[カコ視点]
「カコはさ、この学年でいちばん可愛いって思う女子、いる?」
想楽ちゃんが唐突に聞いてきた。
「え…う……ん」
可愛い、と言われて思い浮かぶのは、やっぱり春桃ちゃんの顔。
あと、結衣ちゃんも美人だと思う。
「さ、春桃ちゃん…とか…」
そう言うと、想楽ちゃんはムッとした顔をした。
「やっぱそうだよね〜。最近手当たり次第色んな人に聞いてるんだけどさー、みんな揃って春桃って言うんだよね」
想楽ちゃんは口を尖らせた。
「いいなぁ〜春桃は可愛くて。性格がいい人がモテるとか言うけどさー、顔に興味持たなきゃそもそも性格に興味なんか持たないっつーの」
「……想楽ちゃんだって、可愛いし優しいじゃん」
「お世辞ありがと」
少しイラッとしてしまう。
最近、想楽ちゃんは愚痴ばかり言う。
想楽ちゃんだって可愛いし、十分性格だっていい。
なのに、春桃ちゃんとかと比べて、ため息をつく。
最近の想楽ちゃんは、なんだかいやだ。
「みんな席ついてー」
先生が教室に入ってきた。
席に座ると、朝の会をやる前に、先生がなにやら机と椅子を持ってきた。
そして、私の後ろに置かれた。
ん?
みんながざわめく。
…転校生?
そして、先生が喋りだそうとした瞬間、ドアがガラガラっと開いた。
みんな目を丸くして教室の入り口に目を向ける。
「な…ちょ、小野寺さん!」
先生が慌てたように走っていった。
「先生が言ったら、って言ったでしょう!?なんでこんな早く……」
すると、その子は先生の間をするりと抜けて教室に入ってきた。
「私はクリスマスプレゼントじゃないんだから。なにもったいぶってんだよ」
女子にしては低め、男子にしては高めの声で、少女はそう言った。
パーカーのポケットに手をつっこんでいて、肩より長い髪の毛は、ボサボサではあるが髪質のよさそうな黒髪。
そして少女はスッとこちらを向いた。
その瞬間、私のは電撃が走ったような衝撃を受けた。