*with you in a new world*~アラジン二次創作~

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1:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/15(火) 19:21 ID:MJ.

D社のアラジンの二次創作です。
家族から呆れられるほどアラジンを観まくり、
アラジンをこよなく愛する樹音による
アラジン二次創作です。

※注意※
荒らし、成り済まし、特攻絶対禁止。
第一話はアラジン完結編のエンディングから
数日って感じ。オリキャラも出てくる場合が
あります。その際はプロフィールを書きます。

2:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/15(火) 20:00 ID:MJ.

*第一話 新しい世界*

―二人の結婚式も終わり、浮わついたアグラバー王国は
少しずつ落ち着きを取り戻し、日常に戻りつつあった。
しかし、宮殿はまだどこか浮わついた空気を感じる。
二人―アラジンとジャスミンは、二人で落ち着きたくて
誰もいない噴水へ向かった。
二人共、気恥ずかしいのか沈黙を貫く。
その沈黙を先に破ったのはアラジンだった。

「―ねぇ、ジャスミン。僕達、結婚したんだよね?何だかまだ夢を見ているようだ」

ぼうっと満月を見つめながら、アラジンは
そう口にした。ジャスミンも同じく、満月を見つめ

「それは私だって同じよ。…貴方に出逢ってから全てが変わったわ」

と言った。

「私はずっと、宮殿から出ることを許されず、友達もいなかった。悩みを話せる相手もね。ラジャーは別だけど」

そう言ったジャスミンの表情は、どこか儚げだった。
月明かりに照らされているせいだろうか。

「僕だってそうさ。家族の温もりを知らずに生きてきた。でも、君と出逢って、たくさんの人に囲まれて、死んだと思ってた父さんにも逢えたんだ!結婚式も見てもらえた」

ジャスミンの目をまっすぐ見て、アラジンは言った。

「アル…私も。貴方に出逢えたから、友達もたくさん出来たの。みんな、貴方と出逢えたおかげよ」

ジャスミンも、アラジンの目をまっすぐ見て言う。
そう、互いに巡りあったことで変わったことが
たくさんあるのだ。

「宮殿で暮らして、豪華な絹の衣を纏い、召し使いに囲まれて、愛するプリンセスと幸せな日々を過ごすのが夢だったんだ。その夢が叶うなんて、思ってなかったよ。君と出逢ってから、幸せの連続だ」

ジャスミンと出逢う前、「ドブネズミ」と罵られ
ボロ屋で暮らしていた時、遠くに見える宮殿を見つめて
相棒の猿、アブーにこう言ったことがある。

"あそこで暮らしてこそ人生だよね、アブー? "と。
そんなアラジンの話を聞いて、ジャスミンは

「アル…愛しているわ」と言ったのだった。

「僕もだよ、ジャスミン…」

キスをしようと、顔を近付け、唇を重ねようとした
その時――

「―オッホン。お二人さん、お楽しみのところ悪いんだけど…王様が呼んでるよ」

陽気な声が響いた。ランプの魔神、ジーニーだ。
二人は顔を真っ赤にして俯いた。

「な、何だよ、ジーニー。いきなり声をかけて…」

そのアラジンの言葉を聞いたジーニーは
チッチッチ…と舌を鳴らす。

「さっきからずっと声をかけてたぜ?なぁ、モンキーちゃん?」

アブーもコクコクと頷く。

「………どこら辺から?」

「アル…愛しているわ辺りから」

ジャスミンの声を真似して、ジーニーが言う。
二人は再び顔を赤くする。

「で?王様の話って?」

「さぁ、とにかく行きましょう。お父様に話を聞きに」

誤魔化すように二人は言い、腕を組んで歩き出す。
ジーニーとアブーはやれやれというように二人の
後に続いた。

【第二話 新たな王国の仲間 へ続く】

3:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/15(火) 20:13 ID:MJ.

第二話 新たな王国の仲間 で登場するキャラ

名前:アカネ・フィーリン
年齢:19歳
容姿:物凄い美人。つり目で瞳の色は赤。
巨乳で、長い黒髪が彼女の自慢。ちょっとセクシー。
髪:赤みがかった黒髪。
性格:頼りがいがあって、姉御はだタイプ。
しっかり者で仕事もきちんとこなす。
ジャスミンのよき話し相手となる。頼られるのが
好き。ちょっとセクシー。元・踊り子。
備考:アラジンのことが好き?

4:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/15(火) 20:39 ID:MJ.

*第二話 新たな王国の仲間*

―三人と一匹は王の間に向かった。
人の良さそうな王様が、玉座に座って三人と一匹を
待っていた。

「お父様、話って何かしら?」

ジャスミンは緊張しつつも、父親に問いかける。

「それはのぅ、ジャスミン。明日…新しい者をこの宮殿に迎えることにしたのじゃ」

それを聞いた三人と一匹は、ピク、と反応する。

「新しい者、ですか?それってまさか…」

新しい国務大臣を迎えるのではと推理したアラジンが
呟くように言う。ジャファーが追放されてから
この王国には国務大臣が不在だったからだ。
きっと、ジャスミンも、ジーニーも同じことを
かんがえているだろう。

「ああ。ジャスミンの侍女じゃ」

―王様の答えは予想だにしないものであった。
ジャスミンは驚き、言った。

「お父様、私、大抵のことは一人でできるわ。侍女なんて必要ないわ」

ジャスミンは賢く、活発なプリンセスだ。
本人の言う通り、侍女など必要ないだろう。

「それは分かっておる。しかし、お前はもう独り身ではない。新婚には、悩みも多い。そこで、侍女がいれば悩みも打ち明けられ、アラジンと幸せな夫婦生活を過ごせるだろうと思ったのじゃ」

王様がそう言っても、まだ納得しない様子のジャスミン。
はぁと溜め息をついて、言葉を続ける。

「それに、頼りがいのある人じゃ。故郷もアグラバーらしい」

王様の熱心な訴えに、ジャスミンは白旗を挙げた。
父親にそこまで言われては仕方あるまい。

「そこまで言うなら仕方ないわね、お父様。明日を楽しみにしてるわ」

―明日、王国は新たな仲間を迎えるのだ。

5:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/16(水) 20:48 ID:Bpw

(>>4の続き)

―翌日。ジャスミン王女の侍女を迎える為に
いそいそと宮殿を飾りつける。主に動いているのは
勿論魔神・ジーニーである。
着々と準備が進み、あとは侍女を迎えるのみ。
ジャスミン王女は緊張していた。

「大丈夫、ジャスミン。きっと、良い人さ。まずは信じてみないと」

ジャスミンの心配を悟ったアラジンが、彼女の肩を
ポン、と軽く叩き励ました。

「ありがとう、アル」

にこやかに笑みを返すジャスミン。
緊張は少し解けたようだ。

―すると。宮殿のドアが開き、ジャスミンの侍女と
なる美しい女性が入ってきた。
ツカツカと進み、王様・ジャスミン・アラジンに
深々とお辞儀をした。

「はじめまして、あたしはアカネ・フィーリンです。故郷はここ、アグラバー。元・踊り子です」

皆に笑顔を向けると
「これからよろしくお願いしますわ」と付け足した。

人の良さそうな笑顔を見る限り、悪い人では
なさそうだった。
彼女―アカネは唐突にアラジンに話しかける。

「ねぇ、貴方がジャスミン王女様とご結婚なさったアラジンさんかしら?」

いきなりのことで驚いたアラジンだったが

「あ、ああ。僕はアラジン。これからよろしく、アカネさん」

と、明るく人懐こい笑顔を見せた。
オープンマインドで誰とでも仲良くなれるのが彼の
魅力。きっと、アカネともすぐ仲良くなれるだろう。

二人の挨拶を見たジャスミンは急いで

「私はジャスミンよ。この王国の王女。貴方と仲良く出来ることを祈っているわ。これからよろしくね」

と言ったのだった。
**
―その夜は、侍女アカネの歓迎会。
豪華なご馳走や高いお酒が用意され、アカネも
宮殿の仲間達と積極的に話しかけ、すぐに宮殿に
溶け込んだ。そして、歓迎会も終わりに近付いた時。
彼女の特技である踊りを披露し、皆を圧巻させた。

「おぉ、凄いのぅ!凄いのぅ!」

王様は手を叩いて彼女の踊りに見いっていた。
一方、ジーニーは負けるもんかと言わんばかりに
隣でマジックを披露したり、踊ったりしていた。

「ジーニー、何張り合ってるんだい?」

笑いながらアラジンが言う。

「別に張り合っちゃいないさ。俺はパーティが大好きなんだ!ヤッフ〜‼」

ジーニーは歓声を上げ、魔法でアグラバーの夜空に
花火を彩った。
その花火を見た皆がさらに盛り上がる。
アカネも嬉しそうにしていた。
歓迎会は大成功だ!

歓迎会の終わり。踊りを終えたアカネが
アラジンに近寄る。何か話でもあるのだろうか。
近寄り過ぎて、アカネの胸がアラジンに当たる。
思わずアラジンは赤面した。

「ねぇ、アル。あたしの踊り、どうだった?」

いきなりあだ名で呼んだアカネ。アラジンは
驚いたが、すぐに宮殿に打ち解けたアカネだ。
きっと、アラジンとも仲良くなりたくてあだ名で
呼んだのだろう。

「え、えっと……とても魅力的だったよ!君の踊りは最高だ!」

アラジンは心からそう思った。アラジンも彼女の踊りに
見いっていたのだ。

「あら、嬉しいわ。とにかく、これからよろしくね」

意味ありげな笑みを浮かべ、ジャスミンの元へ向かう
アカネ。アラジンは彼女が分からなかった。

【第三話 ジャスミン王女と侍女アカネ へ続く】

6:玲織◆rI:2019/10/16(水) 21:37 ID:JzY

玲織来たぜ!!
書き込んで良いのか...?

私アラジンは見たことないけど、面白そうやね!情景も分かりやすいし、物語の展開もちょうど良い感じかも。
更新楽しみにしてます^ ^

7:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/17(木) 17:14 ID:Bpw

お、あざす!
もちOK🆗👌

そうかな?見たことない人にもそう言ってもらえて
めっちゃ嬉しい🎵😍🎵
そっか、良かった。←何が
うん、楽しみにしてて!

8:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/17(木) 17:15 ID:Bpw

あ、感想はどしどし下さい!
むしろ待ってます(おい)

(れおに書き込んで良いのかと言われたので)

9:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/17(木) 20:14 ID:Bpw

*第三話 ジャスミン王女と侍女アカネ*

―アラジンに意味ありげな笑みを送った後アカネは
ジャスミンの部屋へ向かった。お気にいりのお茶を
持って。

「王女様、アカネです。入っても良いですか?」

アカネはコンコンと軽くドアをノックすると、
そう言った。「どうぞ、入って」という明るい王女の
声が返ってきた。アカネは部屋へ入る。

「良かったら、お茶いかがですか?」

お茶をジャスミンに差し出し、アカネは言う。
ジャスミンはにこやかに笑みを浮かべ
「ありがとう、いただくわ」とお茶を飲む。

「あら、このお茶、とっても美味しいわ」

ジャスミンは一気にお茶を飲み干した。
アカネのお気にいりのお茶を、ジャスミンも
気に入ったようだった。

「まろやかなミルクが温かくて、優しくて…まるで――」

ジャスミンは少し頬を紅潮させる。
アカネはジャスミンの言葉を引き継いだ。

「まるで――アルのようだとおっしゃりたいのでしょう?アルは、明るくて、優しくて、あったかい人ですものね?」

ふふ、とアカネは微笑む。
ジャスミンはアラジンのことを"アル "とあだ名で
呼んでいるのにびっくりしていた。だが、別に
気にもとめなかった。すぐに宮殿に打ち解けたアカネだ。
アラジンとも仲良くなったのだろう。
それよりも―ジャスミンは気になっていたことがある。

「ねぇアカネ。ちょっと良いかしら?」

アカネは身を固くする。緊張した面持ちでジャスミンを
見つめた。

「な、なんでしょう、王女様?」

「私のことはジャスミンで良いわ。それに、敬語もなし。分かった?」

それを聞いたアカネは驚いた。侍女と王女の関係。
決して、敬語で話すような相手ではない。

「いけません、あたしとジャスミン様は王女と侍女の関係ですわ」

アカネは焦りながら訴えるが、ジャスミンは首を振る。

「私は貴方と友達のように接したいの。もっと言えば家族のように。王女の命令よ、逆らうの?」

ジャスミンは、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
アカネもつられて笑う。このとき、二人の友情が
生まれたのだ。

【第四話 彼女の過去とアラジン へ続く】

10:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/18(金) 20:13 ID:Bpw

*第四話 彼女の過去とアラジン *

―翌日。朝早く起きたアカネはぼうっと宮殿から
見えるアグラバーの市場を見つめていた。
それから少しして、ジャスミンが起きたのを
確認すると部屋のドアをノックし、

「お目覚めおめでとう。お茶はいかが?目覚めのよいハーブティよ。どうぞ」

と言ってお茶を差し出した。
ジャスミンは「おはよう」と朝の挨拶をして
お茶を受け取り、ゆっくりと飲み干した。

「このお茶も美味しいわね。何だか、スッキリするみたい。目が覚めたわ、ありがとう」

にこり、と笑みを浮かべ、ジャスミンは言った。
**
アカネにとって、アグラバーの宮殿での初めての
朝食。運ぶのを手伝い、籠いっぱいのパンを
アラジンの目の前のテーブルに置く。

「アル、貴方細いわね。もっとたくさん食べたら?たくましくならなくちゃ」

悪戯っぽく微笑むと、アカネは言った。
アラジンはパンを手に取り、一口かじる。

「ありがとう。でも、よくも気にしてることを言ってくれたね」

わざとらしく眉をひそめる。そんなアラジンを見て
アカネは何がおかしいのかクスリと笑っていた。
アラジンもつられて笑う。そんな二人の姿を見た
ジャスミンは少しだけ気になり、アカネが席に着いた
時に言った。

「アカネ、随分アルと仲が良いのね?」

「ええ。彼、オープンマインドで誰とでもすぐに仲良くなれるからね。でも、それだけ。焼きもち焼かないでね?」

その彼女の言葉を聞いたジャスミンは赤面し、
「そういう意味じゃないわ」と言った。
****
朝食が済み、ジャスミンはアカネと話したくて
アカネの部屋へ向かう。だが、アカネの姿はない。
宮殿を歩いて探してみても、見つからない。
―ドンッ。誰かとぶつかる。

「あら、ごめんなさい。私、急いでて……って、アル!」

ジャスミンのぶつかった相手はアラジンだった。

「大丈夫かい、ジャスミン?怪我は?」

慌ててアラジンが聞く。ジャスミンは首を振る。
どうやら、怪我はないようだ。

「ねぇアル。アカネを見なかった?」

今度はジャスミンがアラジンに聞く。

「いや。見てないけど。何か用事かい?」

「もしアカネを見かけたら私が呼んでたって伝えてくれるかしら?」

「勿論!」

アラジンはにこりと笑い、元気よく返事をする。
アブーを肩に乗せて、アカネを探しにいく。

「さぁ、行くぞ、アブー‼」

宮殿を歩いて探し回るが、なかなかアカネを
見つけることは出来ない。チラ、と横目で
アブーを見やると、ヤレヤレとでも言うような
表情をしていた。"もう無理だよ、諦めよう "
アブーの表情がそう語っていた。だが、勿論
アラジンは諦めない。うーんと考えていると一つの
考えが浮かぶ。

「あ、もしかしたら、あそこじゃないか?」

アラジンの言う、"あそこ "とは噴水だった。
ジャスミンもよく噴水にいる。特に、アラジンと
出会う前は。アカネは噴水にいると確信し
早足で噴水へ向かった。

11:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/21(月) 18:51 ID:OoE

(>>10の続き)

―噴水に腰かけるアカネを見つけたが、アラジンは
声をかけることが出来なかった。理由は明白。
彼女が、その美しい瞳からツーと一筋涙を流すところを
見たからだ。流れた涙は溢れだし、次第に止まらなく
なる。嗚咽音まで聞こえてくる。
アラジンは、彼女を慰めたくて声をかけた。

「あ、あの……!アカネ?」

アラジンの声に反応し、アカネがパッと振り向く。
涙でぐちゃぐちゃな彼女の顔がこちらに覗く。

「ハンカチ、いる?」

緑色の綺麗なハンカチをアラジンは彼女に
渡す。アカネは黙って受け取り、涙をそっと拭いた。

「何かあったのか?王宮の暮らしに慣れない?ホームシックとか?いじめ…も可能性に挙げるのが妥当かもしれないけど、皆優しいし、そんなことする訳ないから…えーと、何があったの?」

最後の方は独り言のようになりながら問い掛ける。
アカネは最初、黙っていたが、しばしの沈黙ののちに
口を開いた。

「あたし、この宮殿に来てから、家族のような温もりを受けたわ。凄く暖かい人達よね。勿論、貴方も含めてね。それで、あたし、家族を思いだしちゃって…」

何故か自虐的に微笑みながら、彼女は言った。

「やっぱり、ホームシック?」

「―もう、その家族には会えないんだけどね」

再び、涙を流して彼女は言った。
それにしても、もう会えないとはどういう意味なの
だろうか?アラジンには分からなかった。
そこで、少し躊躇いつつも、聞いてみることにした。

「それってどういう……」

「あたしの家、極貧でね。食べる物もなくって。あたしの三個下の弟が、お腹空いたって泣いちゃって。それで、パパが市場の屋台からパンを盗んだのよ。―案の定、捕まったわ。当たり前よね?その時のことで覚えてるのはママの"主人をどうか許して下さい "ってすがるような声と、弟の泣き叫ぶ声。パパは最後に"ごめんな "って言ったわ。それが、パパの覚えてること。ママも弟もわんわん泣いてたけど、あたしは泣けなかった。だってそうじゃない‼家族四人で居られれば、パンも、宝石すらも要らなかった‼家族で居られるだけで良かったのよ……あたしは」

そこまで言って、アカネはもう一度涙を拭った。
アラジンはアカネの
"家族四人で居られれば、パンも、宝石すらも要らなかった‼家族で居られるだけで良かったのよ…… "という言葉に
激しく共感した。彼も、父に対して、そのような
感情を抱いていたからだ。アラジンはアカネを励ますように
肩をポンと軽く叩いた。

「僕も、同じ気持ちを父に抱いたことがあるよ」
という言葉も付け足して。

「ありがとう。―で。話の続きだけど…いつしかママも消えた。パパを追うようにしてね。弟もショック死したわ。あたしだけよ、家族で生き残ったの。―――ね、アル。抱き締めて?お願いよ、アルの顔が…パパに似てるの」

必死な彼女の言葉を聞いたアラジンは断る気には
なれなかった。ギュッと、黙って抱き締めた。
アカネもギュッと、アラジンを抱き締めかえす。
**
―どうして?ジャスミンはなかなか
戻ってこないアラジンを
心配して探しに行った先の噴水で、抱き合う二人を
見つけてしまったのだ。もしかして、浮気?
暗い可能性が浮かびあがる。
ジャスミンは必死に涙を堪えながら部屋に戻った。

【第五話 Hey why―ねぇ、どうしてそんな へ続く】

12:夜空◆2s:2019/10/21(月) 20:27 ID:p7Q

おっおっおっ

13:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/21(月) 20:49 ID:OoE

え、何?おっおっおっじゃ分からんよw
見てくれて嬉しいけどさぁw

14:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/22(火) 10:32 ID:OoE

*第五話 Hey why――ねぇ、どうしてそんな *

―ジャスミンは今にも溢れだしそうな涙を必死に
堪えて、自室に戻る。部屋のベッドに突っ伏して
声をあげながら泣いた。

「嘘よ、嘘だって言ってちょうだい。愛するアルと大切な侍女アカネが浮気ですって?ねぇ、冗談はよしてよ………」

独り言を呟きながら、彼女は思いきり泣いた。
溢れる涙は止まらない。

「信じてたの。彼も、彼女も。でも……裏切られた。私は、私、私は………どうすれば良いの?」

二人のことを心から信じていたジャスミンに
とって、二人の行為は酷い仕打ちだった。
二人は確かに抱き合っていた。
あの後、どうしたのだろう?キスでもしたのだろうか。
そういえば歓迎会の時も胸が当たるほど接近していた。
その時、逢い引きの約束でもしていたのだろうか。
自分の寝静まった後で……
そんなの、考えるだけで悲しい。気を張っていないと
また涙が零れ落ちそうだ。
泣いているジャスミンを心配したペットであり
友達のトラのラジャーがぺろり、とジャスミンを
舐める。

「まぁ、ラジャー。ありがとう。貴方は―私の最高の友達よ」

そう言って、ラジャーの頭をそっと撫でる。
ラジャーは気持ち良さそうな表情をした。
**
―一方、アラジンとアカネ。アラジンと抱き合った
ことにより少し落ち着きを取り戻したアカネ。

「アル、ありがとう。貴方のお陰で少し落ち着いたわ。ごめんなさい。こんな無茶なお願いをしてしまって…でも、本当に貴方が、パパにそっくりで…初めて会った時はびっくりしたわ」

にこり、と寂しげに微笑みながらアカネは言った。
アラジンはもう一度肩をポンと軽く叩き、こう言う。

「―大丈夫。もう君は一人じゃない。僕もいるし、ほら、アブーだって!それにきっとジャスミンも力になってくれるさ。王様も優しくて良い人だから、君の相談相手になってくださると思うよ。陽気なジーニーもマジックで君を励ましてくれる。僕の最高の友達なんだ!助言もしてくれるしね」

彼の必死で自分を励ます様子を見たら、何だか
おかしくて、ぷっと吹き出した。そして聞いた。

「ね、アル。ジーニーって誰?あたし、あまりよく知らないわ。でも貴方の話を聞く限り、素敵な人なんでしょうね」

「あれ?知らなかった?歓迎会の時、君は華麗な踊りを披露してくれただろ。その時、君の隣でマジックを披露してた青い魔神さ!元、ランプの魔神なんだ」

「早くちゃんと会いたいわ」

そう言って微笑むアカネを見たアラジンは安心して
胸を撫で下ろす。アカネも少し元気になってくれた
ようだ。そんな風に気が緩むのと同時に、
大事なことを思い出した。

「そういえば、ジャスミンが君を呼んでいたよ」

アカネはびっくりして目を見開く。

「まぁ、何かしら?早く行かなくちゃ!じゃあね、さっきは本当にありがとう。貴方のお陰で元気が出たわ」

ペコリとお辞儀し、ジャスミンの部屋に向かう。

15:若桜☆郁里ひよねこ◆ME:2019/10/22(火) 19:22 ID:EYk

うわあああ!なんかヤバイ展開になってきた‼w
これからも頑張ってね‼

16:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/22(火) 19:39 ID:OoE

そうなんだよねww
ありがとう、頑張る!

17:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/25(金) 18:19 ID:yJE

(>>14の続き)

―アカネはまっすぐジャスミンの部屋に向かう。
ドアを軽くノックし、声をかける。

「ジャスミン?アルから私を呼んでると聞いたわ。何か用かしら?」

アカネはジャスミンの明るい声が聞けると思っていた。
だが、実際には

「来ないで!誰にも会いたくないの!一人にしてちょうだい…」

という必死に涙をこらえながら発している、そんな
声が返ってきた。そんな彼女を心配したアカネは
ジャスミンの力になりたいと思った。ついさっき
アラジンが自分を励ましてくれたように。

「……何かあったの?あたしで良ければ相談に乗るわ」

「もう私に構わないで」

冷たく冷淡だが、か細いジャスミンの声が聞こえる。
アカネはジャスミンをそっとしておくべきだと判断し
その場を立ち去った。
**
一方の、アラジン。一応自分もアカネを見つけたと
ジャスミンに声をかけるべきだと考え、彼女の
部屋に向かう。その途中、ジーニーとばったり会った。
ジーニーはジッとアラジンを睨む。陽気な彼には
珍しいことだ。機嫌が悪いのだろうか。
アラジンがそんなことを考えていると、ジーニーが
口を開いた。

「―アル。ちょっとお前さんの行動は良くないんじゃないか?」

いきなりのことでアラジンは意味が分からなかった。
ジーニーの言葉の意味とは?アラジンは聞いた。

「ジーニー、何のことだ?」

アラジンのそんな問い掛けに対し、信じられない
とでも言うように肩をすくめた。

「可愛い女房がいるってのに、その侍女と浮気なんかしてさ。アル、正気か?」

それを聞いたアラジンは驚いた。

「僕が浮気?アカネと?冗談はよせよ」

「抱き合ってたじゃないか、アカネと。見てたんだぜ、このジーニーちゃんはよ」

実は、あの時、ジャスミンだけではなくジーニーも
二人の抱き合う様子を見ていたようだ。
そしてジーニーも誤解していた。

【第六話 誤解を解く時 へ続く】

18:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/25(金) 20:40 ID:yJE

*第六話 誤解を解く時 *

―アラジンはアカネと抱き合うまでの経緯を
ジーニーに説明した。

「それなら早くジャスミンの誤解を解かないと。彼女の部屋の前を通った時、泣き声が聞こえたんだ。まずいことになるかもしれない。アル、ピンチ!」

ジーニーは早口で言った。アラジンは、経緯があるとは
いえ、自分の軽はずみな行動を後悔した。
ジャスミンのことを泣かせたくなかったのだ。

「ジャスミンの部屋に行くよ。必ずジャスミンの誤解を解く!」

アラジンはそう意気込み、ジャスミンの部屋に向かう。
**
―ジャスミンの部屋の前まで着いた時、アラジンは
緊張し、身を固くした。だが、必ずジャスミンの
誤解を解かなければいけない。それが今のアラジンの
使命だ。
こわごわ彼女の部屋のドアをノックする。

「ジャスミン、僕だ…」

アラジンはジャスミンに声をかける。
部屋の中で、ジャスミンはビクッとした。
彼は何を言いにきたのだろう。言い訳だろうか?
そんなもの聞きたくなかった。

「イヤ!貴方に会いたくないの!帰って!」

ジャスミンは大声で叫ぶように言った。
アラジンは尻込みする。やはり彼女のショックは
大きいようだ。だからこそ、アラジンはここで
"ああそうですか "と引き返す訳にはいかない。

「…入るよ」

アラジンはドアノブを回し、彼女の部屋に入る。

「私の言ったことが聞こえなかったの?帰って!」

ジャスミンはもう一度叫ぶように言った。
今はアラジンの顔も見たくない。

「僕の話を聞いてくれないか?」

アラジンは切り出した。ジャスミンは咄嗟に
耳をふさぐ。

「イヤ、聞きたくないわ!」

ジャスミンは涙目になる。今のジャスミンは
アラジンに心を開いていない。初対面―市場で
出会った時。そしてジーニーの魔法でアリ王子に
なった時。"必ず姫のハートを射止めてみせましょう "
王様にそう豪語した時、彼女はこう言った。

「勝手に私の将来を決めないで。戦利品じゃなくてよ!」

その時よりも、今の方が二人の関係は
ぎくしゃくしてしまっているような気がした。

「君は僕を浮気したと勘違いしてるんだろ?でも本当は違うんだ!誤解なんだ…」

ジャスミンの眉がピクリ、と動く。
「やっぱり言い訳するのね」と彼女は思った。

「じゃああれはどう説明するの?二人で抱き合っていたじゃない。私は見てたの。誤魔化しはきかなくてよ!」

ジャスミンはアラジンを睨み付けてそう言った。
そして

「私は貴方を…貴方達を信じていたのに…」

と付け足した。

アラジンは、ジャスミンの様子に胸を痛める。
そしてアラジンは抱き合うまでの経緯を
丁寧に説明する。ジャスミンはそれを聞いて
驚くような表情をした。

「まぁ、そうだったの。ごめんなさい、勘違いして、帰ってだなんて言ってしまって…」

ジャスミンはアラジンの目を見て謝った。

「僕の方こそ、ごめん。経緯が経緯だとはいえ、アカネと抱き合ったりなんてして。浅はかな行動だと、反省してる」

アラジンは本当に心からそう思い、そう言った。
ジャスミンは首を横に振る。

「それは違うわ、アル。貴方の行動は正しかったと思うわ。アカネを慰めてあげるなんて、立派じゃないの!やっぱりアル、貴方は優しくて…とっても素敵な人よ。愛してるわ」

そう言って、アラジンをギュッと抱き締める。
アラジンはジャスミンのいきなりの行動に
顔を赤らめつつ、彼もギュッと抱き締めかえす。

―誤解は解け、二人の愛はより深まったのだ。

【第七話 新たなる敵の出現 へ続く】

19:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/25(金) 20:58 ID:yJE

第七話 新たなる敵の出現 で登場するキャラ@

名前:アラン
年齢:18歳(アラジンの同い年)
容姿:アラジンにそっくりな顔立ち。
ただし、彼よりも肌が黒い。瞳の色は赤。
髪色:アラジンと同じ
性格:冷たく冷酷な性格。少し天然なところも。
(天然については本人自覚なし)
魔法が使える。
意外に優しいところもある(?)
ジャスミンのことが好きで、彼女がアラジンと
結婚したと知ってからはアラジンを酷く憎んでいる。

20:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/25(金) 21:02 ID:yJE

第七話 新たなる敵の出現 で登場するキャラA

名前:シュウ
年齢:21歳
容姿:切れ長の目。よく見たら結構イケメン。
眼鏡をかけている。日本人のような顔立ち。
髪色:水色
性格:クールで冷静な突っ込み役。アランの
補佐役的な存在。

21:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/25(金) 21:46 ID:yJE

*第七話 新たなる敵の出現 *

―アグラバーの宮殿から少し外れたところに
要塞のような建物がある。そこに、アラジンと
顔立ちが瓜二つの、冷酷な性格な青年アランと
その補佐役的存在のシュウが住んでいた。

「―おいシュウ。ジャスミン王女は本当に美しい娘だと思わないか?しかも、賢い。私の婚約者に相応しい…」

アランはジャスミンの写真を見つめ、シュウに
話しかけた。シュウはアランの言葉を聞くと
溜め息をついてこう言った。

「アラン。悪いが、お前に望みはない。ジャスミン王女はもう既婚者だ。結婚している相手がいるんだよ」

アランはシュウの言葉に眉をひそめ、問う。

「ホー。ジャスミン王女と結婚したのはどこの馬鹿な王子だ?教えろ、シュウ」

アランは怒りを含んだ声で言った。

「王子?笑わせるな、奴は王子なんかではない。"ドブネズミ "のアラジンだよ」

シュウが肩をすくめて言うのを聞いて
アランはフンと鼻を鳴らした。

「ドブネズミがどんな魔法を使えばジャスミン王女と結婚出来るんだ?馬鹿げている!」

シュウは怒りに道溢れた表情をしているアランを
上から下までジロジロ眺め、言う。

「アラン。そのドブネズミとお前の顔…似てないか?いや、似てるというモンじゃない。瓜二つだ」

「なんだと、シュウ?ふざけるな‼私とドブネズミが瓜二つだと?屈辱だ!そんな訳がない!」

シュウはやれやれといった様子でアランを横目で
見たのちに、本を読み始めた。

「とにかく、だ。アラジン―お前をいつか地獄に突き落としてやる‼」

アランは大声で叫ぶように言った。

【第八話 悪魔の囁き へ続く】

22:玲織◆rI:2019/10/26(土) 15:43 ID:ZvE

いやこれマジで面白い...

23:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/26(土) 16:05 ID:dK2

本当に?ありがとー、めっちゃ嬉しい(^^)
自信作なだけに、なおさらね!

24:猫又◆l2:2019/10/26(土) 23:10 ID:trY

樹音@新一さん、こんにちは。猫又と申します。
with you in a new world* アラジン二次創作、ここまで読ませていただきました。

読みんでみての感想ですが、非常に原作愛を感じました。
この手の2次創作ではオリジナルキャラが原作キャラを圧倒してしまうことがあるのですが、一話ラストの展開で分かるように、非常に上手くオリキャラが世界観に溶け込んでいるのでは無いかと思います。

さらに言うと、原作キャラのキャラクターがしっかりとつかめていました。
頭がよく、気が効きすぎて、ピンチになるアラジン。
気が強いようで、繊細なジャスミン。
その二人の関係性を書きつつ、オリジナルキャラをしっかり立たせられるストーリー構成。
お見事です。

これから明確な敵キャラクターも出てきて、盛り上がっていくことを思うとワクワクします。
アカネは今後、どんな立ち回りをするのか。
そしてアラジン達はピンチを切り抜けられるのか。
続き、楽しみに待ってます。それでは〜。

25:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/27(日) 09:17 ID:Cmg

>>24
ありがとうございます!
私には勿体ないくらいのお言葉…嬉しいです!
これからも頑張ります(^o^)

26:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/28(月) 20:37 ID:ajQ

*第八話 悪魔の囁き *

―アランはどうにかして、アラジンを
地獄に突き落とすことが出来ないかと、懸命に
考えていた。アラジンとジャスミンの様子を
水晶玉に映す。すると、幸せそうな二人が現れた。
アランは怒りではらわたが煮えくりかえりそうな
思いでジッと水晶玉を見つめた後、見たことない
女性がアランの水晶玉に映りこむ。
―アランは人目で分かった。この女は、アラジンに
恋をしていると。それも、100%叶わないと分かり
きっている恋。その女はどこかに向かった。
市場だ。

「おい、シュウ。市場に行くぞ。使えそうな女を見つけた」

アランはニヤリと悪そうな笑みを浮かべ
シュウに向かって言った。
**
「―あら、果物を切らしているわ。市場に買いに行かなくちゃ」

アカネは大きな声で言った。アカネはジャスミンの
面倒を見る以外のこと―王宮の掃除や料理等も
よく手伝っていた。最もそれは、ジャスミンは
大抵のことは一人で良く出来るからなのだが。

「一人で大丈夫か、アカネ?まだ君は市場に行ったことが無いし、アグラバーにも来たばかりだろ?」

彼女を心配したアラジンが言った。
ジャスミンも、そんな彼に頷き、言った。

「そうね。私もそうだったけど、初めての市場は少し危険だわ。アルと一緒に行ってきたら?」

ジャスミンが言うとアラジンはニコリと悪戯っぽく
微笑み、もう一度口を開く。

「まぁ、アカネは君みたいにお金も無いのに子供達に屋台に売られているリンゴを渡したりはしないだろうけどね」

そう。ジャスミンはお腹を空かせた子供達を
哀れみ、屋台に売られているリンゴを渡してしまった。
その際泥棒と間違えられた時、アラジンが機転を
利かせて助けたのが二人の出会いだった。

「と、とにかくよ。そういう訳だから、アルと行って来ると良いわ」

ジャスミンが言うとアカネは首を横に振る。

「大丈夫。平気よ。あたしはこの街で暮らしたこともあるし。じゃ、行って来るわね」

そう言って、アカネは市場に向かった。
懐かしそうに市場を見渡していると、ドンっと
誰かとぶつかる。アカネは素早く謝った。

「あら、ごめんなさい」

アカネはぶつかった相手の顔を見て、びっくりし、
そして自分の目を疑った。何故ならぶつかった
相手の顔がアラジンにそっくりだったからだ。

「え……?あ、アル?」

アカネは目を白黒させた。アランはアカネを
油断させるべく、人の良さそうな笑みを浮かべた。
彼は見た目に似合う、純粋な青年を演じることを
得意としている。

「大丈夫。君こそ大丈夫かい?」

アカネはその笑みを見て、更に驚いた。
なんてアルにそっくりな人なの。

「あ、あたしは平気。て言うか、貴方は?」

どうしても気になって彼女は尋ねた。

「俺はアラン。よろしく。君は?あ、ねぇ、ちょっと落ち着いて話せる場所に行かないか?」

アランと名乗る青年は言った。いきなりのことに
アカネは混乱していた。

「あたしはアカネ。お、落ち着いて話せる場所?初対面よね、あたし達?」

それとも、あたしが覚えてないだけでどこかで
会ったことが?アカネは考えた。だが、その可能性は
無いだろう。向こうも名前を聞いていたからだ。
だが、それなら尚更何故だろう?どうして彼は
落ち着いて話せる場所に行こうと誘うのか?
アカネは分からなかった。

「良いから」

アランは戸惑うアカネの手を引っ張り、自分の
棲みかである要塞へと案内した。

「…ここ、貴方の家なの?どうしてあたしは連れて来られたの?」

アカネは素直に自分の疑問をアランにぶつけた。
そんな彼女にしびれを切らし、アランは本性を
剥き出しにした。

27:樹音@新一 ◆6Y >>26の続き:2019/10/29(火) 20:24 ID:C1M

「―お前は恋をしている。その恋は、絶対に叶わないと分かりきっている恋だ」

いきなり口調が変わったアランに戸惑いつつ
アカネは言った。

「あら、あたしが誰に恋をしてるって言ってるの?」

「お前の恋の相手は、アラジンだ」

長話はうんざりだとでも言うように、アランは
言った。アカネは頬を赤らめる。

「ち、違うわ!そんなの言いがかりよ!」

アカネは頬を赤らめたまま言った。そんな彼女に
対し、アランは不機嫌そうに顔をしかめて言った。

「私の魔法の水晶玉に誤りなどはない。お前は恋をしている、アラジンに。それは叶わない恋。アラジンにはいるのだから。愛する妻が。お前の恋は儚く散るのみ」

「だ、だけど、そうだとしても、そんなの貴方に関係ないじゃないの!それとも、何よ?貴方があたしの恋を叶えてくれるとでも言うのかしら?」

アカネはアランを睨みつつ、挑発するように言うと
彼はニヤリと悪そうな笑みを浮かべて

「ああ。よく分かったな、その通りだ。お前の姿をアラジンの愛する相手、ジャスミン王女に変えてやろう。そうすれば、アラジンはお前を愛す…」

と言ったのである。アカネは少し驚いたが
首を横に振り、大声で彼女は言った。

「そんなのあたしには必要ないわ!ジャスミンはあたしに家族のように接してくれる。アルもそうよ。あたしの良い相談相手よ。そんな二人に、嘘はつきたくないわ!あたしにはそんな偽りの魔法なんか、要らない。―もう帰って良いわよね?さよなら」

彼女はくるりとアランに背を向けて、帰ろうとした。
だが、アランは彼女の腕を強く引っ張り、引き留める。

「待て!良いのか?このまま何もせず終わってしまって。お前の恋は儚く散るのみ、それで良いのか?一瞬だけでも、愛されたくないか?自分の愛する人に、愛してもらいたくはないのか?」

アランのその、アラジンにそっくりな瞳にアカネは
引き込まれそうになる。そして、彼の言葉が
アカネの響く。
"一瞬だけでも、愛されたくないか?自分の愛する人に、愛してもらいたくはないのか? "
あたしだって、愛してもらいたい。あたしだって―。

そして、彼女は決心した。

「あたしだって、愛してもらいたい。自分の愛する人に。だから……あたしを、あたしの姿をジャスミンに変えて」

アランはニヤリと笑い、魔法の杖を取り出した。

「良かろう。お前をジャスミン王女に変えよう」

アカネは少しだけ考えた後に問う。

「貴方の魔法は、安全なの?」

「当たり前だろ?私は優しい魔法使いだからな」

そんなアランに、シュウは"嘘つけ "と言うような
表情をしていたが、本人もアカネも気付いていない。

「―さぁ、魔法をかけるぞ。準備は良いな?」

アカネは強く頷いた。

「偉大なる神よ。この哀れな女、アカネを麗しの美女、ジャスミン王女に姿を変えよ‼」

そんなことを言った後、何語かも分からない
呪文のような言葉を口にしたアランは魔法の杖を
一振りし、アカネに魔法をかけた。
雲のような煙がアカネの身体を包み込み、どんどん
姿を変えていく。アカネには戸惑っている暇すらも
なかった。瞬く間に、アカネの姿はジャスミンに
変わっていく。最後に眩しく目がくらむほどの
光が立ち込め、魔法は完成。
ジャスミン王女に姿を変えたアカネが瞬きした。

「ん……この声…あたしの声じゃないわ。ジャスミンの…本当にあたし、ジャスミンになったのね」

「そうだ。これでお前は、愛してもらえる。愛する相手に」

「で、でも…本物のジャスミンがいるわ。そうしたらすぐバレる。だって、そうでしょ?二人もいたら、おかしいもの…」

ジャスミンの声で、躊躇いがちにアカネは言う。

「心配ご無用。本物のジャスミン王女はここだ」

もう一度アランが魔法の杖を一振りすると、
本物のジャスミンがこの要塞にあるベッドに
すやすやと寝息をたてて眠っていた。アカネは
びっくりした。

「だ、大丈夫なの?まさか、死んでたり、しないわよね?」

寝息をたてているから、それはないと思ったが
念のために言ったのだった。

「そんな訳がないだろ。安心しろ、ただ眠っているだけさ。お前にかけた魔法が解ける時、彼女も眠りから覚める」

28:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/29(火) 20:29 ID:C1M

(>>27の続き)

アカネはホッと安心したように溜め息をつく。

「でも…その魔法が解ける時っていつ?この魔法はいつまで効くの?」

アカネはまたもや心配そうに問う。

「明日の日没までだ。さぁ、もう行け!甘い一時を楽しむのだ‼」

アカネは駆け出した。そして、言う。

「ありがとう、"優しい魔法使い "さん。行って来るわ!」

【第九話 甘い一時を へ続く】

29:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/30(水) 20:12 ID:/1c

*第九話 甘い一時を *

―ジャスミンの姿をしたアカネは軽い足取りで
歩き出す。するとアカネは視線を感じた。

「ジャスミン王女だ!」

「お美しい…」

市場を行き交う人々が、ジャスミンを見つけ
そんなことを呟く。ジャスミンに手を振る人も中には
いた。ジャスミンの姿をしたアカネは、少し
躊躇いがちに手を振り返し、自分は今ジャスミンなのだと
実感した。
**
宮殿に戻ると、アラジンが待っていた。
アブーも一緒だ。

「お帰り、ジャスミン」

アラジンはジャスミンの姿をしたアカネにニコリと
人の良さそうな笑みを浮かべた。その笑顔が
本来の姿をした自分に笑いかける時より、数倍
にこやかに、微笑んでいるような気がした。

「あ…た、ただいま、アル」

アカネは戸惑いつつ、アラジンに返事をした。
心臓がドキドキし、どう答えたら良いのか
分からなくなりそうだ。そんな彼女の様子を見た
アラジンは心配そうな表情をし、こう言った。

「大丈夫かい、ジャスミン?具合でも悪い?」

「へ?あ、ええ…大丈夫よ、気にしないで」

ジャスミンになりきるのはアカネには少しだけ
難しかった。あたし、こんなんで大丈夫かしら…
アカネは心でそう呟いた。

「そう?それなら、良いんだけど。あ、そうだ!噴水に行かない?」

アラジンはアカネを誘う。アカネは緊張して
断りかけたが、愛してもらいたくてこの姿に
なったのだ。チャンスは逃せない。

「勿論よ、行きましょ」
**
噴水に着くと、アラジンは彼女に接近する。
アカネの頬はぼうっと赤くなる。アラジンと
ジャスミンは、いつもこんな調子なのだろうか。
彼女は考える。

「久しぶりに、二人になれて嬉しいよ」

彼も頬を赤く染めながら言った。
アカネの胸は彼がそう言った時、チクリと痛む。
「ごめんなさい、アル。本当はあたしなの。アカネなのよ」
心で呟く。
俯いているアカネを見て、アラジンは言った。

「大丈夫?やっぱり、具合が悪いんじゃ……?」

30:樹音@新一 ◆6Y:2019/11/03(日) 10:15 ID:uek

(>>29の続き)

「そんなことないわ。大丈夫よ、心配してくれてありがとう」

アカネはにっこり微笑んで言った。
そして、心の中で「ちゃんとやるのよ」と
自分を励ました。アカネは元・踊り子。色仕掛けも
得意だ。

「アル…愛してる」

アカネは歓迎会の時のようにアラジンに
胸が当たるほどに近付く。アラジンはボッと
顔を赤らめ、赤面するがその後すぐ退けぞいた。

「え…」

アカネは驚いて、思わず声を漏らしてしまう。
まさか―正体がバレたの?アカネは顔を真っ青にする。

「あ、ごめん。いきなりでちょっと驚いちゃって…僕も君を愛してる。これまでも、これからもずっとだ」

アラジンはそう言ってアカネの目をまっすぐに
見つめる。アカネはホッとした。正体がバレた訳じゃ
無かったのね。
その後、アカネは高鳴る胸を何とか落ち着かせた。
キスでもされてしまうかもしれないと思ったからだ。
アカネはそわそわしてしまう。そしてジャスミンに
心で精一杯謝る。「ごめんなさい、許して」と。

―だがしかし。アラジンはアカネにキスは
しなかった。それどころか、抱き締めることさえ。
アカネはもう一度アラジンに接近するが、
アラジンはおもむろに立ち上がり、こう言ったのだ。

「ごめん。疲れてるのは僕の方なのかも。少し休ませてくれ」

そしてアラジンはその場を離れた。
アカネはさぁっと血の気が引いていくのが分かった。
無駄だった。アラジンの愛する人である
ジャスミンに変身しても。

「結局、駄目だったわ。あたしはいつもそう。愛する人に、本当に愛してはもらえない…。そうよ、だから家族もバラバラになった…」

そう呟き、涙を流して静かに泣いた。心の中に
もう会えない家族のことを思い描きながら。
**
―一方、アランの要塞。アランは可愛らしい寝息を
たてながら眠るジャスミンを見つめ、呟くように
言った。

「ジャスミン…眠る姿さえも美しい…」

シュウは読んでいる本から目を離すことなく
アランに調子を合わせて言った。

「まるで眠り姫みたいだな」

「いや、それ以上に美しい王女だよ、ジャスミン王女は。全く、あのドブネズミのワイフにしておくには勿体ない!宝の持ち腐れだ!」

シュウに答えながら、アランは怒鳴る。
アランの頭にはアラジンを地獄に突き落とすという
ことしか頭にないのである。

【第十話 本当にジャスミンなのか へ続く】

31:樹音@新一 ◆6Y:2019/11/06(水) 19:52 ID:y2Y

*第十話 本当にジャスミンなのか *

―アラジンはモヤモヤとした気持ちを
抱えていた。確かに自分は、ジャスミンを
心の底から…もっと言うと世界一愛している。
その気持ちは初めてジャスミンを市場で見た時から
変わっていない。なのに―噴水で久しぶりに
二人になった時何か違和感を感じた。
"本当にジャスミンなのか " アラジンの胸に
そんな疑念の気持ちが芽生えた。はぁっと一旦
溜め息をつき、モヤモヤする気持ちを落ち着かせる。

「やっぱり、こういう時ってちゃんと話した方が良いのかな?」

アラジンは呟くように言った。すると、どこに
紛れ込んでいたのか、相棒の猿、アブーがひょっこり
現れた。アラジンはフッと笑みを浮かべ、アブーの
頭を撫でる。そして今度はアブーに話しかけるような
口調で言った。

「やっぱり、話すよ。ジャスミンと。だってもう、嘘はつかないって約束はしたからね」

アブーをチラリと見ると、うんうんと言っている
ように頷いた。それを確認すると、ジャスミンの
元へ向かう。

「―ジャスミン。少し話したいことがあるんだ」

彼女はまだ噴水にいた。ジャスミンの姿をした
アカネは涙をごしごしと拭き、アラジンの方を
向く。何の話?少し身が固くなるような感覚を覚えた。

「何?」

「その、言いにくいんだけど…君は、君は本当に…ジャスミンなのか?」

アラジンは答えた。アカネはびくっとしたが、
後に笑う。

「―ドッキリ大成功ね!実はあたし、アカネなのよ!」

そんな、思いもよらない彼女の答えにアラジンは
唖然とした。

実はアカネ自身、正体をアラジンに明かそうと
していたのだ。嫌われても良い、ここから
追い出されても良い。でも、本当のことを
言わなくちゃ。愛しているなら尚更よ。泣きながら
アカネは決心していたのである。

32:若桜☆郁里ひよねこ◆ME:2019/11/06(水) 21:59 ID:skY

ここまで読んだよ!展開が凄くて、面白い!
アカネちゃん可愛い‼これからも期待!

33:樹音@新一 ◆6Y:2019/11/07(木) 19:32 ID:y2Y

見てくれて本当にありがとう‼
凄く嬉しい(*/□\*)テレッ
これからも頑張ります!

34:樹音@新一 ◆6Y:2019/11/07(木) 20:33 ID:y2Y

>>31
誤字発見…
アラジンの台詞
×「やっぱり、話すよ。ジャスミンと。だってもう、嘘はつかないって約束はしたからね」

○「やっぱり、話すよ。ジャスミンと。だってもう、嘘はつかないって約束をしたからね」

すみませんでした_(._.)_

35:樹音@新一 ◆6Y:2019/11/13(水) 20:08 ID:Mls

(>>31の続き)

「―ドッキリ、だって?それってどういう…」

アラジンは彼女に問う。アラジンは困惑していた。
確かに、違和感は感じたし疑問も持った。
だが…目の前の彼女はジャスミンにしか見えない。

「だって、どう見てもジャスミンにしか見えないじゃないか!どういうことなんだい?何かトリックがあるとか?」

アラジンは続けて言う。

その言葉を聞き、アカネは必死に言い訳を考えた。
まさか、貴方が大好きだから市場で出会った
"優しい魔法使い "に頼んでジャスミンの姿になったのよ!
とは言える訳もない。正体を明かそうと決心した
アカネだが、それほどの勇気はなかった。
じ、とまっすぐアラジンの目はアカネを見ている。

「あ、そ、それは…し、知り合いの"優しい魔法使いさん "に頼んでこの姿になったのよ」

アカネの頭に浮かんだ言い訳はこれだった。
"貴方が大好き "という部分は省いたが嘘はついていない
つもりである。

「へぇ、そうなんだ!それはそっくりな筈だな!だって魔法を使ったんだもの。だけど…何の為に?」

―そう。トリックが分かった今、アラジンの疑問は
そのことだった。アカネは内心ギクリとしたが
ちょうどよい言い訳を思い付く。彼女はその言い訳を
口にした。

「勿論、貴方を驚かせる為よ。それ以外に何があると思って?」

それを聞き、アラジンはぷっと吹き出した。
何だ、そんな簡単な理由だったのか。彼は思った。

36:樹音@新一 ◆6Y:2019/11/14(木) 20:35 ID:ivg

―ふう。何とか誤魔化せたかしら。アカネは
ホッと一息ついた。

「あ、もう一つ聞きたいことがあるんだけど…本物のジャスミンはどこにいるんだ?無事なんだよね?」

心配そうなアラジンの声。彼は本当に心から
ジャスミンを愛しているのだ。

「大丈夫、貴方のプリンセスは無事よ。安心して?」

アカネは答えた。アラジンは安心し、笑顔を
見せた。
**
―一方、アランの要塞。アランは水晶玉で先程の
アラジンとアカネのやり取りの一部始終を見ていた。
苛立たしげに舌打ちし、アランは言う。

「あの馬鹿女、ドブネズミに正体を明かしやがった!使えると思っていた私が馬鹿だった‼」

シュウは本から目を離さず、溜め息混じりに言う。

「使える女、か。あの女をジャスミン王女そっくりに姿を変えてやったのは、アラジンがあの女の正体に気付かなかったら―」

シュウは一旦そこで言葉を切る。
そして寝息を立てながら眠るジャスミンを横目で見つつ
また再び言葉を紡いだ。

「ここに眠る本物のジャスミン王女を自分の物に出来ると思ったからだろう?」

「当たり前だろう?!それ以外にあの女をジャスミン王女に変える意味があるか!?」

シュウの言葉に、怒鳴るように答え、魔法の杖を
手にする。

「もう"優しい魔法使い "の振りはやめだ!遊びは終わりだ!哀れな馬鹿女の姿を元に戻せ!」

魔法の杖を一振り、水晶玉に映るアカネの姿は
ジャスミンから元のアカネに戻る。アカネは
突然の出来事に驚き、アラジンは目を丸くする。

「あら、もう元に戻ったのね。魔法が解けるのは明日の日没までだと言っていたのに」

アカネは驚きつつ、独り言のように呟いた。

「君が正体を僕に明かしたからじゃないか?」

そんなアラジンの言葉にアカネも納得する。
アラジンはキョロキョロと辺りを見渡す。
ジャスミンを探しているのだ。すると。
ジャスミンはふわふわと宙に舞い、その後すとんと
着地した。

「何だか、夢でも見てたみたい。さっきまでの記憶がないのよ」

「ちょっとうたた寝でもしていたんじゃない?」

笑いながら、アカネは言った。彼女はまさかという
顔をしていたが嘘ではない。

再びその様子を見ていたアランは憎々しげな表情を
していた。

【第十一話 嵐の予感 へ続く】

37:樹音@新一 ◆6Y:2019/11/14(木) 20:58 ID:ivg

*ちょっと休憩*
~Q&A~

Q1,アラジンの二次創作を書こうと思った
きっかけは?

A,アラジンが大好き過ぎて、頭の中で
オリジナルのストーリーを作っていたのが最初の
きっかけです。それから、本格的に小説書きたいなと
思って今に至ります。

Q2,オリキャラのアカネという名前の由来は?

A,何となく"アカネ "って響き良いなぁって。
(結構適当です)

Q3,アカネのセクシーって設定忘れてない?

A,忘れてはいません。本当はもっと
女の武器を使ってアラジンを誘惑する女性に
したかったんです。でも、物語を進める上で、
今のような性格の方が合うかな、と。
まさかぼろぼろ涙を流す泣き虫キャラになるとは
思ってませんでした…

Q4,アカネが踊り子になったきっかけは何?

A,お金の為です。そして家族が消えた寂しさを埋める
為に踊り子をしていました。世界中を回ってました。

続きはまた今度。


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