アイドル系魔法少女目指して☆

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1:千歳 建て直しです、ごめんなさい(> <):2018/06/21(木) 23:24 ID:FP6


プリチャンのマイキャラの小説です☆


 紹介 >>2

20:ちもも:2018/09/16(日) 15:59 ID:uvg



「えーっと……ただいまぁ」
学校から家に帰ってくると、何やら上の階から、騒がしい話し声が聞こえてきた。しかも外まで聞こえてるし。一体何が起こってるのかな?
「まじょりーな先輩?どうかしたんですか?」
家に家族が居ないことを確認してから、私は叫んだ。
「まじょりーな先輩……?」
恐る恐る、部屋のドアを開ける。
「まじょりーなせんぱ……わあ!?」
私は思わず、ドアを閉めてしまった。
そして、もう一度開ける。
「まじょりーな先輩!だだだどどうしたんですか!!」
「バンビ!帰ってきたのね、助けて!」
「まじょりん〜、隠してないで早く返してよ〜、私の宝石いいい」
必死にこっちに手を伸ばすまじょりーな先輩と、その上に乗っかる女の人。……って、
「その人……だれ?」
綺麗な水色のお団子頭が、こっちを向く。
「ひ!」
その目は、まるでこわ〜い猫みたいにつり上がっていた。額には、漫画に出てきそうなあのマークが浮かんでいる。
「あら〜、あなたは誰かしら?もしかしてまじょりんを居候させてくれてる人間の女の子かしら?その様子だと、もうまじょりんが魔法少女って事は知っちゃってるみたいねぇ……」
部屋の隅に立て掛けてあったほうきをチラ見しながら、女の人はそう言った。
「ひいいいい、あの」
「幼馴染の私が代わりにお礼しておくわね。ありがとう、バンビちゃん♡」
そう言いながら、女の人は笑顔で私に近付いてきた。でも何だか怖い笑顔なんだけど!
「まじょりーな先輩、助けて!」
今度は私が助けを求める番だった。
「はぁ……。ねえ、みらきーな。宝石の事はちゃんと話すから、バンビを巻き込まないでちょうだい」
女の人――みらきーなさんから開放されたまじょりーな先輩は、溜息を吐きながら私からみらきーなさんを引き剥がした。
「宝石はなくしちゃったの。これは本当に悪いと思ってるわ。」
「悪いと思ってるなら探してよ〜。あれがないと私、魔法使えないのよ〜?」
「あら、魔法を使う条件にそんなものなかったと思うけど」
「南魔法界の魔法少女は、最初に零したなみだを結晶化させて、それを使わないと魔法が使えないの!西魔法界とは訳が違うのよ」
「そうだったかしら。もしそうなら、それでいいんじゃない?あんたは人間になりたかったんでしょ。魔法が使えないなら人間も同然だわ」
「まじょりん、今私が魔法使えなくて良かったね。私今すっごおく怒ってるから」
ひいいい。何なの、何なのこの人!
「あ〜っ、薄情なまじょりんと違って、バンビちゃんは可愛いねぇ!私もこんな人間の女の子に生まれたかったわぁ」
みらきーなさんが私に抱き着いてきた。
「くっつかないでください!!」
「ははっ、嫌われてやんの」
それを笑うまじょりーな先輩。
「バンビちゃんはそんな子じゃないと思うけどな!あ、まじょりんには分からないのかぁ!」
「残念ね、バンビは私の弟子なのよ。あなたより私の方が、バンビのことならよくわかってると思うわ」
「何それ!ねえバンビちゃん、みらきーなお姉さんの事好きよね?ね??」
「は、はい」
好きなのか聞かれても、さっき会ったばっかりだし、しかもあんな場面見せられたら逆に怖いんですけど!でもまあ、嫌いではないし。
「これからはみらきーなお姉さんって呼んでね☆」
「は、はぁ」
……ん?これからって?
「私、どっちにしろ宝石がないと帰れないから、バンビちゃんちに泊まるわ!」
「え……えええええええ!?」
魔法少女が2人も、私の家に住むなんて……。嬉しいけど嬉しくないような、もうなんなの!

21:ちもも:2018/09/21(金) 11:35 ID:9uw


「あーあ、せっかく人間の女の子の家に泊まれるって言うのに、部屋から出られないのは辛いなぁ!」
みらきーなさんが押しかけてきてはや一週間。みらきーなさんは子供みたいに脚をバタバタさせながら、天井を仰いでいた。
「おい、恥ずかしいから子供みたいなことすんなよ、もう大人だろ」
「みらきーなさんって、何歳なんですか?見た目は結構お姉さんぽいけど……」
「女の子に歳を聞いちゃだめよ、バンビちゃん」
笑顔の圧力。うう、怖い。
「失礼しちゃうわ、私がちょっと老けてるからって……」
ぶちぶちと口を尖らすみらきーなさん。
「あ、いや、そういう意味じゃなくて。スタイルいいなって思って」
慌ててフォローする私。
すると、みらきーなさんの目がきらっと光った。
「よくぞ気付いてくれたわね、バンビちゃん!!
私、魔法界でも結構スタイルいいほうなのよ。ボンッキュッボンの擬人化とも言われたくらいだわ!」
「はん、そんなの誰にも言われてなかったじゃん」
「余計な事言わないで!」
横から突っ込んできたまじょりーな先輩を睨むみらきーなさん。

22:ちもも:2018/09/21(金) 11:36 ID:9uw


「それよりバンビちゃあん、そろそろ私の事もみらきーなお姉さんって呼んでよお」
いきなりみらきーなさんが擦り寄ってきた。
「わっ」
慌てて逃げる私。
「なぁんか、懐いてくれないのよねぇ。私だって、バンビちゃんが憧れてるまじょりんと同じ魔法少女なのに……」
「だって、何か怖いんですもん」
「ひっどーい!バンビちゃん。ねえまじょりん、私のどこが怖い!?」
「全部だな。何か雰囲気がもう怖いんじゃないの?私は生まれた時からずーっとお前にくっつかれてきたからもう慣れてるけど、お前は怒ると怖いから、懐かれても何か裏があるような気がすんだよ。お前って腹黒いし」
「え、ええ……それは知らなかったわ」
「まずはそれを治すんだな。まあ、バンビの師匠は私だか――」
「バンビちゃん、お姉さんがバンビちゃんのお願い、何でも叶えてあげる!」
みらきーなさんはまじょりーな先輩の言葉を無視して、私の手を握った。
「最後まで聞けよ!」
「な、なんでも……!?」
とか言いつつも、私も目の前に提示された夢のような言葉に、ついまじょりーな先輩の言葉を無視してしまった。
「そうよ。な、ん、で、も☆」
「それじゃあ、それじゃあ……」
どうしよう、何にしようかな!
「魔法少女になるのは無理だから……そうだ」
私はウォークインクローゼットの1番手前に閉まってあったアレを取り出した。
「あら……可愛いドレスね」
「はい!昔、ピアノの発表会で着たんです!その時すごく上手く弾けて、デザインもお気に入りで、入らなくなっちゃったけど取ってあるんです。これをまた着たいなって……」
「確かにバンビちゃん、結構背高いものね。サイズを大きくするのは不可能じゃないけど……。せっかくなら、ちょっとだけリフォームしちゃわない?」
「リフォーム?」
「そう!もっと魔法少女っぽく、可愛くしちゃいましょ!」
「魔法少女っぽく……!だ、だったら、私が小さい頃から思い描いてた魔法の世界を、スカートにプリントしたいです!」
「いいわね!それじゃあいくわよ〜」
みらきーなさんが、ポケットから棒状のものを取り出した――あれは、魔法のステッキ!!
「ケーンよ。えいっ!」
みらきーなさんがドレスに向かって杖を一振すると、私のドレスは、キラキラ光り輝いた。
「わあ」
光が消えていくと、そこからは私の頭の中をそのまま印刷したような、魔法の世界のドレスがあったんだ。
「すごい……!すごい、みらきーなお姉さん!」
私はドレスをぎゅっと抱き締めた。
「ふふ……作戦成功ね」
みらきーなお姉さんがなんか言ってた気がするけど、私は聞かないことにした。

「……ねえ、お取り込み中悪いんだけど、いいかしら?」
何やら殺気を放っているまじょりーな先輩か、みらきーなお姉さんの肩を掴んだ。
「魔法……使えないんじゃなかったかしら???ねえ???」
「おほほほ、なんのことでございますかしら」
「とぼけんな!石がないと魔法使えないって!!」
「あー……実はね、昨日、ウサウサちゃんに頼んで街を探してもらったのよ。本当にアレがないと困るから」
「ウサウサ!?なんでお前が!!」
「いいじゃない。まじょりん、いつまで経っても石見つけてくれないんだもの。」
「分かったよ、謝るから、ウサウサを返してくれ」
「ウサウサちゃんならもう魔法界に帰ったわ。そ、れ、よ、り、も」
まじょりーな先輩とみらきーなお姉さんの会話をよそにドレスを眺めているわたしを見て、みらきーなお姉さんはにやりと笑った。
「バンビちゃんを手懐けるの、意外と簡単だったわ♥︎」
「お前なぁ……」
あーもう、また聞かなかったことにしよう!

23:ちもも15さい:2018/12/13(木) 21:50 ID:3Z2


「ねえねえ、最近気になってたんだけどさ」
お昼の時間、食堂でお盆に乗ったうどんを運びながら、友達が口を開いた。
「あんた、何で髪巻いてるの?」
「え?」
今まで誰にも触れられてこなかった髪の毛の事が話題に上がって、私の心臓は、一瞬ドキッと跳ねる。
「ほらさ、あんたずっとストレートだったじゃん。」
「そ、そうだけど……」
「あのさ……校則守れとかケチ臭い事は言うつもりはないんだけどさ……」
ああ、友達が何が言いたいのか分かってしまう自分が嫌だ。私は、地毛を晒せば何を言われるかなんて、もう分かってたはずなのに。
「やっぱり、変?」
にっこり笑顔を貼り付けて、私は機械的に口をつり上げる。
「はっきり言っていい?あんた、それやめた方がいいよ」
友達の言葉に、貼り付けた笑顔がぼろぼろと剥がれ落ちて行った。
やっぱり、私の髪の毛はだめなんだ。ちょっとだけ可愛いって思えてきたところだったのに。まじょりーな先輩に似合うって言われたからって、調子に乗り過ぎたのかな。魔法の世界と人間の世界では、美意識も当然違うだろうし。
みんなも、言わないだけで、きっと私の髪の毛を変って思ってたのかな。今この瞬間も、誰かは思ってるかもしれない。
「ご、ごめん、傷付いた?」
友達は心配してくれたけど、その気遣いが逆に心にしみた。
「地毛だ」なんて言えない。言ったら私のプライドが許さないよ。こんなのが地毛だなんて、私だって認めたくない。
「いいよ、全然。気にしてないから」
今日、私は初めて、友達を恨んだ。

「あら、おかえり、バンビ」
「うん……」
家に帰ってくると、掃除機を片手にお母さんが出迎えてくれた。でも、お昼の出来事が未だに堪えていて、私はまともな返事も出来なかった。
「変な子、最近明るくなったと思ったら、また落ち込んで……」
そんなお母さんの呟き声も聞こえてきたけど、それすらも今の私には悪口にしか聞こえない。きっと、私が髪の毛の事で落ち込んでるのが、お母さんには分かるんだ。
「あ〜♡おかえりなさい、バンビちゃん!」
部屋に入ると、いきなりみらきーなさんのお団子頭が目に飛び込んできた。
「あー、はい」
お母さんにバレちゃうって注意する気力もなく、私は乱暴にドアを閉めて、ベッドに直行した。
バフッとピンク色の布団に顔をうずめる。
「お前が暑苦しくて困ってんじゃね?」
どこから持ってきたのか、まじょりーな先輩は、水色に白い魔法陣が描いてある表紙の分厚〜い本を読みながらそう言った。
「そうなの?バンビちゃんごめんね」

24:ちもも15さい:2018/12/18(火) 18:07 ID:3Z2


みらきーなさんが謝ってくれたけど、私はそれを否定する気力もなかった。
「……あら、バンビ、髪の毛……どうしたの?」
まじょりーな先輩が本を閉じて、私に歩み寄ってきた。
ぎく。あからさまに体を硬直させる私。
「なになに、バンビちゃんの髪の毛がどうしたの?」
みらきーなさんも駆け寄ってくる。そして、二人揃って私の頭をまじまじと観察する。
「バンビ、今朝は髪の毛結んで学校に行ってたわよね?どうしてほどいてるの?」
う。まじょりーな先輩は、かなり痛いところを突いてきた。
そう。私は友達に髪の毛の事を指摘されたショックで、髪の毛をほどいてしまったんだ。まじょりーな先輩が可愛いって言ってくれた髪型を否定されてしまったショックで。
きっと悲しむよね、まじょりーな先輩。でも、それ以上に私が傷付いてしまったんだ。だから、まじょりーな先輩は何も悪くないのに、一瞬でも期待させてきたまじょりーな先輩を、ちょっとだけ恨んでしまった。
「ほっといてください。ゴムが切れちゃっただけですから」
口から出まかせが出る。
不貞腐れてる私を見て、みらきーなさんがまじょりーな先輩に耳打ちする。
「まじょりん……。バンビちゃんどうしたの?」
「そっか、お前は知らないのか……。
バンビは天然パーマで、それを馬鹿にされるからずっとコンプレックスだったんだよ。」
「ふーん……。じゃあ、どうして今は何もしてないの?バンビちゃんのドレッサーには、ストレートアイロンあるわよね?」
う。まるで私が何の努力もせずに不貞腐れてるみたいな言い方。それに、ドレッサーの中まで見られてるなんて。みらきーなさんって、デリカシーない!
「それがさ……。私がこのままでもいいって言っちゃったからさ……」
口ごもるまじょりーな先輩。

25:ちもも15さい:2018/12/18(火) 18:07 ID:3Z2

「へえ。で、それがどうかしたの?」
「え?」
びっくりして顔を上げると、みらきーなさんがきょとんとした顔で私とまじょりーな先輩を交互に見ていた。
「だって。バンビちゃんは、一瞬でもありのままの自分でもいいって思ったから、アイロン使わなかったんでしょ?」
「そ、そうですけど……」
「ならそれでいいんじゃないの?馬鹿にする奴らなんて気にしたら終わりよ。今の時代、何したって批判されるじゃない。だからって何もしなくても批判されるし。だったら、やりたい事やったもん勝ちじゃない。いちいち批判なんて気にしてたら、キリがないわよ?」
「う……」
みらきーなさんが言ってる事、すごく分かる。その通りだと思う。でも……。
「何も知らないくせに、偉そうに言わないでください!みらきーなさんはいいですよね。編み込みしても、お団子にしてもかわいいんですもん。でも私は違うんです!私は……」
涙が溢れてくる。みらきーなさんは何も悪くないのに、八つ当たりしちゃう自分が嫌だ。
「……そっか、バンビはみらきーなの過去を知らないんだったな……」
涙を必死に飲み込んでいたら、まじょりーな先輩がいきなり笑い出した。
「ちょっとまじょりん?あの事言うつもりじゃないでしょうねぇえ」
そして、みらきーなさんから、物凄い殺気が……。
「え、え、何の事ですか?」
「バンビちゃん?余計な事聞かないで?」
みらきーなさんの顔は笑っていた。でも、それは嬉しくて笑ってるんじゃなくて、怒って笑っているように見える。
「あのな、バンビ。……くすくす。」
笑いを堪えながら、まじょりーな先輩は話し出す。
「わー!わー!わー!!!」
それを止めようとまじょりーな先輩に飛びかかるみらきーなさん。口を手で抑えようとしてるけど、背が高いまじょりーな先輩には届いていない。
「みらきーなは、昔、地味らきーなって呼ばれてたんだよ」
「じ、じみらきーな……?」
何それ。「地味」と「みらきーな」をかけてるの?
「そ。こいつ、昔はほんとに大人しくてさ。ぐるぐるメガネでそばかすもあって、典型的な『大人しい女の子』だったんだよ。」
「え、ええ……」
想像出来ない。あのみらきーなさんが?ぐるぐるメガネで、そばかすで、地味らきーなで?
「こいつも馬鹿にされてたんだよな。性格も大人しかったし、何言われても怒らなかったし。まあ、怒れなかったんだと思うけど」
「みらきーなさんが……?」
思わずみらきーなさんを凝視してしまう。みらきーなさんはまじょりーな先輩の口を狙うのをやめて、恥ずかしそうに笑った。
「そうなの。びっくりでしょ?
でもね、私、変わったの。そばかすはお化粧で隠して、メガネもやめたいからコンタクトにしたの。魔法の国にもあるのよ。人間の世界にだってあるでしょ?変われる方法が、たくさんあるじゃない。で、バンビちゃんも、ずっと髪の毛が真っ直ぐになるように、努力してきてたんでしょ?」
「はい……」
「だから、それをまた続ければいいの。ストレートにしてた頃は、馬鹿にされなかったんでしょ?」
「はい……」
「だったら、またストレートにすればよし!これで万事解決☆」
ウインクしながらびしっと決めポーズを決めるみらきーなさん。

26:ちもも15さい:2018/12/18(火) 18:07 ID:3Z2

「バンビ、私のせいで傷付く事になったんだよね。ほんとにごめん。でも、私は本当に可愛いと思ったの。私は、ありのままの方がすてきって思ったのよ。でも、そのせいでバンビが傷付く事になるなんて思わなくて……ごめんなさい」
まじょりーな先輩が、深く深く頭を下げる。
「え、え?あの、まじょりーな先輩のせいじゃないです!」
慌ててまじょりーな先輩の頭を上げさせる私。
でも、まじょりーな先輩は、再び頭を下げる。
「お願い、ストレートにしてちょうだい。じゃないと……」
まじょりーなさんの顔を覗き込むと、その表情は、まるで恐怖に怯える小鹿のようだった。
「みらきーなは馬鹿にされて、それをずっと溜め込んでたせいで性格がひん曲がってしまったのよ……だからバンビにはそうなってほしくないの」
まじょりーな先輩がここまで怯えるって……みらきーなさんの方を見ると、「てへぺろ★」とでも言わんばかりに舌を出していた。
「わかりました、でも……」
私は、まじょりーな先輩とみらきーなさんの手を取って、そして、
「もう少し、本当の自分を好きになる努力をしてみます!」
精一杯、心から笑った。

27:千百宇:2018/12/31(月) 12:07 ID:BwY


ああ、暑い。そういえば、もうそろそろ6月になるんだっけ。制服、早く夏服にならないかな…。

「まじょりん、そういえば……もうすぐあの季節じゃなかったっけ?」
学校から帰ってきて部屋着に着替えていると、本を読んでいたまじょりーな先輩に、みらきーなさんがおずおずと話を切り出した。
「あの季節って?」
本から目を離してきょとんとするまじょりーな先輩。
「ほら……育ての親に魔法をかける儀式……」
みらきーなさんが言いにくそうにそう言うと、まじょりーな先輩はばたんと本を閉じた。
「そんなのどうだっていいじゃない。」
真顔で早口で喋るまじょりーな先輩。
んんん、何だか動揺してる?いつもの冷静さが感じられない。
「何なんですか?その儀式って」
「魔法の世界で行われる儀式」に興味を持った私は、身を乗り出して目を輝かせた。
「そんなのないわ。みらきーなが適当な事を言ってるのよ」
気のせいか、まじょりーな先輩は怒っているように見えた。私から顔を背けて、心做しかみらきーなさんを睨んでいる。
……?な、何なんだろ。でも、みらきーなさんはしょっちゅう変な事言ってるし、たまに本気なのか冗談なのか分からないところもあるから、今回もそんな感じなのかも?
「で、でもまじょりん!あれしないと、流石にまずいんじゃ……」
「うるさいわね!あんな人親なんかじゃないわ!だからあんな儀式する意味ない!」
「ま、まじょりーな先輩……?」
急に大きな声を出すまじょりーな先輩を見ると、「やっちゃった」って顔をしていた。そして、顔を歪ませて自分の爪先を見詰める。
「ごめんなさい。ちょっと出掛けてくる。」
そして、部屋の隅に立て掛けてあった魔法のほうきを掴んで、窓から出ていってしまった。
「ま、まじょりーな先輩……」
一体どうしちゃったの?それに、あんな人親じゃないって……?

そういえば。私、まじょりーな先輩の事、あんまり知らないや……。みらきーなさんの昔の話は知ってるけど、まじょりーな先輩は一度も自分の事を話してくれてない……。

28:千百宇:2018/12/31(月) 12:23 ID:BwY


「みらきーなさん……」
立ったまま固まってしまっていたみらきーなさんに話し掛ける。機械的に首を動かしてこっちを見たその顔は、
「み、みらきーなさん?」
――泣いていた。
「ど、どうしたん……」
「どうしよう!どうしよう!まじょりん……どうしよう!!」
涙をぽろぽろ零しながら、倒れ込むように私の肩を掴むみらきーなさん。
「あの……まじょりーな先輩、昔何かあったんですか……?」



それから、みらきーなお姉さんは、まじょりーな先輩には話した事を秘密にする事を条件に、まじょりーな先輩の過去を話してくれた。

「まじょりんと私は、違う世界に住んでたの。まじょりんが西魔法界で、私が南魔法界。どっちも魔法界なんだけど、魔法界では一応別の国として扱われてるの。
2つの国は隣接していて、境界には川が流れてるの。その川を挟むようにして、私達は生まれた。
魔法少女は、宝石から生まれるの。人間の世界みたいに、魔法界にも宝石の原石が転がっててね。そこから生まれるの。それで、まじょりんの世界、西魔法界は、自分が生まれた宝石を、成人済みの魔法少女が魔法でステッキにする事で、子供達は正式に魔法少女になるの。その成人済みの魔法少女が、子供魔法少女の母親代わりになるって決まってるの。
でね。まじょりんを魔法少女にして、母親代わりになった魔法少女が……それはそれは酷い魔法少女で。
自分さえ良ければそれでいい。本当にこの言葉がぴったり当てはまるような、最低最悪のもう生きてる意味もない、死ぬべき魔法少女なの。これはわたしがこっそり西魔法界に遊びに行った時に聞いた噂なんだけど、みんなに死ぬ事を望まれてるくらい。あ、西魔法界で生まれた魔法少女は南魔法界に、南魔法界でで生まれた魔法少女は西魔法界には、原則足を踏み入れてはいけないことになってるの。これも秘密ね。
それで。当然生まれたばっかりのまじょりんはそんな事知らなかったから、最初は母親が本当に大好きだった。私達は毎日、自分達が生まれた場所に行って、川越しに話してたんだけど、あの時はいつも『お母さん大好き』『お母さんみたいな魔法少女になりたい』って言ってた。母親も、いや……あのくそ最低魔法少女のなれ腐れも、最初はまじょりんを自分の味方にする為に優しくしてたから。

29:千百宇:2018/12/31(月) 13:21 ID:BwY


そして事件は、私達が4歳になったその日に起こった。
魔法少女は4歳になったら、自立することになってるの。魔法少女には赤ちゃんの時期がないから、人間より遥かに早く大人になるの。まあ、ちゃんと大人になるのは10歳なんだけど。
でね。その日。4歳になった私達魔法少女は、500日ごとに、育ての親に魔法を掛けることになってるの。魔法少女は歳をとるごとにどんどん魔力が上がっていくんだけど、1700年を境に落ちていくの。だから大人の魔法少女は魔力がなくなる前に、子供を見付けて、魔法を掛けてもらうの。それで、あのくそ魔法少女は、2000年生きていた。だから……自分の魔力がどんどん衰えていくのが怖くて、誰でもいいから子供が欲しかったの。まじょりんの事、子供だなんて思ってなかったわ。
あの人がしてきた事は詳しくは言えないけど、本当に、本当に最低なやつなの。4歳の誕生日を迎えたまじょりんに、そいつはこう言った。
『お前は私の道具でしかないんだから、当然のように息をするな。お前は魔法だけ使っていればいいんだ。お前みたいな魔法が下手くそな約立たずが、どうして私の子供なのか分からない。お前みたいな奴、私が拾わなければ見捨てられてただろうな。ああ、私は人間じゃなくてよかった。私の腹から生まれてきたのがお前だったらって考えたら寒気がする。だから私は、お前が成人式を迎える前に捨ててやる。それまでに、お前がなるべく苦しむように、私頑張るわね』
そう言われたまじょりんは、今まで優しくされてたぶん、深く深く傷付いた。そして、魔法を使えなくなってしまったの。
まじょりんは元々、あんまり魔法が得意じゃなかったの。それを分かっておいて、あいつはまじょりんを子供に選んだ。不幸な魔法少女が苦しむ姿を近くで見ていたかったのよ。
まじょりんは、ショックで、ショックで、ショックのあまり、何度も自殺を測った。でも、しねなかった。人をころす魔法も、自分をころす魔法も、


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