書きたいときに、書きたいだけ、書きたいものを書きます。
基本、自己満足です。
ワタシがアナタに染まりたいといえば、アナタは頷いてくれるんでしょ。
どんな無理難題も断れない、優しい優しいアナタ。
そんなアナタが大好き。
そんな大好きなアナタが大嫌い。
矛盾だなんて言わないで。
クリーム色のふわふわした髪を見ると、撫でて触りたくなるし、切り刻んでやりたくなるの。
美しい世界を見つめるその瞳を眺めていたいし、その世界を黒く塗りつぶしたくもなるの。
その腕には、その足には、胴体にさえもワタシで染めたい、ワタシを刻みたい。
「ハルちゃん、大好き、愛してる」
狭い空間に響く切ない声。甘く優しく呟くような…。それでいて苛立ちをもこめたような声色。
その声は酷く恐ろしく、その瞳は狂気に満ち溢れていた。
ハルちゃん、と呼ばれたその人間はただボウッと何処かをふらふらと見つめているだけだった。
「ハルちゃん、また会いたいよ。
でも、今のハルちゃんいらないな。」
クイッと口角を上げたその瞬間、ハルちゃんの綺麗な瞳に映ったのは紅の炎ばかり。
「見て。ハルちゃんを消した炎が、オレの身体を焼いてるよ、刻んでるよ。
そうだ、次のデートどこ行く?」
おわり。
アタシは中学に入学したての1年生。
男勝りで、運動が大好きなアタシは男子から女子だとも思われてないって分かってる。
「おーい、サッカーしに行こうぜ!
あ…、制服じゃ無理だな、ごめん」
男友達に声をかけられて席を立つけれど、女子の制服はスカートだから、サッカーは出来なかった。
アタシも男子だったら…、そう思わずにはいられないけど、グッと我慢する。
こんなアタシでも片想いの彼がいるんだ。クラスは離れてしまったし、今では全然喋らないけど、お互いに目が合うことだって多い。
それに、好きになってしまったら止められないよ、この気持ち。
学校が終わって、帰る時間。
女子や男子とゾロゾロ帰るこの時間は、意外と好きだったりする。
アタシの友達は違うクラス。悲しいことに、仲の良い人たちはみんな違うクラスなんだ。
スクバを持って廊下に出ていく。帰りといえど、まだみんな教室に残っているらしく、人はポツポツといるくらい。
足早に友達のいるクラスへ向かおうとしたそのとき、不意に後ろからどんっと誰かにぶつかられた。
「痛…ッ、だれ?ちゃんと前見て歩いて、…」
振り向こうとしたその時、ゆっくりとアタシは抱き締められた。背後にいるその人に。
アタシの胸の前でクロスするように抱き締めるその手は…、もしかして、片想いの彼…?
「リン、今から帰るの?」
あぁ、声でわかった。紛れもなく彼なんだ。
「…そうだよ、みんなと帰るの」
アタシがそう言えば、少しずつ彼の腕の力は強くなっていく。
「…他の男子とも帰るんだ。」
そう呟かれ、コクリと頷いた。
「オレさ、リンのこと好きだよ。ねぇ、こういえば行かないでくれる?」
夢にまで見た、彼からの『好き』。
だけど今は、彼の威圧感、アタシの知らない彼、抱き締める意味…。
たくさんのことに押し潰されそうで、どうしようもなく嫌だった。
逃げたいよ、こわい…。
「ア、アタシは、あんたのこと別に好きじゃない。早く退けてよその手。
邪魔だってば、早く行きたいの!」
思わず強く言ってその腕をグイッと前にやろうとした瞬間、彼はその腕をアタシの首の方まで持ってきた。
「何で、何で何で。オレのこと好きだったじゃん、オレ知ってるよ?
リンがOKって言うまで、絶対離さないし。」
色んな教室から声が漏れてきた。
みんな、賑やかに帰っていくんだね。
「OKって言わないなら、離さない」
ずっと、アタシの首に腕を巻き付けてるのに。これではOKの言葉を発せれないというのに。
『離さない』すなわち、アタシの首を永久に絞めているってことでしょう?
「リンちゃん…ッ、ねぇ、リンちゃん…!?起きてよ、ねぇ、何で倒れてるの…!!」
永久に、アタシは中学1年生。
永久に、アタシは男勝りな女の子。
永久に、私は彼のもの…。
『フリチラリア・インペリアリス』
_____こっち見んな 目障りだ
額から紅の液体を滴らせて、紅の瞳でこちらを睨み付ける、紅の貴方。
馬鹿なこと言わないで。
自分を犠牲にしてでも、私を守ってくれたくせに。
出会ったのは、去年の春の終わり。
いつも喧嘩ばかりしていた貴方を見て、思いきり怒鳴ってやったわ。
_____自分のことくらい自分で守りなさいよ
今では私が貴方に守ってもらっちゃってるのにね。もう上から目線で言えやしない。
アマノジャク…。
貴方は素直になれなくて、よく誤解されるものね。それでも私は、貴方の瞳が綺麗に光っていることを知っている。
私は貴方が大好きなの、言葉じゃ表しきれないほど。
そして今日は、私達が出会って1年がたった日。
ねぇ、一緒にショッピングでもしましょうよ
俺の柄じゃねぇけどな、行ってやるよ
相変わらずの俺様ぶりで、微笑みながら返事をしてくれた貴方。
他の人から見れば、多分無愛想で笑っていないのだと感じるはず。
だけど…、口角が微妙に上がっているのよ。目だって少し細くなる。
恋人といえる関係なのか。曖昧な私達だけど、今はこれでいい。
隣にいられるだけで、幸せだから。
目一杯のお洒落をして家を出た。何故だか外は騒がしいわ。
ゴールデンウィーク、長期連休だもの。仕方ないわよね。
なんて、呑気に考えていられたら良かったのに
_____男が倒れてるぞ
_____車に牽かれたみたいだ
_________コイツ目が赤いぞ
心臓が止まるかと思った。
いいや、心臓なんて止まってしまえばいい…。
気づいたら彼のもとに駆け寄っていた。彼は…紅に染まっていた。
何でよ。
私を守るためじゃないのなら、血を流すなんて許さないわよ…。
涙なんて流れない。
もう、目の前も真っ暗で。
_____彼の彼女さん?
近くにいたおばさんに声をかけられ、私は頷いた。
貴方がいたら、彼女じゃねぇだろって笑うんでしょう?それでも私は、貴方の特別になりたかったの。
_____彼、きっと貴女に渡したかったのね
そして、目の前に差し出されたとある写真に、とうとう私の涙は壊れたように流れ出てきた。
『フリチラリア・インペリアリス』の写真。その写真の裏に書き記された文字は、きっと私に深く刻まれていく。
______あまりに大きな花すぎて、実物は持ってこれなかった。
俺の気持ちの方が、大きいけどな。
『 天上の愛 』
一生 お前が好きだ。
天上の愛だなんて、あまりに残酷すぎるメッセージかもしれない。
貴方がもう空の彼方に向かっているだなんて、信じたくもないけど。
それでも私は、この恋に出会えて幸せだった。貴方はもういないけれど、今だって幸せを貰っている途中。
流れる涙もそのままに、私は今も尚紅の貴方に笑いかけた。
『覚えててくれてたのね、今日が特別な日なんだってこと。』
いつの日か、長い名前の花だなんて笑いあってお話したわね。
『フリチラリア・インペリアリス』
5月4日の花。花言葉は、
天上の愛、だものね。
私には、片想いの人がいる。
といっても、会ったことも無ければ、私の存在すら知られていない。
世界の違う人、私とは無縁の人。
芸能界という世界で輝くアイドルの君。
4年前に結成された男性アイドルグループ、『 MIMOZA 』(ミモザ)
6人組のグループで、特にセンターの暁(アカツキ)君が人気なんだ。
暁君は何でも出来てカッコいいけれど、私の担当は、よく後列にいる永久(トワ)君。
いつもボーッとしていて何だかつかめない不思議キャラ。前髪のせいで目が半分くらい隠れていることが多いけれど、実はかなりの美形。
イメージカラーは白の、白河 永久君。名前に白が入ってるからって安易に決められたようだけど、私は永久君に白はぴったりだなって思ってるよ。
関係無い人なのは重々承知だけど、好きって思うのは勝手で良い…よね?
彼らは俗に言うジャニーズ。
そして私はジャニヲタ。
お願いだから引かないでほしい。たまたま惹かれた人がたまたまジャニーズだったってだけなんだから。
とは言うけれど、私がそんな人だってことは誰も知らないこと。
家族にも言ってない。いや、だって普通に恥ずかしいしさ…。
さてさて、そんなことはさておき時間になったのを確認してから家を出た。
私は高2女子。両親は仕事で忙しいみたいで、大体家にはいない。
朝もこうして通学して、勉強して、友達と話して、部活して、帰って…。
毎日飽きるようなローテーションだけど、潤いを与えてくれるMIMOZAと永久君がいるからつまらなくない。
どこにでもいる普通JK、間宮 鈴菜(マミヤ スズナ)
今日も1日、MIMOZAパワーで乗り越えます!
「すずおはよー」
「すーちゃん、今度の日曜カラオケ行かないー?」
騒がしい朝の教室。挨拶をしてくれる友達にハイテンションな挨拶をかました。
「おっはよー!あ、カラオケ?行く行くー、ガンガン歌おー!」
至って普通のJKのテンションだけど、朝からはうるさかったかな、土下座土下座。
正直こういうノリは得意ではないけど、昔大人しすぎていつも1人だったせいでか、中学の後半くらいからは今のうるさい私で通ってる。
確か永久君はうるさい女子は好みじゃないらしいけど、どうせ会わないし会えない。
そこまで気にしちゃうと、高校生活を謳歌出来なくなっちゃうんだ。
少し無理してる気はするけど、あまりストレスにはなってないはず。
派手めなグループに所属する私は、いつめんと呼ばれる女子との雑談で朝が過ぎてゆく。
1日の始まりを告げるチャイムがなって、今日も1日うるさい女子と、アイドルに興味のない女子を演じていく。
家に帰ったら永久君、家に帰ったら永久君、家に帰ったら永久君、家に帰ったら永久君、家に帰ったら永久君…。
ちょっと、そこの人引かないでね…?
おまじないなんだからっ、ね?
「すーちゃん、呼ばれてるよー」
教室の扉の方から友達にそう言われ、そちらを向くお昼ご飯タイムの間宮です。
お母さんのお弁当美味しいな、もぐもぐ…、じゃなくて。
私がお弁当を机に置くと、一緒に食べていた友達から、
「流石、モテすずは違うなー」
「マジマジ、何回目だろー?」
そんな言葉を言われ、「そんなことないよー」、と笑いながら言う。
呼ばれた理由は、俗に言う『告白』。
派手な女子と仲良くて、目立つ方の私はモテているらしい。
皆に合わせてメイクも濃い私のどこが良いんだろ、と我ながら思うけれど理由はただ1つ。
カーストで上の方の私と付き合えれば、自分の学校での地位も上がる。
そんなところでしょ?
でも、残念ながら実際の間宮鈴菜はちっとも力なんて無いし、豆腐メンタルの持ち主だし、友達だって頑張って合わせないと作れない。
いつか、地位とか外見とかじゃなくて、『私』を見てくれる恋に出会いたいなと思いながら私を呼んだ男子に着いていった。
連れられてきたのは空き教室。
相手の男子は、何故だか頬を赤く染めていた。
その人は、中々の美形の人で、優しげなオーラを纏っていた。
「…俺、間宮さんが好きです。」
決心したように言ったその声は、低めの甘い声で綺麗だと思った。でも、永久君とは違うんだなって、考えてしまった。
「…ごめんね。すっごい嬉しいんだけど、私恋愛とか興味無くて…」
いつもの言葉を口にした途中、彼の言葉に遮られてしまった。
「…俺、間宮さんに助けてもらったことあるんだ。派手で苦手だったけど、本当は心の暖かい人なんだなって…。
本当に、好きなんです。
恋愛関係じゃなくても良い、友達からでもダメですか?」
真剣な彼の瞳に、私はひどく驚いてしまった。
『私』のことを好きと言ってくれた人、これまでいたっけ…?
嘘の告白なら、これまでずばずばと断ってきた。だけど、彼を断るのは嫌だと心の中で思ったの。
「名前、何て言うんですか?」
私が笑いかけながら彼に聞くと、彼もふわっと嬉しそうに笑って、
「瀬野 京(セノ キョウ)、2年で間宮さんの隣のクラスです」
彼のハキハキした口調の甘い声にのせて、同い年という情報を得た。
うそ、私より何倍も大人っぽいのに…!
「じゃあ、京って呼ばせてもらうね。
同い年だし、私のことは呼び捨てとかでいいよー!」
私の言葉に京は少し照れたように笑って、
「…じゃあ、鈴菜って呼ぶ。
何か、友達になれたの凄い嬉しい。俺なんか、話せなくて高校生活終わるかなってビクビクしてたから。」
そんな事を話す彼に、私ってそんな偉い人なの!?と、思わず笑みが溢れた。
「すずが男子と友達になるとか珍しー、でもお似合いだわー!」
「美女すずの隣はイケメンしか無理だもんな、ブスだったらウチらが許さないし。」
とか何とか女子トークをする放課後の教室。
昼休み、あれから教室に戻って色々聞かれて、まぁそれなり授業も終わって今に至る。と、そんなところ。
「そんなことないのにー!あ、ごめんね、そろそろバイトの時間だ!」
謙遜しながら、時計をチラッと見て思い出したように言う私。
「もうそんな時間ー?今日もバイト頑張れ!毎日偉いな!」
友達に行ってらっしゃい、と言われ、スクバを持って、ばいばーい!と笑顔で手を振って教室を出た。
今からバイト…というのは実はウソ。
急いで帰って、永久君を見るんだ。永久君不足で倒れたら大変でしょって、流石に倒れないけどね!
今日は去年のコンサート映像でも見ながら宿題しようかー、うふふ。
ニヤケそうな顔をキリッとさせて、昇降口まで急いだ私。
「…わっ!」
靴を履いて外に出た場所に、京が立っていて…、思わず驚いて声をあげてしまった。
「…鈴菜、良かったら家まで送ってもいいかな?」
恥ずかしそうに頭をかきながら聞いてくる京に、頷く以外…無いよね?
「うん、良いよー!あ、でも家遠かったりしない…?」
私が遠慮がちにそう聞けば、京はふわっと笑って
「100kmでも大丈夫。どこまでも送ってくから。」
なんて頼もしいこと言っちゃうから、遠慮なんて出来なくなっちゃうじゃん。
でも、嬉しいな…。
帰り道は話題なんて尽きなくて、ぽんぽんお話が出てきた。
途中から少し素に戻ってたかもしれないけど、京なら良いかな。
「鈴菜はさ、どんな男の人がタイプなの?」
会話の途中でそう言われ、
「え、永久君だよ?」と言いそうになって凄く焦った。
タイプって言ったら…、えっと…。
「色白でね、色素薄い感じで。歌とかダンスが得意で、美形なのに目立って無くて。声が透き通ってる人かな。」
そう答えると、京は目を真ん丸にした。
「それって、姉ちゃんが言ってた白河ってアイドルのこと?」
知 っ て た の か
男子は知らないと思ってペラペラ喋っちゃったよ、え、どうしよう!?
これじゃ、ヲタクってバレるじゃん!
目は盛大に泳いでるだろうし、汗も尋常じゃないと思う。
言い訳を考えろ!考えるんだ間宮!
えーっと、あー、うーん、
こういうときに限って、思い浮かばない…。
何やらさっきから京はカバンをごそごそしている様子。はっ、もしかして…
今からスマホで、
『間宮ジャニヲタ確定(わら)白河好きとかマジ乙』
って、何かに書き込むつもりだな!
と、私が警戒心いっぱいに京を睨んでいると、京は急に大きな声を出して
「やった、あった!はい、鈴菜。今度ツアーでこっちにMIMOZA来るらしいよ、チケットあげる」
はいっ、と言われて渡されたチケットは、紛れもなく、倍率高すぎて手に入らなかったツアーのチケット…!
でも私はMIMOZAなんて知らない女子高校生(のキャラ)だしなぁ…。
と、悶々と悩んでいたら、そんな私の心中を読み取ったかのように
「MIMOZA興味無いみたいだね。でも意外と楽しめるだろうし、姉ちゃんがたまたまチケットくれたから…、一緒に行かない?
俺が一緒に来てほしいな。」
優しい笑顔でそう言う京に、
「そこまでいうなら、行こうかな…」
と答える私。(内心カーニバル)
ツアーは既に始まっていて、長期連休の明後日のが、私達が行くコンサート。
明日から長期連休に差し掛かる。いわゆるゴーンデンウィークってやつ。
アイドルはこんなときにも休みがないから、大変なんだろうな。
「それじゃあ、明後日の朝迎えにいくよ。今ばっちり鈴菜のお家覚えたからさ。」
そういって無邪気に笑う京が、頼りがいのあるお兄さんみたいだった。
「ありがとう、京。明後日、楽しませてもらうね!」
ニコニコと笑う私を優しく見つめる眼差しには、紛れもなく好意がこめられているのに気づく。
言葉で言われたけれど、少し疑っている面もあった。これまでと同じじゃないかって。
でも、京のことは真剣に考えないと酷い女になってしまうし、信じてあげたい。
私を好きになってくれたことに、後悔されないような結果を出そう…。
そう心に誓って、彼に「またね」と言った。
永久君が雑誌で言っていた、「あまり派手な人は好きじゃないですね」という彼のタイプは知っているものの、おとなしい私になると…京にバレる恐れがある。
どうやら彼のお姉ちゃんはMIMOZAのファンらしくて、永久君情報も筒抜け。
永久君のタイプになって行けば、彼に本当に気づかれる可能性があるってこと。
私が…永久君担当ってこと。
「でも、まぁ少しは可愛くなれたのかな…?」
いつもより気合いを入れてから、時計を見ると針は8時を指している。
丁度チャイムが鳴って、インターホンで京を確認した。
「今行くからねー、ちょっと待ってて!」
そういって慌てて降りていく私。
今日は凄く楽しみだ…!
『 ホント? 』
_____ルリちゃん、これから仲良くしない?
話しかけてきたのは、リーダー格のスミレちゃんだった。
人見知りで、話しかけるのが苦手な私は嬉しかった。
お友だちが出来たから。
…いいえ、違うの。
スミレちゃんにさえ着いていれば、平和に学校生活を送れる。馬鹿じゃない私は、すぐに分かったから。
_____うん。スミレちゃん、仲良くしようね!
これで…、私は勝ったも同然なんだ。
それからは、スミレちゃんと一緒に行動をして、仲良くいた。
だけど、やっぱり1番の仲良しの子とお話したい。だって、スミレちゃんはクラスにいるときだけ一緒にいてくれたら良いんだもん。
_____向こうのクラス行ってくるね、ばいばい!
_____…分かった。
私がそう言って行く度に、不機嫌そうな顔をする。どうでもいいけど。
_____ユウカ!遊びにきたよ!
_____ルリー、退屈してたよー!
ユウカと話すのは凄く楽しい。スミレちゃんと違って、好きなものが一緒だったり、共通点がいっぱいだから。
次の日朝学校に着いてから、すぐにユウカのクラスへ行った。
昨日話したとき、2人共好きなアニメのシールを交換する約束をしたから。
_____このシール可愛い!ルリありがと、大好きー!
_____こっちも可愛いね!私も大好きだよ、ユウカ!
すごく楽しかった。ユウカといると本当に楽しい。
スミレちゃんといるときと違って、ね…。
_____ルリちゃん、どこいってたの?
自分のクラスに戻って早々に、スミレちゃんに声をかけられた。
めんどくさい、と思いながらも
_____ユウカとお話してたんだ!すっごく楽しかった。
そう笑顔で告げると、スミレちゃんはいつもと違った笑い方で笑って、
_____良かったね。
冷たくそういった。
背筋が凍るような怖さで、”馬鹿じゃない私”は気づいた。
”私が馬鹿だった”ことに。
それからは、なるべく彼女を避けるようにした。彼女といると、震えが止まらないほどに恐ろしい。
ある日の体育が終わったあと、クラスメートの女の子と話しながら教室に帰っていた私。
途中で、ヘアゴムを更衣室に忘れてきたことに気づいた。
_____ごめんね、取ってくる。帰ってていいよ!
事情を話して謝ってから、急いで更衣室へと走っていった。
更衣室のドアを開けると、そこには…
_____ルリちゃん、ヘアゴム落ちてたよ。
声が…、出ない。
スミレちゃんは、口角を上げ艶やかな弧を描くように微笑んでいた。
恐ろしく冷たげに。
ガタガタと震えていると、スミレちゃんは私に近づいてきて、
_____何で私の事避けてるの?仲良くしようって言ったじゃん。
中1の威圧じゃないほどの、怖さ。
子供ながらに美形な彼女に憎しみをもった瞳で睨まれて、怖がらない人などいるのだろうか。
彼女はゆっくり私の耳元に唇を寄せると、こう言い放った。
_____良かったね。私といるおかげで、中学は平和に過ごせるよ。
見透かされたような、黒い瞳。
数秒見つめあったあと、彼女の手に持たれていた私のヘアゴムはプツリと切れた。
彼女は瞬く間に、その瞳を、その美しい顔を、その存在全てを怒りで覆いつくした。
_____なんで、なんで。私はこんなにもルリちゃんが大好きなのに。
うふふ。ユウカちゃんね、前言ってたよ。ルリと話すの疲れるから嫌って。
ねぇ、ねぇ、ねぇ…!?
私は好きよ、ルリちゃんのこと。ほら、ねぇルリちゃん。
『 私と仲良くしない? 』
彼女は甘かった。
一瞬にして出来た傷口に、一瞬にして蜂蜜を垂らしたのだ。
_____……うん、スミレちゃん。仲良くしようね…!
笑った。彼女は笑った。
_____ホント?
綺麗に首をかしげる彼女に、頷いた。
もう囲われたも同然。
彼女が怖くて堪らなかった私は、なんて馬鹿なんだろう。
こんなにも私を愛してくれている。
こんなにも美しい彼女が…。
_____馬鹿なルリちゃん、大好き。
「京、おまたせ!わざわざありがとうね。」
そういって微笑めば、京は照れたようにはにかんで、
「全然良いよ。服も、似合ってる」
不意に優しく言われ、思わず胸が高鳴った。嬉しい、素直にそう思った。
「…え、あー…。い、行こっか、10時からだし!」
しどろもどろになりながら、照れ隠しでわざとドアをしっかり閉めたか確認してみたりする私は気づいてなかった。
「…、白河永久の為に可愛くなってるのは、ちょっと嫌かな。」
寂しそうに微笑む彼に…。
「わぁ!ここがコンサート会場か、ひろーい…!」
9時くらいに着いたその会場は、MIMOZAの人気を表すほどの大きさ、広さ。
「鈴菜、迷子になりそうだよ。」
はしゃぐ私を横目に、自然と手を握ってきた彼に気づくわけもなく、1人ワクワクしていた。
永久君に会える…!生永久君だ…!
興奮したまま入っていき、気づけばコンサートが始まる時間に。
永久君のうちわでも持ちたかったけど、これは私の意地だ。京を横に、持てるわけがないし…。
ペンライトでさえ持たない私は、いつもの私から見たら末期だけれど、MIMOZAを見れるだけで幸せだもん。
内心持ちたくて仕方なかったけど、あくまでMIMOZAには興味ない女子高校生。貫かないとね…!
ソワソワして落ち着かないファンの人達と共に静かに待っていると…、大きなモニターに映像がパッと映り始めたことにより、歓声が巻き起こる。
『MIMOZAのコンサートへ、足をお運びいただき、誠にありがとうございます。』
最年長で、リーダーの翠君の声から始まった映像。翠君が画面に映り、華麗にお辞儀をしてみせた。
翠君が横を指し示すと、次に映るのはクールで絶対的な空気を纏う來君。
『俺らのコンサートにきた以上、約束してほしいことがある。一緒に楽しんでほしい。命令だからな。』
ニヤリ、と笑った彼は、口元に人差し指を当てる仕草をした。そしてそのまま、上を指さした。
次に、可愛いキャラの湊君。ニュースのキャスターを務める怜音君。
怜音君が指をパチンと鳴らして、画面に出てきたのは…、永久君。
『今回のコンサートでは、どこよりも早く新曲を発表します。俺みたいに…、途中で寝たら見れなくなるから…、起きてて?』
いつもは見せない甘い笑顔でそういう彼。