【ノジコと灰崎】
「あれ?灰崎じゃない。なんでここにいんの?」
「ゲェッ!ノジコ!!」
「ノジコさん、でしょーが」
あたしはナミの二つ上の姉貴で、ナミゾウの一つ上の姉貴であるノジコ。
この灰崎祥吾という男は、中学の頃のサボり仲間だ。ナミと同い年であり、友達でもある。
「なんでノジコサンが静岡(ここ)にいるんスか」
「その言葉、そのまま返すわ。…あたしは推薦よ」
「はあ!?一緒にサボってたのに頭良かったのかよ!!?」
「まあね。むしろサボってたのは授業が分かってたから。」
「そんなのアリかよ…」
ここは屋上。あたしのサボりスポットでもあるこの場所に、灰崎を誘ってあげたのだ。あたしって相当優しい。
「っていうか、あんたのその頭…なに?」
「高校デビューってことでイメチェンした。つーかナミは?」
「ナミは涼太と同じ海常。…まあ、神奈川ね」
すると灰崎は怖い顔になった。声も低くなる。
「…黄瀬に、ついてったのか…」
「……誘えっつーの」
「は?」
これは姉の特権で、その姉と同じ高校に来たこいつの特権だ。教えてやろう。
「ナミは、迷ってた。どこの高校に行くか、誰と同じ高校に行って支えるか。
あんた、後輩になったから教えてあげるけど、ナミはあんたのことも心配してたのよ。もちろん、他の奴らも。」
「……」
「だから誘えば、あんたと一緒にいることを選んだかもしれないのに…あんたたちは自分についてくるのが当たり前だと思って…!」
ナミは一人で、ナミにも選ぶ権利がある。
だからキセキの世代の中でも、一緒の高校へと誘っていた涼太と行ったのは正解だと思う。
「あんたたちってバカね…」
「……オレは別にナミと一緒に行きたかったわけじゃねェ。」
そう言うと灰崎はゴロンと横になった。あたしはその隣に座り込む。
「黄瀬と一緒っつーのが気に入らねェだけだ」
「……」
「でも…あんたがオレの隣にいてくれるなら、オレは負けねェよ?」
「どういうこと?」
「そのまんまだよ。あんたの推薦の理由、オレが知らないとでも?」
なんだ…知ってんのね。
「なあ…?朱崎ノジコ監督」
あたしの推薦は、もちろん学力の高さもある。だけど、女バスでやっていた監督としての能力も買われたのだ。
男子バスケ部に。
「あんた、知ってたのに聞いたのね?タチ悪いわー」
「っるせぇよ!!」
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「灰崎!!!サボんな!!」
「ぎゃーーー!!!鬼監督ッ!!」
「一人で外周20周ね!」
「本気で鬼か!!」