朝焼けに染まる、

葉っぱ天国 > 短編小説 > スレ一覧キーワード▼下へ
1: れい。◆86 hoge:2015/10/14(水) 12:00



    癖毛でやわらかな黒髪も
    細くて大きなてのひらも
    鎖骨にある小さな黒子も
    見え隠れするやさしさも
    耳をくすぐる低いこえも
    抱きしめたときの体温も

         全部、

      わたししか知らない。

 

2: れい。◆86 hoge:2015/10/14(水) 12:01



→挨拶

はじめまして、れいです。
久々に創作意欲が湧き、また懲りずに
たててしまいました。
拙い文才ですが、精一杯書かせて頂きます、
よろしくお願いします(ृ ु ´͈ ∨ `͈ )ु

✡波更新。
✡レス大歓迎。

 

3: れい。◆86 hog:2016/03/29(火) 11:25



#01.

ざあああ、と激しい雨がアスファルトに
いくつも水溜まりを作る。ステンレスで
出来た屋根に、ばちばちと当たる雨は
ひどくうるさく、誰もいないバス停に
ぽつんと立ちすくむ私と、隣にいる一人の
男だけしか世界にいないような感覚になった。
男は、真っ直ぐと前を見据えてて、悲しいかな、きっとあの目に私が映ることはない。

「ねえ、あんた、今あの子のこと
考えてたでしょ」

雨音のせいで、声はすんなりと届かなかった。静寂を、雨が打ち消す。男は目線を
前にしたまま、くすりと口角を上げた。
ああ、図星。

「……あんたは、俺のこと考えてただろ」

「そうかも。私が隣にいるのに、あの子の
こと考えるなんて、余程惚れてるのね」

ちらりと横を見ると、あいつの目線と
交わった。
今は、私のことだけ考えてればいいのに。
こいつはいつも、いつも。

「あんたがこうしてる時も、あの子は
彼氏とあんたの知らない時間を過ごしてる。それって、虚しくない?」

「…あいつが幸せなら、それでいいんだよ」

「言うと思ったわ。さっさと諦めればいいのに。あの子は慰めてはくれないわよ」

笑うのが聞こえた。
切れ長の目を細めて、幸せそうな顔。こんな風に笑うのは、あの子絡みの話の時だけ。
本当に妬ける。

「…ねえ、」

ざあああ。
雨音が私の声をかき消そうとする。
聞こえるように、もう一度。

「…ねえ、今日うち誰もいないんだ」

今度は笑わないのね。まあ、いいけど。
白くて細い首に、腕を絡めて、

「私たちも、あの子たちの知らない時間
過ごしちゃおうよ」

ぐい、と背伸びをしたら目の前には
綺麗な顔立ちと、微かにかかる吐息。

「振りほどかないの?」

「…俺も疲れたのかもな」

お互い目を合わせたら小さく笑って、
唇がくっつくまであと2秒。


( はやく私のところに来ればいいのに、
  あんたはいつもあの子のことばかり )

 

4: はるまつ  hoge :2016/03/30(水) 15:23




れっ、れいさん..!!!!
文章力がすごいです、最後のところとか特に..!!
私すごい好きなので、お時間あればまた何か書いてほしい!!!

5: 竹田。◆86 hoge:2016/03/31(木) 11:06


>>0004.

はっ、はるるん!!
ありがとう∩(´;ヮ;`)∩ンヒィィ
わたしでよければ!書きますありがとう!
 

6: れい。◆86:2016/06/29(水) 18:55



#02.


「2名様ですか?あちらの席へどうぞー」

からんからん、と可愛らしい鈴の音と共に
店員に誘導され2人の男女がわたしの隣の
テーブルに座った。
高校生くらいの、小柄な女の子と金髪マッシュの男の子。男の子の方はマッシュのうえ、
根元が黒いのでプリン感が増している。


「あおい、鞄こっち置くから貸して」


あおい、と呼ばれた男の子はのそのそと
女の子に鞄を差し出して、頬杖をつくと
睫毛で縁取られた目を伏せた。
あおい、なのに金色なのか。
くだらないことを考えていると、ピロリンと
わたしの携帯が鳴った。
画面をスライドさせて、内容を確認する。


《ごめん!ちょっと遅れそう!先に中入ってて!》


はあ、とため息を吐く。メールの差出人の
彼が待ち合わせに間に合ったことは一度もない。
そんなことにも慣れてしまったわたしは、
既に中に入っているのだけれど。
短く返信をして、画面を落とすとお隣は
店員に注文をしているところだった。


「フルーツパンケーキとアイスコーヒーで!」

「……ミルクプリンとアップルティー1つ」


見た目プリンで食べるのもプリンなのか。
でも甘いものが好きだなんてかわいいなあ、
そう思いながらアイスティーをひとくち。
わたしたちもこんな可愛い時代があったのだろうか。

ふと彼との思い出を振り返る。
ドジで、いつも遅刻して、忘れ物が多くて、
学生の頃はよく課題を忘れたりして、
今でもそれは変わらない。
考えるほど彼のだめなところばっかり
浮かんできて、わたしは何でこんな奴を
好きなんだろうって思えてくる。
だけど、子犬みたいに眉を下げてごめんね?
って謝られたら、わたしはいつも許して
しまって、何で許しちゃうのって心の中で
自分を叱るけど、安心したように笑う
笑顔を見るとわたしまで笑っちゃったり。
溺れてるなあと思うと恥ずかしくなって
アイスティーをまたひとくち。

ちら、とお隣さんカップルを見ると
あおいくんはまた頬杖を付いて目を瞑って
いて、それを彼女ちゃんは穴が空くほど
凝視していた。

 

7: れい。◆86 hoge:2016/06/29(水) 19:01



「…あおい、髪の毛伸びたね」

ゆっくりと瞼が持ち上がる。眠たそうな
瞳が彼女を捉えると、あおいくんは自分の
髪を摘まんでいじりだした。


「染め直さないの?」

「……めんどくさい」


デート中なのに眠そうな顔、のそのそと
した喋り方、そしてめんどくさがり。
どこか抜けた無気力なところ。
もしかして、この子達とわたしたちの
関係って似ているのかもしれない。
それでも一緒にいる彼女もあおいくんに
惚れてるんだなあ、と思うと頬が緩む。


「……次は金じゃなくて他の色にしたら? 赤とか」

そこは青じゃないのか。
さっきからわたしは彼女たちの会話に
耳を澄ませることに神経を削っている。
そういえば、彼は人の話を聞かない人だった。
その代わりに、わたしは彼に変わって話を
聞いてあげていた。そのせいで癖なのか、
ただ気になるのか。
たぶん両方だ。
あおいくんは、ちょっと顔をしかめると、
少し考えてから呟いた。


「おれが似合うと思う?」

「……んー、どうだろ」


あおいくんはアップルティーをちゅう、と
飲むと思いついたような顔をした。
と同時にピロリンとわたしの携帯が鳴る。
差出人は見なくてもわかる。

「はるも染めれば?」

「わたしが似合うと思う?」

はるちゃんと呼ばれた彼女はくすくすと
笑うと、パンケーキを口に運んだ。
控えめな笑顔が可愛らしくて、わたしは
微笑みかける頬に力を入れて画面をスライドした。

《もうすぐ着くよ!遅れてごめんね!》

ぴこぴこと動く顔文字付きで、いつもなら
ムッとする内容だけど今日は何故か笑みが
こぼれた。
あおいくんとはるちゃんは、美味しそうに
プリンとパンケーキを食べている。
いいなあ高校生カップル、かわいいなあ。
わたしたちが高校生のとき、一緒に
帰りながらたくさんの事を話した。
でも照れ屋の彼はなかなかわたしが
言ってほしい言葉をくれなくて、その頃の
わたしは彼のそんな所にも胸がときめいて
いたんだけど今はもうマンネリ化。
愛してる、どころか好き、さえも言わない。
言えない。恥ずかしい。
なんだ、わたし達の方が高校カップルより
初々しいんじゃないか。
あおいくんとはるちゃんは、どうなんだろう。
あおいくんは口下手そうだし言わない
タイプかな。はるちゃん苦労するなあ。

 

8: れい。◆86:2016/06/29(水) 19:04




「…はるは、黒髪でいいよ」

「染める気ないもん。あおいは、
早くそのプリンどうにかしなよ」

「……変?」

心配そうに眉を下げるあおいくん。
その顔が彼と重なって、きっと
はるちゃんはこの表情に弱いんだろうと
勘付く。

「…んー、変じゃないよ?
もし髪色変えたりしてもわたしは、
どんなあおいでも好きだよ」

「……そういうの、だめだから」

突然のはるちゃんの愛の告白に、
あおいくんは顔を隠すようにテーブルに伏せた。耳が赤い。彼と重なる。
そういうわたしも突然の甘い言葉に頬に
熱が集中し、冷ますようにアイスティーを
一気に飲み干した。


( 遅れてごめん!待った? )
( 遅い! でも、まあ…そういうとこも
  好きだよ… )
( どうしたの急に )
( うるさい、たまにはいいかなって )
( 素直じゃないなあ、おれもそういう
  とこ好きだよ )
( !?!! )

 


書き込む 画像 サイトマップ ▲上へ