「あっ、イブ、光!」
待ち合わせ場所には、もう二人の姿があった。
二人の名前を呼ぶと、彼らは振り向いた瞬間目を丸くした。
「えっ、何……」
二人同時に走って私のもとへ来る。
「雨月!?ほんとに雨月!?うん、可愛すぎる!というより、綺麗……!!」
イブが目をキラキラさせながら言ってきた。
「え、ありがと……」
ほんとは、自覚したくなかったけれど、私はもうすぐ死ぬ。
だから、きっと私にとって最後の夏祭り。
私にとって、最後の思い出───。
だから、少し気合いを入れておしゃれをした。
浴衣を着て、髪を巻いてみただけなんだけど……
なんか、光がやばそうな気が……
「ヒナタ…………」
顔を伏せているから、光の顔は分からない。けど、なんかやばい気がする。
「誰のためにそんなおめかしを!?あ、俺!?嬉しい!!」
綺麗すぎる!好き!と叫びながら抱きつこうとしてくるので、慌てて逃げた。
「ちょ、人が見てるところで抱きつこうとしてこないで」
「断る!」
私はもう走るしかなかった。
体力と足の速さには自信がある。
人が少なくなってきたところで、足を止めた。
というより、人は私と光のくらいしかいない。
「やっぱヒナタ足はえーなー」
光が息を切らしながら歩いてきた。
「もう……光は夢中になると他のこと見えなくなるんだから、気をつけなよ」
と軽めに叱っても、光はまだニマニマしている。
「なによ」
「いやぁ〜、今の俺は無敵だから。だって俺のためにそんなおめかしを…」
私はため息をつき、光の頭を小突いた。
「いい加減目覚ませ」
「へっへっへ〜」
だめだこりゃ。
そう思い、私は話題を変えることにした。
「あっ、ねぇ、そろそろ会場行かない?もうすぐ花火が…」
『花火が始まるよ』と言いかけたとき、その言葉は光の言葉によって遮られた。
「ヒナタ、大事な話」
光に手を握られた。
「えっ…何……?」
心臓がドクンと揺れ動いた。
だって、このシチュエーションは、あの“悪夢”と似ているから。
場所も違くて、天気だって違う。
だけど……今の光と、夢の光の表情と雰囲気がそっくりなのだ。
まさか、正夢……?
花火開始のカウントダウンが遠く聞こえる。
「ヒナタ、
────好きだよ」
光の言葉と同時に、花火が打ち上がった。
花火の光と、夏祭りの屋台のちょうちんの光が、私たちを包み込んだ。
「……光、今…なんて……」
「俺はヒナタのことが好きだ。大好きだよ」
ずるい。
いっつもヘラヘラ笑って可愛いだの付き合って〜だの口説いてきたくせに………
こういうときだけ真剣になって、かっこよくなるのズルいよ。
「俺と、付き合ってください」
光が、恥ずかしそうにいい、握っていない片方の手で頭をかいた。
私は、
幸せだった。
「はい」
大きな花火が打ち上がった。
あまりにも、嬉しすぎて。
あまりにも、この瞬間が、幸せすぎて。
だから、私はもうすぐ、死んでしまうだろう。