短編です笑笑
2:月依 要:2016/06/29(水) 16:23 「…あ!赤ずきんの本だ!」
本棚を見ながら小さな女の子がそう言いました。
女の子は本を棚から取ると、おばあちゃんの所へと走っていきました。
「おばあちゃん!この本読んで!」
元気一杯に言う女の子と対称的に、おばあちゃんか表情は暗かったのです。
「これは…普通のお話じゃないんだよ?」
おばあちゃんは悲しそうな顔をしながら言いました。
「それでも…いいのかい?」
おばあちゃんの問いかけに女の子は頷きました。
すると、おばあちゃんは本を開いて読み始めました。
「昔々…」
昔々、あるところに白いずきんを被った可愛い女の子が住んでいました。
名前は、茜と言いました。
ある日、お母さんは言いました。
「茜、おばあちゃんのところにお見舞いに行ってくれない?」
茜は、元気良く頷くと、お母さんの作ったお菓子の入ったバスケットを持って出掛けていきました。
茜が歩いていると、途中でずきんが風に飛ばされてしまいました。
茜は、なすすべがなく、悲しそうに見つめていました。
すると、どこからともなく何かが跳んで来て、ずきんを取って、渡してくれました。
「ありがとう、お名前は?」
茜はそういいました。
「ウルフ……」
そう、それは、狼だったのです。
「そっか…!私は茜!ウルフくん!ありがとう!」
茜が言うと、狼は驚いたように言いました。
「僕が怖くないの?」
「うん!だって、ずきん取ってくれたもん!」
狼の言葉に茜は明るく答えました。
その日はそこでさようならをして、茜はおばあちゃんの家へと行きました。
それからというもの、来る日も来る日も二人は初めて会った場所で会っては、遊んで楽しく話していました。
ある日、二人はいつも通り遊んで話していました。
すると、遠くから声が聞こえました。
「あれ、狼じゃないか!女の子が襲われてる!」
それは、村の大人たちの声でした。
良く見ると猟銃を持っています。
茜は大人たちに捕まえられて、ウルフと離されてしまいました。
「ダメ!あの子は優しい子なの!」
そんな茜の声は、大人たちには届きません。
大人たちとウルフが向かい合っているとき、茜はその間に飛び込みました。
「ダメ!殺しちゃダメ!」
茜はそう大きな声で言いました。
「チッ、邪魔だよ…もう一か八かだ」
そういうと大人が、猟銃を構えました。
茜は目を閉じました。
パァン
そんな乾いた音が森に響きました。
茜は痛くありません。
茜は、ゆっくり目を開けました。
するとそこには、赤く染まったウルフが倒れていました。
「どうして…!」
茜は言いました。
ウルフは、答えました。
「茜は優しくしてくれた…だから…」
茜は泣きながら言いました。
「死んじゃダメだよ…!」
茜は、ずきんを取って、怪我しているところに結びました。
「茜…好きだよ…」
ウルフはそういうと目を閉じました。
「私も好きだよ…」
茜のその言葉はウルフに届いたのかはんかりません。
ずきんは、赤く染まっています。
茜はそのずきんをウルフから取ると、頭に着けました。
それから、茜は赤ずきんと呼ばれるようになりました。
「おしまい」
最後にそう言うと、おばあちゃんは本を閉じました。
女の子は暗い顔をしています。
「どうだい?悲しいだろ?」
「うん…あのね…おばあちゃん…」
少しためらいつつ、女の子は言いました。
「私、色んな人に命を大切にする!」
「それは…良いことだね…頑張りなさい」
一通り話が終わると女の子は本を仕舞いに行きました。
おばあちゃんは、女の子の後ろ姿を見ながら呟きました。
「物語は…生きてる限り……終わらない…」
終わり