誠実な心を持つキミへ。螢―Hotaru〜+*〓つぶやきファイルNo.63〓+*〜

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1:まつり⇔ゆず◆klVAly.:2018/12/02(日) 01:37

https://i.imgur.com/Py67QLM.jpg

おめでとう、本当におめでとう。

   >>2

838: 萩花 ◆klVAly. 【しゅうか】まつりhoge:2018/12/08(土) 12:21

 その出来事は唐突に起きた。

 いつも通り、独りで深夜の街をぶらついていて。

 無造作に巻いたサラシと、適当に羽織ってファスナーを閉めていない、いかにもなスタジャン。
 チャラチャラとしたアクセサリーこそは付けていないものの、ちゃっかり腰下辺りではいたミニスカ。

 警察やおせっかいな大人に見付かったら補導間違い無しの格好で、昨日も、今日も、明日も。

 ゲーセンやらカラオケやらで耳障りな街中をそそくさと抜けると、馴染みの路地裏を目指した。

 会社の飲み会でもあったのだろうか。
 数人の酔っ払いグループとすれ違ったとき、あたしに向けられた眼。

 慣れっこだよ、捨て子バカにすんな。
 そう心の中で呟いて視線を寄越したら、サッと逃げていった。どうせ大人は意気地無しだ。

 誰かに見られていないことをさりげなく確認しつつ、飲み屋の角を曲がる。

 スタジャンのポケットから取り出したそれに、無言で火を付ける。
 ……特別美味しいわけではなかったが、いつの間にか当たり前になっていた煙草だった。

839: 萩花 ◆klVAly. 【しゅうか】まつりhoge:2018/12/08(土) 12:22

 しばらくして。人差し指と中指、持ち慣れたそれを弄びながら、ブラブラと路地を徘徊していた。

 ……あたしの縄張り。
 
 男が相手だろうが関係ない。弱肉強食の世界なんだ。
 生きていくには、強くなるには。……いや、生きていける者は強くて、弱いものは消されるだけ。
 ただ、邪魔な弱者は排除され、排除するものなのだ。

 煙草の火を消して、ポイッとそれを放り投げる。
 眼に力を入れ直して、拳を握りしめた、その時だった。

「なあお嬢ちゃんや。さっきも会ったよなぁ。少しどうだい?」

 不意に、背後から声をかけられた。

 ……不覚。気配に気付かなかった。
 不意を打たれて少し驚きを見せてしまったものの、先ほど握りしめた拳を構えた。

「……なに、あんた」

 パッと見は普通のおっさん。
 こんなヤツと面識があっただろうか。

 以前ボコしたヤツの仲間……?
 そんなのいっぱいいすぎて、イチイチ気にしてられない。
  
 あたしにとって都合が悪いなら容赦はしない、それだけだ。

「あんたって、やだなぁ〜。さっきすれ違って、熱い視線を寄越してくれただろう?」

 ……ああ。
 今日見た酔っ払いのうちの一人か。

 こんなの見慣れすぎていて、イチイチ顔なんて覚えて無えっつーの。
 そして、関わるとろくなことが無いということも。 

「なに、おっさん。キモいんだけど。消えてくんない?」

 いつも通り、容赦なく言葉を浴びせてみた。
 自分は表情が変わらない方だ。考えを読み取られることはまず無いだろう。

 金で釣るか、それともさりげなく警察に連れていこうとするのか。
 どちらにしろ、ゆとり教育を受けたバカな大人がすることだ。負けはしない。

「ははは、お嬢ちゃん。なかなか言うねぇ。……でも、そんなところもおじさん、興奮しちゃうや」

「なっ……」

 しまった。
 一瞬の隙をつかれ、壁に追い詰められる。

 灰色で汚い背後の板。煩わしい、と鼻をならすと、体制を逆転しようと試みた。

「ねえお嬢ちゃん、イイ身体してるねぇ」

 手首を捻るか、顎を狙うか。
 かろうじて塞がれていなかった手で狙いを定めていると、その言葉と共に、二の腕をなぞられた。

「ひっ……」

 気持ち悪い、どっか行け。キモい、失せろエロ親父。
 脳内で発した自分の言葉を聞いて、ハッと気付く。

 ……そうだ、そういうことだ。
 
 このタイプの人間は相手にしたこと無えんだよチクショウ、と毒づくものの、不利な状況は変わらない。

 なんだよ、こんなデブに負けてたまるかよ、と、思い切り睨み付けてやった。

「……なにがしてえんだよ」

 だんだんと近付く酒臭さに吐き気を催しながらも、ドスを効かせた声で問いかける。
 答えようとする、その隙を狙えばいい。

 相手が口を開きかけたところで、あたしは口元に笑みを浮かべる。
 ふん、引っ掛かったな。ちょろいちょろい。

840: 萩花 ◆klVAly. 【しゅうか】まつりhoge:2018/12/08(土) 12:22

 そう思った矢先だった。

 唐突にグッと腕を引っ張られ、思わずよろける。
 体制を立て直して鳩尾を狙おうとするも、引っ張られる力の方が強すぎて反撃ができない。

 それに……なんだよ。
 知識としては持っているが、見たことの無いそれに、少々戸惑う。

「お嬢ちゃん、早く行こうよ」

 全身を逆撫でされるような気持ちの悪い声。
 一刻でも早くこの場を去りたい。そう思う反面、逃げるなんてカッコ悪い、というプライドがあった。

 クソッ、一か八かだ。



 思い切り脚を振り上げておっさんの鳩尾を蹴り倒そうとしたのと、そいつが倒れるのとが同時だった。

 
 ……なに、なにが起こった。
 自分の一撃で倒したわけではない、そのくらいは理解できる。
 なら、誰が。

 ……いや、ここはあたしの縄張り。
 他人がいるなんて、そんなこと……。


「……もう少し危機意識持ったら?」

 あたしが思考を巡らせている間に、その人物は口を開いていた。


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