スライム。
もはや言わずと知れた、最弱モンスターの代名詞である。
······しかし、我々がまだ見ぬ、もしくは目を向けもしない世界には、そんな固定観念をぶち壊すかのようなスライムが数多く存在している。
諸君はスライム研究所の調査員だ。我々を驚嘆させるようなスライムの報告を期待している。
『ギガントスライム』
一般的なスライムを巨大化させただけのモンスター。······しかしその大きさは、天候次第では1000km先から見える程の馬鹿げたものとなっている。
動作は体躯に見合わず俊敏であり、どうやっているのかは不明だがスライム属らしい跳躍もよく見せる。
当然下敷きとなった建物や人間は跡形もなく押し潰され、体表から吸収される。また生半可な攻撃も当然ながら無効である。唯一の救いは、彼は積極的に攻撃をしないというところである。
今のところ倒す術は不明であるが、追い返す方法が一つだけ存在する。ギガントスライムの中心に狙いを定め、そこに塩をぎっしり詰めたミサイルを撃ち込むのだ。当然ミサイルは吸収されてしまうが、塩を同時に取り込んだお陰で進路を真反対に変更してくれる。
モンスター格付のランクはSSSS+······それはもはや、災害すらも凌駕する、災厄だ。
『 コサメアオミドリ 』
川原などでひっくり返した岩の裏などで見掛ける
小型スライムの一種、草食であり縄張り意識も薄い
名が示す通り青緑色のボディを持つが、この色は
主食である苔によるもので、元々色素は持っていない
大きさは成人男性の親指程度で、のそのそと動く
体の粘性は低く 固いゼリーのようなぷるぷる手触りには
一定の需要があり、また厄介な性質もなく 餌も安いの為
主婦層から子供までペットとしての人気が高い愛され系。
主食は"アオミドリゴケ"、非常に環境適応力の高い
青緑色の苔で 氷原や火山地帯にも自生出来るたくましい苔。
放置すればどんどん増える厄介な苔だが、これを主食とする
本種の存在が、この苔の大量増殖を抑制している… が
この苔と本種は一種の共生関係にあるようで、本種は苔に
栄養を提供して貰う代わりに大量増殖による同種同士の
食い潰しを抑え、補食した苔の一部を別の地域に運ぶ事で
苔の生息地を広くしているようだ …
そんな本種の最強ポイントは"適応力"から来る
生態系の下地としての強さ。本種は苔と同じように
高い環境適応力を持ち、苔が生える環境ならば
何処にでも進出していくことが可能なのである。
劇的とまでは行かずとも増殖速度も早いため
進出した先の土地では苔と共に被食者として
様々な小動物を育て、その小動物を他の捕食者が狙い
その死骸が大地に吸収され… 自ずと生態系は活性化し
破壊された環境でも回復が早まっていくのである。
中には焼け野原となっていた戦場跡に本書と苔が
定着すると、数年の内に生態系が生まれていたという
劇的な環境改善を本種が成し遂げた記録も残っており
環境団体から苔と共に再生のシンボルとして登録された