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161:匿名:2017/08/23(水) 11:28 ID:un6

 たまに、「自分はここで何をしているのだろう」と考えてしまう事がある。
 野生として生まれ、トレーナーの手持ちに加わり、長い間彼と一緒に旅をしていた。出会った数々の強者を倒して、ライバルだった人にも打ち勝ち、僕らは今この場所に居る。
 そう。居るのだ。
 旅を続けている訳でも、新たな出会いを求めている訳でもなく、ここに居る。野生として生まれ、トレーナーと旅する事を覚えた僕にとって、それは結構退屈なのだ。ここには他の場所と比べ物にならないくらい強い野生ポケモンが生息しているけど、彼と共に旅をして強くなった僕らの敵ではない。他よりちょっとマシな程度――そんな場所なのだ。
 けれど、不満が溜まっているかと聞かれたらそれは違う。退屈ではあるけれど不満ではない。切り立った足場に強いポケモンが揃っていれば、身体が鈍らないようにトレーニングする事だってできる。退屈ではあるけれど、不満ではないのだ。
 今更野生に戻ったって、トレーナーに育てられたポケモンでは馴染めないだろう。人の手によって鍛えられたポケモンが野生に戻るというのは、結構大変らしいと聞いた事がある。だから僕は野生に戻ろうとしないし、ここまで強く育ててくれた彼の傍を離れようとも思わない。
 でも彼に「ここ退屈なんだけど」と文句を言う訳にもいかない。ここが退屈であるというのは、彼が一番よく知っている。いや、彼にとって、退屈でない場所なんていうのは、もうこの世のどこにも存在しないのだ。無邪気にバトルを楽しめていたあの頃とは違う。彼は誰よりも強いトレーナーとなり、僕らもそんな彼の手持ちとして恥じない強さを手に入れている。どんなに楽しみたくても、相手がいない。楽しめるだけの相手がいないのだ。
 それに、黒い機械を持った人間達に追い掛け回されるのももう嫌だ。彼がこの場所に逃げ込んだのはそういう理由もあるし、もしかしたらそれが一番の理由なのかもしれない。だから僕らは、彼にこの場所を離れようなどと提案しない。僕らも僕らで、「この場所を離れたら嫌な事がある」というのは理解しているのだから。
「ピーカー」
 とか何とか色々と御託は並べるけれど、一番の理由は――。
「……? ……」
 彼を独りにしたくない、っていう単純な思いなんだよね。


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