白鳥と黒鳥

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1:こもな:2015/08/22(土) 20:01

第一話「醜い白鳥の子」

はじめまして。
私、凜子と言います。
突然ですが、私にはあこがれの人がいます。
姉のすみれちゃんです。
え?どこがいいかって?
そうですねぇ……。では、最初から紹介していきましょうか。

2:こもな:2015/08/22(土) 20:15

「すみれ、かわいー!」
今はお昼休みです。
給食を食べ終わった私達は、各々、おしゃべりをしたりして休んでいました。
そんな中で、ひときわ目立っている女の子が。
彼女が、すみれちゃんです。
すみれちゃんは相変わらず、このクラスの人気者です。
でも、その理由は分かります。
すみれちゃんは、小学校にいるころからそうだけれど、中2になった今でも成績は優秀でスポーツ万能。
おまけに性格は明るく、見た目もとてもかわいらしかったのです。
あ、同じクラスに姉がいる時点でお気づきかと思いますが、すみれちゃんは私の双子の姉です。
でも、全く双子に見えません。
なぜなら、すみれちゃんはそんな完璧な女の子なのに、私ときたら、成績は悪く、運動神経は小4並み。
分厚いメガネをかけて、ぼさぼさでつやのない髪の毛を三つ編みに結んでいます。
どこからどう見ても、ダサすぎる女子です。
「凜子ちゃん、ホントにすみれと双子なの?」
そんな心無いことをしょっちゅう私は言われますが、そんなときはすみれちゃんが私をさりげなくフォローしてくれるのです。
「凜子ちゃん、ホントはすっごくかわいいんだからー」
確かに、一卵性の双子なので顔は同じですが、すみれちゃんと私なんて春の妖精とドブネズミくらいに違います。それに、そのフォローは逆に傷つくのでやめてほしいです。

3:こもな:2015/08/22(土) 20:22

でも、そんなことは言えません。
家でも学校でもお姫様のような存在のすみれちゃんにそんなことを言ったら、一瞬で私が悪者になるのは目に見えています。
それに、私もこれ以上傷つきたくないので言いませんが……。
ここまで言ってしまったら、もうハッキリ言うしかないですね。

私、すみれちゃんの事が嫌いです。

ついに言ってしまいました。
自分の中でわずかに否定していたこの気持ち。
認めたいけど認めたくない。
この気持ち、皆さんには分かりますか?

4:こもな:2015/08/22(土) 20:34

家に帰ると、すみれちゃんがもう帰っていました。
リビングから漏れている笑い声。とても楽しそうです。
私は親に見せなきゃいけないプリントがあったので、しょうがなしにリビングへ向かいます。
「あ、凜子ちゃん!お帰り!」
すみれちゃんの笑顔。とてもまぶしいです。
「た、ただいま……」
嫌いな人がうじゃうじゃいるこの空間に、私はあまり居たいとは感じません。
誰だってそうでしょうね。
だって私の嫌いな人はすみれちゃんだけじゃないのですから。
プリントを渡して、さっさと部屋に行こうとすると、珍しいことに、母さんに呼び止められました。
「凜子。ちょっとこっち来なさい」
「何?母さん……」
私がすみれちゃんの横に座ると、母さんはちょっと興奮した口調で言いました。
「あのね、すみれ。英検2級に受かったのよ!」
見ると、すみれちゃんの手には賞状が握られていました。
何だ……。たまに話しかけたと思えば、自慢話か……。
そんな感じで私はちょっとがっかりしました。


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