適当に小説書いてくよ。
話あんま決めてないから伏線すくない・進むの遅い・語彙力皆無・いろいろ注意
題名とか適当なのできっと本編には関係なくなると思います(一応それに沿うように努力はしてるけど空回り野郎なもんで)
見てやるよって方は感想くださると非常に喜びます
更新遅め
「あんたなんて死んじゃえばいいのに」
放課後の教室。夕焼けが差し込んだ教室で私が放った言葉が、どれだけあの子の心を抉ったことだろう。
逆光で暗く見えるあの子の整った顔がくしゃりと歪んで、でもそれも様になってて、罪悪感なんかよりもずっと先に心が高鳴ったことを覚えている。きっとそれは恋なんかじゃないけれど、初めて見たあの子の歪んだ、泣きそうな顔に私は密かに興奮したのだと思う。
あの子が泣きそうな顔をして、私を見つめている。私があの子を怒らせている。滅多に怒らない、あの子が。
興奮する理由は分かっている。ずっと一緒に居たけれど、確かに私はあの子に劣等感を抱いていたからだ。
私だって何もできないわけじゃない。勉強も運動もそこそこできる、顔はわからないけれどそこらの人よりかは勝っているはずだ。けれど、私の比にならないくらいにあの子は完璧だった。言うならば欠点がないことだけが欠点、みたいな感じだ。思春期になってそれを感じて、少しずつ不満がたまっていった。悪いところばかりが目についた。何度も八つ当たりをした。けれどもあの子はそれに気づかないみたいに、いつも通りに完璧だった。それがさらに癇に障った。
努力をした。あの子に勝つために、毎日勉強をして密かに運動もした。顔はどうしようもないのでせめて、と肌の手入れをした。まいにち、まいにち。
テストは80点台を余裕でとれるようになった。でもあの子は90点台だった。
100メートルを15秒台で走れるようになった。でもあの子は14秒台だった。
密かに、クラスの男子に恋をした。その子があの子に告白しているところを見た。
なんでだ、これが才能ってやつか。神がそれをつくったってんなら今すぐに神を殴ってやりたい、ああ憎い、なんで私はどれだけ努力をしてもあの子に勝てないんだ、私があの子に勝てる日はいつ来るんだ、神はあの子にたくさんのものを与えて私には何も与えちゃあくれない。なんてやつだ。なんて、不公平な世界なんだ。
目の下にはクマができた。常に胃が痛むようになった。風邪をひきやすくなった。ご飯が食べられなくなった。眠れなくなった。ケアしているはずの肌は荒れていた。
あの子の平穏のために、独裁のために、私は全てを奪われるのか。贄とでも言うのか。
あの子に、あの子というウイルスに身体が蝕まれていくようだった。毒されていく。決して恋をしていることを揶揄っているわけではなく、実際にそんな感覚だった。何度も泣いた。吐いた。気づくと体重は9キロ減っていた。
そしてある日、あの子が私の地雷を丁寧に踏み抜いていった。
わざわざ放課後の空き教室に私を呼んだ。帰りたいと心の中で叫んだ。今日の授業に分からなかったところがあったから家で勉強して、早く寝て朝走らなければいけないんだ。それに加えて妹と弟の面倒も見てやらなきゃいけない。話すだけでイライラするのに呼び出すとは何事だ。話すのを躊躇うな。長引かせるな。私ははやく帰らなければいけないのだ。
そしてあの子がゆっくり口を開いた。
「舞、最近どうしたの? 元気ないし、私を避けるし…ねえ、なんかあった?」
今更?
やっと口を開いたと思ったら今その話する?
私は1年以上前から努力してるのに、今更気づくの?1年前から避けてるのに、今更不思議に思ったの?
自分が元凶って、一切思わないの?
「ねえ舞、困ったことがあったら言って。 相談なら乗るよ?」
おまえに何を言うんだ、私が。おまえが憎くてたまらないだなんていうのか?お前自身に?そんな馬鹿みたいなことをしてたまるか。
「舞、ねえ舞、聞いてる?」
ああ聞いてる、そしてストレスをためてる。だからそれ以上喋るなよ、その声でわたしのことを呼ばないで。
「ねえ舞、悩みなら言って」
おまえなんかに言う悩みなどあるか、この野郎。
「ねえ、私たち親友でしょ」
何かが切れた気がした。
ぎりぎり保っていた何かが、その一言でようやく切れた。それは、思いやりとかきっとそんなかんじのものだと思う。
正直に、許せなかった。
私をこんなに傷つけておいてなにが親友だ。いつ私がおまえを親友だと言った。おまえのためにどれだけ傷ついたと思ってる。ふざけるな、ふざけるな、許せない、こいつなんて、こいつなんて。
死んじゃえ。
そして上述に戻る。
あれから私たちは全くと言うほど会話をしなくなった。
というかほとんどあの子が私に話しかけていたのだけれど、それすらもなくなったことにより完全に接点がなくなったと言える。
クラスの女子には何度も疑問を抱かれた。どちらも普通の態度で意識しているようには思えないのに、突然話さなくなったとあればそりゃあ誰しも疑問を抱くだろう。当たり前の反応だ。
質問をされるのは正直面倒だったけれどこれを乗り越えたらもうあの子との接点がなくなると思うと舞い上がりそうになった。これであの子は親友なんかじゃなく敵になったわけだ。超えるべき存在になったわけだ。だからもう手加減はいらない。今まであの子のことを少しだけ考えて少しだけ手加減していたから、そのストッパーが外れたらもう私の圧勝のはずだ。私の独裁政治のはずだ。もう一度あの子のあんな顔が見られるはずだ。
そして今までよりも努力をした。
友達からは「まだ2年なのに受験モードなの?」と聞かれ、弟や妹には「キキセマルってやつだ!」なんて言われたけれど全然構わない。あの子に屈辱的な思いを抱かせるためだ。全然大丈夫。あの顔をもう一度拝んでやるんだ。私にはできる、その使命がある!
相変わらずストレスはひどいものだったけれど、それでもあの一時の愉悦に勝るものはなかった。あの顔は言うなれば麻薬だ。加虐趣味があるわけではないのにこんな感情を抱いてしまうのは仕方がない、だってあんなに憎かったのだから。
あの、文字を書いたら
次の一帖あけてくれません
>>5
一帖、と言うのは一行という解釈で宜しいでしょうか?
それなら把握致しました。
これからはできる限り読みやすいよう改行を多めにしていく所存です、迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。
ごめん
漢字間違えてごめん
>>7
いえいえ、大丈夫ですよー
こちらこそあなたに指摘されるような分を書いてしまい非常に申し訳ないです;;
ストレスに追われて、いつものように布団に転がり込んだ時に夢を見た。
幸せのような、不幸せのような、自分にはよくわからないふわふわした夢だった。
「舞、舞、待ってえ」
うしろから、まだあどけない声であの子が私を呼んでいた。
私はそれを無視して森の中を突き進んでいく。どこの森かは分からないけれど、きっと小さな森だろう。子どもの頃はなんでも大きく見えてしまうものだから。
「舞、置いていかないでえ」
まるで呪縛のようだ、と思った。
あの子は昔から、私を追いかけるふりをして先に進んでいく。私を前に進ませないようにしている。
子どもの頃からそうだったのになぜ私はずっと気づかなかったんだろうなあと、少しだけ思う。
思考の途中にもまだ幼いあの子が私の名前をひっきりなしに呼ぶものだから、面倒になってつい声を荒げてしまう。
「優亜はうるさいなあ! ちょっと、黙っててよ!」
あれ、と違和感を覚えた。
私ってこの頃からこんなに口悪かったっけ。こんなに声低かったっけ?
しかし私が声を荒げたおかげであの子の声と足音は聞こえなくなって、聞こえなくなって?足音も、聞こえなくなって、いいの?
咄嗟に後ろを振り返ると、幼いあの子がずっと後ろで転がっているのを見た。きっと足元になにかあったのだろう、森の中は足場が悪いから。
「優亜!」
あんなに幼いんだから、きっと泣くに違いない。ここは私が慰めてあげないと、と走り出して気が付く。
歩幅が、大きい。
あの子くらいの大きさの私なら、こんなに速く走れないはずだ。頭に枝が当たらないはずだ。
どうして、と足を止めようとした瞬間、足元の木に足を引っかけて勢いよくバランスを崩して倒れこんでしまう。ああ泥で服が汚れてしまった。
あの子を助けなきゃ、いやその前に私って誰なんだろう?
なんだか混乱してしまって、とりあえず頭を上げて、幼いあの子の姿を探した。
否、探そうとした。
「舞」
顔を上げた先に居たのは、いつも見ているあの憎々しい顔だった。
恐ろしいくらいに綺麗な顔で、私を憐れむような顔でこちらを見て、静かに手を伸ばした。
なんで、どうして?あの子はずっと向こうで幼いまま私の助けを待っているはずなのに。私が手を伸ばしてあげるはずなのに。どうしておまえが私に手を伸ばしてるの。
「舞、大丈夫?」
寒気がするほどやさしい声で私に語り掛けて、固まって動けない私を無理矢理あの子は立たせた。
「泥がたくさんついてるよ、私が取ってあげる」
まるで老人を介護するかのように一人で喋って、ハンカチで私に付いた泥を丁寧に取っていく。
その手つきは怖いほどに優しくて、私を傷つけないことにかえって心が傷ついた。
もう傷つきたくなくて、もう触られたくなくて、叫びたくなるのを無理矢理こらえて、終いには吐き気までしたけれど、泥をすべて取られるまで私はずっとそのままだった。
きっと、あの子に逆らったら殺されるから。何かはわからないけど、得体のしれないなにかにきっと私は殺されるから。
全部泥が落ちて、あの子が「もう使えないね」なんて言って投げ捨てたハンカチを知らぬ間に目で追っていて、知らぬ間に、
「優亜、どうしてここにいるの」
なんて質問を投げかけていた。
目の前の人は一度だけ悲しそうな顔をして、困った顔をして、少し笑って、表情をいくつも作った。
答えを作っているのかもしれないけれど、あの子のこういう表情はひとを喜ばせるためにあるんだろうな、なんて思う。だって、すべて彫刻みたいに完成されている。
あの子は最終的に苦く笑ったまま言った。
「舞が私を呼んでる気がしたからかな」
そこで目が覚めた。
気が付いたらベッドの外へ転がり落ちていて、あまり痛みはなかったけれどじわりと滲む汗が不快感を誘った。
なんだか外が明るいものだから慌てて時間を確認すると、時計の針はいつもの起床時間の1時間後を指していた。
「うそ、なんで、なんで寝坊なんて」
体の上にかかっている毛布をどかして立ち上がろうとした瞬間に視界が歪んで、ベッドの上に倒れこんだ。
なんだこれは、今までこんなことは一度もなかったのに、まるで体が自分のものじゃないような、そんな感覚だった。
私は何をしているんだ、今すぐに起き上がって着替えて、走りにいかなければいけないのに。
動かない自分の体を一喝して起き上がる。
ああ、だめだ、だめだ、どうも目の前がぼやけるものだからまっすぐに歩けやしない。寝すぎだろうか?今まであまり寝てこなかった反動がいま来ているとか、そんなものなのかもしれない。
それなら余計に今踏ん張らなければいけない。そうしないと、見えてきた背中がまた見えなくなってしまうかもしれない。
気付いたら今朝の夢のことなど、忘れていた。
面白いですねU^ェ^U
続き、楽しみにしてます
>>12
ありがとうございます!
相変わらず更新遅いですがよろしくお願いします!
「なあ笹森、文化祭の話なんだけど」
学校へ着いてすぐ、生徒会会長の唐沢に話しかけられた。
学校生活の華と言えばやはり文化祭、あと1か月ほど経ったら文化祭の準備が始まるということからもうすでに私ら生徒会は活動を始めている。
どの生徒も少しだけずっと後の文化祭に希望を膨らませている。私は全く興味がないが、やれと言われればやるしかない。
「ああ、うん、どうしたの」
――実はこの男、私が数か月前まで想いを寄せていた当人である。
勉強ばかりの私が人に恋をしたのは初めてだった。勉強に力が入らなくなって、すこしだけ成績が落ちた。
成績が落ちてすごく焦ったのだけれど、こんな経験が初めてだったばかりにひどく嬉しくて、今思えば常に見つめていたように思う。
実は今年の初め、彼と一緒に居たくて学級委員ではなく生徒会に入ることを決意したのだが、今はもう何の感情も抱いていないため生徒会に入って損をしたと思っている。勉強の時間が少なくなるから。
生徒会に入ることを決意するくらい好きだった彼を私がもう好きではない理由は明確であった。
もちろん、あの子が深く関係している。
唐沢幸喜という男は、私からすればひどく魅力的な男であった。
顔は悪くないし基本的に生徒会に入るほどには真面目で、運動部に所属し、昼休みには他の人と走り回って遊んでいるような彼は、女子からの評判も悪くなかった。
しかし私が一番惹かれた点といえば、あれしかないだろう。
彼は特別ではなかったのだ。
この言い方では語弊があるかもしれない。言い換えるならそうだ、「彼は完璧ではなかった」。
私はあの子のおかげで完璧なものがすべて嫌いになってしまったので、彼の完璧でない点はすぐに目に付き、その度に惹かれていった。
数学が分からないと友達に聞いていた。
こんなもの、と苦手な裁縫を投げ出していた。
友達との口論でつい熱くなって涙をこぼした。
大嫌いだと言われて少しだけ悲しそうな顔をした後に必死に見栄を張った。
そんな彼の人間的な部分は私を恋に落とすのに丁度よかった。
彼に片想いをしながら教室での時間を過ごすのはとても楽しかった。初めての経験は、私を少しだけ調子に乗せた。
恋をする私に恋をする、というのも間違っていないかもしれないが、それにしても彼に恋をしたことで自分を好きになれたのなら万々歳だ。
何よりも、あの子に対して優越感を抱いたのは確かだった。あの子は何度も誰かと付き合って、すぐに別れていたから。
しかしあの子への優越感も自分自身への恋も、あの子のせいですべてぶっ壊された。
私が彼に恋愛感情を抱いてすぐの時、クラスの男子が幾分か騒がしかったために勉強をしているフリをして少しだけ聞き耳を立てた。
「うそ、幸喜って藤原のこと好きなの?」
小さめの声だったけれどその声は確かに私の耳に届いた。
「はあ? 誰がそんな噂流したんだよ、ちげえって」
「へえ意外、お前のことだからアイドルとか言うものかと」
「まあ藤原の存在自体アイドルとかアニメに近いし」
「だから俺はアイドルにもアニメにも藤原にも恋なんか」
「え、告るの? 付き合っちゃう感じ?」
「そしたら名前で呼び合ったりするわけ? 優亜ちゃん〜とか言うの?」
「だから俺はちげえって」
何を言っているのか分からなかった。
あの唐沢くんが、あの子に、恋をしている。
理解は出来るけれど、頭がそれを拒否していた。
大好きな彼が、大嫌いなあの子に恋をしていると言っているのか? なんだよ、それ。
私は恋愛でさえ、あの子に負けると言うのか?
そんなこと、許せなかった。それでは私はあの子に、何で勝てると言うのだ。
「好きです」
今思えばあの光景は、私があの子の「あの顔」を見たときに似ているかもしれない。
教室のカーテンがふわりと舞って、夕日があの子を後ろから明るく照らし出したのがなんだか神聖なものに見えて、あの子の顔が少しだけ泣きそうになった。
あの子と目があった気がして、息を殺して教室の中を伺った。
あの子は少しだけ考えて、私の大好きだった彼に絞り出すような声で言った。
「――私、きっと貴方を、好きになれない」
息が詰まった。
きっと彼の息も詰まった。
私が彼と同じことをしたのは、きっとこれが初めてだろうと思う。
「どうして」
しゃくりあげそうな声で彼が尋ねた。
正直私も問いたい。
あの子に告白して玉砕された人は数知れないだろうが、彼は決して悪くない人だと思う。
私が少し盲目になってるだけかもしれない、しかし彼とあの子が隣に立っているのは悔しいことだがしっくりくるのだ。
「好きになれない、ってなんで」
あの子が覚悟をするように目を閉じて、そして彼を見た。
「私はまだ、出来てないことがたくさんあるから」
「…できてない、こと」
「それは言えないけど、もし、もしもそれが出来るようになったら貴方を好きになる余裕が私には出来る」
「じゃあ、」
「今付き合ったら、私は貴方を好きになれないから冷たく接しちゃうの」
「…うん」
「だから、だからね、もしも余裕が出来たら―――」
そこから先は聞きたくなかった。
流れる涙を無視して、音を立てないように学校から逃げるようにして出た。
そもそも私が彼と付き合えるはずがなかったのだ。あの子が彼という優良物件を切るわけがないのだ。彼があの子を嫌いなわけがないのだ。
すべてにおいて私は図々しすぎた。
勝る部分など何もないまま、夢を見てしまったのだ。
これが、私が人生で初めてした失恋である。
20:匿名:2017/06/04(日) 21:55 「大変だね会長」
「そんなんでもねえよ」
「意外」
「どこが」
あの時の失恋を、忘れたことはない。
けれども、私は思ったより恋心を隠すのが得意だったのだ。
「でも、」
一度だけ恋心を抱いたことのある相手が、こちらを向いてゆっくりと口を開ける。
その口の動きに不覚にもドキリとしてしまい、ひどく動揺してしまった。失恋したはずなのに、今更どうして。
知らないうちに鼓動が速くなっていたのが分かった。うるさい。どくりどくりと音を立てて体中に響いた。体に悪い音だ。
「笹森は」
「、」
ささもり、とかつて大好きだった男が、私の名前を口にした。
そのどこが甘く感じられる雰囲気は、一種の背徳感と優越感を私に抱かせる。
いつか下の名前で呼んで、あの子じゃなくて、舞、って呼んで、と心の奥底の誰かが叫んだ。
そこで少しだけ我に返る。
落ち着け。落ち着け自分。私は本来こんなことで動揺するような女ではない。もう失恋したんだ。この男に未練はない。
驚くほど遅く感じられるこの時間が早く終わってくれと、心の底から思う。
まるで、死刑を待つ死刑囚のようだ。
ああ、やめて。こっち見るな。
「誰より」
ゆっくりと、綿で首を絞められているみたいだった。
息が、苦しい。
気付けば、周りの雑音もぜんぶ彼の声と私の鼓動にかき消されてしまっていた。
「頑張ってると思う」
もう、何を考えればいいのか分からなかった。
「…そ、ぉ」
朦朧とした頭をようやく動かして、言えるだけの相槌を打った。
ごめんこんな不愛想で。褒めてくれたのに、ごめん。
「…笹森?」
なんでこんなに自分が困惑しているか分からなかった。苦しい。どうしてこんなに苦しいんだ。痛い。痛い。痛い?どこが?どうして?
彼の心配するような声色は私の思考を遮ることに適していなかった。むしろ、かえって思考は深みに嵌まる。嵌まるほどの思考も働いていなかったが。
そう、なんだ。
私って、誰より頑張ってるの?
ほんとう?
誰より?
この世界中の誰よりも、私は努力してる?
「ねえ」
「…おう」
彼が怪訝な顔をしてこちらを覗き込むのも厭わず、上の空のまま問うた。
「本当に、誰よりも?」
「…まあ。俺が知ってる中では、一番」
「私が努力してる姿を知ってるの?」
「そりゃ残るわ、あんな切羽詰まった表情で勉強してる奴」
「そんな印象的だった?」
「うん?そうだな」
「特別?」
「?そうなるか」
特別!
私特別なんだ!
誰より努力してるんだ、私。誰より。誰より、あの子より!あの子より頑張ってる!彼の印象に残ってる!
私の姿は誰かの目に鮮烈に焼き付いている!
なんともいえない高揚が心を支配して、泣きそうなくらい飛び跳ねた。実際には飛んでいないけれど、このまま空へ飛んで行けそうだった。
それほどだった。
誰かの特別になるというのは初めてで、正面きって言われたのは初めてで、しかもそれがあの子に告白した奴だってんだから、そりゃまあ嬉しくない訳がないだろう。
ああ嬉しい。
私はあの子に恋した奴から特別視されていて、あの子より勉強していて、彼から甘ったるい声で名前を呼ばれた。
自惚れとしか言えない思い込みだらけの想像に、私は心を躍らせた。
突如、足元の廊下があり得ないほどボロボロに崩れ果て、バランスを崩した私はその場に倒れ込む。
ワックスがけされて少し時間が経った廊下はもう綺麗さの名残すらない。まるでそこだけ穴が空いたように、ずるずるとひび割れた床が流れ込んでいく。
「あ、あ」
目の前が見えない。朦朧として、しすぎて、何も捉えることができない。
なにこれ、私、この穴に呑み込まれて死んじゃうの。あの子を超えられないまま?嫌だ、そんなの嫌だ、それじゃあ私の今までの努力は、へし折られたプライドは、どうなるの!
「いや、だれか、だれか」
足元は相変わらず崩れ続け、このままだとやがて丸呑みされてしまうだろう。
そうしたら、私のこの努力は無駄になる。全部、全部。
一体私は何のためにここまで努力したんだ。あの子に勝つために決まってるだろ。
見た目でも運動でも勝てない私が唯一対抗できると思ったのは!努力量くらいなんだ!だから努力してんだ!それなのに、それなのになんだこの仕打ちは!
努力して何かを掴もうとするやつをあざ笑うだなんて神様はなんて趣味の悪い奴なんだ!なあ!?おい!
しかし、死ぬ前に、努力がすべて水の泡になってしまう前にこの行き場のない怒りを表そうとしたが、出てきたのはその正反対の言葉だった。
「たすけて、ゆーあ」