【正味】自己満足【トリップする話】

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1:ぜんざい◆A.:2017/02/17(金) 00:01 ID:PaI


 どうもおはこんばんにちはぜんざいです。前も言ったようにもうスレは立てねぇ! と宣言していたのですが、【正味】の方がごっちゃになってきてしまったので新しく作りました。
 あちらはいろいろ、こちらはトリップのみと分けさせていただくことにしました。勝手ですみません。
 ジャンル無節操、とりあえず自己満足しか無いので「あ、嫌だこれ」と言う方はブラウザバック! ぜんざいが小説を書くスレなので他様の小説カキコはお止めください。人が来ていただけるかすら分かりませんが雑談駄目絶対。感想は泣いて喜びます。多分なつきます。
 注意点ですが、ぜんざいは他サイト様でも「フレデリ・トリガー!」と言う小説を書かせていただいており、そこのキャラクターが出てきたりします。次から書こうとしているやつに早速出張って来ます。基本うちの子達の過去は暗い物や重い物が多い。アホの子も居ますが。
 上記もですが、それ以外にもオリキャラ登場するかもしれません。
 チートや最強、ハーレムや逆ハー等はオリキャラでは出来るだけ出しません。だって『主人公無双! そんでもって無敵! オマケにモテモテ!』とか面白くないじゃないですか。
 イラストの画像投稿も多分しますね。イメージ壊したくないわ馬鹿野郎! と言う方は見ない方が良いかと思われます。

 以上の点が「無理!」「やだ!」「好みじゃないなぁ」と言う方はお勧めできません。もう一度言いますここぜんざいの完全なる自己満足を書き散らす所です。

 こんな自己満足すら大空のように包み込んでくださる寛大な方はどうぞよろしくお願いします。



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125:マメツキ◆A.:2018/07/08(日) 01:50 ID:m0o



 いやはや。雄英ってクソぶっ飛んでんな。初日から入学式スッ飛ばして最下位除籍の個性把握テストやらせるとは。いくら自由な校風とはいえマジで自由過ぎる。それをやってんのが相澤のおっさんなのに驚きだ。何を隠そう俺がガキの頃からの常連客なのだけど。
 トリガーを駆使して全てでそこそこの点数をとった俺は相澤のおっさんから刺さる感情に舌打ちしつつ教室へと戻る。真面目にやれだと、ざけんじゃねー俺はヒーローになる気はねえ。

 猫背にクソ悪い目付き、マスクにズボンに手ぇ突っ込んだ俺に声をかけるやつなんてまぁ居ない。いや別にもう精神年齢が30オーバーした俺は当時のバリバリ高校生だった時のようにツルもうだとか絡もうだとか思わねえけど。いや、前世でもばか騒ぎはすぐそばで眺める程度だったか。教室で穂刈の野郎が鋼にあることないこと倒置法で吹き込むのを爆笑しながら見てたぐらいで。

 そんなことを考えながら荷物も纏めて校門に向かっていると聞き覚えのある声に呼び止められた。ばっと振り向けばそこには。



「……は、カゲ?」
『…荒船……』
「ブレザー死ぬほど似合わねーなお前……」
『ぶん殴るぞ』



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126:マメツキ◆A.:2018/07/09(月) 00:52 ID:m0o



 翌日。今日は荒船と登校中だ。荒船にもどうやら記憶が残っているらしく、まぁ、気心知れた友人な訳だ。



「なんだよ、お前もスカウトか」
『っせ、ババアが勝手に決めやがったんだよ』



 何を隠そうこいつ、隣のB組らしいのだ。うわちけえ。
 荒船も個性はトリガーらしく遠中近とで進んでいるらしい。二人目のパーフェクトオールラウンダーは伊達じゃないってか。
 帽子がないから多少の違和感を覚えるが、コスチュームじゃどうせいつものアイデンティティが頭の上にあるだろう。



「トリオン体作れるようになったからお前にもやるよ」
『荒船やべーなおまえ……』
「崇めろ」
『うぜえ』



 荒船と別れて教室へ。午前は必修科目に英語とごくごく普通の授業だった。
 飯時は荒船に誘われ食堂へ。ヒーローが作ってるらしく文句なしにうまかった。
 午後は待望らしいヒーロー基礎学。担当はオールなんちゃらさんだとよ。
 コスチューム身に付け外に出りゃグラウンドは疑似市街地だわ室内戦闘訓練だわなんだわと盛り沢山な訳だが、まぁ俺の浮きようは仕方ないっちゃあ仕方ない。みんな何かしらの装備をしていると言うのに俺は黒いコートにワークパンツ、要するに前世の隊服のまんまだからだ。なんだあの軽装と思われてもそれが普通だ。
 襟元のエンブレムを一撫でしてちょこちょこ刺さる感情に軽く舌打ちする。……あ、なんだこれ……好奇心? 探求心?
 ぱっと振り向くとそこには緑のマスクした奴が俺に声をかけようとしていた。



『……んだよ』
「えっ、イヤッ、かなり軽装だからっ! ど、どうしてかなー、と思って、」
『あぁ……個性の関係だ』



 きょどるそいつにたいしてわりと普通に返答したら多少驚いた様子だ。困惑が刺さる。



「……どうして?」
『俺の個性がかなり攻撃向きだからだ。あと興味津々で俺んこと見んな、痒い。刺さりまくりなんだよ』



 とりあえずどういうわけか問われる前にふいと背を向けて話始めたオールなんちゃらに意識を向けた。



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127:マメツキ◆A.:2018/07/10(火) 00:41 ID:m0o



 そして始まる戦闘訓練。要するにペアチームで敵とヒーローに別れてから核を敵が守るかヒーローが回収するか、あと倒すかで勝敗が決まるらしい。
 めんどくせーなこれ建物壊しちまったらダメなやつじゃねーか。大規模破壊をすると建物が崩れて何かしらが核に作用して大爆発なんてことになりかねない。
 俺は轟、障子ってやつらのチームに一人余ったから放り込まれた。オールなんちゃらてめー雑なんだよ色々と。パワーバランスはどうなってんだ世……推薦入学とスカウト入学一緒にしちゃいけねーだろ……。

 第一戦目は爆豪と緑谷の私情を挟みに挟んだ泥試合だった。二人して建物破壊するわ麗日は核のこと考えてねーわで見てるとき思わず舌打ちがもれたろーが。隣の紫チビから怖いもんでも見たかのような表情と恐怖の視線をもらっちまっただろ。唯一まともなのは飯田か。
 まぁ言いたいことはポニテの八百万が全部言ってくれたからもういいけど。
 第二戦、俺達三人VS葉隠と尾白。くそあっさり終わってしまった。轟がチームワークも作戦もその手段すら俺達に説明せずビルを氷付けにしてしまったのだ。こいつはなんだもう。チームワークはこの際置いておく、せめて手段ぐらい説明すれば俺達も棒立ちにならずにすんだのに。
 轟がビルを凍らせて溶かしたあと、大きな溜め息を吐けばなんだと言わんばかりに轟に睨み付けられたのでとりあえず肩をすくめておいた。
 その後の試合はまちまち。訓練にならない訓練よりは全然ましだった。



『…こんぐれえだな、今回の戦闘訓練は』
「ランク戦なら建物破壊普通に出来るから気にしなくていいんだがな、それを置いといてもまぁ子供らしいと言うか」
『俺らも同い年だろーが』
「カゲお前肉体年齢同い年を恋愛対象に見れるのか」
『……ちっ』



 流石に犯罪だろ、と言うと違いないと荒船から笑いが帰ってきた。
 教室での反省会には参加せず下駄箱に一直線に向かえば荒船に会ったので戦闘訓練のことをお互い話し合う。ランク戦じゃあ真っ先に狙われておとされるやつだなとか、そんなん。

 わりと後方から爆豪、緑谷、オールマイトからの視線が刺さるがまぁほっとこう。



「うーっし、お前んちで作戦会議としゃれこもうぜ、腹減ったわ」
『おごんねーぞ自分で払えよ』



 けちくせー野郎だな、とどかっと肩を組んできた荒船の横腹にかるく一発かませば「カゲくそ野郎」と罵倒が飛んでくる。



『うっせえな泳げねーくせしやがって』
「泳げねーのはカンケーねえだろこの」



 その時俺のケータイが着信を知らせた。

128:マメツキ◆A.:2018/07/11(水) 01:09 ID:m0o



 言っておくと。俺の携帯電話の番号は前世と同じもので。着信した電話番号は驚くぐらい見覚えのあるものだった。



『……もしもし』
【……村上だ、その声はカゲか、よかった、番号は変えてないんだな】
『はぁ!? 鋼!?』
「鋼だと!?」
【お、そっちは荒船がいるのか。こっちはあと犬飼がいるぞ】
【話は聞いたよー、カゲー荒船ー久しぶりー】



 衝撃の出会いである。よもや鋼と犬飼までいるとは。他を探せばいそうな気がするのは気のせいか。
 鋼と犬飼はどうやら士傑に別クラスでいるらしく、まぁ今の俺たちのようになっているらしい。



『おーなら話ははえーな、鋼今度俺んちの店こいよ』
【行く】
【俺はー?】
『来んな』
「来ていいってよ」
【やったね!】
『言ってねー!』



**

 夜。腹を空かせて帰って来たからか荒船はいまだモグモグとお好み焼きを頬張っている。夕方ごろに来たくせによく食うもんだ。俺が友達を連れてきたのは初めてだからかめちゃくちゃ歓迎されていた荒船に憐れみの視線を刺されたので握り拳を見せておく。とは言え俺も頭にタオル巻いて店の服着て手伝い中だ、呼ばれたからバタバタと慌ただしく移動する。
 次にがらりと扉が開いて入ってきたのは相澤のおっさ……相澤先生とブラドのおっさん、プレゼント・マイク、ミッドナイトさんその他もろもろ。……なんか骸骨みてーなの居んな。見ねえ顔だ。



「よう影浦」
『暇かよ相澤のおっさんども……おいババァ! ヒーロー勢来たぞ!』



 直後「ババァって言うんじゃないわよバカ雅人」と怒声が返ってきたのもいつも通りだ。

129:マメツキ◆A.:2018/07/11(水) 01:23 ID:m0o



「なんだ、荒船も来ていたのか」



 そういったのはブラドのおっさんだった。どうやらB組の担任らしい。荒船は口の中のものをモグモグそしゃくし飲み込んだあと「こんばんは先生」と一礼した。
 先生たちと一緒に来た骸骨のおっさんも多分先生だろうと思われ、隣の相澤先生に何やら耳打ちしていた。刺さる感情からするにどうして俺がここにいるのかを聞いたのだろう。息子だと教えられたらしく納得が肌を滑った。



『つか荒船てめーいつまで居座って飯食う気だ早く帰れよもう九時だぞ』
「うわ九時とかやべぇな……おいカゲ今日泊めろ、帰るのだりーわ」
『くそ船それやめろ痒い』
「フッ」
『泊めてもらう立場の奴が鼻で笑ってんじゃねえぞ!痒いわ!』



 お互いヘラでオラオラやんのかと稚拙な攻防を繰り広げていると周囲から刺さるそれが一気に和らいでいく。『和むんじゃねえ!』と叫ぶが全く変わらなかった。



「雅人の感情受信体質は健在だなあ!」
「一時それのせいですごく暗いときもあったけれどね」
「それがあんな風に友達つれてんだから私達年とったわねー」
『っせ』



 常連客からの言葉に空気を吐く。照れんなよ、とはははと笑う荒船が憎たらしい。あと教師たちの荒船と影浦って仲良かったのかみたいな視線も痒い。骸骨先生からの感情受信体質への疑問の視線も痒い。



「流石はあの純粋な鋼に根は単純でイイヤツと言わしめた野郎だな」
『あのやろう…』
「根は単純でイイヤツ……」
『笑ってんじゃねーぞ荒船こら』

130:マメツキ◆A.:2018/07/12(木) 01:15 ID:m0o



 翌日の昼。食堂で荒船と飯を食べようとしていたときのこと。不意に水取ってくるわと立ち上がった荒船に「おー」と気の抜けた返事をしてスマホをいじる。マスクに姿勢が悪くスマホいじって目付きが悪い。そんな俺は視線を多々集めている。なんであんなのが雄英にいるんだと言う視線が刺さって不愉快だ。だから俺は人混みが嫌いなんだ。

 すると不意に警報が流れる。なんか、今朝のマスコミを校内に入れなかった防犯システムが突破されたとかなんとか。迅速な避難の行動過ぎてパニックになってんだけどどう収集つけんだこれ。と半ば呆れているとラインに通知が来た。
 荒船である。



【水汲むとこに居る。早く来い】



 小さく舌打ちしてガタリと席をたつ。ここら辺は人がいなくなってがらんどう、水汲むとこは人混みのなかだ。くそ……。
 人だかりのなかに身を滑り込ませて間を通り抜けていく。わざわざ俺呼んで一体どういうつもりだあいつは……。
 パッと目的地に付くとそこには荒船が居た。いやいないとおかしいんだけどよ。
 なんでうちのクラスの八百万と耳郎がいるんだよ……。



『荒船それどうなってんだ……』
「人混みに引っ張られてこけかけそうになってたんだよ、とりあえず端に寄せたけど俺一人じゃそろそろもたなかったからな、ナイスタイミング」
『てめー……!』
「良いからとっとと手伝えよカゲ」
『だろうと思ったわ!』



 なんで俺がとかぶつくさ言いつつも断れないのが俺だ。くそ、コイツ理解してるからムカつくわ……八百万と耳郎からの困惑の視線も鬱陶しい。
 舌打ちを噛まそうとしたとき、荒船が口を開いた。



「悪いな、あんまりカゲのこと見てやらないでくれ。そろそろ爆発する」
『うるせーな』
「まぁ根は単純でイイヤツなんだ、嫌な感情さえ向けなきゃただの御好み焼き屋の次男坊だしな」
『荒船そろそろいい加減にしろよ! 首飛ばすぞ!』
「出来るもんならやってみろよ、ぶったぎってやるぜ」
『上等だ後で表出ろ』
「こっちの台詞だ」



 人が捌けてきた頃、俺たちは「じゃあちょっと俺達行ってくるから」『……』「カゲ」『うるせえ』と二人を出口まで送り届けたあと中庭へと移動した。
 最後まであっけにとられてしゃべれなかった二人はまぁあとでどうにかする。



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131:マメツキ◆A.:2018/07/13(金) 23:44 ID:m0o



 荒船とは一応言い争いで終わらせ教室に戻る。すると八百万と耳郎からの視線がいたい。なんだこれ勘弁してくれよ。
 あと非常口飯田ってなんだ。緑谷は委員長の座をそいつに譲るのか。なに? 昼休みの食堂? 俺居たけど知らねーよ。

 その後、八百万と耳郎が俺の席にやって来た。
 俺の席は八百万の後ろ、二十の席からひとつ飛び抜けたところにある。これも一応、スカウト枠の悲しい性ってやつか。今年から導入らしいけどスカウト枠。



「あの……お昼休みではありがとうございました、影浦さん」
「うん、正直助かった」



 真っ直ぐの感謝と刺さるそれに照れ臭くなって視線を逸らし『ん』 とだけ一言返す。しかし周囲がざわついているのが気になる。なんだあいつとか、影浦っての何したんだとか、あとは女子二人に対する心配的な警戒の対象、あとは興味ねえって視線。好意的な視線がないそれらがいっせいに俺に刺さって気持ち悪い。辛うじて目の前の二人の好意的なそれが救いだ。
 だんだんと微かに青くなっていく顔に気が付きつつも、もとの席に戻らない二人に視線を投げた。



「その、ひとつ質問よろしいですか?」
『……言ってみろよ』
「……B組の荒船さんが仰っていた『刺さる』とは一体どういうことなんですの?」
「あ、言ってたね。あんまり見てやるなよ、とか。どういうこと?」



 その二人の質問に答えようとしたとき、緑谷が「あっ、ぼ、僕も前に影浦君がいってたその事について聞きたかったんだ!」と寄ってきた。これにより視線は『疑問』へとシフトチェンジされる。……不愉快なものよりか全然ましだ。



『……感情受信体質』
「……え?」
「感情受……なに?」
「!? そ、それってどんな個性……!?」
『あー、ある意味個性か?これ……』



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132:マメツキ◆A.:2018/07/14(土) 00:13 ID:m0o




『感情受信体質ってのは、俺の個性の副作用みてぇなもんだ』



 そういうと副作用!? と緑谷がやけに食い付いてくる。別に前々からそういう片鱗はあったから気にも止めない。



『俺の個性は万能で攻撃特化みてぇなもんだ』



 個性【トリガー】。心臓の近くにある見えない内蔵、トリオン器官から作られるトリオンと言うエネルギーを武器や防具、その他のサポートとして具現化して扱う。トリオンは、まぁ多い方が戦闘面で有利にはなる。



『この個性はわりと被りやすくてな、俺以外ならB組の荒船、他にも同い年に二人いる』
「……じゃあ、その他の方も副作用を?」
『いや、俺の他に持ってるのは一人だけだ。トリオン器官の発達のしすぎでトリオンがでかくなって身体に異常を起こすことが極希にあんだよ。それこそ宝くじが当たる確率だけどな。それが副作用……サイドエフェクトだ』
「サイドエフェクト……」
『それがあれば戦いじゃかなり有利になったりするが……マトモな日常生活は送れねえ。
俺の場合……くそ能力、感情受信体質はな、相手の視線から俺に対する感情の全てを受信する。受信っつっても脳内に直接語りかけるとか、そんなんじゃねえ』



 相手の感情が肌に刺さる感覚だ。チクチクする。好意的な感情ほどくすぐったいし、不快な感情ほど刺さり方が不愉快で気持ち悪い。簡単に言うと、好きとか優しいとか面白いとかの感情が知れる反面、嫌いだとか嫉妬だとか蔑みだとかの感情すらもダイレクトに伝わってくる。



『あそこの紫ちびからの『妬み』や爆豪からの『敵対心』も分かる。しんどさは他のサイドエフェクトを引き剥がしてトップを独走中だ』
「そんな……」
『別にもう折り合いはついてるからいい。それに、これのお陰で俺には不意打ちが効かないからな』
「……じゃあ、聞いてもいいかな?」



 ふっと顔をあげた緑谷になんだ、と視線で問い掛ける。いやまあ刺さるから分かってるんだけどな。



『そのサイドエフェクト、他には何があるの?』



 その一言に、クラスの疑問がひとつにまとまる。ふうと大きく息を吐いて『俺の知る限りじゃ……』と口を開いたところで別の声がその続きを引き継いだ。



「睡眠強化学習に未来視、相手の実力を色として可視化する、耳が人の五、六倍いい、動物と意思疎通ができる、相手の気配を察知する、気配を消す……あとなんだ?」
『あれだろ、嘘を見抜く』
「そうそれ」
『てめーなんでここにいんだB組だろうが』



 ばっと振り向くとそこには腕を組んで仁王立ちする荒船が立っていた。荒船に緑谷はヒッと萎縮し、女子二人は昼休みのことで感謝を述べていく。
 一通り対応し終えた荒船が言った。



「サイドエフェクトのせいでイライラして誰彼構わず噛みついてると予想して様子を見に来たんだがな、お前はなんか普通に個性のこと喋ってて拍子抜けした仕返しだろ」
『ちっせえ』
「そう言うなよ」
『おいきもちわりー感情向けんな』



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133:マメツキ◆A.:2018/07/17(火) 00:30 ID:WTU


 一頻り荒船を威嚇したあと、緑谷が「あ、あの……」と荒船に対して口を開く。



「……君は? B組らしいけど……」
「ああ、俺か。自己紹介が遅れて悪いな。荒船哲次だ、よろしく」



 荒船のそれに反射的に自己紹介を返した緑谷は「影浦くんと個性が一緒だって聞いたけど」と容赦なく踏み込んでいく。こいつなかなか度胸あるな。



「ま、カゲの言う通り個性は一緒だな。使い方のスタイルが違うだけで」
『おい荒船、べらべら手の内喋んな』
「喋らねーよ、俺だって不利になんだから」



 ポジションがどうだのと口を開く前に釘を刺せば軽い同意が飛んでくる。まぁ、楽しみに取っとけよってことだ。


**


 翌日。今日のヒーロー基礎学は急遽教師三人体制でレスキュー訓練らしくそれ用の訓練所へとバスで移動した。バス内の話題はせわしなく移り変わるものの、俺に刺さる感情は感情受信体質を詳しく聞いてみたいと言うものばかり。隣の轟からも一身に突き刺さるので流石に寝た。
 到着した場所はUSJ、嘘の災害や事故ルームというらしい。訓練施設はまるでアトラクションのようでこりゃUSJと呼ぶのも分かる。
 なんやかやとUSJ考案者13号の増えるけどかなりためになる話を聞いていたんだが、問題は、そのあとだ。
 敵が攻めてきたのだ。雄英に。
 オールマイトを、ころす為に。
 黒いワープゲートの個性でクラスの半分が散り散りにUSJ内に転送されているのが目の前の雑魚敵からの視線で伝わる。……オールマイトを倒す算段があるから攻めてきたんだろうな。
 俺が今居るのは倒壊エリアのとあるビルの中。群がるのは俺をただの学生とナメきった視線の雑魚敵ばかり。
 ああ、もう。



『俺はな、ナメられんのが大っ嫌いなんだよ!』



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134:マメツキ◆A.:2018/07/17(火) 00:44 ID:WTU

切島side

 爆豪と共に倒壊エリアの敵を一掃する。あてがわれた敵の実力は言ってしまえば俺たちの敵ではなかったが、なんせ数が多い。



「これで全部か、弱ぇな」
「っし! 早くみんなを助けに行こうぜ! 俺らがここにいることからしてみんなUSJ内にいるだろうし! 攻撃手段少ねぇやつらが心配だ!」



 とりあえずまぁ爆豪のワープゲートぶっ倒す発言だとか、後ろから迫っていた敵を倒したこととかわりとクラスの奴等の実力を信頼していたことに俺は強い男気を感じたわけだ。
 そういうわけでワープゲートを倒しにいくことにのったんだが……。
 下の階からがしゃーんと大きな音が響いてきたんだ。
 びくりと反応した俺たちは視線を合わせて階段を駆け降り、その光景を見た。
 俺達が闘った敵よりも多い人数が、壁近くの床やそこら辺に転がっている。そこにただ一人立っているのは影浦だった。
 俺達二人であの量を相手にしたのに、真ん中で光る剣を持ったアイツは、たった一人でそれより多い敵を俺たちと同じ時間で倒したのか。
 それを見たとき、ただただ純粋にすごいと思ってしまった。



『あ? んだこれ……ってお前らかよ、変な視線刺すな』



 確か、感情受信体質だったか。今のすごいって感情も読まれているのだろうな。
 次の瞬間、影浦の右腕がぶれ、俺と爆豪の顔の横を勢いよく何かが通り、後ろでぎゃっと悲鳴が聞こえる。
 振り返ると無傷なのに首を押さえてくずおれる敵の姿がそこにあった。
 ……影浦が、やったのだろうか。



『あー、こちら影浦……って別に報告は要らねぇんだったか』



 影浦が小さく「もうクセだな」と不服そうに呟いたのを俺たちはきちんと聞いた。



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