えんむちゃの過去ねつ造
夢見心地とはよく言ったものだ。 でも俺はその言葉が嫌いだった。
毎晩毎晩、夢を見るのだ。
喉の奥から全身に痛みが伝わっていく。自分に錐の先端を向けて立ち竦む少年。炎の中で悲鳴を上げる自分。そんな夢ばかり、見飽きるほどに。
俺は元来、夢見が悪かった。
首を締め付けられるように苦しい悪夢を見ては、飛び起きる。背中に伝う寝汗と涙を拭わないままもう一度目を閉じれば、また首を締め付けられる。
そんな日が続いたせいで、目の下には隈が染み付き、頬を流れる涙の跡は消えなくなってしまった。
えんむちゃの過去ねつ造2 (>>10)
今夜もまた、悪夢から逃げてきた自分の意識が、現実へと引き戻される。
服と肌の間を流れる汗。ぐっしょりとしていて気持ちが悪い。おまけに涙と息切れがひどい。
よほど苦しい夢だったのだろう、こんなに手が震えているのも珍しい。
いつも俺は月の見える部屋で寝ているけれど、障子を開ければすぐに見られるその月を、その日は見る気にはなれなかった。