エミ僕
人差し指の先についた、ざらざらとした粉を、親指で挟んですり潰した。
幼き頃の思い出のなかで握りしめたのは、美しき蝶の前羽であったものだった。粉々になったそれを指で必死に掻き集めたときの感触が脳裏に浮かぶ。
しかしそれも思い出の話、今この指ですり潰したものは、蝶の羽とはとても言えぬほど黒ずんだ色をしていた。もっとも、これは蝶の羽でもなんでもなく、ただの珈琲の粉なのだから当たり前ではあるが。
湯気を立てる珈琲を2つのカップに注ぎ、リビングまで持っていく。
白いハットを深く被った金髪の男は、組んでいた足を正して、僕の方に身体を向けて座り直した。
テーブルに2つ、カップを置く。ひとつを彼の前に持っていけば、小さく「わざわざどうも」と聞こえた。
5分ほど前、休日を1人寂しく過ごしていた僕のところに突然訪れたこの男は、僕の旧友だと一言名乗り、玄関にどかどかと足を踏み入れてきた。
さすがに怪しすぎたので追い出そうとして彼の腕を掴んだ僕に、彼は今度こう告げた。
「もう蝶々集めはやめたんだっけ?」
全て見透かすような冷酷な視線、唐突に蘇る幼き頃の記憶。
思わず全身が強張った。
新着から見ては素晴らしい解釈の一致にヘドバンの速度で頷いてた者です(誰)!!
>>21狂おしいくらい好きです…ただの報告ですごめんなさい😭