【アイドルマスターシンデレラガールズ】初めての目標

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1:七瀬:2018/03/08(木) 22:14 ID:2io

占ツクに書いてるのをこっちにも。
オリジナル主人公出ますがそれでも大丈夫な方はよろしくお願いします。
オリジナル主人公の名前は大瀬(おおせ)ジュリです。
年齢の設定は13歳の中学校一年生になっています。
荒らし以外なら書き込みは大丈夫です。アドバイスなどよろしくお願いします。

2:七瀬:2018/03/08(木) 22:15 ID:2io

ー1ー

アイドルになった動機は、不純なものだ。
ただ、担当の太田(おおた)プロデューサーに「アイドルにならないか?」とスカウトを受けただけ。
最初はスルーしようと思ったけれど、あの人があまりにも必死でそれが面白くて話だけでも聞こうと思った。
話を聞いたら興味が湧いてきて、それで成り行きでアイドルになって……
「あの、聞いてますか?大瀬さん」
そして、橘ちゃんとユニットを組むことになった。ユニット名はJewelジュエルといって、太田プロデューサーが名付け親。
「はいはい、聞いてまーす」
ホントはちゃんと聞いてなかったのだけど、ここで聞いてないとでも言えばあの不味いいちごパスタを食べさせられることになるし、この子めちゃくちゃチョロいからこれで大丈夫なはず。
橘ちゃんは適当にあしらわれたと思ったのか、「ちゃんと聞いてください!」と言って立ち上がったが、それを近くで見ていたフレちゃんが「ありすちゃん、どうどう」と制した。さっすが気を配れるパリジェンヌって感じ?
それに対し橘ちゃんは「橘です!」と言いながら怒る。ホント、この子ってあたし以上に子供だ。そして変に背伸びしようとしてるからタチが悪い。
全く、こんな正反対なあたし達が仲良くステージの上で歌うことは出来るのか?
ユニットを組んでもう一週間が経つが、未だに不安だ。
プロデューサーは一体どんな意図を持ってあたし達にユニットを組ませたのだろうか。
それは、プロデューサー以外にわかる人物はいない。多分。

3:七瀬:2018/03/08(木) 22:16 ID:2io

「Jewelジュエル」の謎の誤字は気にしないでもらえるとありがたいです(笑)

4:七瀬:2018/03/09(金) 16:21 ID:2io

ー2ー

「大瀬!テンポが遅い!橘!動きがかたーい!」
今日も今日とて橘ちゃんとの合同レッスン。トレーナーさん達は久しぶりの年少ユニットだからととても燃えているみたい。
ちなみにあたしの年齢が13で橘ちゃんの年齢が12。世間からはジュニアアイドルとして期待されてるみたいだ。
「はぁ……はぁ……疲れました」
「もーむりー」
結果、あたしが森久保ちゃんみたいになるまで動かされましたとさ。
……ていうかさ、やっぱり橘ちゃんあたしとのユニット向いてないよね。動きが全然合ってないような気がする。
千枝かみりあとでも組ませておけば上手く行っただろうに、プロデューサーは一体何を考えてるんだか。
「すみません、大瀬さん。私が足を引っ張って……」
でも、そう思うのもまだ早いかもしれない。
もしかしたら、この子はいい子かもしれないから。
やっぱり、やってみないと分からないんだなって思った。



「もー、莉嘉ー。レッスンきつい〜!」
「アタシもー!」
こっちはJewel、莉嘉はファミリアツインでお互いレッスンが忙しい。そして今日も努力家な美嘉ちゃんは自主レッスン中らしい。よくやるなー。
「莉嘉、ただいまー★ジュリちゃんもおつかれー」
あ、噂をすれば。
うなだれていたあたし達の元に今日も語尾に星を付けながら美嘉ちゃんが近づいてきた。
「ジュリちゃん、ありすちゃんとのレッスンはどう?」
「まだわからないかな」
それからあたし達はお互いのレッスンの話をしたり、最新ファッションの話をしたり、和気あいあいとしていた。
「じゃあ、またねー☆」
莉嘉達は次のライブの打ち合わせがあるみたいなので先に帰った。姉妹でユニットって、それでよく上手くいくなー。
……あたしも、橘ちゃんともっと仲良くしないとまずいかな?

5:七瀬:2018/03/09(金) 19:17 ID:2io

ー3ー

「珍しいな。ジュリから相談なんて」
そういうわけで、案外上手くいってそうなトライアドプリムスに相談することにした。
あいにく、凛ちゃんはニュージェネの仕事でいないみたいだったけど。
「そーだよー。もーマジ困っちゃうよ奈緒おねーちゃん」
「おねーちゃん!?……そもそも、そんなに困ってるように見えないんだが」
奈緒ちゃんって、子供っぽくて単純だから扱いやすいと凛ちゃんと加蓮ちゃんが言ってたけど、ホントにそうなんだよね。4つ下のあたしでも思うもん。
あたし達の会話を微笑ましげに聞いていた加蓮ちゃんは急に引いた顔になり、「奈緒……ジュリちゃんに何吹き込んでるの?」と言う。
「ちがっ……ジュリが勝手に……」
そして加蓮ちゃんはニヤニヤした顔になり、奈緒ちゃんを小突く。
ホントに仲がいいって、こんな感じなんだ。
「とにかく、加蓮おねーちゃん話聞いてくれる?」
早く進めて帰りたかったと相談させてもらう立場ではない事を思いつつあたしは言った。
加蓮ちゃんは「莉嘉ちゃん思い出すなー」と言いながら笑い、それでもあたしの話を聞く姿勢に入った。
「単刀直入に言うと、橘ちゃんと上手く行ってないんだよねー」
加蓮ちゃんと奈緒ちゃんは顔を見合わせ、「なるほど」と言いながら何故か納得したような顔になった。
「奈緒ちゃんどーしたらいいー?」
「まあ、その、ありすは気難しい性格だからな……」
奈緒ちゃんは難しそうに考える。
すると、加蓮ちゃんが閃いたような顔になり、言った。
「グイグイ行けばいいんじゃない?凛も最初らへんめんどくさかったし。私もそうしたよ」
え、凛ちゃんって最初橘ちゃんみたいだったんだ。そういえば卯月ちゃんも「事務所に入った頃の凛ちゃんに似てますね」とか言ってたな。
見た目かなー、って思ったんだけど加蓮ちゃんの言葉で確信した。
「まあ、これじゃ上手くいかないかもしれないけど……やってみないと分からないじゃん!」
なるほど、確かにあたし橘ちゃんに対してだけ若干控えめだって言われるからなー。奏ちゃんの言うことだし、間違えて無いのかも。
あたしは何となく分かったので、二人に「今日はありがとー」と言いながら別れた。

6:七瀬:2018/03/09(金) 20:58 ID:2io

奏ちゃんの言うことだし〜のところは奏がジュリに対して「ありすにだけ控えめ」と言った事にしています。なんか紛らわしい表現だな……(笑)

7:七瀬:2018/03/09(金) 21:17 ID:2io

ー4ー

「ワン、ツー、スリー、フォー、はい、そこでターン!」
今日もレッスン。パートナーはもちろん橘ちゃん。
「大瀬……テンポ追いついてきたな!橘は良くなってきたがまだ動きが固い!」
今日はトレーナーさんも機嫌がよくて褒めてくれたから気分よくレッスンを終えることが出来た。
着替えようと思い更衣室に行こうとすると、レッスンが終わったのにも関わらずまだサビのステップを踏む橘ちゃんの姿が見えた。
「橘ちゃん、何してんの?」
「大瀬さん……いえ、今日のレッスンの出来に納得が行かなくて」
なるほどねー。努力家なこと。
……あ、そうだ。
「あたし、付き合おうか?」
「えっ」
これからどうせ予定ないし、橘ちゃんの自主練に付き合ってあげようかな。ほら、加蓮ちゃんもグイグイ行った方がいいって言ってたし。
「いいでしょ?減るものじゃないし」
「は、はい。その……よろしくお願いします」
ユニットの仲間なのに、堅苦しいな。
まあいいか。これで普段自主練をしてるらしい橘ちゃんの様子を見ることが出来る。

8:七瀬:2018/03/09(金) 22:19 ID:2io

ー4.5ー

「うーん、もう少しリラックスしたら?」
「はい」
橘ちゃんの練習に付き合ってたらもう6時。
流石に時間がヤバいのであたしは「そろそろやめにしない?」と言い、自主練を終わらせた。
ちなみに橘ちゃんは普段これより1時間も練習してるみたいだ。全く、そんな真面目で人生疲れないのかな。
ちょっと失礼なことを思いつつ、あたしは橘ちゃんと二人で レッスン室から事務所へと歩いていった。
「あ、ありすおねーさん、ジュリおねーさん!お疲れ様でごぜーます!」
入口から入ると、もう仕事が終わったはずの仁奈と美優さんがソファに座っていた。どうしたのだろうか。
「今日はママが仕事でいないので、事務所で遊んでるですよ!」
「仁奈ちゃんが一人にならないようにしてたんです」
なるほどね。美優さんも付き合ってあげてるなんて優しいな。でも、仁奈はまだ9歳だし家で一人は危ないかも。
あたしだったらもう13だし、逆に心配するなって感じだけどね。
「そうなんだ。仁奈、あたしとも遊ばない?」
「ジュリおねーさんとですか?いいでごぜーます!」
さっすが子供。やっぱり素直でいいな。
すると、隣から美優さんが「ジュリちゃんのお家って、門限はないの?」と心配そうに聞いてくる。
「門限?補導されるまでならいいってママ言ってたし大丈夫でしょ」
少し離れて会話を聞いてたプロデューサーは若干引いたような顔になる。それもそうか。門限緩すぎだもんね。
あたしはそれを見なかったフリをして、仁奈とパズルで遊んだ。児童向けなのに意外と面白くて少し悔しかった。



一時間経過、現在午後7時。流石にそろそろ帰ろうと思う。
帰り際に「ジュリおねーさん、ありがとうごぜーます!」なんて素直なお礼を言われて少し恥ずかしかったけど、まああたしも楽しかったしいいかな。
それを隣で見てた橘ちゃんは、「大瀬さんって優しいんですね」と意外そうに言う。
優しくなさそうに見えていたのは心外だが、印象は上がったみたいで良かった。

9:七瀬:2018/03/10(土) 13:38 ID:2io

ー5ー

「ただいまー」
家に着き、あたしはリビングに向かう。
無駄に重い鞄を大袈裟な音をたてて下ろし、ソファに座ってツイッターを見る。お姉ちゃんの肩がビクッと跳ねたような気がするけど気にしない。
「はあ〜、13歳にそんな妄想するお兄さんもいるんだねー」
何やらあたしの名前を使ってやらしい妄想をしている方々が大勢居た。ある意味面白いし、そんな気にしないけど。
「あの、ジュリ。友達がジュリのサイン欲しいらしいんだけど……」
「いいよ、別に」
あたしがアイドルになってからお姉ちゃんの元気が無くなってきているような気がする。いや、気がするんじゃなくて、ホントにそうだ。
「はい、お姉ちゃん」
「あ、ありがと……」
多分、あたしのサインが欲しくて脅迫でもされてるんじゃない?今どきの高校生って、こわーい。
それに、もうひとつお姉ちゃんの元気がない理由に心当たりがある。
「ていうかお姉ちゃん。あたしのやらしい妄想ツイッター見てるんでしょ?」
あのやらしい妄想はアカウントに鍵が掛けてなかったので誰でも見れる、はず。
だからお姉ちゃんがそれを見た可能性は否定出来ない。
「う、うん……」
お姉ちゃんは消え入りそうな程に小さな声でそう言う。
「いいよ、心配しなくたって。表に出るってことは、こういう人の目にもつくんだから」
あたしは話してるうちに何故か苛立ちが増し、逃げるように自分の部屋に行った。

10:七瀬:2018/03/10(土) 19:05 ID:2io

ー5.5

「もー、なんでこう気持ち悪い妄想するかなー」
美波ちゃんのツイッターじゃあるまいし。
あたし若干美波ちゃんに失礼なことを思いつつ、スマホの電源を落とした。
だって美波ちゃん歩く卑猥な人ってネットで呼ばれてるもんねー。そう考えるとあたしの方がマシだ。
夜ご飯はコンビニで買ったサンドイッチで良いか。事務所でお菓子もらったせいでお腹いっぱいだし。
サンドイッチを食べながらニュージェネが出るらしい番組を見ていると、スマホが振動し、1つ通知が来た。
『昨日の放送見たよー、ジュリちゃんほんとかっこいい!』
なんだ、蓮かー。プロデューサーだったらどうしようかって思ったよ。
『ありがとー。もうすぐJewelでデビューするからそっちもよろしく』
あたしはレッスンの疲れで凛ちゃん達の出番だけ見てさっさと寝たかったのでせっせと指を動かして返信した。スマホ歴は結構長いので誤字はないと思う。
『ニュージェネレーションでーす!』
ってもうニュージェネの出番!?もう少し後だと思ってた。
あたしは慌ててテレビの方を見て、曲が始まるのを待つ。
『小さく前ならえ!詰め込んだ気持ちが!』
うーん、やっぱりあたし達の曲より声量が大きい。
声量が大きい方が印象に残るよね。
『ニュージェネレーションでしたー!』
曲が終わった後、会場は大歓声に包まれた。
あたしもあんな歓声いつか浴びてみたいな。
「……ねよ」
とりあえず、疲れたしもう寝る。
明日も頑張ろー。

11:七瀬:2018/03/10(土) 19:05 ID:2io

中で地味に出てきた蓮はジュリの友人です

12:七瀬:2018/03/12(月) 21:01 ID:2io

ー6ー

「おおっ!橘っ!良くなってきたぞ!」
今日は橘ちゃんの調子が良いみたい。あたしはふつーだけど。
橘ちゃん曰く、あたしのおかげみたいだけどあたしレッスンの見学しかしてないしこれは橘ちゃん自身の成長だと思う。
「お疲れ様、水分補給は忘れるなよー」
橘ちゃんの調子が良かったからなのか、今日はレッスンが少し早く終わった。もっと練習してレッスンしなくて済むように頑張……頑張るとこ、違うよね。
「レッスンお疲れ様、ジュリ」
「お疲れ様、ジュリちゃん」
「あ、奏ちゃん、加蓮ちゃん」
事務所に戻る時、加蓮ちゃんと奏ちゃんに遭遇した。
この二人、トリニティフィールドの初披露前にも仲良かったらしいけど、明らかに初披露後の方が仲良く見える。
こういう新曲を通しても誰かと仲良くなることって、あるんだね。まあ、奏ちゃんはトライアドの一員ではないけど。
「どう?ありすちゃんとは」
「まあそこそこ?前よりは話す頻度も増えたかな」
「良かったじゃん」
奏ちゃんは「ホントに?」と聞いてくるけど、奏ちゃんはあたしの事をなんだと思ってるのだろうか。
「そういえば、新曲披露、来週末のライブなんだよね」
「そだよ」
あたしはしれーっと奏ちゃんちゃんを睨みつつ、加蓮ちゃんの問いに答える。
「いきなりライブで披露って、私たちと同じだね。頑張って」
「ありがと」
加蓮ちゃんって、事務所に入った頃より丸くなったよね。
最初は「努力なんてアタシのキャラじゃない」とか言って周りの子を煽ってたのに。あたしも似たようなものだけど。
加蓮ちゃんがアイドルで変わったみたいに、あたしや橘ちゃんも変わることは出来るのかな。

13:七瀬◆PM 結局帰ってきた莉嘉担当:2018/04/03(火) 23:41 ID:bkA

ー7ー

振り付けも歌もバッチリ、あとは明日の本番だけ……なんだけど。
橘ちゃんは覚悟をすることがあるらしくて。
「あの……大瀬さん。やっぱりステージに立ったら名前で呼ばれるんでしょうか」
「そうだね。ファンは橘ちゃんの事分かってないし、ファンなら「橘ー!」とか呼ばないでしょ」
弱々しい問いかけにぶっきらぼうに答えると、橘ちゃんは「やっぱり」といった顔で俯いた。
ここは、歳上として支えてあげないといけないのかな。
……キャラじゃないけれど、やってみよう。
「橘ちゃんは自分の名前のどこが嫌い?」
「……全部、です。子供っぽいところとか、日本人離れしてるところとか」
なるほどね。
「でも、子供っぽいかはともかく、あたしの名前も日本人離れしてるけど?」
「確かにそうです。でも、私は」
「馬鹿にされるのが怖い?」
出来るだけ、キャラを保って。
「確かに橘ちゃんは名前で馬鹿にされたのかもしれない。でも、橘ちゃんを「ありす」って客席で呼んでくれる人は橘ちゃんの事が好きなんだよ。ファンなんだよ」
「……大瀬さん」
「決して橘ちゃんを「ありす」って呼ぶ事に悪意は無いってこと。寧ろ、好きになろうとしてくれてるんだから。「ありす」として。だから、「ありす」として答えなきゃ……その名前を好きにならなきゃいけないんだよ」
「好きになる……名前を」
……言い切った。
飛鳥ちゃんに影響されたのかな。あたしの台詞が少し痛く見える。
でも、それで橘ちゃんが変わってくれるのなら。
「この名前は、お母さ……母が付けてくれました。「ありす」って名前は嫌いだけど、嫌いになれませんでした」
顔を上げてそう言う橘ちゃんの顔は何かを決意したように見えて、
「でも、変わらなくちゃ、いけないんですよね」
とても力強かった。
「大瀬さん……ジュリさん。ありがとうございます。私の事はこれから「ありす」とお呼びください」
……そう。そう来なくっちゃ。
「うん。これからもよろしくね、ありす」
誰かを慰めるなんて初めてで、あたしらしくないけど、今日くらいは良いのかなって思った。
「明日のライブ、楽しみになってきました」
「あたしもだよ」
明日のライブ、成功するといいな。

14:七瀬◆PM 美味しいから大丈夫だよ:2018/04/15(日) 12:11 ID:bkA

ー8ー

いよいよライブ当日。
あたしは控え室でメイクさんに髪を整えてもらいながらありすを横目で見る。
……顔、強ばってる。緊張してるのかな。
「あ、あの。ジュリさん」
「何?」
その時、ありすが話しかけてきた。
あたしは鏡を見たまま返事をする。
「私、クローネでライブに出たことはあるんですけど、誰かと二人だけのユニットで出るのは初めてなんです」
ああ、トライアドとか奏ちゃんとかいたもんね、あの時は。
「ファンの皆さんは、私達だけを求めてるって事ですよね?」
「だね。それがどうしたの?」
視線をあちこち動かしながら吃るありすに尋ねる。
「主役、初めてで。ジュリさんと一緒ですが。少し、緊張しちゃって……」
ああ、そういうこと。
でも、ここで緊張してもらうとあたしまで緊張しちゃう。
ていうか、もう緊張しちゃってる。
……仕方ないなあ。
「ありす、あたしも緊張してる」
ありすはそれを聞いてびっくりしたように目を見開かせる。
あたしはそれを見なかったことにして、話を続ける。
「でも、楽しくない? だってさ、初めてなんだよね? 主役のステージ。主役ってさ、例えユニットでも自分達だけのステージに出来るんだよ」
「主役の……ステージ?」
あたしの例えがピンと来なかったのか、ありすは首を傾げる。
どう説明すればいいのかな……あっ。
「えーっと、志希ちゃん。志希ちゃんの初めてのソロステージ、見た?」
「はい、見ました」
それなら話が早い。
「あの時の志希ちゃん、ステージを自分だけのものにしてる感なかった?」
あたしがそう聞くと、ありすは納得したように頷く。
「ていうか、志希ちゃん本人が言ってた。「あたしのステージはあたしだけのもの」って。あたし達のステージもそうだよ」
「自分達だけの、ステージ。そういうことですよね」
察しが早くて助かるなぁ
「そういうこと。ファンの皆もあたし達だけを求めて来てるんだから、どんなパフォーマンス……失敗、だって受け入れてくれるかもよ?」
あたしが冗談っぽくそう言うと、ありすは少し表情を緩ませた。
「じゃあ、本番まであと少し。行こ?」
「……はいっ!」
大丈夫、これならきっと成功する。

15:七瀬◆PM 美味しいから大丈夫だよ:2018/04/15(日) 12:17 ID:bkA

なんか訳分からんくなってるから訂正
上から31行目 下から26行目
「主役の……ステージ?」✕
「自分達の……ステージ?」〇

16:七瀬◆PM 美味しいから大丈夫だよ :2018/04/22(日) 19:40 ID:bkA

ー9ー

「大瀬さん、橘さん。準備はいいですか」
「はい!」

今日合同ライブの“サンフラワー”の「きみにいっぱい☆」が終わってから、次はいよいよあたし達の出番。
“Jewel”としてステージに立つのは、初めてで緊張する。
だけど、このステージはあたし達二人だけのものにしてみせるから。

「大瀬さん、橘さん」

あたしなりに意気込んでると、後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。……この声は

「……太田プロデューサー。久しぶり」

最近、新人アイドルのプロデュースで忙しくて会えてなかった太田プロデューサーがいた。

「あの、プロデューサー。このステージは、私達だけのものにしてみますから」

隣で黙っていたありすが太田プロデューサーと向き合い、自信に満ち溢れている瞳でそう言った。
太田プロデューサーははじめは驚いていたが、嬉しそうな表情をし、「橘さん、変わったね。その意気だよ。頑張って」と言った。そして、あたしを見て、「大瀬さんも」と。

「大瀬さん、橘さん、準備お願いします」

後からスタッフさんの声が聞こえてきた。出番だ。

「じゃ、行ってくるね……不安?」

太田プロデューサーの元を離れようとした時、太田プロデューサーは不安そうな顔をしていた。
こういう時は……

あたしはプロデューサーにウィンクをして、こう言った。

「大丈夫、あなたが育てたアイドルだから」

……加蓮ちゃんのセリフ、奪っちゃった。

「本番10秒前、9、8、」

「行くよ、ありす」

「……はい!」

あたしはありすの手を握って、ステージまでの階段を駆け上がって行った。

「……0!」

ステージに上がった。歓声が聞こえてきた。
……よし、ここからが本番だ。

「こんにちは。Jewelの大瀬ジュリだよ〜!」

「同じくJewelの橘ありすです!」

あちこちからあたしの名前を呼ぶ声とともに、「ありすちゃーん!」という声も聞こえてくる。
ありすを横目で見ると、今までよりずーっと力強い表情をしていた。
……もう、大丈夫だね。

「新曲の“CRYSTAL”(クリスタル)、聞いてください!」

「大人しい曲だから、聞き逃さないようにね〜」

あたしの言葉でMCを締めると、新曲のイントロが流れてきた。

よし、後は流れに任せて______________

17:七瀬◆PM 美味しいから大丈夫だよ :2018/04/22(日) 19:55 ID:bkA

ー10ー

……よし、歌い切った!
会場中の歓声を身体にモロに浴びた気分になり、それが心地よい。なんていうか……エモい。

「聞いてくれてありがとね!」

「これからも、私達Jewelをよろしくお願いします!」

これで、ライブは終わり。
始めはありすとの間に溝があって、どうしようかと思ったけれど……

「やったね、ありす」

「……はいっ!」

今は分かり合えてるから、きっと大丈夫。

「大瀬さん、橘さん!」

「プロデューサー」

控え室で気持ちが高ぶるのを堪えていると、太田プロデューサーがあたし達以上に興奮した表情で室内に入ってきた。

「ライブ、すごく良かったよ! それにしても二人、いつの間にか仲良くなって……良かった……!」

「いいってそーいうの」

最後らへんに涙声になってるのに気付いちゃって、照れくさくて。

「は、はいぃ……ありがとうございます……」

って、ありす!?
ここでありすに泣かれたら、あたし……

「んんっ……プロデューサー? なにそんな顔で見てるの? 泣かないってば。バカみたい」

……嘘。本当は泣きそうになってた。
あたしはそれをニヤニヤしてこっちを見る太田プロデューサーに辛辣な言葉をぶつけることで耐え、無かったことにした。

泣きそうになったけど、そんなのあたしの柄じゃない。

「ジュリさん」

「ん?」

ありすがあたしの目をステージの上の時と同じ力強い瞳で見てきた。

「これで終わりじゃないですよ。これから、です。……よろしくお願いします!」

「……うん」

……まさか、ありすの言葉に心揺さぶられるなんて。

そう、このライブは終わりじゃない。“Jewel”の始まりなんだ。


___END

18:七瀬◆PM 美味しいから大丈夫だよ :2018/04/22(日) 19:56 ID:bkA

このままだと締め方が分からなくなりそうなのでここで終わらせました。
たまーに番外編的な何かを書くと思うのでその時は見てもらえると嬉しいです。


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