「花ちゃんっ!」
バシャ、と水を掻く、音が。
溺れるあたしの耳に、響いた。
不思議なことに、あたしは今も。
────その子と、巡り逢えると思ってる。あの日の、蒼空に想う。
これは。
きっと。
偶然じゃないっ、て!
*挨拶*
はじめまして。
リリカです。
現在、『時を駆けて、初恋*します。』を執筆しております!
Jまで執筆中です。
↑がおそらく、メジャー作だと。
完結できる・・・予定です。
こっちの作品も、掛け持ちで頑張ろうと思います。
*注意書き*
*荒らしはやめてください。
*なりすまし、悪口等もお控えください。
*コメント、感想などは待ってまーす!
登場人物
伊達 花 (だて はる)
*島のヒメミコ。
*島から出たいと思っている。
*小さい頃、海で溺れてしまい、海が苦手に。
*幼い頃、助けてもらった男の子を今も好いている。
北条 然 (ほうじょう ぜん)
*花の幼なじみ。
*島と自然が好き。
*山が好き、海はそこそこ好き。
*花が好き。
真田 夏海 (さなだ なつみ)
*花と然の幼なじみ。
*島を愛している。
*海も、山も好き。
*花の大親友。
謎の男の子
*溺れていた幼き花を助ける。
*最後、「また逢える」と言い残して・・・?
1,伊達花です!
暑い・・・。
海の匂いが、鼻にツンとつく。
毎日嗅いでる匂い。
うんざりして、隣の真田夏海に愚痴る。
「あーあ、暑くない?」
夏海は、シャーペンを動かしながら、
「仕方ないよ。孤島だもん」
ううっ。
確かに、だけど・・・。
なーんて。
グチグチ言ってる私は、伊達花です!
『伊達』という名字も珍しいけど、『花』と書いて、『はる』と読む。
あんまり、聞いたこと、ないでしょ?
でもね。
珍しいのは、コレだけじゃないの。
2,ヒメミコ様
ふぁぁ。
眠いけど、がんばらないと!
今は、社会の時間。
「明治政府は、富国強兵に・・・」
ほうほう。
ノートを真面目に取って、将来に活かしたいから、今、がんばってる。
「伊達さん、真面目だね〜」
冷やかすように、隣の井ノ原涼太が、クスッと笑う。
失敬な!
「そんなに、七海島から出たいの?」
「当たり前じゃん!」
今、コイツは七海島と言った。
そう、私の住んでいるところは、さっきも言ったように、孤島なのだ!
「ヒメミコ様だから?」
カッチーン。
コイツ、私をおちょくってるな。
無視してたけど、反論しなくちゃいけない。
「いちいちうるさい・・・」
「伊達さん。前、見てください」
ギャッ!
前田先生。
注意されたじゃん、井ノ原のせいで!
せっかくの授業が〜!
はぁ。
もうっ、井ノ原のせいで集中できずに、挙げ句の果てに先生に怒られたし。
「井ノ原、Sだね。お疲れ、花」
夏海〜!
いつもクールだけど、また一段とクールだねっ。
「伊達神社、寄らなくていいの?」
「ん。今日は、梓さんがいるから」
伊達神社と言うのは、この島の守り神、シュナ様を祀っている。
ついでに言うと、私の家が経営してて、いつもは私が巫女さんをするんだけど・・・。
「一応、寄ってこうかな」
「わかった。バイバーイ」
夏海と別れ、伊達神社に向かう。
切り立った崖に面しているけど、シュナ様のおかげで、大した災害はないらしい。
「花ちゃん。今日は、巫女さんやらなくても大丈夫よ?」
梓さん!
梓さんは、伊達神社のアルバイトで巫女さんをしている。
黒髪を、ふんわり結っていて、すごいオシャレ。
私の憧れのお姉さん。
「ん!でも、梓さんに会いたくって」
梓さんは、にっこり微笑む。
「シュナ様に、お詣りして行って」
ハーイ。
お賽銭、持ってないけど。
私は、梓さんについて行く。
と・・・。
「ヒメミコ様だっ。土下座しよーぜ!」
あっ!
同じクラスの、石井と柿崎、高沢じゃん!
バカ三人組!
バカ三人組は、ニヤニヤ笑いながら、土下座しようとしてる。
私は、睨みつけながら梓さんについて行った。
ヒメミコと言うのは、何百年かに一度、《大災厄》起きるのを防ぐ役目。
私────じゃない、あたしが生まれるとき、お母さんがお告げを受けたんだって。
「あなたのお子は、ヒメミコに選ばれます。シュナ様の御加護がありますように」
って、金色の女の人が言ったらしい。
正直、嫌だ。
「花ちゃん、あんなの気にしない方が良いわ。寧ろ、胸を張って。ヒメミコ様なんだから」
ん!
梓さんが言ってくれた。
梓さんなら。
「ヒメミコ様、スゴいわよねぇ。《大災厄》から、この島───んん、世界を守るなんて。カッコ良くて憧れる〜」
そうかな。
プレッシャーだよ!
《大災厄》って、何なの!?
3,悪口
『えっ、伊達さんがヒメミコ様なの?』
『ウッソー!』
『《大災厄》から守れるわけないよぉ』
五年のころ、言われた。
私は、ヒメミコ様じゃない。
ヒメミコ様になっちゃいけない、人なんだって。
私は、何にも反論しなかった。
『ほぅら』
『でしゃばるからよ』
『だいたい、シュナ様を信仰するなんて、ウチら、終わってない?』
『伊達神社の御利益ないし』
酷い、言葉。
御利益なんて、ジッと待てば良いのに。
私だって、ヒメミコ様になんて、なりたくないのに。
あなたたちがやれば良いじゃん。
そんなときに。
『花の事、悪く言わないでよ!』
『何にもわかってないな。愚民め』
夏海が、悪口言ってた子たちに、食ってかかる。
然は、クールにその子たちを睨みつけた。
おかげで、それっきり悪口は言われなくなった。
でも。
私には、好きな人がいる。
4,蒼空くん?
小さな頃。
『お母さん!海、行ってる〜』
小さなあたしは、お母さんが止めるのを聞かず、海に飛び込む。
その頃には、海が怖いだなんて思ったことない。
浮き輪なんか浮かべて、プカァと入って。
ザバーン!
『・・・へ?』
大きな波が、浮き輪とあたしを襲う。
『・・・キャ!』
お母さんが、悲鳴をあげてるのを聞いた気がして。
あたし──────・・・。
『大丈夫?』
気付けば、蒼っぽい目の男の子があたしを見ていた。
あたしが、うなずくのを見て、男の子は笑った。
『花ちゃん。俺が、花ちゃんと一緒に、《大災厄》をやっつけるからね』
それだけ言って、男の子は歩いていった。
あの子の名前。
あたしがつけたのは、
『蒼空くん』。
あの日がたまたま、快晴であの子も蒼っぽい目だったもん。
蒼空くんに逢えたのは、運命な気がする。
良いことがある一方───────。
当時の大巫女だった、おばあちゃんが亡くなった。
でも、行儀にうるさくて、ヒメミコ様ばっかり言ってたおばあちゃんで、あんまし良くは思ってなかった。
「ヒメミコ様かぁ・・・」
そっとつぶやいたのが聞こえたのか、梓さんが振り向いた。
「御本殿よ〜」
相変わらずの朱色に、ハデだなと思う。
そりゃあの子たちが、
『シュナ様なんかなんの御利益ないし』
『奉る分、無駄』
って言ってたのも、わからなくもない。