【概要】
「二つの夢が過ごすごく普通の日常の記録です」
ストーリー
その昔、天使が夢を見ました、その昔、悪魔も夢を見ました、二人の死後、夢がその
後を継ぎました、天使(夢)は正義は必ず勝つというよくあるお決まりの展開でまぁなんとか
悪魔(夢)を倒し、自分だけに仕える僕……じゃなく「執事」にしました……
悪魔でも「執事」です、悪魔だけに……いや、天使だけの悪魔の「執事」です
第1話 寝起き
「お嬢様、朝です、起きてください」
「もう起きてるわよ、あなたはどこに目を付けているの?」
「顔です」
「いや、それはわかるわよ、貴方は一体全体私のどこを見て寝ていると判断したのよ」
「おや、本当に起きていますね、今の今まで寝言かと思っていました」
「何を寝言言っているのよ、ムニャムニャ……」
「おやすみなさいませ、おじょ」
「ちょい待ちなさい、ノリよノリ、貴方のそのくだらない茶番に付き合ってあげただけよ」
「そうでしたか、それはそれは」
「貴方は私を馬鹿にしているの?」
「いいえ、お嬢様は馬でも鹿でもございません、お嬢様はお嬢様でございます」
「そんなのわかってるわよ、私はこの城の高貴なお嬢様なんだから」
「はい、お嬢様はこの城の高貴なお嬢様でございます」
「それは今私が言ったわ」
「はい、お嬢様が只今言いました」
「もういいわ、何か可愛い物でも見て目を覚ましたいところね」
「かしこまりました、それでは城の外世界観察型装置システム「アイ」により撮影された
動物の赤子の写真をご覧ください」
「動物とは何だ?」
「動物とは、馬や鹿といった我々とは別に存在する生命体のことです」
「なるほど」
「と、アイが申しておりました」
『データ:動物
毛が体中に生えていて、中には角や棘といった突起物を持つ者も存在する、繁殖可能』
「とのことです」
「それはわかったわ、で、その写真は?」
「では「アイ」の画面に映りますのでご覧ください」
『マスターモード始動・ピクチャー1』
「……何よこれ」
「これは幼虫でございます、簡単に言うと白い生き物です」
「他」
「かしこまりました」
「ピクチャー・2」
「あら、これは可愛いわね」
「はい、そうでございますね」
「これは何ていう動物なのかしら?」
「これは馬と鹿でございます」
「………」
「と、アイが申しておりました」
第2話 フェイク
ジャクロシア暦53576年
「たまにはお城の中から出たいわ」
「駄目です」
「即答ね」
「お外では現在、人間達の戦争と言うものが行われております」
「戦争?」
「ベレイカお嬢様の生みの親である天使キリエラ様はお言葉を残されています」
「聞かせなさい」
「二回から目薬」
「………」
「すみません、間違えました、こちらが残された言葉でした」
「き、聞かせなさい」
「『我々天使や悪魔と違って、人間とは武器を用いて戦いし愚かな者である、世界というこの地で
それを行うのは神や天使や悪魔に対する冒涜と取れて見れる、実に愚かなリ』とのことです」
「つまり?」
「つまり、戦争の中外出は許されないと言うことでございま」
「行きたいわ」
「最後までお聞きください、戦争の中外出は許されませんが鏡というものがございます」
「自分と同じ存在を作り出す超ハイテク技術マシンのことね」
「……えーっと……」
「で、その鏡はどこ?」
「はい、こちらでございます」
「で、これでどうしろと?」
「鏡の中の世界に行けば間逆の世界なので戦争もないかと」
「そうね」
「ですが、時々鏡の中の自分が出てくるという現象が起きますのでお気をつけ」
「ねぇ、クロスチャン」
「はい、何でしょう?」
「貴方、何故もう一人の私と話しているの」
「と、こういう風になります」
第3話 ジェントルマン
ジャクロシア暦 54367年
「お嬢様、本日は屋敷護衛システムの誤作動がございました、何かなされましたか?」
「いいえ、何もしてないわ、多分」
「多分?」
「すこーし護衛システム作動スイッチの近くにいただけで特に何もしてな」
「それでございます」
「それなの?」
「護衛システムは一歩間違えればこの屋敷を完全に破壊する事態になります故に、これからは
こういったことがないように、お気をつ」
「ねぇ、クロスチャン」
「……はい、何でございましょう?」
「それは、護衛というの?」
「どちらかと言うと、護衛ではなく誤衛でございます」
「うまいこと言ったわね」
「お褒め頂き、光栄でございます」
「まぁ、普通だったけど」
「……お嬢様、そろそろお客様がお見えになられます」
「そう、で、誰?」
「はい、人間とも我々とも似ても似つかない紳士が来るそうで」
「紳士?」
「はい、紳士でございます」
「その紳士が、ここに何の用で来るのかしら?」
「はい、一切説明はありませんでした」
「………」
「いかがなされましたか?」
「もしその紳士が面白半分でここに来るとしたら、私怒るわよ?」
「お嬢様、十分お怒りに」
「なってないわよ」
「……はい」
「さーて、そろそろ来るのかしら?」
「と、思われ」
『メールデス』
「これは何?」
「はい、お屋敷メールキャッチ装置『シルベス』でございます」
「わかったわ、で、メールの内容は?」
「お読み致します、えーっと……『護衛装置の攻撃でこられなくなりました』……」
「………」
「つまり、私が言いたいことは」
「スイッチを勝手に押すなってことね」
「その通りでございます」
第4話 魅力と欲望
ジャクロシア暦 54495年
「ふんふ〜んふふ〜ん」
「お嬢様、一体鏡を見ながら何をなされているのですか?」
「見ればわかるでしょう?」
「わかりました、お嬢様は今、顔面泥パックをなさっているのですね」
「何をどう見たらそう見えるのよ、髪よ髪」
「髪?」
「そうよ、使用人に人間に変装させて買いに行ってもらったの、髪飾りを」
「………」
「あら、どうしたの?」
「使用人は、タマネギの様な形をした小さな固形物の様な者が殆どでございます、どの様に
変装させたのかと思いま」
「細かいことはいいの、前を見つめてゆきなさい」
「……最後までお聞きくだ」
「見つめてゆけばいいのよ、わかった?クロスチャン」
「最後までお聞きください、どの様に使用人に変装を?」
「使用人を沢山集めて人間の形を作らせた後、ペンキで塗って行かせたわ、でもおかしいのよね」
「と、言いますと?」
「腕の部分になっていた使用人が、いないのよねー、窓からは何か変な残骸が見えるし」
「……お嬢様、髪飾りとてもお似合いでございます」
「あら、そう?」
「はい、一言で表すと……」
「何よ」
「一言で表すと、それは「表せない」という表現になります」
「矛盾しているわね」
「……お嬢様」
「何よ」
「細かいことは気にしてはなりません、前を見つめてゆきましょう」
「まだ話は終わってないわよ」
「前を見つめてゆきま」
「一言で表すとしたら「嫌」よ」
第5話 秒針の導き
ジャクロシア暦 54673年
「クロスチャン、そろそろおやつの時間ではなくって?」
「いいえお嬢様、まだ朝の十時半でございます」
「私の持っている時計は三時だったわよ?」
「ですがつい三分前にご朝食をお食べになられたでしょう?」
「でも三時は三時よ」
「お屋敷にある柱時計『ベルシエーラV型』は間違いがございません」
「待て、V型?」
「はい、V型でございます」
「T型とU型はどうしたの?」
「はい、先代柱時計達は3975789年分の狂いが生じていましたので撤去致しました」
「つまり、間違いがあったのね」
「ですが今回の柱時計は正確でございます、一秒一秒正確に時を刻んでおりま」
「これは何年分の狂いがあるのかしら?」
「狂いはございません、先代達よりもより正確に、より的確に、より忠実に」
「完璧なのね」
「いえ、今思い出しましたがこれは約二億年分の狂いがございました」
「……駄目じゃない」
「はい、直ちにW型に取替え致します」
「もういいわよ」
「何故ですか?」
「察しなさい」
「かしこまりました」
「さて、ではおやつね」
「いえ、まだ夜の7時でございます」
第6話 脅威高速体
ジャクロシア暦 54916年
「クロスチャン」
「はい、何でございましょう?」
「さっきからお屋敷内を高速で動いているあの変な物は何?」
「あれは屋敷の外又は周辺の以上を察知する為の機械「ペデロ」でございます」
「つまり?」
「つまり、今お屋敷の周りには異変が起きているということです」
「護衛装置改め誤衛装置の作動準備をしなさい」
「無理です」
「何でよ?」
「お嬢様が以前押してしまった時に……」
「壊れたのね」
「いえ、その後修理にかかろうと思い行ったところ箪笥の角に足の小指ぶつける様に頭をスイッチに
ぶつけてしまい、完全にお釈迦様になってしまいました」
「そう、つまり貴方のせいじゃない」
「その通りでござ」
『異常確認、異常確認、異常確認』
「……異常、でございますか」
「何があったのかしら」
『お屋敷周辺に人間達が蔓延っています』
「ちょ、マジヤべーな状況じゃない」
「そうでございますね」
「何かこう、サクッと解決できる策はないかしら」
「………」
「誤衛装置を」
「なりません」
「にしても、何か策はないかしら」
「あっ」
「何よ」
「予算削減の為少々ケチったのですが、ペデロは異変がないのに起きたと勘違いする欠陥異変察知機
でございました」
「貴方、後で私の部屋に来なさい」
「かしこまりました」
第7話 崇拝の考察
ジャクロシア暦 55268年
「……クロスチャン」
「はい、何でございましょうか」
「この世には、人間、我々天使と悪魔、そして動物しか生物は存在しないの?」
「一説によりますと、過去に「宇宙人」といった者達を人間達は信じたそうです」
「その宇宙人というのは我々天使や悪魔と同じ様な存在?それとも神?」
「いえ、ただ単にクリーチャーだそうです」
「つまり、ペットのようなものね」
「……えーっと」
「一匹欲しいわ」
「ですが、確かな存在は確認されておりま」
「天使と悪魔がいるのに?」
「……はい」
「いないわけでもなさそうね」
「ですが」
「ですがは私にはいらないわ」
「その通りでございますね」
「で、その宇宙人っていうのは通常どこに住んでいるの?」
「宇宙でございます」
「宇宙?」
「つまり、お空の上でございます」
「大気圏のことね」
「……説明致しますと」
「もういいわ」
「……かしこまりました」
「宇宙人じゃなくても、馬や鹿を飼えばいいんですもの」
「では早速使用人に狩らせに行かせま」
「ちょっと待ちなさい、殺すのは駄目よ」
「かしこまりました、では生け捕りに行かせます」
「響きが悪いわね、そして気が変わったわ、鳥がいいわ、あそこに飛んでいるどら焼きみたいな
形をした鳥を生け捕りにしてき」
『異常確認、異常確認、異常確認』
第8話 統一の眼差し
ジャクロシア暦 55874年
「今、この世界は誰の手によってまとめられている?」
「……はい?」
「つまり、人間達をまとめている者は誰か、と問いているの」
「恐らくは国王でしょう」
「それじゃあ国王と話しをしたい、呼んで?」
「かしこまりました、と、言いたいところですが先月死去致しました」
「ちょっ、マジなの?」
「はい、マジでございます」
「なら仕方ないわね」
「はい、なので別の人物をお呼びしました」
「誰よ?」
「私でございます」
「今日は天気がいいわねー」
「いいえ、本日は一日中雷雨でございます」
「………」
「嘘で誤魔化さずにお聞き下さい、我々は悪魔と天使、その気になれば人間達をまとめることも
できるのでございます」
「それが面倒だから国王を呼ぼうと思ったのに?」
「………」
「もういいわ、今日はいつも通りしゅごしゅ……噛んだわ」
「そうですね」
「いつも通り過ごすわ」
「かちこまりまちた」