →筆をとる
 →そのまま戦意喪失

 みさは戦意喪失ながらも筆をとった!

155:みさ◆tw:2017/12/29(金) 21:22 ID:D1M

【ルーシィside】

その後精密検査など受けたが、特に異常は見られなかった。
だが、やはり記憶は戻らないまま時間は経った。

そして、体調もみるみると回復をして退院が目前に迫っていた。

「いつも花ありがとう、ウェンディさん」
「いえいえ、渡井が今できることといったら全然ありませんので」

ウェンディさんは毎日来てくれては、花の水を変えたりしてくれる。
時には、ルーシィとの冒険の数々についての話もしてくれる。
それは、夢のような話でもあり、でも私が実際に体験している不思議な話だった。

「よ、ルーシィ。そろそろ退院だな。おめでとう」
「ありがとう、グレイさん。グレイさんがこの時間帯に来るのは珍しいね」

いつもは、グレイさんは夕方に来る時が多い。
だから、昼に来るウェンディさんとは被らないか、すれ違うことが多かった。

「まぁいろいろあったんだよ。それよりいい知らせだ。ほらこれ、何かわかるか?」
「グレイさんそれって…?!」

グレイさんがポケットの中から出したのは小さなケース。
でも、まぁまぁ厚そうだ。

「…キーケース?」

いや、ただのキーケースじゃないはず。
ん?そういえば鍵ってなんだっけ…?
あ…!!

「精霊…?」
「正解」

グレイさんはにやにやしながらベッドに近づき鍵を差し出す。
どれを両手を伸べて受け取った。
そっと胸に抱きしめる。何もわからないのに、とても懐かしい。

「ルーシィさん、よかったですね。それが返ってきたってことはつまり…」

ウェンディさんが涙ぐんで言う。
あれ?これもしかして私言い忘れた、か?

「確かに、明後日退院だものね」
「え…え?」

二人は固まる。
これやっぱ言ってなかったやつか。
この話はエルザさんから聞いたからとっくに二人は知ってるものだと…。

「そう、明後日退院なんだ。二人とも今日まで来てくれてありがとう」

その顔は、あの時の顔ではなく喜びや安堵で満ち溢れていた。
そういえば、ナツさんを全然見なかったな…。



【グレイside】

なんだよ、もう知ってたのか。
そりゃあ、いつまでも鍵持っとくわけにもいかないから返すよな。

病院の玄関を出ようとしたときだった。
ルーシィの病室の下の外側に見上げるような形でナツが立っていた。
全然病院では見かけなかったけど…ここにいたのか。

「おいナツ」
「…グレイ。なんだよ」
「行ってやれよルーシィの見舞い」

あたりは薄暗くてもわかった。
ナツは拳を思いきり握り、下を向いていた。
確か、こいつが最初に見つけたんだっけ。
だから、その分会いに生きにくいってことか?

「俺には会いに行く資格なんてねーんだよ…」
「は?それってどーゆー…」
「俺のせいで、ルーシィがあんな目に…」

くるりと踵を返して闇へと消えた。
どういう意味だよ…お前のせいでルーシィがあんな目になったって…。

156:お香しゃちょー◆kk:2017/12/30(土) 02:20 ID:vdQ

▼お香はみさの小説を読んだ!
 
 どうする?
 →泣く
 →続きを全裸待機

 お香はどちらも選べなく、自爆した!

157:みさ◆tw:2017/12/30(土) 09:02 ID:D1M

▼みさはどうする?

 →泣いた!

 またここで皆と話しているという事実について泣いた!




そして、まだこの小説の終わり方を私は考えていなーい!

158:みさ◆tw:2018/01/01(月) 00:04 ID:982

あけましておめでとうございます!
今年は頑張って精進し小説を書きます!
今年もよろしくお願いします!

159:お香しゃちょー◆kk:2018/01/01(月) 14:12 ID:sEA

いやはや、おめでとうです!
亀なりのスピードで小説書きます!!
よろしくですっ

160:お香しゃちょー◆kk:2018/01/03(水) 12:11 ID:AL6

夢でルーシィが幼児化してまさかのフェアリーテイル×ハリポタというすばらしい世界に飛ばされてルーシィ子供やのにナツ、グレイとがんばって魔法覚えて戦ってルーシィ子供やのにグレイと恋愛しててもうぅぅぅぅぅぅ

正月からグレルーあざっしたァァァァァ!!!!!!!!!!!

161:みさ◆tw:2018/01/08(月) 10:59 ID:.DE

前回は>>155でーす

* * * * * * * * * * * * * * *

【ルーシィside】

電車が揺れる。
窓の景色は街から山へ、山から海へとめまぐるしく回る。
内(なか)の人はせわしなく動いていく。

「ルーシィさん、もう退院できてよかったですね」
「ええ、家に帰れるのはとても楽しみです」

向かい合わせのシートには、私の横に、ウェンディさん。
前の席にはグレイさんと、エルザさんが座っている。

「そういえば、ナツさんは?」
「ナツさんならいつものあれですよ?」

あれ、とは何だろう。
記憶を失った私にはわからない。

「あ、そっか知らないんですよね」
「ごめんね」
「いえ、なんかやっぱりいつものルーシィさんとの調子で話しちゃうな」

それはいいことなのだろうか?
私をちゃんとルーシィだと思ってくれることはとてもありがたいことだ。
でも、私にはそのルーシィではなくて今のルーシィとして接してほしい。
もちろん、そんなことは言わないが。

「ナツは、乗り物酔いだ。確か、そばにハッピーがついていたはずだが」
「ハッピー?」
「おいエルザ、今ハッピー見ると混乱するからギルドまで隠しておこうって言ってたじゃねーか」
「すまんすまん。まぁ言ってしまったからしょうがないだろう」

私を置いてどんどん話が進んでしまっている。
ちょっとついていけないが、簡単に整理すると…。
ハッピーは得体のしれない"何か"、ということでいいのか?

「おいほら見ろエルザ。中途半端な説明で何も見ていないのにもう混乱してやがるぜ」
「なら、エルザさん一緒にハッピーを見つけに行きましょう。見せた方が早いと思います」

「そうだな」と言ってエルザが立ち、次の車両に行きはじめた。
それに、ウェンディもついて行く。
そして今度は、話自体を聞いておらず置いてけぼりになってしまった。

「あいつらは、ハッピーをさがしに行くんだとよ」
「わかった」

そして私は視線を窓の方へとやる。
気づかないうちに、のどかな町を走っていた。
心を落ち着けていた時、視線に気づく。

「なんですか?」
「いや、なんでも」

そういって、グレイさんは、通路を超え、反対席の窓を見た。

「やっぱ嘘だ。聞きたいことがある」
「…聞きたいこと?私は何も覚えていないのに?」

「ああ、そうだ」と言って、足を組む。


「実は、ナツが…この状態になったのは自分のせいだと言ってた。俺には意味が分からん。引っかかることはあるか?」
「ごめんなさい、ナツさんは一度も病室に来なかったのでわかんないです」
「そうか、いや無理は承知だった。ありがとう」

その言葉で会話は終わった。
私はまためまぐるしく変わる景色を見て、グレイさんは目をずっと瞑っていた。


to be continued


私的の解釈としては、

街→都会な方
町→田舎な方

と、とってほしいです(笑)

162:お香しゃちょー◆kk:2018/01/09(火) 01:01 ID:nGY

あーー…ナツルーグレの学パロ書きたい
でも今の小説どうしよ…

163:お香しゃちょー◆kk:2018/01/15(月) 16:16 ID:.wM

ちょっと今の小説ストップします!!学パロナツルーグレを思い付いてしまったので!!

注意!!ホラーで、学パロです!!!


設定

ルーシィ
星野高校1年。男子バレー部マネージャー。昔から人間以外のものが見える。

グレイ
氷谷高校3年。男子バレー部主将、ミドルブロッカー。昔から人間以外のものが見える。リオンとは幼馴染。

ナツ
炎ノ国学園3年。男子バレー部主将、ウイングスパイカー。ルーシィの中学時代の先輩。ガジルとは幼馴染。

スティング
星野高校1年。男子バレー部部員、ウイングスパイカー。ルーシィとローグと一緒にいる。

ローグ
星野高校1年。男子バレー部部員、セッター。ルーシィとスティングと一緒にいる。

リオン
氷谷高校2年。男子バレー部員、セッター。グレイとは幼馴染。

ガジル
火ノ国学園3年。男子バレー部副主将、ミドルブロッカー。ルーシィの中学時代の先輩。ナツとは幼馴染。


星野高校はルーシィ、スティング、ローグで全員1年生です!

氷谷高校はグレイ、リオンでグレイは3年の主将、リオンは2年です!

火ノ国学園はナツ、ガジルでナツは3年の主将、ガジルは3年の副主将です!

ポジションで分からないと思っても気にしないでください。ほとんどバレーしてませんから(笑)

164:お香しゃちょー◆kk:2018/01/15(月) 16:47 ID:.wM

一番最初に目を惹いたのは、選手たちを気遣う優しさ。

次に目にして驚いたのは、ひどく穏やかに微笑むその表情。

ひらりと舞う桃色の花の下で、艶のある真っ直ぐな金髪を風になびかせて、そんな花を見ながら浮かべるその表情が、その姿勢が、綺麗だと、そう思った

ーーーーーーーー

昔から、よく分からない変なものが、視えた。

それが他の人には見えていないのだと気付いたのは、小学生になってから

クラスメイトに言っても不思議そうな顔をしたし、しまいには頭がおかしいんじゃないかとまで言われた。

それは大人も同じで、学校の教師にそれとなく言っても冗談だろと笑われたし、両親にも信じてもらえなかった。

変なものに追いかけられて服をドロドロにして帰ったときも両親は怒りはしなかったけれど、話は信じてくれなかった。

あまりそういうこと言うんじゃないと言われてから、両親には視えているもののことは一切話していない。

きっともう忘れているのだろうと思ったし、これ以上困らせることもないと思った

もちろん友人にも言うのを止めたし、むしろ必死に隠してきた。

それでも学校にいるときに変なものに絡まれたり話しかけられたりしていたから、それを見られるとやっぱり気味が悪いと避けられた。

普通の人が見たら何もないところで独り言を言っているように見えるだろうし、必死に逃げてる姿でさえも滑稽に見えただろう。

容赦のない軽蔑の目を向けられ、気味が悪いと避けられ、だんだんと人と接するのが怖くなっていった。

自分の言葉を信じてもらえないことが、こんなにもこんなにも、恐ろしいものなと何度も味わった。

でも、バレーにハマり出してから、それを見ている時だけは視えているものに関して忘れることが出来た。

体育館には変なものが入ってきたこともないし、視えたこともない。

バレーを見て、チームメイトを支えることに夢中になれたし、楽しかったし、幸せだった。

だからこそ、忘れていたのだ。

『ルーシィッ!!!』

中学に入ってバレー部で出会った、すごい人

憧れだった、大好きだった、その先輩の珍しい必死な声が今だって忘れられない。

ごめんなさい、と繰り返す自分にあの人はらしくなく、優しく名前を呼んでくれた。

理由も分からないはずなのに、あの人は泣き出しそうな自分を抱きしめて、大丈夫だと、何度も何度も声をかけてくれた。

だからこそ、ダメだと思った。そばにいてはダメだと、理解した。

この、妖怪なのか幽霊なのか分からないものが、それを視ている自分のせいで、誰かを傷付ける可能性があるということを、自分はすっかり忘れていたのだ。

怖くて仕方がなくなったのは、その時から。

だから今まで以上に人と関わることを避けて、それでもバレーは続けていたかったから余計に問題が増えた。

変わらずその不思議なものたちは視界に飛び込んできたし、うまく接触を避けることも出来なかった。

その分中学の友達やチームメイトとの距離は開いていくし、練習でも試合でもすれ違いが増えていった。

原因はそれだけじゃない、あの人の周りにずっといたり、女バレの実力に絶望した態度を取った。そしていろいろ重なってそして、それが爆発した。

その結果、中学最後の大会で自分の手はみんなに拒絶された。

今考えれば全面的に自分が悪いことは理解出来たけれど、その当時はひどいものだった。

どうして自分だけに変なものが視えるのか、話しかけられるのか、追いかけられるのか、意味が分からなくてイライラしてどうしようもなくて、ただ苦しかった。

自分ではどうにもできない、誰にも言えない、人には誰も、信じてもらえなかったその現実が今更に心を押しつぶしていった

バレーがあって、ようやく人と関わりが持てたのに、その関係すらも薄っぺらいものにしたのは紛れも無い自分だ。

それが無ければもっと上手くやれたんじゃないかと思いながらも、結局悪いのは自分だったと理解してまた落ち込んで。

もうそんなことを繰り返したくはなかった。
二度と、同じことはしたくなかった。

だから今日も、平然と変わらない嘘を吐く。

165:お香しゃちょー◆kk:2018/01/15(月) 22:04 ID:.wM

ボーッとしていた頭からふっと意識を浮上させれば、淡々とした教師の声が耳に届いた

チョークが黒板にぶつかる音と、クラスメイトたちがシャープペンを動かす音、教科書を捲る音

それを聞きながら、窓の外に視線を向ける。下に見える校庭には生徒の姿は無い。けれど、そこから微かに楽しげな声が聞こえた

目を凝らせば、元気に走り回っている子どもの姿が見える。けれど、それは人間ではない

分かるようになった、今になって区別がつくようになった

明らかに姿が違うものは分かったけれど、中には人間のような姿をしているものもいる。その区別が、つかなかった。けれど今なら分かる。あれは、違うのだと

うまく付き合えば、その変なものたちだって嫌な存在ばかりではない

むしろ、人間よりも彼らのほうが純粋で優しく、穏やかなものだっている。だからこそ、自分は、彼らのことを本心から嫌いにはなれないのだ

はあ、と溜息を吐き出して、黒板へと視線を向ける。真白だったノートにようやくそれを写しながら、思考はやはり部活のことばかり

厳しくも優しい先輩、先生、そして自分を迎えてくれた、同級生

嫌われたくなかった、気味が悪いと思われたくなかった。そして巻き込みたくも無かった。だからこそ、自分が変なものを視ていることは、絶対に言えなかった。言えるはずがなかった

入学から今まで、そこまで大きなボロは出していないと思う

うまく、もっとうまくやらなくては

部活をしているときは大丈夫だ。しかし帰り道、休憩時間、授業中、気を抜けばおかしな行動をしてしまうかもしれない

視えていると相手に気付かれなければ、変なものたちだって行動は起こしてこない

(もう二度と、ミスはしない)

絶対に、誰も巻き込まない、怪我もさせない、そして、全力でバレーをするみんなを支える

よし、と何度目かの決意をして、そして、授業が終わるチャイムの音を聞いた

ーーーーーーーー

「氷谷高校?」

顧問の口から出た東京の強豪校だというその高校の名前は聞いたことが無かったけれど、火ノ国とやって以来の練習試合となれば部員のテンションも上がる

どんなチームなのだろう、どんな選手がいるのだろう、そわそわと話し出したチームメイトたちを見ながら、ルーシィはふと顔を上げる

微かに聞こえる声に耳を澄ませば、確かに自分を呼ぶものだった

「ルーシィ?」

声に誘われるように窓の外を見つめていたところで、今度はすぐそばで名前を呼ばれてハッと顔を向ける

不思議そうに目を丸くした先輩と視線が絡んで、ルーシィは慌てて口を開いた

「あ、はい!」

「何かあったか?」

スティングと一緒に騒ぎそうなところ大人しかったからだろう、少し心配そうに声をかけてくれた先輩にルーシィはぶんぶんと首を振る

「いや、何も、」

「練習試合嬉しくない?」

「すごい嬉しいですッ!」

途端に目を輝かせたルーシィに、先輩もホッとしたようにいつもの笑顔を浮かべた

ニッと笑って、しっかりと自分を見てくれる先輩に、何度だって救われた

だからこそ、言えないのだとルーシィはそっと目を細めた

「今度も勝ちたいなー」

「頑張ってください!!」

おう!とまた笑ってくしゃくしゃと髪を撫でてくれる

間違っていれば叱ってくれる、その日あったことを話せば褒めてくれる。中学のころは無かったことだ

受け取ろうとしなかったのは、自分なのかもしれないけれど、それでも自分は女子に嫌われていると諦めていた

優しいな、と思って、乱れた髪を直してくれる先輩の手が温かい

「何か気になることがあったら言えよー?」

はい、と返事をしながら、ルーシィは少しだけ泣きそうになる

どうしたらこの人たちに嫌われないだろう、どうしたらこのままの関係を続けられるだろう

微かに聞こえる自分を呼ぶ声を無視することも出来ないくせに、本当にワガママだ

今日はこれで解散!という主将の声に片付けのためにみんなが動き出す

ルーシィもそばに転がっていたボールを拾って片付けへと向かった



星野高校と火ノ国学園は神奈川らへんにある気がします!!(笑)
氷谷高校は東京ですね!!

166:お香しゃちょー◆kk:2018/01/15(月) 22:26 ID:.wM

外に一歩出れば、東京より少し冷たい空気に高い空。

初めて訪れた神奈川という土地は、自分たちにとってはひどく珍しいものだった。

(緑が多いな…)

中心地から少し離れたせいか、街の多くに緑を感じられる。商店街も賑やかだし、夜になれば暗い。そんなことだって、都心ではあまり感じられないことだ。

数日いただけだけも、その自然にどこかホッとされることもしばしば。

今日はGWの最終日、神奈川に来たメインとも言える星野との練習試合を向かえて、体育館内はひどく賑やかだった。

自分のチームメイトがアップをするのを見つつも、どうしたって目が行くのは反対側のコートで同じくアップをしている星野のメンバー。

「へえ、」

「グレイ、声に出ているぞ」

無意識に口にしていたのだろう、ぽつりと吐き出した呟きを近くにいた幼馴染に拾われたグレイはニッと笑う。

その何か企んでいるような笑顔を見て、リオンははあと溜息を吐いた。

「いや、綺麗な金髪だと思っただけだ。」

グレイの視線の先にいたのは、セッターであるローグにボールを投げるルーシィだった。それをちらりと見たリオンもすっと目を細めた。

「綺麗なのは髪の毛だけじゃねぇけど」

「1年っぽいな。スティングと普通に話してる」

「スティング?」

「星野の10番(スティングの背番号)」

「知り合いか?」

「まあな」

なんだよ教えろよ、と黒尾が呟いたところで、「そこの二人サボんな!!」という監督の声にアップへと戻る。

最後にちらりと見た先では、まだ名前も知らない1年の女子マネージャーが、窓の外を見ているところだった。

ーーーーーーーー

アップ後、少し休憩してから試合を始めることになり、一旦コートの外へと出る

監督と少し話しをしてからぐるりと体育館を見渡せば、あの目を惹く存在がいないことに気付いた。

何やら賑やかな星野の1年らしいメンバーの中にもおらず、主将である人物のそばにも、監督の近くにもいない。

時計を見れば試合開始まで5分を切っているし、何となく気になってグレイは体育館を出た。

ふわ、と舞うの風はやはり東京よりも少し冷たい気がする。

真面目そうな彼女はそこまで遠くにはいかないだろうと思いながら歩いていれば、案の定すぐに姿を発見できた。

何もない、体育館の影になっているそこは、ほとんど人も来ていない。そこに一人立って、何かを、見ている様子に、グレイは目を細める。

ふわりと感じるのは、花の香り。

167:お香しゃちょー◆kk:2018/01/15(月) 22:38 ID:.wM

「おーい、えーっと、悪い、名前分かんねぇんだけど、星野のマネちゃん?」

少し声を張れば、ビクリと大きく背中を震わせて彼女は振り返る。

そこで初めて絡んだ視線、その真っ直ぐな瞳に一瞬ドキリとした。

「試合までもう5分もねぇぞ?体育館戻ろうぜ。」

「え、あ、すんません、えっと、」

「氷谷3年、主将やってます、グレイです。」

パタパタと駆け寄ってきた彼女に、少しおどけて名前を告げれば彼女は泳ぐ視線をしっかりと正して見つめて来る。

綺麗な色だな、とその淡い茶色の愛らしさを持つ瞳に眩しさすら感じて誤魔化すように笑った

「あ、っと、1年のルーシィ、です。」

「よろしくな」

「は、はいッ!」

ぺこ、と勢いよく頭を下げる姿に素直だなと感心する。

先輩にはきちんとしているらしい。 根っからの体育会系か、と思いながらもルーシィを促して体育館へと向かう。

最後に視線を向けたのは、さっきまでルーシィが見ていた景色。

(なるほどな、)

と、胸の中だけで呟いて、少し前を歩くその細い背中をぼんやりと見つめた。

ーーーーーーーー

試合結果だけを見れば、こちらの圧勝。

けれど正直面白いものも見れたし、いいライバルを見つけたと監督もご満悦だった。

メンバー同士も何やら交流を深めているらしく、グレイが微笑ましいなと満足そうに笑っていればまたリオンに呆れた目で見られる。

そんな彼だって、スティングと仲良くなった。良かったなと告げると別にと冷たく返された

片付けが終わってからそれぞれが帰りの準備をしているとき、グレイはまたもやルーシィの姿が見えないことに気付いた。

あれ、デジャヴ?と思いながら体育館を見渡せばやはりあの細い背中が見つけられない。

「ルーシィは?」

「さっき荷物持って外行ったよ。」

「早ッ!」

烏野一年たちのの会話を聞いたグレイは、ふと窓の外を見てからそばにいた監督に一言声をかけてから体育館を出る。

迷うことなく足を進めれば、やはりすぐにルーシィの姿を見つけた。

ひらひらと、舞い落ちるのは、花びら。

ーーーーーーーー

「ルーシィ」

名前を呼べば、ビクリと肩を震わせてから振り返る。

パチパチと瞬きをして驚いている顔をするルーシィに笑いながら、グレイは隣までゆっくりと歩いて行った。

「もうみんな外に集まりだしてるぞ。スティングくんも探してたし。」

「え、あ、はい、すみません!」

「試合前もここにいただろ。何してるんだ?」

隣に立ってそう問うと、ルーシィは焦ったように視線を彷徨わせた。

その様子はやはりまだまだ年下の後輩だな、と何となしにグレイが見ていれば彼女は小さく「何でも、ないです、」と言う。

苦し紛れのその言葉にグレイが思わず笑えば、ルーシィは少し不満げな顔をしながら見上げてきた。

その瞳は、綺麗なものだ。そこに映っているのは、きっと、人とは違う。

最初から確信があった、何故かと言われると、答えられないけれど。

「それにしても、すげー綺麗に咲いてるな。」

168:お香しゃちょー◆kk:2018/01/15(月) 22:49 ID:.wM

「それにしても、すげー綺麗に咲いてるな。」

そう言うと隣から小さく息を呑む音が聞こえる。

ちらりと視線を向ければ、ルーシィが瞳を丸くして信じられないものを見るかのような表情を浮かべていた。

ひゅ、と息を吸って、その綺麗な瞳を真っ直ぐに向けて来る彼に、グレイはそっと目を細める

「視えてるよ。」

ゆっくりゆっくり言えば、ルーシィは唇を震わせる。

グレイはただ、視線を外すことなく影山の瞳を見つめて。

そこに映るのは、自分と、はらりと舞う桃色。

「視えてる。俺も、みえてるよ。」

言い聞かせるように、何度も言えば、ルーシィがようやくその震える唇からほうと息を吐いたのが分かった。

息止めてたのかよ、と心配になりながらも彼女の視線を真っ直ぐ受けて、そして笑みを浮かべる。

「綺麗な、桃の花。満開な、花だ。同じもの、見てるだろ?ルーシィ」

桃色の小さな花が、木々に咲いている。

それは満開で、鮮やかな桃色が目に眩しくて空に映える。

季節はもう過ぎているけれど、それはこんなにも目に鮮やかに映ることを、初めて知った。

最後にルーシィの名前を呼べば、今度はくしゃりと泣き出しそうな顔をするものだから、グレイは手を伸ばして彼女の真っ直ぐな髪に触れる

ビクリと肩が震えたけれど避けられはしなかったためそっと頭を撫でれば、ルーシィは視線は外すことなく小さく口を開いた。

「来週に、ここの桃の木、切られちゃうらしくて、」

「え、そうなのか、」

「この前、キツネ、っていうか、子どもに、聞いて。もう古いし、この前枝が折れたみたくて、危ないからって、」

「あー、うん。」

「だから、この前から、花が咲きだして、」

「うん。」

ふわりと、風が舞って、花が揺れる。

「満開で、最後だからって、頑張って、咲かせてるからって、」

「うん。」

「すごく綺麗なのに…あたしにしか、みえないから、何度も、見に来てて、」

「うん。」

「忘れないでって、言うんです。木が、そう言ってくる。だから、忘れないように、したいんです。」

「そっか。」

「グレイ、さん、も、」

「うん、どうした?」

「……視えてるんですか、」

「みえてるよ。満開な花、ちゃんと、みえてる。」

「本当に、ほんと、ですか、」

「ああ。桃の花が咲いてるって、誰にも言ってないんだろ?」

はい、と小さく震える声で言うルーシィは、今にも泣き出しそうだ。

信じられないのだろうか、今までずっと一人だったのだろうか。それは自分もそうだから、分かる、分かってしまう。

だからこそ、信じてほしかった。

こうして、ここにいること、同じ人間が、ここにいることを。

だから、ねえ、

「俺は、お前と、同じだよ。」

「………ッ、」

ぽん、と頭を撫でてそう言えば、ついにルーシィは一つ涙を零した。

それは、嬉しいからなのだろうか、それとも、苦しいからだろうか。

どうか嬉しいと思ってほしいと、内心焦っているグレイはそれを見せることなく、ニッと笑った。

「一人なんかじゃ、ねぇよ。」

ぐい、と涙を拭う姿はあまりにも頼りない。

選手を支える姿からは想像出来ない、ずっと不安で必死に、守ってきたことなのだろう。

誰にも気付かれないようにそっと、そっと、押し殺して、自分だけに抱え込んで。

それも知っている、その苦しさも、知っていた。けれど、きっと彼女は自分以上に一人なのだろう。

「グレイさん、」

「どうした?」

「あの、お願いしたい、ことが、」

「おう、なんだ?」

桃の花が、風に揺れる。

ふわりと舞うと、匂いすらしそうで。目に映る、その色でいっぱいになる。

「忘れないで、いてほしいんです。
ここに、桃の木があったってこと。こんなに、綺麗に、咲くってこと。」

忘れないでと言ってくる、その声は黒尾にも聞こえてきた。

ずっとずっと、伝えているのだろう、誰かに聞いてほしくて。耳に、届いてほしくて。

169:お香しゃちょー◆kk:2018/01/15(月) 22:53 ID:.wM

その声を最初に拾ったのはルーシィで、彼女しかいなくて、だからこそグレイにもこんなにも願ってくる。

忘れないで、どうか、ここにいたことを覚えていて。

頭に直接流れこむその願いに、ルーシィの泣きそうな瞳に見つめられてもう、心がじんわりと震える。

こんな感覚は久しぶりだと、思いながら、ふっと笑みをのせた。

「ああ、忘れねぇよ。」

「……………、」

「ちゃんと覚えておく。この景色だって、こーんなに綺麗なんだ。忘れるわけない。だろ?」

「はいッ、」

ふわりと、嬉しそうに微笑むその表情に、また心臓が震えた。

季節外れの花の香りと、試合中ずっと険しい表情しかしていなかった今日初めて会った他校の後輩の、この柔らかな表情に、目が離せない。

頬をわずかに赤くして、潤んだ瞳で、嬉しそうに微笑む彼女が、あまりにも純粋で優しく、綺麗だと、思った。

「なあ、今ケータイ持ってるか?」

そして、もっと知りたいと思った。

きょとん、とした顔を向けるルーシィにニッと笑みを浮かべて、グレイはそっと自分のスマホを取り出す。

ーーーーーーーー

今は半信半疑かもしれない、けれど、信じてほしい。

こんな風に願うのも、こんな風に笑っていてほしいと願うのも、これが初めてで。

できれば、怖がっていることを話してほしい、怯えているのはきっと、他の人には視えない不思議な存在ではない。

この真っ直ぐな彼が怖がっているのは、きっともっと、違うものだろう。

だからこそ。

同じものをみている君に、また会いに来るから。

170:お香しゃちょー◆kk:2018/01/15(月) 23:12 ID:.wM

追加設定!!

天馬学園

ヒビキ
天馬学園3年。男子バレー部主将、ウイングスパイカー。

イヴ
天馬学園2年。男子バレー部副主将、セッター。

171:お香しゃちょー◆kk:2018/01/15(月) 23:46 ID:.wM

額から落ちる汗を持っていたタオルで拭って、大きく開けられた扉の前に背を向けてしゃがみ込む。

現在、東京の天馬学園の校舎を借りて氷谷高校、天馬学園、星野高校で合宿中だ。

そして同じように隣に足を伸ばしてダラリと座り込んでいる人物に、ルーシィはちらりと視線を向ける

「グレイさんは、」

「おう」

休憩だと言っているのに何やらコートの中で楽しそうに声を上げているスティングたちの姿を呆れたような目で見ていたグレイは、ルーシィの声に視線をそちらに戻す

今では分かる、この人は自分と同じものを視ているのだと、それがこうして目を合わせれば分かるから

「いつくらいから、視えてたんですか?」

「んー…、何か人と違うもん視てんなぁ、って気づいたのは小学生ん時か。視えてたのは、ずっと視えてたけどな。そっちは?」

「あたしも同じような感じです」

いつから、と言われるとたぶんそれは生まれたときからだろう

それが人間ではないと、他の人はみえていないのだと、認識したのは確かに小学生のころくらいだ

「ルーシィはさ、」

「はい」

「視えてるって、誰に言ったことあるのか?」

ぐい、とタオルで汗を拭うグレイをちらりと見てからルーシィはまたコート内に視線を向ける

窓から入り込む太陽の光で、スティングの自分と同じ色の明るい髪が眩しく見えた

「親には言いましたけど、信じてもらえませんでした。あと、小学生のときも友達とか先生に言ったこともあります」

「うん」

「でも、誰にも信じてもらえませんでした」

コト、と体育館の床に持ってたスクイズボトルを置くルーシィは少し俯いている。さらりと流れる綺麗な金髪が顔を隠していて、グレイはそっと目を細めた

「それから、誰にも言ってません。怖くて…」

「うん」

そうだよな、分かるよ、とグレイは昔の記憶を引っ張り出してきて苦い思い出に無意識に眉を寄せる

分かる、すごく分かる、あの信じてもらえなかった絶望と、自分は一体何なのだろうというおかしくなりそうな不安と、子どもながらにそれが怖くなった

「俺は、さ」

「はい」

伸ばしていた足をずるずると動かして胡坐をかく。はあ、と息を吐いてからタオルで額に浮かぶ汗を拭って、視線はコートのままでグレイはゆっくりと口を開いた

「親にはすぐに言った。けどまぁ、否定もしなかったが肯定もしてくれなかった。ま、頭っから否定されなくて良かったとは思ってけどな」

「はい」

「あと、リオンがさ」

そう言いながら無意識に探してしまったのだろう、視線はスティングや天馬学園のヒビキとイヴと騒ぐリオンに向く

ルーシィも一瞬だけちらりとリオンに視線を向けてから、グレイへとそれをまた戻した

「リオンが、俺の言ってることを否定しなかった」

「…幼馴染、でしたっけ?」

「ああ。家が近所で、ほんとガキのころから一緒にいた。だからだろうな…俺が変な行動とるのもずっと見てたし、俺がおかしなこと言うこともずっと聞いててくれたから、今でも否定しない」

それに救われてたところはある、とグレイがぽつりと落としてからルーシィに視線を向ける。

おそらくここが、唯一自分とルーシィが違うところだとグレイは思っていた。

誰にも信じてくれなかった、と言うルーシィは自分よりももっと、ずっと辛く苦しかったのだろうと分かってしまうから、胸が痛い

「良かったです」

一瞬目を細めたルーシィが、ふにゃと笑みを浮かべて言った言葉に、グレイはきょとんと目を丸くする

「グレイさんは、一人じゃなかったってことですよね?」

「まあ、」

「でも、ちょっと羨ましいし、ずるいって思います…あたしには、そんな友達も幼馴染も、いなかったから」

くしゃり、と今度は苦しそうに笑うルーシィに、今度こそグレイは胸が締め付けられた

だから、信じてほしいと思った。どうか、手を伸ばしてくれればいいと

「これからは、俺がいるだろ。」

まっすぐ目を視て言えば、ルーシィは驚いたように目を丸くする。その素直な反応にグレイは笑って、そして手を伸ばしてくしゃくしゃと彼の手触りのいい金髪を撫でた

「一人じゃねえって、言ったろ」

「ッはい!」

グレイの笑顔に、温かい手に、ルーシィは嬉しそうに笑った

172:お香しゃちょー◆kk:2018/01/15(月) 23:54 ID:.wM

忘れないよ。

前触れがあったわけではない。

ーーーーーーーー

全体練習が終わってからそれぞれが個人で自主練を行っている時間。

普段は洗濯などをしているのだが、スティングたちに手伝われ、その日はスティングとローグと第三体育館にいた。

そこにはグレイやヒビキ、イヴだけでなく少し話したいと思っていたリオンもいたため、不満そうな顔をころりと変えて練習をサポートした

こればかりは少し感謝してもいいと内心思っていたルーシィだが、何故か得意げに笑うスティングとローグにイラッとして礼は言っていない

そして三対三やブロックやトスの練習をしながら時計がそろそろ引き上げる時間を示そうとしたとき

ふと、何かを、感じた。

ビク、と一番に肩を揺らしたのはルーシィで、持っていたバレーボールを抱え直して視線を彷徨わせる。

(何…?)

ぞわぞわと肌が震える、何かがいる気配がするけれどそれの姿が確認出来ない。

合宿が始まってから一度も感じることの無かった、何かの気配に、ゾクリと背筋が震えた。

「ルーシィ?どした?」

そばにいたスティングが不思議そうに声をかけてきたため、やはり自分だけかとルーシィは「ううん、」と曖昧に答えるもののこのおかしな感覚は消えない。

どうする、ここを離れたほうがいいか、と思いながらもいい言い訳が思いつかないでいれば、ふと、グレイと目が合った。

はっとしたルーシィが呼ばれるままにグレイのそばに駆けていけば、くいと手を引かれる。

「……何かいます」

「ああ、でも今までここでそんなこと一度も無かったぞ。」

「すごく曖昧で、はっきり分かんないです。でも確かに…」

コソコソと話してる二人に、残されたメンバーは不思議そうに首を傾げるばかりだ。

リオンだけは何かを言いたげに二人を見つめていたが、微かに震える窓に気付いてちらりと視線を向けるもののそこには無い。

「ねえ、二人で何してるの?」

ヒビキが不満そうに声を上げ、二人が答えようと顔を上げた瞬間、











































バンッ!!と大きな音をたてて開け放たれていた体育館の扉が勢いをつけて閉まった。

173:お香しゃちょー◆kk:2018/01/15(月) 23:59 ID:.wM

「ええッ!!何、誰、ええッ!!?」

「おい、どういうことだ?」

「ビビったー!!!何だよ、これッ、」

「え、誰もいなかった、よね…?」

ビクリと大きく肩を震わせたイヴが一番に叫び、そのそばで彼の声に顔をしかめたローグが少し眉を寄せてその閉まった扉を見つめる。

それから、あまりにも大きな音に抱えていたボールを落としたスティングにちらりと視線を向けたヒビキが最後に落とした言葉に、全員がゾクリと背筋を震わせた。

ヒク、と微かに頬を引きつらせたスティングが落としたボールを拾ってから扉へ向かおうとするのに黒尾がハッとする。

「スティング待て!!近づくなッ、」

「スティング!!!」

何を見たわけではない、それでも直感でそう思ったグレイとルーシィが叫び、それにスティングがビクリと足を止めたところで、今度はぐらりと、床が揺れた。

「え、」

誰かの微かな声が落とされた瞬間に、ドンッ、と鈍い音が響いて、そして、照明の明りが落ちた。

174:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 00:01 ID:.wM

くらりと、揺れた足元と、頭の中。

ふと浮かんだのは、暗い暗い、部屋。

どこかで、見たことのある風景だけれど思い出せない。靄がかかったようで、ぼんやりとしか浮かばない。

それでも、ひどく寒かったのを覚えている。

怖くて、何かに見られている感覚が全身を包んでいながらそれが何かが分からない。

窓から感じられる外の気配は完全に日が落ちていて真っ暗だ。

埃っぽい空気と、何かが腐っているような気持ち悪い匂い。

ケホ、と小さく咳をすればそれすらも呑みこまれそうな気配がどこかにあった。

膝を抱えてしゃがみ込んで、時折来る寒気にハーフパンツのためにむき出しだった足が冷たくなっていく。

上だけでもジャージを羽織っていて良かった、と思うくらいに寒くて寒くて、でも季節的にはまだ夏が終わったころだったはずなのに。

ガタガタと、身体が震える。

ねっとりと向けられる視線と、どこかにあるヒトではない、気配。

自分はそう言ったものとよく遭遇することは認識していたけれど、ここまで恐ろしいと思ったのはおそらくこの時が初めてだったと思う。

密閉された空間の中にいるのはおそらく、そのモノと、自分だけ。

自分は視えるだけで、気配を感じるだけで、祓ったり倒したりは出来ない。そんな技術は誰にも聞いたことがない。

ああ、誰かに聞いておけば良かったと少し現実逃避気味に思いながらも、ぞわりと動いた何かの気配に、ひっと小さく声が漏れた。

怖い、怖い。誰か、お願い、ここから出して。

ぎゅっと、小さくなって、顔を膝に埋めて、どうしようもない現実に涙が溢れた。

誰か、なんて、きっと誰も来てくれない。

よくて帰りが遅いと心配した親が見つけてくれるだろうが、それじゃあたぶんダメだ。遅い、自分は、もうダメだ。

どうして、自分だけがこんな目に合うのだ。

どうして、どうして、一人で、怯えて、誰にも信じてもらえず、こんな風に、何かに怯えなくてはいけないのか。

何度も思ったことだった、何度も、恨んだことだった。


怖い、寒い、誰か、ここから出して。
お願い、お願い。誰か。


そればかりを願っていたあの時、最終的にどうなったのだろうか。

どうして、こんなことを思い出しているのだろうか、あれ、だって自分はさっきまで体育館にいたのに。

ズル、と音がする。
後ろから、何かの音がして、振り返ってしまった、瞬間。




見 ツ ケ タ




声が聴こえて、すとんと、意識が落ちた。

175:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 00:14 ID:.wM

ふ、と瞼の上から光を感じてそろそろと目を開ける。

眩しいほどの照明の光に目を細めたスティングは、一番にそばにいたローグを確認した。

いつの間に座り込んでしまったのか、二人揃って体育館の床にペタンと腰を下ろした姿だった

自分と同じように眩しそうに目を細めているローグは、その他に変わった様子はない。

それにホッとしたスティングはぐるりと周りを見回した。

「ここ、どこだ」

思わずポツリと呟いたスティングの言葉に、ローグも顔を上げる。

体育館、なのは間違いないが、さっきまで自分たちがいた場所ではない。

掌に触れた床はどこか埃っぽくさらりと撫でれば指先が少し汚れた。

少し体重を移動させればギシリと音が鳴り、さっきまでいた第三体育館よりも幾分狭い。

さっきの大きな揺れと、一瞬の暗闇、それに、どこか古い感じのする体育館、理解が追い付かない光景に思考が、止まる。

「どういうことだ、」

「わ、かんね、え、なんだこれ」

「おいスティング。ケガはあるか?」

あまりにも現実味の無い状況にポカンとしていた二人に静かに声をかけてきたのは、同じように何とも言えない表情を浮かべたリオンだった

怪我も無さそうである彼の姿を見て、スティングはいつの間にか止まっていた息を吐き出した

「リオンさん!!」

「ああ。あとローグも平気か?」

「え、ああ、はい。」

そうかと二人の普段と変わらない様子にリオンもホッとしつつ、少し離れたところで同じようにポカンとして回りを見回しているヒビキとイヴの姿も確認出来たためにホッと息を吐く

しかし、その体育館の中にビリと広がったグレイの声に、肩を震わせた。

「おいルーシィ!!」

薄暗いような気さえする静かな空間に、突如響いたチームメイトの名前にハッとしたのはスティングとローグだ。

まだ少し震えた足で立ちあがり、グレイがいるところを見ればすぐそばで床に倒れている金髪が見えて目を丸くした。

「ルーシィッ!!?」

「ッ、」

慌てて名前を呼んだスティングと小さく息を呑んだローグがバタバタとグレイのところに駆けて行き、それに続いてリオンとヒビキ、そしてイヴも自然と集まる

ギシリと大きく床が鳴るその違和感にも、ゾクリと足が震えた

横向きに寝転がりグレイに肩を揺すられているルーシィだが、意識がないらしく目を覚まさずピクリとも動かない。

「ルーシィどうしたんですか!?」

「分かんねぇ、揺れが治まったと思ったらそばで倒れてた」

「ルーシィ、起きろよ、おい、」

ローグが肩に触れて名前を呼ぶが、ルーシィの目は閉じられたままだ。

すう、と小さく息をしているのは分かるために少し安堵するが、ここまで騒がしくして、何より身体に触れているのに目を覚まさないのはおかしい。

その上時折うなされたように眉を寄せるために、スティングはますます混乱して泣き出しそうだ。ルーシィ、と必死に彼の名前を呼ぶ1年の姿にグレイは小さく舌打ちを漏らす。

「やべぇぞ…」

小さく小さく吐き出した言葉は、隣に来ていたリオンだけが聞いていて、自然と顔をしかめた

リオンは、グレイが他の人間とは違うものを視ているというのを知っている

幼いときからずっとそばにいれば彼が嘘を言っているとは思えなかったし、何より自分も変なことに巻き込まれたことがあるため信じないわけがなかった

だからこそ、こうして無意識にだろうグレイから出た言葉に、また焦りが浮かぶ

「あの、」

控えめだがしっかりとした声で言うヒビキに、自然と全員の視線が向く。

「ルーシィちゃんの手、すごく冷たいんだけど…」

176:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 16:18 ID:IX2

不自然なほどに白くなっていたルーシィの手を握るヒビキの少し不安そうな視線を受けたグレイはハッとして、ハーフパンツのためにむき出しだったルーシィの足にそっと触れる

そしてそこから感じる冷たさに眉を寄せて、自分が羽織っていたジャージを脱ぎながらもザっと体育館の中を見回した

幸いなのか分からないが、体育館の隅に置いていたそれぞれのジャージやスクイズボトルはそのままだった

「スティング、お前のジャージも貸せ」

「は、はい!!」

「ヒビキはそのまま手ぇ握ってろ。」

「了解」

グレイは脱いだ氷谷のジャージとスティングが持ってきた星野のジャージをルーシィに被せる

スティングとローグはルーシィの状態を見てから顔色が悪い。

「グレイ」

「正直、ここまでのは初めてだな」

「ああ」

自然と浮かぶ冷や汗に気付かないふりをする

同じようにルーシィの様子を伺っていたローグが震える声で自分の名前を呼ぶスティングに気付く

「ローグ、」

「なんだ」

「あれって…」

スティングが指差した先、そこにあったのはステージの横の壁にかけられている校歌の歌詞。その最後にあった学校名に、ローグも目を見開いた

「嘘だろ…さっきまで東京にいたのに、」

「どういうことだよマジでッ…」

さっきよりも焦り出した星野1年二人に、四人もその視線に習って歌詞がかけられている壁を見つめる

「……聖城中学校、ですね」

「おいローグ、どこの中学だ?」

すうすう、と小さく息をするルーシィを見つめていたローグにリオンが声をかける

ヒビキも、無意識にルーシィと繋いだ手を少し強くして、揃って顔を青くしている二人を見つめた

「…聖城は、ルーシィの出身中学です」

「……って、ことは、」

「もちろん、神奈川にあります」

動揺しながらもハッキリと告げるローグ。

カタカタと揺れた窓の音にも誰かが震え、外は夜なのか真っ暗だ。どこか古い印象の受ける体育館だが、照明は眩しいほどに煌々と光を降り注ぐ

しんと静まり返った広々とした空間で、どこかゆらゆらと揺れるようなねっとりとした空気を感じたグレイは未だに意識が戻らないルーシィを見つめて、小さく息を吐いた

「神奈川か…」

移動したのか、どうやって、しかもこのメンバーをそのまま連れて来る意味は何だ、とグレイは内心頭をフル回転させるがいい答えは見つからない

ルーシィの中学ということは少なからず彼女が関わっている可能性が高いが、意識が戻らないと話も聞けない

体温が低くなっているルーシィはすぐに起こさないと危ない、それは分かってるがその方法が分からない

今までここまでの規模で、しかもここまでの人数で怪奇に巻き込まれたことが無かったため、グレイも動揺しているもののそれを表に出すわけにはいかなかった

グレイはそっとルーシィの顔色をうかがう

顔色自体はそこまで悪くないが、身体はやはりひどく冷えている。夢をみているのか、半分引きずられているような様子だ。

「グレイさん」

「どうした?」

ローグの声にグレイが顔を上げれば、彼は何とも言えない表情を浮かべていた

「さっきの、ここまでのは初めて、ってどういうことですか」

リオンとの会話のことを言われているのは分かった、だが一瞬返答に困る

今ここにいるメンバーが、自分の話を信じるという保証はどこにもない。けれど、そんなことを言っている場合でもないと気付いている

ローグだけではなく、不思議そうな様子のスティングとイヴ、ヒビキを見て、グレイは深く溜息を吐いた

「俺は、」

とりあえず自分のことだけ話そうと口を開いたとき、体育館の外から音が聞こえた

「ッ、」

リオンは小さく息を呑んだ。グレイは体育館の入り口に目を向ける。ヒビキは未だに冷たいルーシィの手を両手で包んだ

バタバタと、何かが動く音と、微かに耳に届くのは、誰かの声のように思う

バンッ、と扉が勢いよく開いた。そこに現れたのは燃えるような、赤

「一人で突っ走ってんじゃねぇぞアホ!!何かあったらどうすんだ!!」

「うるせぇ!!人の気配がしたんだよ!!ってあれ?」

慌ただしく体育館に飛び込んで来たのは、グレイたちにとっては見慣れないジャージ姿の二人

グレイは、自然と力が入っていた足を緩めた

177:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 16:37 ID:IX2

「な、ナツさんッ!!??」

「星野のスティングとローグ!!」

「は、お前ら何でここにッ、」

なんでココに!?とスティングを指差している人物と、そんな彼の頭をバシリと引っぱたいている男に、リオンとイヴは揃って同じように目を丸くし、突如賑やかになった空間にヒビキははあーと息を吐いて浮かんだ冷や汗を拭った

「ちょっと待て、ナツさんたちがいるってことはここほんとに神奈川!?」

「え、ああッ!!そうだ、嘘だろどうなってんだよーッ!!」

「おい、そもそも何でお前らここにいるんだ、つーかここ一体何だよ、」

「それにそいつら誰だよ!?」

東京組を置いてきぼりにして慌てだした四人に、グレイははいはい落ち着けと手を叩く。

「あなたたち、どちら様ですか?」

「それはこっちのセリフだ!!」

「あーマジどういうことだこれ、」

へたりと座り込んだまま言うイヴに答えながら、はあー、と溜息を吐きつつそばにやって来た二人はふと、床に触れている金髪を見て目を見開く

「ルーシィッ!?」「バニー?」


これだけ大声で話していてもやはり目を覚まさないルーシィは、ヒビキに手を繋がれたまま静かに呼吸を繰り返している

冷えた手を温めるようにヒビキはルーシィの手を両手で包み込み、リオンもジャージの上から彼女の腕をさすっていた

「おい、どういうことだ」

「待て待て、何で俺を睨む」

随分とツリ目だな、と半分関係のないところに意識を飛ばしつつ、じとりと睨んでくる男にグレイは口元を引きつらせた

「とりあえずお前らも落ち着け。ここに来てからルーシィが目を覚まさない。これは今一番ヤバい状態だから、それをまずは何とかしたい」

「目を覚まさないって…バニー!」

「ルーシィ!!おいルーシィッ!」

さら、と顔を隠してた金髪をそっと撫でてやりながらルーシィを呼ぶ声に、ピクリと震えた手に気付いたのはヒビキだ

「ルーシィちゃん?」

手を握って顔を覗くが、やはりまだその目は閉じられたままだ

けれど今微かに動いたと思いヒビキがちらりと視線を向けた先、グレイもそれに気づいたようで目が合った

「おい、えーっと、お前ら!」

「ナツさんと、ガジルさんです。火ノ国っていう神奈川の強豪校の主将と副主将です。」

「さすがローグくんだね」

「それと……ルーシィの中学の先輩です」

178:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 17:16 ID:IX2

それが一番知りたい情報だっただろう、と言わんばかりに視線を向けて来るローグにグレイはニッと笑い、ヒビキもなるほどと思いながらもルーシィの手は離さなかった。

「えーと、ナツはどっちだ?」

「俺だ。なんだよ」

「そのままルーシィの名前呼び続けろ。あと、そっちのガジルもな」

どういうことだと、二人だけでなくイヴとスティングも揃って首を傾げるがローグとヒビキは何か気付いたのか表情は変わらない

リオンもただずっとルーシィの腕に触れて体温を分けていた

「今、俺たちは怪奇ってやつに巻き込まれてる。それも相当の力で。」

「怪奇って、幽霊とかが関わってるってことかよ」

「ああ。信じねぇってんならそれ以上は何も言わないが、今この異常な状況をまずは受け入れろ。」

真剣に真っ直ぐに言葉を放つグレイに初対面でありながらもナツとガジルも自然とその言葉をするりと呑み込んだ。

本当はあまり言いたくないはずで、あまり知られたくはないはずで、けれどそうも言っていられない状況であるグレイの姿に、リオンはただ寄りそうようにそばにいることしか出来ない

正直この状況で頼りになるのはグレイだけだし、ルーシィが目を覚ませばきっと二人で何とかしてくれるのではないか、と微かな希望だってある

ルーシィから直接話を聞いたことはないし、グレイからも何も言われていない。

けれど、二人のどこか似た雰囲気と、気配、そして同じところを見ているような視線に、きっとルーシィも同じなのだろうとリオンは気づいていた。

だから早く目を覚ましてほしい、大丈夫だと伝えたい。怖くないからと、言いたいのだ。

「で、これは俺の予想だが、お前らの中学時代が関わってるのはたぶん間違いない。ここがどこだかもう知ってるか?」

「…聖城、だろ?お前ら外に出たか?ここは確かに聖城だけどよ、俺たちがいたときの校舎でも体育館でもねェ」

「どういうことですか?」

「この体育館もそうだが、一番分かりやすいのは校舎だ。たぶんあれは、旧校舎。建て替えられる前の木造だったときの校舎だ。俺らも初めて見た…ギヒッ」

二人が飛び込んで来たまま開けっ放しになっている扉の外はここからでは見えない。

しかし不可解そうに言うナツとガジルにその言葉が嘘ではないと分かってしまい、誰かの息を呑む音が聞こえた。

年代も違うのかよ、とまた舌打ちが漏れそうになったのを抑えつつ、グレイはちらりとまだ意識を飛ばしたままのルーシィに視線を向ける。

「ルーシィはたぶん、お前ら二人の声に、反応してる。」

「……ルーシィ」

眉を寄せた少し苦しそうなルーシィの表情にナツはわけも無く悲しくなりながらも、さらりと指先を流れる金髪を撫でながらも呼びかける。

中学のとき、何度も呼んだ。何度も、あの綺麗な目を見た。

声が届くというのなら、もう一度あの目を見れるなら、何度だって呼んでやる。だからほら、早く目を覚ませ。

そうしないと、からかうこともできないだろ。

「ルーシィ。」

手触りのいい金髪を撫でる。そして、彼女の震える瞼をただ見つめていた。

179:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 20:51 ID:IX2

終わりのない真っ暗な空間と、寒さと、気味の悪さ。

カタカタと震える身体を抱え込んで、丸くなって、そして唯一の扉だけをじっと見ていた。
微かに動くだけで埃が舞う、何かに見られている、気配がする。

ああ、ここはどこだったろうか、ズキズキと痛みを訴えてきた頭にじわりと涙が浮かんだ。
痛い、頭が、震える、何かが流れて来る。
ずる、と身体から力が抜けて座っていることすら出来ずにパタリと横になった。

そのときにふわりと舞った埃で一つ咳をしつつ、そっと目を閉じる。

この景色は、見たことがない。

おそらく、誰かの、思い出だ、これはどこだろう。

歩くたびに軋む音がする木造の建物、その廊下。楽しげな、子どもの声。

しかし自分に向けられる視線はひどく冷たいものだ。

この感覚を、自分は知っていた、誰も信じてくれなったあのとき、こうして冷え切った目で見られていた。

ぞわりと震える背中には冷や汗が伝い、それでも一歩一歩歩く、そのたびに、廊下が軋む音が鳴る。

やめて、どうして、どうして誰も信じてくれないの、おかしいのはそっちだろう、どうして、何で、何で。

ぶわりと溢れてくる感情は、しんしんと降り積もる雪のように心をひどく冷たくさせた。

静かに壊れていく、音がする。悲鳴を上げる、苦しいと、怖いと、どうしてと。

ぶわりと溢れてきた感情は自分とリンクしていて心臓が痛い。

誰かの、記憶、思い出。つらい、苦しい、過去か。

その光景が一瞬弾けて、意識が浮上する。けれどやっぱり、どこかが痛んで浮かんだ涙が頬を伝った。

ふ、とのろのろと目を開けた先、扉はやはりずっと閉まったままだ。

ヒタリと背中に触れる冷たい何か、それがどんどん体温を奪っていくような気さえしてひどく怖い。

けれど振り向けない、確かにすぐ後ろにいる何かを見ることが出来ない。怖くて怖くて、もう、身体も動かない。

つ、と流れた涙は静かに頬から落ちる、それを拭う、気力も無かった。

誰か、誰か。

「……ッ、」

声も、もう出ない。喉が、震えない、声の出し方が分からない。

ああ、ダメだ、これ以上ここにいたら、ダメだ、怖い、どうしたら、いいの。

ずん、と重くなる空気、押しつぶされそうなほどの気配に吐き気が、する。

ーーーーーーーー

ああ、そうだ。あの時の、記憶だ。

閉じ込められて、絶望しか感じなかった、本当に、死さえ覚悟したあの時、その扉を開けてくれた、人。

名前を、呼んでくれた人たち。

手を、身体を、温かい体温で包んでくれた、人たち。

思い出した、あの時も、そうだ、助けてくれたのは、あの、

180:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 23:07 ID:IX2

「ルーシィ、」「バニー。」

瞬きを繰り返せば、あの人の桜色が見える。

「ナツ、さん?ガジルさん、」

「目ェ覚めたか」

指先から伝わる体温に不思議に思って視線を向ければ、どこかホッとしたような表情を浮かべたヒビキがいる。

「ルーシィ平気かい?」

「ヒビキ、さん、」

何故かひどく冷たい手をぎゅっと握ってくれる手が温かい

「「ルーシィッ!!」 」

「ルーシィちゃん大丈夫?」

「ルーシィ、苦しくないか?」

次々に聞こえる声。泣きそうなスティングとローグ。そしてイヴも安心したように笑い、そっと腕に触れてくれていたリオンは顔を覗かせた

「ルーシィ、起きられるか?とりあえず今分かってることを説明する。」

グレイの何とも言えない表情を見て、厄介なことになったと察したルーシィは起き上がろうと手を床につけた

「ッ、」

体を起こそうとしたが力が一気に抜けた。しかし目の前の人物に抱き留められる。

「顔色が悪ィ。しかも何でこんな冷てェんだ」

「ナツさん、」

しっかりとルーシィを支えたナツはそのまま上半身を起こすのを手伝ってやる

何とか座った体勢になったルーシィは、肩と膝にかかるジャージを返そうと思ったが、スティングにまだ使っておけと言われたためにそれに甘えた

「どこまで覚えてる?」

「体育館が揺れた、あたりです」

それは大体全員同じだなとグレイは頷き、何か含みがあるような目でルーシィを見つめる。

「正直、結構マズイと俺は思ってる」

「あたしもそう思います。ここは聖城ですか」

「正解。やっぱり何か見たか?」

グレイのであろう大きいの青のジャージを無意識に握る

「おい、二人で何納得してんだよ」

二人が何やら分かったように話を始めたことにガジルが首を傾げつつも疑問を投げかける。それはおそらく残りのメンバーも同じだろう

「…俺とルーシィは、日頃からこういうことに巻き込まれることが少なくない。幽霊とか妖怪とかそんなんが、俺たちにはいつも視えてる」

それこそ毎日のように、昔からずっと。

「…だからか、」

ポツリ、と落とされた呟きはナツのものだ。

「ルーシィ、お前中学のとき階段から落ちたことあっただろ。」

「え、覚えてたんですか?」

「そりゃな。結構驚いたし。」

どういうことだと、ガジルがナツを見る

「あの時、確かに誰かに押されて放り出されたような感じで落ちてきたろ。あれもその、幽霊とかそういう関係なのか?」

「…ごめんなさい。あの時、受け止めてもらって、その、ケガ、」

途端に顔色を悪くしたルーシィ。ナツは慌てて首を振った

「別にそれはどうだっていいんだよ!思い出さなくていい!!」

「お前一人受け止められなかったこいつが悪ィんだ、気にすんな」

「うるせぇ!!」

ルーシィ曰く、学校の中で油断していたら、突然階段から突き落とされてしまったという

それにナツが偶然居合わせ、落ちてきたルーシィを抱き留めたまでは良かったが、勢いに耐えきれずに後ろにぶっ倒れ手首を捻ったのだ。

「まあ言いたくなかったのも、言えなかったってのも、あったんだろうが…怖かったんだろ、言うのが。」

そう言うガジルにルーシィは慌てて首を振る

「あたしが隠してたんです!だから謝るのは巻き込んだあたしです!!…あの、信じてくれるんですか、あたしがその、」

「あの時のことと、今と、それで信じないわけないだろ。相変わらずバカだな、ルーシィ」

「信じるぜ。お前が何か視えてることも、今のこのおかしな状況もな。ギヒッ」

はっきりと言うナツとガジルに、ルーシィは目を丸くする。

「俺も信じるぞ!ルーシィ!!」

「仲間を俺も信じるぞ」

「僕も信じますよ。というかなるほどなって納得出来ます」

「俺もかな。グレイがたまに一人でブツブツ何か喋ってたのはそれのせいか」

当然という風に言い切るスティングとローグ。納得と言うイヴと、思い出し笑いをするヒビキ

「良かったな、ルーシィ」

ふっと笑って言ってくれたのはリオンで、言葉を探すルーシィにまた彼は小さく笑った。

「グレイと同じ感じがしたから、俺は気づいてた。言わなくてすまない」

「え、」

「もちろん、俺はグレイのことも信じてるし、ルーシィのことも信じる。」

ルーシィはリオンが最後に言った言葉が嬉しくて、くしゃりと、笑みを浮かべた

181:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 23:28 ID:IX2

「で、この状況をどうするか、だ。やっぱり聖城絡みか?」

「きっと。ナツさんガジルさん、聖城にあった木造の古い倉庫みたいなヤツ覚えてますか?」

また指先が冷えてきたルーシィの手を今度はスティングが握り、ヒビキはそっと背中を支えてやる

それでもまだ体調が万全ではない様子のルーシィは、グレイからの問いに元先輩であった二人に視線を向けた。

「…倉庫って、あの焼却炉があったっていうところか?」

「はい」

「あれが、関係してんのか」

すぐにピンときた二人はそれに伴って眉を寄せ、ローグがどういうことだとルーシィに続きを促した。

「ルーシィ、

「えと、聖城に、昔からずっと壊されてない、古い木で出来た倉庫みたいな小さな建物があるのよ」

「それとどういう関係がある?」

「あー俺が説明する。あの噂話のことだろ?」

「あ、はい。」

ナツは全員の視線が集まったのを確認しながら、記憶を引っ張り出すようにゆっくり話し出した。

「聖城の敷地内に、何で壊さないのか分からないくらいに古い小さな倉庫みたいなのがあったんだ。噂によると昔その横に焼却炉があって、ゴミを貯めてた倉庫だったんだろって話だ」

しんと静まりかえった体育館にナツの声だけが響き、どこか、ゾクリとした空気が流れた。それに気づいたのはやはりルーシィとグレイだったが、ちらりと目を合わせただけで話の先を促す

「何でそれを壊さないかっていうのも、まあ噂でしかねェけど昔、いじめられていた女子生徒がそこに閉じ込められてそのまま死んだって話だ」

「「え、」」

「壊そうとすれば体調不良の奴が出たり、誰かが怪我したりしてたっていうことが頻繁に起こって、だからそのまま放置されてたらしいぜ」

「それって、」

「まあ、俺らの間ではその女子生徒の呪いだとか何だとか言われてたな」

「ええ!!」と思わず叫んだのはスティングと言うで、無意識に繋いだ手に力を込めたのかルーシィが「スティング、手痛い」とぶんぶんと腕を振った。

イヴうるさい、と淡々というヒビキに、ガジルは可笑しそうに笑みを浮かべる。

「おい、まだ続きあっけどお前ら大丈夫か?」

「続けてください。」

呆れた様子のナツにローグもこれもまた表情一つ変えずに先を促す。

溜息一つ吐き出して、ナツが少し躊躇いつつも続けた。

「で、俺とガジルが3年のときだから、確か女バレの2年か?」

「ああ、確かそうだ。」

「…ルーシィが、その2年だったやつらに噂の倉庫に閉じ込められたことがあったんだよ」

「「はあ?」」

思わず落とされたスティングとローグの声が幾分トーンが低い。

「ちょっと、あんた主将だったんじゃないんですか、何でそういうこと放置してんですか。何してたんですか。」

「俺は主将だけど男バレのだ!女バレまで見てられるか!!」

「お前が女バレの主将に苦手意識を持つからだろーが」

「ガジルそれ今言うなよ!!エルザすっげー怖ェんだぞ!」

主将がそれかよ、とグレイとヒビキからの何とも言えない視線も受けて、ナツは口元を引きつらせた。

俺も同罪だが、と言うガジルとすっかり居心地が悪くなった様子にナツに、慌ててルーシィが口を挟む。

「でもあの時、あたしを助けてくれたのはナツさんとガジルさんです」

「まあ、そうだけどな。あれはほんとにビビったぜ」

「よく考えたらあの時も確かにおかしかったな…ギヒ」

「放課後の練習の後、ルーシィの荷物はあるのにいねえって女バレの1年たちから聞いて俺とガジルで体育館の倉庫とかは全部探したんだ。でも見つからなくて、マジで焦ったぜ」

「外はもう暗くなってたしな。で、まあ怪しかった2年を俺らで問い詰めたらあっさり吐いたから、急いでその噂があった倉庫に走った。1年には先公呼びに行けって伝えてな。」

あの時を思い出すように、それが伝わるように二人は視線を向けて来るメンバーを見返す。

ヒビキに背中を支えられているルーシィはやはり顔色があまり良くなくて、ああ、嫌なことを思い出させていると心が痛んだ。

「普段だったら鍵がかかってるはずだったのに、あの時それは壊れた。それで扉を木の棒みたいなやつで開かなく抑えているだけだったから、急いでそれを外して開けようとしたん。だけどよ…」

「全然開かなかったんだ」

182:お香しゃちょー◆kk:2018/01/16(火) 23:35 ID:IX2

ゾクリ、と確かに全員の背中が震えた。

小さく揺れた照明がカタカタを鳴ったためにグレイが観察するように体育館を見回すが、どこにも何もいない。

それはルーシィも同じだったらしく、すっかり顔色が悪くなっているスティングの手を握り返してやった。

「おかしいと思った。それとめちゃくちゃビビった。けど、中にルーシィがいるんだからいつまでもビビってはいられねェだろ」

「俺とナツ、二人で必死になって扉を開けて、そしてバニーも無事に助けた。」

「けど、もう夏だってのにルーシィの身体は冷え切っててよ、低体温症になりそうだったって後から聞いてすっげー驚いたぜ」

はあ、と肩を落とすナツに、グレイは今度はルーシィに視線を向ける。

その視線を受けて、ルーシィもこくんと静かに頷いた。また、身体が冷えそうな気がして無意識に指先を撫でる。

「さっき、その時のことを夢でみてました。」

「だからそいつが絡んでるってことか。」

たぶんそうです、と言うルーシィはまたあの時の記憶が蘇ってくるようで唇を震わせる。

まだ、小学校を卒業して数か月しかたっていなかったあの時、あそこまで恐怖を覚えたのは正直初めてだった。

憎しみか恨みか、重く暗い感情を一方的に押し付けられて、じっとりと視線を向けられて身体が凍りそうだった。

183:お香しゃちょー◆kk:2018/01/17(水) 00:09 ID:IX2

「あの時、確かに倉庫の中にはあたしと、何かが、いました。視線を向けられていることは分かったけど、その姿まで捉えられなかったです。だけど絶対に、いた。
…それがその亡くなった生徒なのかも、まだ分からないですけど、あの倉庫が関係してるのは間違いないと思います。」

まだ青白い顔色で、それでもしっかりと言い切るルーシィに、誰もがその言葉が嘘ではないと分かる

「その倉庫って、どこにあるんだ?」

「位置関係が変わってないなら、校舎を挟んで反対側だ」

「とりあえず、行ってみるしかねェな。」

グレイは、開けっ放しのままの体育館の扉をちらりと見てから何やら浮かない顔をしているガジルに視線を向けた

「どうした?」

「俺らさっき外から来たけど、不自然なほどに真っ暗だったぜ。木造の古い校舎と、この体育館しか確認できないくらいには、暗かった。」

「ってことは、その古い校舎を突っ切って反対側まで行くしかないってことですか。」

あっさりと、これもまた変わらないトーンで言うローグに、スティングはさっと顔色を悪くし、イヴとリオンも無意識に眉を寄せた

じわりと感じるどこか居心地の悪い空気も、まだ変わらない

しかしそれを吹き飛ばすような明るい声が、響いた

「学校の怪談みてーだな!!」

「な、何で楽しそうなんですかナツさんッ!」

「スティング、アイツはアホだからよ」

「ガジル聞こえてるからな!!」

何やらぎゃあぎゃあと賑やかになった空気に、ヒビキとイヴはぽかんとする。リオンは溜息を吐き、ローグに至っては気にもしていない

「ナツうるせーなぁ。」

カラカラと笑いながら言うグレイも、ずば抜けて高いナツとガジルのテンションに半分呆れつつもどこか安堵したように力が抜ける

「じゃあ、行きますか。」

ひょいと立ち上がったグレイに続くようにそれぞれ腰を上げる。部下帰りであったらしいナツとガジルは荷物を持ったままだったが、スマホはやはり一切使えないらしい

「ルーシィ、立てるか?」

ぺたん、と座ったままだったルーシィはハッとして声をかけてきたローグを見上げて、まだ震える足で立ち上がった。

肩にかかるグレイのジャージはそのまま借り、スティングのものはローグが受け取る

膝が少し震えたがたぶん大丈夫だろう、ルーシィがそう言えば二人も安堵したように息を吐いた

「おっしゃああああ!!お前ら行くぜ!!」

「お前はいちいち声がデケーんだよ!!」

「何であの人たちあんな元気なんでしょう、ヒビキさん」

「火ノ国って神奈川の強豪?しかもナツってあれでしょ?日本で5本の指に入るとかっていう」

「やっぱ俺って有名人!聞いたかガジルッ!」

「ちょっと黙れやアホ!!」

「なんだと鉄野郎!!」

「ビビりすぎだ。吐くなよ」

「う、うるせーローグ!ビビってねぇッ!!」

「嘘だな」

「スティング、足が震えてるぞ。」

「リオンさんまでそんなこと言わないで!!」

何やらさっきまでの暗い雰囲気が嘘のように賑やかになったメンバーにルーシィはきょとんと目を丸くする

「ナツのああいう性格はこういうとき役に立つな。初対面とは思えねーわ。」

隣にいたグレイがククッ、と笑いながら言った言葉にルーシィもふっと笑みを浮かべて頷く

ナツとガジルも、ヒビキとイヴの王子様キャラに慣れてうまく会話をしている。

ルーシィは、ゆらりと視線を泳がせる

声が、聞こえた

おそらく自分を探していた声。見つけた、というたった一言に、分かってしまった

ああ、また失敗した。もう巻き込みたくないと、思ったのに

ルーシィが顔を上げた先、グレイが静かに穏やかに自分を見つめていた。

「一人じゃねぇ、って言ったろ。何かあったら絶対に俺に言え。今回のことだって、お前のせいじゃない。」

「グレイさん、」

「お前はもう、一人じゃないだろ。」

抱え込むな、と優しく落とされた声に、ルーシィはじんと目の奥が痛くなるのを感じた

優しいな、と思いながらもくしゃりと笑えば、グレイもホッとしたように微笑んでくれた。

「おいグレイ」

「ルーシィ!早く来いよー!!」

早くしろと言うリオンと、手を伸ばしてくれるナツの声に二人もようやく足を進める

体育館の外は暗い、それに誰もがたぶん恐怖を覚えているはずだけれど、動かないわけにはいかないのだ

184:お香しゃちょー◆kk:2018/01/17(水) 02:26 ID:IX2

暗い暗い部屋、静まり返るそこは自分以外動くものも無く。

底から冷えるような空気に、唯一ある小さな窓から外を見れば真白な景色が映った。

しんしんと、振り続ける、真冬の、雪。

本来だったら綺麗だと言えただろう、全ての音を呑み込むようなその空気に安堵の息を吐いただろう。

つ、と指先で窓に触れれば、滴が一つ、零れ落ちた。

自分のものだという認識すら忘れて指先を見れば、真っ赤になって感覚ももう遠い。

痛い、のだろうか、それすらも分からない遠い感覚に吐きだした息も震えた。

ドサリ、と床に寝ころべば制服やむき出しの膝が黒く汚れる。

見上げた天井は随分と低い、迫って来るようなそれにそっと目を閉じた。


ああ、寒い。寒い。
助けて、誰か、ねえ、寒いの。


震える喉はもう声を発することも出来ない。
カラカラに乾いた唇はピリと痛みが走って、血の味が、した。

どうして、どうして。

私はここにいるの、どうして私だけ、こんなところにいるの。

誰も、来てくれない。気付いてくれない。

どうして、ねえ、誰か教えて。

私が何をしたの、何もしてない、ただ一人でいるだけだったのに。

だから嫌いなのだ、信じなければよかった、一瞬でも、信じた自分が馬鹿だった。

許さない、みんなみんな、許してやらない。

暗い暗い、部屋。

だんだんと朦朧していく意識の中で、何を求めただろうか。

手を伸ばせない、動かない、もう。

どうして、どうして私だけ。

ああ、ほら、見つけた。

見つけた、見つけた。待っててすぐ、ほら、すぐだから。












































もうすぐ、むかえにいく。

185:お香しゃちょー◆kk:2018/01/17(水) 16:14 ID:6BI

ゾク、と背中が震え、ルーシィはバッと振り返るがそこには何もいない

ふ、と短く息を吐いて、それでも耳元を霞めたような何かの気配に眉を寄せた

「ルーシィ?」

隣にいたスティングから名前を呼ばれ視線を向ければ、どことなく不安げな顔が見えたために「何でもない」と返せば彼は笑顔を浮かべる

押しつぶされそうな暗闇の中、体育館から伸びた外廊下の先、校舎に入るための非常口の前で立ち止まって体育館から拝借して懐中電灯で中を覗いていた。

「うわ、真っ暗だね」

「そりゃな」

グレイが照らす懐中電灯の先は廊下が続いているのがようやく分かるくらいの暗さが広がっている

天井も所々に穴が開いているほど古く、臭いもどこか埃っぽい

一緒になって中を覗いていたヒビキも若干嫌そうに眉を寄せるが怯えた様子は無い

うーんと、一つ声を漏らしたグレイは、最後尾
にいたルーシィに視線を向ける。

「ルーシィ、ちょっと来い」

ひらひらと手招きされたルーシィは、スティングのそばを離れてグレイの元へと進む

「何かありましたか?」

首を傾げたルーシィに、グレイは持っていた懐中電灯をひょい差し出す。うん?と何だか分からないまま自然とそれを受け取って、不思議そうにグレイを見上げた。

「先頭歩けるか?俺は最後から行くから。」

「分かりました!」

扉の窓ガラスから覗いた廊下は、校舎が古いせいか幅が狭く感じる。

それを見てあっさり頷いたルーシィを少し心配に見つめながらも、とりあえず気配を感じやすい自分たちで残りのメンバーを挟んだほうがいいだろうとグレイとお互い納得する。

懐中電灯を握りながらあ、と何かに気付いたルーシィは顔を上げた。

「あ、そうだグレイさん、ジャージ…」

「いいって、そのまま着てろ。」

そう言えば貸りたままだったと、氷谷のジャージを脱ごうとしたルーシィをグレイはやんわりと止める

まだ身体は冷えたままなのだろう、懐中電灯を受けとる指先が少し震えていたのを見て、でも、と渋るルーシィに今度はニヤリと笑みを向けた

「それに、彼ジャーっぽくていい」

手の甲まで隠れている袖とどこかゆったりとした肩のラインに、グレイはうんうんと何故か満足そうに頷くが、一方ルーシィは顔を真っ赤にして俯く。

「おい、ルーシィに変なことすんなよ」

グレイを遮るように割って入ったナツは、ぐいとルーシィの手を引いてぽすんと腕の中におさめる

「しかも彼ジャーでもねえし」

「えーグレイそれ狙っての?ズルいな〜」

「別に狙ってねぇよ!たまたまだ!」

「おい、ちょっと待てズルいって何だ。」

何故かナツに後ろから腕を回されていることに抵抗もしない影の薄いルーシィもおかしいが、突然入って来たヒビキのセリフもどうかと思う

グレイは思わぬ反撃に弁解し、ガジルはヒビキの言葉にツッコミを入れる、その様子を見ながら呆れながらもローグは息を吐いた

無意識だろうがその場が少し明るくなる、今から入る暗い暗い見慣れぬ校舎を前にスティングは恐怖で顔が引きつっているし、リオンとイヴもどこか不安そうだった

それはもちろんローグもだが、三年たちのルーシィを巻き込んだ明るいやりとりに少しだけ気分が軽くなる

グレイはきっと、意図的だろう、そういうところはやはり敵わないなとローグが思っていれば、隣にいたリオンも気付いたのだろう安堵したように息を吐いていた

「とりあえず彼ジャーは置いといてだな、まだ寒いんだろ、着てていい。」

ったく、と八つ当たりに一度ヒビキの頭を引っぱたいたグレイがそう言えば、ルーシィは少しだけ目を丸くした。

指先がまだ凍るように冷たい、足もむき出しになっている膝下は随分と冷えていた

後ろからくっ付いているナツにもきっとバレたのだろう、少しだけ腕に力がこもるのが分かった

「あ、ありがとうございます!」

嬉しそうに微笑むルーシィに、グレイがぐりぐりと頭を撫で、ナツは少し不貞腐れながらもぎゅうと抱きしめた

「それじゃ、行きますか。気合入れろよ。」

ニッ、とまるで試合の前かのようにいつも通り不敵に笑うグレイに、全員が頷いた。

186:お香しゃちょー◆kk:2018/01/21(日) 17:47 ID:fSs

カチャ、と静かに開けられた扉。キイ、と金属が軋む音が鳴るがゆっくりとそれを開け放ち、ルーシィがまず一歩廊下へと足を踏み出した

暗い廊下の先を一度照らし、天井にもざっと目を向けてからあっさりと進んだ。

そんな彼女に続いて何やら嫌そうな声を上げながらも全員が入ったところで、グレイが最後に校舎へと入る

そしてカチャリと扉を閉めて、歩き出した瞬間

ガチャン、と嫌な音が鳴った

おいおいと振り返ったグレイだが、そこには何もない

ただ嫌な予感がして扉のノブに手をかければ、案の定、それが開くことはなかった

(あー、出さないつもりか?)

正直、正体の分からない存在の狙いははっきりと分かっていない

何度やっても開かない扉に溜息を吐き出して、グレイは仕方ないと先を進むメンバーの後に続いた

閉じ込められた、などという情報は言わないほうがいいだろう、ちらりとルーシィと目が合ったために頷けば、彼女も少し嫌そうに眉を寄せるだけだった

ギシ、と歩くたびに軋む床はどこか埃っぽい。
窓も薄汚れ、天井には所々に穴が開き、蜘蛛の巣が張っていた

明りは先頭を歩くルーシィの持つ懐中電灯と、ガジルがスマホを使って照らす足元の光のみ。電波は入らないが電源はそのままだったため、充電が切れるまでは明りとして使える。

ルーシィのジャージの裾を掴んだまま歩くスティングはまだ表情は硬く微かに手が震えているため、引きはがすことを諦めて仕方がないからそのままにしていた

「ビビりすぎだ。ルーシィが歩きづらいから離せ」

「おまッ、ビビってねぇしッ、いや普通に怖いだろうが!!」

「どっちだよ」

ローグが溜め息交じりに小さく呟いた声にもスティングは震え、リオンがあっさりとツッコミを入れる

リオンの後にはイヴとヒビキが続き、その二人の後はガジルとナツが続いた。

最後尾を歩くグレイは、時折天井やら後ろを見ながら軋む廊下を進みながらも前を歩くルーシィの様子も気にかけていた

一方のルーシィも、懐中電灯で先を照らしつつ、何も気配を感じないことを確認しながら足を進める

はあ、と吐き出した息はどこか震える

懐中電灯を持つ手がまだ冷たくて、スティングが掴むジャージの部分から伝わる微かな熱だけが、唯一温かいと感じた

「マジで学校の怪談じゃねーか!」

「だから何でちょっと楽しそうなんだよ」

「君、やっぱりちょっと…かなりバカなの?」

「コイツはいつもこうだよ」

ナツが相変わらずのテンションで言えばガジルが呆れたように見つめ、ヒビキの失礼な言葉にもあっさりと返すものだから当の本人は少し不貞腐れている

ヒビキも全国でも有名なスパイカーの意外な姿に何とも言えない表情を浮かべる

足元が不安定なためにいつもよりゆっくりと歩きながらも、キシキシと軋む音は止まない。それが余計に恐怖を煽るようだったが、ここまで進んでも特に何も起こらない

しかし、と嫌な空気はずっと続いていると感じているルーシィは周りの気配に集中しながら進んでいた

ギシ、と一度鳴った音、それに一瞬足を止めたルーシィは、ぐん、とまわりの気温が下がったような感覚に目を見開く

そして突然、ぶわり、と一気に鳥肌がたった寒気に、ハッとして天井を見上げる

気配を探っても近くには無い、けれど、けれど、強烈な視線をどこからか感じて冷や汗が浮かんだ

(どこから?)

「ルーシィ?」

すぐ近くからスティングの声が聞こえる、そして背後からは同じように名前を呼ぶ先輩たちの声

その間も見られている感覚は消えない。どこだ、と振り返った瞬間、ルーシィは視えたものに息を呑む

187:お香しゃちょー◆kk:2018/01/21(日) 17:56 ID:fSs

天井に開いた穴、その暗い暗い隙間から覗く、白い顔

血の気がない明らかに温度を感じられないその顔は、不気味なほどにはっきりと暗闇に浮かんでいた

そして真っ赤な目を見開いて、うっすらと浮かべられた笑み

ニイ、とまるで嘲笑うかのように口元だけで笑うそれに、ゾクリと背筋が震えたのが分かった

ズルリ、と伸びて来る腕は同じように青白く細い。しかしそこにを這うように落ちるのは、赤い赤い、血だ

それがポタリと床に落ちた瞬間に、ルーシィはハッとして声を張り上げた

「ナツさんッ!!!」

その真下にいた、ナツに伸ばされる、青白い腕

ルーシィの声で背後に迫る異様な気配に気付いたナツが、目を見開くのが見えた

何で、狙いは、俺のはずだろッ、と叫び出しそうな気持ちを含めて叫べば、同じように振り返っていたヒビキがすぐにナツの手をぐいと引いた

「う、っわ!」

「ナツくんッ、」

「ぎゃあああッ、何あれ!!!」

それ、を見て叫んだスティングがジャージを引っ張るため、ルーシィは一瞬動きが止まる

しかしルーシィが動くよりも前に最後尾を歩いていたグレイの方が早かった

「下がれ!!ヒビキッ、ナツの手ぇ離すなよ!!」

イヴをガジルのほうへと押しやって全員を背で守るように立ったグレイは、すぐさま持っていたスクイズボトルの蓋を開けて、スポーツドリンクをその得体の知れない存在にぶっかけた

じゅ、と微かに何かが焼ける音がしたかと思うと、その白い腕は一瞬でふっと消える

その瞬間、重苦しい空気もパッと消えたために、誰かの息を吐く音がやけに響いた

「ナツさんッ、何ともないですか!?」

勢い余って尻餅をついていたヒビキと膝をついたナツのもとに駆け寄ったルーシィは、息を整えている二人の様子を見ながら慌てて声をかける

さっきまでの異様な空気はもう無くなっているし視線も感じない、もう一度天井の穴を見ても何もいなかった

「驚いた…何だ、あれ」

「ッ至近距離で目ぇ合ったッ!!」

心臓バクバクいってる!と顔を上げたナツは若干顔色は悪いものの怪我らしいものは無いようだ

イヴに声をかけられたヒビキも、汗を拭いながらずっと掴んでいたナツの手を放す

「ありがとな、マジで助かったぜ」

息を吐きながら礼を言うナツに、ヒビキはいつも通りの王子様スマイルで返す

スティングはすっかり腰が抜けへたりこんでいるし、突然の人間外の存在の登場にさすがのリオンも顔が強張っている

とりあえず無事だったナツにホッとしたガジルが安堵の息を吐きながら、殻になったスクイズボトル片手に天井を見ていたグレイに声をかけた

「今、何したんだ?」

「ああいうヤツには塩が効くってのが定番だからな。スポドリって結構塩分入ってるだろ?」

「そんなもんですか?」

ヒビキに合わせて膝をついていたイヴの言葉にもグレイはそんなもんだとニヤリと笑う

そんなやりとりにようやく肩から力が抜けたローグは、ふと俯いたまま何も話さないルーシィの細い背中を見て眉を寄せた

「ルーシィ」

驚かさないように、とそっと背中に触れながら声をかければ、ルーシィの肩がビクリと跳ねた

「どうした」

「ッ、え、ああ、いや、」

何でもない、とまったく何でもなくなさそうな顔で言うルーシィにローグは溜息を吐く

「そんな顔で言われても説得力ない」

「………、」

「ルーシィ」

ローグがさらに呼ぼうとする前に、俯くルーシィのすぐ前にいたナツが彼の名を呼んだ

おいしょ、とまだ心臓が忙しないだろう少しふらつきながらも立ち上がったナツは、艶のある金髪をくしゃくしゃと撫でる。

「顔上げて、よく見ろ。俺は何ともない。ルーシィが呼んでくれたおかげだろ」

大丈夫だ、と今度はぽんぽんと、頭を撫でてくれるナツに、ルーシィもきょとんとしたもののその手が優しいから自然とほうと息を吐いた

188:お香しゃちょー◆kk:2018/01/22(月) 17:54 ID:EE6

まだ少し震える指先、それを一度ぎゅっと握ってから、真っ直ぐに顔を上げる。

「…何でナツを狙った?」

同じことを考えていたのだろう、グレイがそう呟いたのにルーシィも視線を向ける。

「たまたまじゃねぇのか?」

「いや、まあそれも無いこともないが…もっとこう…」

「狙ったような、気が、しました」

ナツが首を傾げるものの、グレイとルーシィはしっくりこないらしく揃って眉を寄せた。

さっきの顔が覗いていた天井を見上げ、そして辺りを見回した瞬間に、ぞわりと寒気を感じた。

ズル、と微かに音が聞こえた瞬間、ルーシィとグレイが同時に顔を向ける。

他のメンバーはまだ気づいておらず、二人の様子に首を傾げたり顔を強張らせたりと様々だ。
さっき通って来た廊下はもう真っ暗で扉などはとうに見えない。

まだ遠い、しかし確かに何かの気配を感じてグレイが小さく舌打ちを漏らした。

「とりあえずどっかの教室入るぞ。なんか来る」

「なんかって何ッ!?」

「気配だけで分かるわけないだろ、ヒビキさっさと立て。おいスティング、腰抜かしてる場合じゃねぇぞ。」

ほらほら、とグレイに促されヒビキはすぐに立ち上がり、スティングもリオンに手を引かれてようやく立ち上がった。

そして先を歩き出したルーシィに続いて少しばかり早足で歩きながらもどこか不気味な空気にやはり背筋が寒くなる。

うう、と唸るスティングの手はリオンが引き、全員の体重のせいでギシギシと廊下が嫌に音をたてていた。

「グレイさん、」

ある教室の前で立ち止まったルーシィは、扉から中を伺いつつグレイを呼ぶ。

それにグレイも並んで中の気配を探ってから、静かに扉を開けた。

中は当然暗い、懐中電灯でざっと中を照らして何の気配も無いことを確認すると後ろで固まっていたメンバーを振り返る。

「中入れ。」

「ここ、家庭科室か?」

教室の中に並ぶのは、水道とコンロがついたいくつかの大きな作業台。

普段から見慣れた景色だが、やはり薄暗いそこはあまり好ましくはない。

ごく、とスティングが息を呑んだが、リオンが容赦なく手を引いて中に入った。

そして最後にルーシィを中に入れてからグレイが廊下の奥を見つめ、静かに扉を閉めた。

少しだけ空気が軽くような感覚に、知らず息を吐いたイヴがちらりとグレイに視線を向ける。

「どうするんですか?グレイさん」

「とりあえず窓側に寄って廊下から見えないように隠れろ。急げよ、来るぞ。」

ズル、ズル、と何かを引きずる音が確かに聞こえ、さっきの凍るような感覚を思い出してナツとヒビキは顔を見合わせて眉を寄せる。

さすがにガジルも表情を強張らせ、さっさと行けとナツの背を押した。

二手に分かれてそれぞれ作業台の影に座り込めば、廊下からの死角に入る。

ルーシィとガジルが明りを消せば、そこは本当に真っ暗な空間だ。

自然と肩を寄せ合うようになるのは仕方がないだろう、お互いの体温と息遣いに安堵しながら全員が、息を呑んだ。


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