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1:さくら:2015/07/14(火) 19:11

7月、セミが絶え間なく鳴き続ける暑い夏。
一人の少女が廊下に張られているいじめ防止のポスターをちらりと見て小さくつぶやいた。
「……嘘つき」
彼女は近藤美紀。公立中学校に通う、現在二年生。
いじめは、ある。ここに。
美紀は教室のドアをがらりとあけ、自分の席に向かった。
すると美紀はぴたりと足を止める。
自分の机の上に大量のゴミが置いてあったのだ。
それを見つめる美紀の背中に、小さな声が聞こえてきた。
「見てあれー!くっさぁー」
そんな声とともにクスクスと笑い声でざわめく教室。
しかし美紀は、そんなことはいとわずにゴミ袋を持ってきてゴミを次々と放り込んでゆく。
気にしない。
それが彼女のモットーだった。

2:さくら:2015/07/14(火) 19:20

今からちょうど一年前。
美紀は中学一年生だった。
そこで、一番目立っていたのが美紀。
悪い意味ではない。ただ、クラスで一番背が小さくて、小柄なだけだった。
ある日、そんな美紀を見て、男子がからかってきたのだ。
『おい、こんなところに小学生がいるぞ!』
しかし美紀はそれがコンプレックスだったため、顔を赤くして何も言い返さなかった。
それがきっかけ。いつしか仲の良い友達も離れていき、移動教室はいつも一人。
調理実習はただ突っ立っているだけで、給食のときは美紀の机だけ離す。
それでも何も言わない美紀を、クラスメイトは馬鹿にして笑っていた。

3:さくら:2015/07/14(火) 19:37

それが今でも続いている。
当然部活動も狭苦しくて仕方がない。
しかし美紀は一度も泣いたことがなかった。
泣けば、その時点で自分の負けだと思ったから。それが、美紀のプライドだった。
ちょうど、ゴミを片づけ終わったところに、始業のチャイムが鳴り、担任の岡部が入ってきた。
「席に着け。朝の会、始めるぞー」
多分先生も気付いていたんだと思う。
ただ、見て見ぬふりをしているだけ……。そうですよね?先生……。

4:さくら:2015/07/14(火) 19:52

授業が終わり、美紀はまっすぐに体育館へと向かう。
美紀はバドミントン部で今日は体育館を半面使えることになっている。
いつものようにポールを刺して、ネットを一人で張っていると……。
「お願いしまーす」
クラスの女子が入ってきた。美紀の学校では、部活動中、入ってくるときは「お願いします」で、出ていくときは「ありがとうございました」という。顧問が入ってきたときはそれぞれ「お疲れ様です」と「お疲れ様でした」だ。
「あーっ!美紀ちゃん、いつもごめんねぇ〜」
「え……」
「たけ子、あんた何言ってんの?」
「近藤さんは、私達とは付き合わないって」
ぎゃははっと、体育館に笑い声が響く。
いつもこうだ。私を馬鹿にして……。
美紀は知らん顔をして準備を続けた。


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