閉じ込めた慟哭

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1:ミカゲ◆Vas hoge:2015/02/02(月) 14:41



ミカゲです。
頑張って書こうと思うので、よろしくです。
多分、更新は遅いと思います。

2:ミカゲ◆Vas hoge:2015/02/02(月) 15:41




ブランコに揺られながら空を眺めていた。
行ったり来たりする景色はまるで俺の人生みたい。そう、自嘲気味に笑う。
雲ひとつない青空にむかって白い吐息が舞っていく。吐いては消えて、吐いては消えての繰り返し。
揺れる視界を覆うように済んだ空が落下する。そんな錯覚に陥ったのはきっと酔っているから。
空っぽの胃から何かが逆流してくるのを手にしていた酒で押し戻す。
ふいに腰の辺りから少しずつ流れる血が目に入って、あぁ切れてるんだと気付いた。
あまりに何も感じないから手のひらを強く押しつけてみれば、それなりに感覚が蘇り安堵を覚えた。
俺はまだ生きている、と。
きっと来る明日という未来に希望はないけれど、それでも明日は平等に訪れる。
違いがあるとすればその明日に俺が存在している保証はないということ。
それでも、とりあえず俺はまだ生きている。
遠くで楽しそうな子どもの声がする。消えそうな意識の中で幸せそうな雰囲気のする方へ目を向けた。
そこには父親と手を繋いでいる男の子がいた。息子の鞄を持ちながら笑っている優しい父親。
この光景が幸せそうに写るのは俺だけだろうか。幸せに定義などないだろう。
だけど、少なくともその幸せを俺は望んでいた。その事実は消せない。
全てを忘れるように目を閉じれば急激に襲いかかる睡魔に飲みこまれた。

3:ミカゲ◆Vas hoge:2015/02/02(月) 19:27




学校が嫌いだったわけじゃない。学校に馴染めない自分が嫌いだったんだ。サボりたくてサボったわけじゃない。
傷がひどくて先生や友達に色々と聴かれたくなくていけなかっただけだ。喧嘩が好きだったわけじゃない。
弱い自分を認めたくなかっただけだ。
それなのに、いつしかはぐれ者だった。
物心ついた頃から父親の顔と温もりは知らなかった。、母親の顔だけは認識してたがやっぱり温もりは知らない。
知っていたのは痛みだけだ。
いつも家の中は騒がしかった。母親の喚き声と、物が飛ぶ音と、俺の気持ち悪い泣き声。手当たり次第に物を投げ飛ばし、
俺の身体に直撃する。母親は決して素手で殴ることはなかった。痛みを感じるのは俺と投げられてくる物だけ。
世間では、父親は強い男らしい。何かあった時に助けてくれるらしい。だから顔も知らない父親に助けを求め祈れば、
それに気付いた母親が余計に激しく暴れまわる。
幼い俺にできることは、嵐が過ぎ去るのを待つだけだった。

4:ミカゲ◆Vas hoge:2015/02/02(月) 23:59




あんたの顔なんて見たくないの、そう叫ばれるたびに俯いて床の上に溜まっていく涙を見つめる。小さな水たまりに映るぐしゃぐしゃになった
自分の顔。あぁ、こんなに汚いから母親は嫌いなのだろうか。だったら涙を見せるのはやめよう。そうすれば好きになってくれるかもしれない。
純粋にそう思い、それからというものどんな痛みを受けても涙を流さないよう努力した。痛みを堪えるのは簡単だ。
何も考えず無になるだけ。
床の上に水たまりができることはなくなったけれど、無反応な俺の態度に母親の暴力は増した。
何も変わらないんだと思い知らされてから俺の中から母親は消えた。優しい母親を求めるのもやめた。
父親は助けに来てくれないことを知った。

小学校に楽しい思い出はない。家族の話を楽しそうにするクラスメイトと話しが合うはずもなく、傷だらけの身体を隠すように
教室の隅で目立たないように過ごしていた。
担任の大丈夫なのというセリフはあくまでもセリフだった。心配しているというよりは憐れんでいるだけ。
そんな視線に晒される毎日が嫌で、でも家にいるよりはマシだったから学校を休むことはなかった。

けれど、中学生になってからは母親に怯えることはなくなった。幼いころとは違い母親の投げる物を避けれたし、
力も俺のほうが強い。それに気付いたのは母親も同じで、それからは言葉の暴力に変わっていった。
でも俺のことを貶して罵りながらも母親は成長した俺に少し怯えていて、よく泣いていた。
涙を見ても何も思わない。逆に腹が立つ。あれから涙なんて流した覚えはないのに、なんであんたが泣いているんだ。

5:ミカゲ◆Vas hoge:2015/02/03(火) 16:47




静かな校舎内を進む。授業中なのか生徒の姿は見えない。靴箱に靴をしまい履きなれない上履きを床に叩きつける。
いつ頃から高校に寄りつかなくなっただろうか。上履きも踵が潰れているのを除けば新品のように綺麗だ。
やけに軽い鞄とともに階段をあがる。慣れないこの学校特有の匂い。毎日通えば慣れていくものなのか。そんなことで慣れるくらいなら慣れなくてもいい。
慣れというのは恐ろしい。きっと生きていく上で一番してはいけないものだろう。
だらだらと教室まで向かう。微かに聴こえる教師の声と黒板を叩くチョークの音。
後ろの扉を開けばさっきまで廊下で聴こえていた音がぴたりと止んだ。いつものことだと自分の席だけを見つめた。
窓際の一番後ろの席だけが俺に与えられた場所。いや、俺に残された場所かもしれない。ため息を吐きながら席につく。
みんなの視線を受けていたのも数秒のことで再び教師の棒読みの声と黒板を叩くチョークの音が響き始めた。
数分も経たないうちにチャイムが鳴りその瞬間、教室内が騒がしくなる。
「あれー、藤宮いつ来たよ」
ふいに後ろから投げかけられた少し低めの声。

6:◆Vas 死にたい:2015/02/05(木) 16:04




振り向けば、そこに立っていたのは幼馴染の藍人(あいと)だった。
「久しぶりじゃん、そろそろ生存確認しようかと思ってたんだよね」
そう、にこやかに微笑む藍人の表情を見ながら記憶を手繰る。昨日は……よく覚えていないが、
「最後に会ったの三日前だろ」
久しぶりでもなんでもない。こいつは何を考えているのか本当にわからない。けれど、そんな俺の言葉に笑みを閉じ込め首を傾げる。
「ねぇ、病院行ったら」
「……あ?」
病院だと?脈絡もなくそんなことを言うお前こそ病院に行ったほうがいいじゃないかと睨みつければ、冗談だよと再び笑いだす。
へらへらと笑う姿に腹が立ち舌を打つ。


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