「……794年には、平安京が―……」
いつもと同じ時間が流れていく……。
私は、北白川たまこ。
普通の女子高校生です。
私には、一つの悩みがあります。
それは―
「ただいま」
呟くようにして家に入った私は、お弁当箱を置きに、キッチンへ。
ドアを開けると、テレビを見ながら談笑しているお母さんと、双子の姉のももこ。
私は学校でもそうだけど、家でもその存在を忘れられている。
そう、これが、私の悩み。
ちっぽけな悩みかもしれないけど、私は結構真剣に悩んでいる。
どうすればいいのか分からずに、私は進学校を受験した。
別に、勉強ができないわけでもないし……。
それに、お父さんが
「たまこ。お前はももことは違って、頭もいいんだ。だから、進学校に行きなさい」
て、真顔で言ってたから。
でも、高校受験の時くらい、お父さんに逆らってみればよかったかなぁ……?
そんなことを考えながら、私はリビングを通り過ぎて、家の中で唯一くつろげる場所、自分の部屋へ。
私は制服を脱ぐと、部屋着に着替えて鞄の中から今日の宿題になっている数学と古典のワークを出した。
ワークを進めながら、ふと、時計を見ると、もう夜の7時になっていた。
食事の時間なので、私は階段を下りた。
「たまこ。勉強はしているのか?」
「うん……」
「そうか、それならいいが」
それだけで、お父さんとの会話は終わった。
私との会話が終わると、お父さんも、ももことお母さんの会話に参加し始めた。
お父さんは、一体何がしたいのだろう。
私は親の言うことはよく聞いているつもりだし、勉強も毎日欠かさずにやっている。
それなのに、どうしてみんなももこが好きなのかな?
まぁ、別にどうでもいいけど……。
「おかわり!」
突然大きな声が上がり、隣を見てみると、ももこが無邪気な笑顔で茶碗を上げていた。
「はいはい」
お母さんも笑いながら給仕する。
うらやましいとは思ったけど、それを実行するほどの勇気はない。
そんなことをしたら、この場が思いきりしらけるのが目に見えてるし、私だって、恥をかきたくないから。
こんなつまらない毎日だけど、私にはたった一人だけ、気になっている子がいる。
名前は、桜井純。
その子は、とてもおとなしい子で、私よりも3倍くらい頭がいい女の子。
それに、基本無表情で気付きにくいけど、つり目で二重のところなんかがきりっとしてていい感じだ。
おまけにスタイルもいい。
くびれがすごくて、色も白い。
肩下セミロングの黒髪は、つややかでとてもきれい。
私は、桜井さんにあこがれている。
……なんて、死んでも言えないけどっ!!
私は食器を片づけると、速足でこの部屋から出てベッドへ横になった。
「桜井さん……大好き……」
ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
こんな感情を抱いたのなんて生まれて初めて!!
ヤバイっ!どーしよっ……。
多分私、今顔がゆでだこ状態だよ……。きっと。
よしっ!明日、桜井さんに話しかけてみよう。
そんなことを思いながら、私はこの後お風呂に入り、宿題を済ませて眠りについた。