人間界への偵察者

やぁ、僕はアーベント。えぇっと…唯の浮浪者だよ。

偵察者さん‥?

えぇっと、…はじめまして、だよね。こんばんは。
そうだよ、僕はしがない偵察者に過ぎないんだよ、雪りんごさん。

きらびやかで主人公的枠に属する君達にとって、僕は実在感に欠ける存在かも知れないけど、気軽に話し掛けてくれて構わないよ。偵察者としては、自ら接触しようとはしないけどね。
よろしく。

うぐっ…ハァハァ…。
(フラフラと家の中に入る。その猛烈な吐き気を堪え、なんとか立っている状態だ。)
くっ…流石に飲みすぎたなぁ……うっ…うえっ…(洗面台へと急いで移動する)
ふぅ…危ねぇ危ねぇ…。

(ズボンの後ろポケットに手をやる。…が、そこにはあったはずの財布が無い。)
…あ…あぁ！？あれ？俺の…俺の財布は…。
(自分の服の中を探すが、どこにも見当たらない。)
…クソッ…盗られたか？…ついてねーなぁ…。

…（カツ…カツ…）

（眼を包帯で覆っている幼娘が、松葉杖を使ってふらふらと歩いている…）

…ははは…どこなのですか…ここって…

（不安定に、アーベントの家にぶつかりながら宛ても無く彷徨い歩く）

…ドンドンうるさいな…誰だよ！！
(バンッと、音をたててドアを開ける)

（バダンッ！）ぎゃんっ！

（運悪くドアの前に居たため、勢いよくぶつかって倒れる）

…あ…どこ…

（倒れた拍子に杖を手放してしまい、ますます歩けなくなる）

…あ？…すまない…
(流石に罪悪感を少し感じ、小さな声で謝り、手を伸ばす)
大丈夫か？

…誰ですか？…どこにいるのですか？

（あらぬ方向を向いて声を発する…巻いている包帯で目が見えていない）

…目が見えないのか？

…はい

（声を頼りに話し掛けている人の方を向く…とても不安げに震えている）

...おっとぉ？

(冷たい笑みを湛えながら二人をじっくりと見つめている)

ひっ…！？（パタドタ）あうっ！（べちっ）

（無意識に恐怖を感じ取り、逃げようとするが目が見えず転ける）

……どこ…

…………

私なんかめっちゃ怖がられてなーい？

………（わたわた）

（松葉杖を探す…諦めることはない）

......大丈夫かい、お嬢さん。松葉杖ならここさ、ほら。

(突如現れた黒い髪をした幽霊が松葉杖を拾い、盲目の少女に渡す。)

あっ…？……ありがとう…ございます…

（誰かわからないが、杖を貰う…何とか歩ける）

…あのう…ここってどこですか？

私も分かんないな。霊力反応があったところへ適当に来ただけだし。
...得体の知れない偵察者さんがいるみたいだけどねぇ。とにかく、なんで君はここに？

(浮遊し、自らの黒髪を撫で付けながら尋ねる)

…えっと…目と片手を取られてここに捨てられちゃいました

（何とか思い出す）

くわぁくわぁ

……？…だれですか？

どうやら、僕はこの場に存在するに値しないようだな…。大人しく家に入らせて貰う。

……うぅん…道も…きけなかったなぁ…

（よろよろと歩き出す）

待ちなさい、童女。あなたに道を教えてあげましょう。

(白いローブを身に纏った者が神々しく現れる)

(...とか言っちゃったよ...霊魂で姿を変えたのはいいけど、変に雰囲気装う必要あったか...？)

......おほん、この道を真っ直ぐ行けば、いずれ森へ辿り着くでしょう。それは『魔の森』と呼ばれています。そこには、美しい天使様がおられるのですよ。その天使様に願い事を捧げなさい。さすれば、あなたに永遠の光が与えられるでしょう。

(そう言い残し、白いローブの人間は淡い光の粒子となっと空気に溶け込み...やはり心配なので、霊魂となったまま少女を見守る。)

その頃魔の森...

カレン｢へっくちゅっ!何か噂されてるよーな...｣

「………」

（言われた事を頼りに歩き出す…覚束ない足取りが僅かに軽くなる）

｢...絶望的に面白そうなの見っけ♪｣

(森の木の上から見下ろしている)

やっほー

あ〜だりぃ…全くよぉ。…折角手に入れた新しい家だってのによ…入居数日で立ち退けっておかしいだろうがよ…。
…フッ、ちゃんちゃらおかしい話だぜ…なんで人間界にまで来てこんな目に会わなきゃならんのだ。
(街道をとぼとぼと歩く)

まぁ、いいさ。無垢なる人間共は俺の正体なんか見抜けやしない…。逆に好都合じゃないか…。
まぁ、結局浮浪者に元通りってか。

滑稽談もいいとこだぜ…。俺がこんなんじゃ、あいつらにも迷惑がかかるからなぁ…。

…不穏な空気を感じるな…。