第一章「first step」
私の名前は橘未空。
現在中学3年生の15歳。
そんな私には悩み事があります。
それは―……。
ガチャ……バタン……。
放課後、私は一人で家に帰り、ソファーの上に横になった。
「未空?」
誰もいないと思っていた部屋から母さんの声が。
少し顔を上げて見ると、キッチンには母さんが立っていた。
「んー……」
「あんた、ただいまくらい言いなさいよ。泥棒かと思っちゃった……」
ブツブツ呟きながらスーパーの袋から食材を出す母さん。
そんな彼女を見ながら、私はテレビのリモコンを手に取って適当にチャンネルを変える。
「あ、そうだ。未空、あんた、明日から夏休みだったよね?」
「んー」
「それじゃあ、塾の夏期講習。行くわよね?」
「ん」
私が行くと聞いて、母さんの声は嬉しそうに弾んだ。
「じゃあ、母さん、仕事行ってくるからね」
「んー」
母さんが仕事に行っちゃって、父さんも今日は出張で半年間家を空ける。
それで、この時間帯に家にいるのは、私と、妹の遥だけ。
そう言えば、私母さんとの会話で「ん」しか言ってないな……。
まぁ、いっか。
そんなことを考えているうちに、眠気がやってきて、私は眠りについた。